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17/10/31(火)00:49:08 SSです... のスレッド詳細

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17/10/31(火)00:49:08 No.462651114

SSですので苦手な方はブラウザバックをお願いします 前後編の予定ですので後編は完成次第同じ画像でお出しします

1 17/10/31(火)00:49:49 [1/10] No.462651257

「そろそろ時間ね。行ってくるわ」 ノンナにそう伝えた私は練習を抜け、一人で隊長室へと戻る。 自分の背よりも高い椅子に腰をかけ、誰も居ない部屋で来客を待つ。 ノートを開いて来年の各車編成や配置転換を考えつつ時間を潰すと、カツカツと固い靴音が部屋に近づいてくる。 その足音を聞いてノートを閉じた頃、来客がノックを数回する音が室内に響く。 音がやんだのを確認した私は出来る限り力強い声で「どうぞ」と伝える。 両手で大切に手紙を持った下級生から受け取り、未開封な点を確認し一枚の紙に署名する。 さらに相手も室内に誰も居ない事を確認し同じ紙面に署名。 一連の流れを確認した下級生は退室し、私は渡された手紙の封を開ける。 堅苦しい作業が特別なわけではない。このプラウダ高校が情報が漏れる事を嫌がる校風だというだけだ。 「面倒ではあるけれど、これも学校のしきたりならしょうがないわ」 手紙には長々とした文章と校長の署名が書いてある。 簡単にまとめると以下の通りとなる。 「カールの申請など含め、サンダース大学付属高校が脅威であると認める。よって戦車道履修者による偵察行為を許可する」

2 17/10/31(火)00:50:07 [2/10] No.462651329

その本文を読み終えた私は、急ぎ校舎を出て練習場へと向かう。 「ノンナ、許可が下りたわ。ただし偵察に行ける人数は最小限よ」 「おめでとうございますカチューシャ。では五人程見繕いましょうか」 「いいえ、今回は私とノンナだけで行くわ。他の隊員たちは来年に向けて練習を続けさせないと」 「わかりました。では船などの手配をしておきます」 「ずいぶん前倒しだけど卒業旅行の気分で行けばいいわ」 「はい。残るメンバーの指揮はどうしますか」 「クラーラに頼んでおいて。それと来年の為に勉強もさせる為にアリーナにもやらせるわ。私達が居ないからって手を抜いた生徒はリストアップさせなさい」 「では練習の後、二人に伝えておきます」 「そうして。情報が漏れると面倒だから、他の同志たちには早めの卒業旅行って伝えておきましょう」 「わかりました」 私達二人だけでの潜入調査。 終わってから二人でのんびり観光もしてから帰ろうかしら? そんな軽い気持ちでこなせる、簡単な任務のはずだったのに。

3 17/10/31(火)00:50:27 [3/10] No.462651410

潜入当日。快晴の中、船はサンダースの学園艦へと近づいていく。 しかし、何故か船は寄港予定のゲートを越えていく。 「ちょっとなんでゲートを通り過ぎて行くのよ!おかしいじゃない!ノンナ!」 「妙ですね。聞いてみますか」 船長に問い詰めてみたものの、「入港しようとしたらこちらのゲートに誘導された。こんなことは滅多にないので驚いている」と私達以上に不安がっている。 タイミング良く私達の船が狙われるなんておかしい。私達の潜入がバレてるのでは? 「…ノンナ、バレてる可能性が高いわ。気をつけて」 私はノンナに対し警戒をする様に伝える。 「その様ですね」 ノンナはいつも通りの口調で、目線を前に向けたまま告げて来た。 釣られる様に視線を前に向けた私は言葉を失う。 船が向かうゲートは鮮やかに彩られ、お祭りムードに彩られている。 さらにそこにはこう書かれていた。 歓迎 カチューシャ ノンナ御一行

4 17/10/31(火)00:50:43 [4/10] No.462651463

「ハーイ、カチューシャ。それにノンナも。長旅お疲れ様」 ケイが眩しい笑顔を向けながら私達の上陸に手を貸してくれる。 「これは何の真似?」 その手を握り上陸した私は、相手の出方を探るべく強い口調で声をかける。 「何って…歓迎でしょう?」 きょとんとした顔で、大げさに両手を上げて何を言いたいのかがわからないという仕草をする。 「あなたたちの卒業旅行なんでしょう?連絡もよこさないなんて水臭いじゃない」 「はぁ?誰がそんな事を言ってたの」 「あなた達の可愛らしい後輩たちよ。二人には美味しい物と寝心地のいいベッドを用意して欲しいって連絡があったの。  先輩想いの可愛らしい後輩じゃない。私も感動しちゃって歓迎パーティーの準備をしたってわけ」 嬉しそうに笑いながら背中を叩いてくるケイを見て、私は伝達のミスに気がついた。 そうか、あの子達は本当に卒業旅行だと思ってしまったのね。

5 17/10/31(火)00:51:02 [5/10] No.462651553

大きな会議室の中で豪快、もとい豪華な料理に囲まれた私たちは入れ替わりで挨拶をしにくるサンダース生達と軽く会話をしながら食事を進める。 「どう、楽しんでる?」 椅子に座りながらそんな風に声を掛けてきたのは確か、アリサとかいう名前の副隊長。 「悪くないわね」 そう答えるとアリサはフンと鼻を鳴らし私の隣に座る。 「満足してるならそう伝えてくれる方が準備をした私達も嬉しいんだけれど」 「それより、主賓席に座るだなんて行儀が悪いんじゃない?」 「椅子は座る為にあるの。何か問題が?」 「まあいいわ。それで、何の用?食べるので忙しいんだけど」 「隊長に案内を命令されたのよ。見たいところがあれば聞いておこうと思って」 その言葉を聞き、私は頭を回転させつつも答えを濁らせる。 「そうね、私だけじゃなくノンナが行きたい場所もあるでしょうしリストアップして伝えるわ」 (これはチャンスよ) そう伝えようとノンナに視線を送ると、ノンナは私の汚れた口元を拭いた。 これもノンナなりに隠そうとしているのかもしれないとそのまま拭かせておく。

6 17/10/31(火)00:51:22 [6/10] No.462651630

食事をしながらノンナと話し合い、行きたい場所を考える。 とはいえ本題である戦車以外はさほど下調べもしていなかったので何も浮かばない。 どうしたものか。私はカチカチとボールペンの芯を出し入れしながら案を練る。 「…案内に丸投げはどうかしら」 「それでは戦車の調査が出来ないのではないでしょうか」 「じゃあ、戦車道履修者としてこの学校の戦車に興味がある。他にも戦車関連の史跡があるなら見てみたい。これでどう?」 「それならば大丈夫だと思います」 「決まりね」 私は立ち上がり、アリサを呼ぶ。 「決まったの?」 「ええ、これでお願いするわ」 そう伝えリストアップした紙を渡すと、アリサは読むなり眉を顰めた。 「…隊長に聞いてみるわ。少し待ってて」 そう言い残し急ぎ足で離れて行く。

7 17/10/31(火)00:51:40 [7/10] No.462651676

さて、これで通るか。失敗した場合はどうするか。 私が次の案を考えていると、遠くからはケイの大笑いと「ノープロブレム!」という無駄に元気な声が聞こえてくる。 「どうやら気にしていないようですね」 「そうね、隠す気も無いんじゃないかしら」 「なら、存分に調べさせてもらいましょう」 そう話し頷きあい、私たちは食事に戻る。 食べ進めていると、露骨に嫌そうな顔をしたアリサが戻ってくる。 「おかえり。どう、許可はもらえたかしら?」 結果がわかっている私は笑顔で迎える。 「私個人としては不本意なんだけどね。私達の偉大なマムに感謝しなさい」 「そうね、私の次くらいには偉大かもしれないし感謝してあげてもいいわ」 「偉大じゃなくて態度が大きいだけじゃない?…まあいいわ。食事会もあと一時間くらいはあるし、のんびり楽しんでて。私も準備をしてくるわ」

8 17/10/31(火)00:52:08 [8/10] No.462651767

それから一時間と少しが経ち、存分に食事をした私達はサンダース生達に見送られて会議室を出る。 年下の生徒であろうと馴れ馴れしいのは好ましくないが、元気のいい子たちは嫌いではない。 私は見送りに手を振り、ノンナは笑顔で会釈をしてあげる。 「じゃあ行きましょう。案内は任せたわよ、アリサ」 「はいはい。偉大な隊長様とノンナさんもよろしくね」 「よろしくお願いします、アリサさん」 「…こっちは丁寧で礼儀正しいのにね」 私達の前を歩くアリサは首を後ろに回しながら視線を向ける。 じろりと値踏みをする様な失礼な目線を無視し、私たちは歩く。 「じゃあまずは格納庫に行くわよ。妙な真似はしないでちょうだい」 「別に持って帰るわけでもないし安心しなさい。でもこの後の移動を戦車でするのは楽そうね。どうかしら」 「成長には適度な運動も必要ですよ、カチューシャ」 「…仕方ないわね。歩くわ」 「意見がまとまったのならなによりだわ。ほら、見えてきたわよ」 遠くまで等間隔で立ち並ぶ壁が見えてきたので、私は思わず目元に力が入る。

9 17/10/31(火)00:52:24 [9/10] No.462651837

シャッターの開いた格納庫の間を歩くと、整備の済んでいる綺麗なM4シャーマン戦車が並んでいた。 同じ戦車がたくさん並んでいるのは資金力も感じ圧倒されるが、目当ての物は無い。 改良型を含む各種シャーマンは普段の試合でも使われているし、当然私達のもとに情報も入っている。 「もっと珍しい戦車は無いの?実戦投入はされてない練習用戦車とかがあれば興味があるんだけど」 私は退屈そうにそう伝えると、アリサは手を広げオーバーなアクションをする。 「そんなの無いわよ。試合で使う戦車に普段から慣れておかないと意味がないでしょ」 「お金ならたくさんあるんだし練習用とか導入検討している戦車とかがあると思ってたわ」 「お生憎様。確かにお金はあるけれど使い所はそこじゃないの。それともあなたの学校ではそんな物も用意しているの?」 「同じだからつまらないと感じてるだけよ。資金力の差は確かにある。だからどれだけ差を詰められてるのか気になっただけ」

10 17/10/31(火)00:52:39 [10/10] No.462651898

本来調査をしに来た新戦力が無いことに安心をしつつ、私は嘘を混ぜ真意を隠しつつ伝えた。 「なぁんだ」と露骨にため息をつきながらノンナを見ると、ノンナは視線を前に向けたまま頷いてくる。 その動作だけで互いに調査すべき問題は無いと伝えあう。 「あとは一番奥、飛行機や輸送機の格納庫だけよ。そこまで見終わったら次の目的地に行きましょう」 当然そこにも真新しいものは無く、雑談をしながら来た道を戻った。 「ここから先はこちらにお任せね。じゃあ次は…学校から出て、戦車ショップにでも行ってみる?」 「そうね、珍しい物があれば嬉しいわ」 「了解。その後は休憩出来る場所を見繕いながら、人気スポットにでも行きましょうか」 「どれほどのものか楽しみですね、カチューシャ」 一観光客。そう演じるノンナを見て、アリサは若干申し訳なさそうな顔をする。 「とは言ってもここだって学園艦だし、そんなに凄い名物とかはないんだけれど」 「それでいいんですよ。何か思い出に残るのでしたらそれで満足です」 その言葉を聞いたアリサは真面目な顔をして手元にあるメモを見る。 「時間帯も考えないと」と言いながら次の行程を修正しているのだろう。

11 17/10/31(火)00:55:51 No.462652694

シャーマンしか持ってねぇ!なんだ… 実際他校もオッドボール三等軍曹みたいに忍びこんで調査するんだろうか

12 17/10/31(火)01:07:27 No.462654746

劇場版でひどい目にあわされたカールを導入を打診してたって言ってたし警戒するよね…

13 17/10/31(火)01:11:53 No.462655472

多分ジャンクヤードと言う名の回収した廃品置き場から戦車何台も再生できるくらいの余裕はあるんだろうな…

14 17/10/31(火)01:12:46 No.462655632

>伝達のミスに気がついた >そうか、あの子達は本当に卒業旅行だと思ってしまったのね 誰かさんの策謀を感じる…

15 17/10/31(火)01:15:49 No.462656117

そもそもこの偵察の提案自体が…

16 17/10/31(火)01:15:52 No.462656124

>ノンナは私の汚れた口元を拭いた 多分ケチャップの汚れ

17 17/10/31(火)01:23:29 No.462657291

>人気スポットにでも行きましょうか どんな人気スポットなんでしょうね まさか△ッ◆ー◎ウ@とかヤバい場所では…

18 17/10/31(火)01:24:34 No.462657439

ここが鳥居のあるプールよ!

19 17/10/31(火)01:31:29 No.462658629

あんのぅ…ニーナさんはどこへ行ったんだべか

20 17/10/31(火)01:38:23 No.462659791

>確かにお金はあるけれど使い所はそこじゃないの あ…あの、どこに使っているんすかね

21 17/10/31(火)01:40:50 No.462660163

前後編って次回の展開を想像するとイロイロと捗るよね

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