17/10/27(金)23:16:23 2 動... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1509113783240.jpg 17/10/27(金)23:16:23 No.462007744
2 動向と行動 「で?」 と島田愛里寿は尋ねた。 で、もなにもないものだわ、と愛里寿は思う。 以前なら「判ったわ、ご苦労様」で済ませていただろう。島田流以外に流派はなく、他は全て局面を作るための駒でしかなかった。 その駒が、しゃちほこばって気をつけをしている。あごのラインで切りそろえた髪に几帳面な顔。男にもてずに女にもてるのはバミューダと変わらない。 大学選抜チームに入って、誇りと実力を大切にしてきた隊員だった。確か、母校は聖グロリアーナ。紅茶の名前は、シナモン、と言ったか。 しばらく続いた沈黙を「もう一度繰り返せ」の合図だと理解したシナモンは、固い声を張って愛里寿隊長に言上した。 「は! 私、穂村克美、水口敦子、風間絵美、木村百合恵の四名、本日より大学選抜チームをから身を退かせていただきたく……」 「ダメだ」 あっさりと愛里寿は応えた。にべもない。 「お前達は貴重な車長だ。木村はお前の補佐官だからともかく、風間と水口は大事な戦力だ。何故辞める。そんなに高校生にやられたのが悔しかったか。 それも知波単に」
1 17/10/27(金)23:16:40 No.462007816
先の試合で、シナモン達は高校生相手に不覚を取っている。彼女は一瞬ぐっと詰まったが、それは痛いところを突かれたからではないようだ。戦う為の牙はある女達だ。負けが怖くて引っ込む連中ではない。 秘色に整えられた大学選抜チームの執務室に十時の日差しが差し込む。執務机とノートパソコン、小さなファイル棚以外なにもない殺風景な部屋だ。壁にかかった鞄に取り付けられた、ボコられグマのボコの缶バッチくらいだろうか、この部屋の彩りは。 穂村克美、ことシナモンは目を閉じ、お腹に力を入れた後で。 「大義の為です」 と告げた。愛里寿が眉をひそめる。 「大義?」 「はい。詳しくは申し上げられませんが、行かねばならぬ用事が――」 「あら。ここでの戦いよりも大事なものってなにかしら」 甘い声が背中から聞こえて、シナモンは総毛立った。 「あ、アズミさん」 いつドアが開いたのだろう。振り返ることの出来ないシナモンの背中に二人の声がかかる。 「これってさー。裏切りだよねー。銃殺確定」 「なあに? ここよりもっと面白いものがあるの?」
2 17/10/27(金)23:17:08 No.462007933
「る、ルミさん、メグミさん……」 バミューダ三姉妹。 年齢的にはシナモンの方が上だ。しかし実力本位の大学選抜で年齢の上下は関係ない。ぐっと奥歯を噛みしめてプレッシャーに耐える。 「……そのぉ、自分達が自分達であるために必要な戦いと言いますか……。けじめ、と言いますか」 しどろもどろになりながら一歩も退こうとしない。それを見た愛里寿は組んだ手のひらの影で微笑を隠す。打たれても倒れないその意気やよし。 「……いいだろう」 承諾の声は、三人の悲鳴にかき消された。 「どうしてです隊長!」 「けじめつけさせましょう! 指一本置いてかせましょうよ!」 「愛里寿隊長!」 「決めたことだ。 ただし、穂村。四名とももうここには戻れないぞ。それでいいな」 念を押されて、シナモンは胸を張った。 「……無論です。我が儘を通させていただき、感謝しています」 「それにしても何故お前だけが挨拶に来たのだ? こういうのは皆で来るのが筋だろう」
3 17/10/27(金)23:17:25 No.462007989
「それは私が彼女らのリーダーだからです」 さっきまでの怯えようはどこへやら、愛里寿の前に立つ女からは余裕が感じられた。 「無様な戦いは、してくれるなよ」 愛里寿が取り出したのは名簿だ。そこから四枚の隊員名簿を取り出す。 「後は処理しておく。下がっていい」 「はい!」 敬礼して振り返る。バミューダの三人が避けると、堂々とシナモンは執務室から退場していく。ルミが毒づいた。 「ケッ。グロリアーナが」 「卒業しても在校生のつもりなんでしょ」 メグミがまあまあと取りなす。アズミは愛里寿の側に歩み寄った。 「どうなさいました、隊長」 「ああうん。ちょっと考えてた」 はにかむように応えて、組んだ手の親指をこすり合わせる。さっきまで少女に満ちていた威厳は失せて、気弱な素顔を愛里寿が見せていた。 「私に不満があるのかなとか、学園艦のこととか」 「学園艦?」
4 17/10/27(金)23:18:31 No.462008211
「私は、ほら。飛び級でここまできたから」 メグミとルミは顔を見合わせる。島田愛里寿は、飛び級して大学に入学してきた戦車道の天才なのだ。大学の授業についていけるだけの能力も持ち合わせている。その代わり、普通過ごす中学校高校生活を愛里寿は送っていなかった。海の上で生活したことのない珍しい子供なのだ。 「学園艦に持つ愛校心みたいなもの、私にはよく判らなくて」 「あら。隊長はあの子達がここを離れるのは、聖グロリアーナの為だって仰るんですね?」 アズミの問いかけに愛里寿は頷いた。 「穂村は確か、シナモンとかいう紅茶の名前を持っていたでしょ? 水口はジンジャーエール、風間はクローヴ。それでなんで木村はカッサンドラなんだ?」 「聖グロリアーナの紅茶の名前は特別なんです。そこから漏れて、かつ何らかの異能力を持っている場合は勝手な仇名をつけて呼ぶとか。確か木村は占いが得意とか」 「ふうん。伯爵高校にでも行けばよかったのにな」 アズミの説明に愛里寿は気のない声を出した。興味がない、というのとは違う。拗ねている。
5 17/10/27(金)23:18:58 No.462008329
「とにかくその四人が一斉に抜けるというのなら、なにか聖グロリアーナ周りだっていうのは判る」 「あの連中は、グロリアーナのなかでも変わり者扱いだからねー」 ルミが呆れたように言うと、メグミはうんうんと頷いた。 「飛び道具メインでなんでもアリだからね」 「でも、大学選抜選手の穂村達はそんな突飛なことしてないじゃないか」 「それはパーシングが使えますし、隊長の用兵に感服してるからですわ」 首を傾げる愛里寿に、アズミが説明した。 「正攻法でいけるなら、それが一番強いですから。でも彼女たちは奇抜な方法で一泡吹かせてやりたかった」 「何のために」 愛里寿の疑問は当然だ。そしてアズミ達には当たり前過ぎる答えがある。 「打倒黒森峰!」 「あの連中をぶっ潰す!」 「西住流をやっつけろ!」 ぽかんとして愛里寿は三人を見比べる。そこにはいつもの大人な彼女たちはいなかった。 子供の顔をした大人が並んでいた。
6 17/10/27(金)23:19:24 No.462008426
「重戦車の圧力! 計画通りに進む作戦が腹だたしい!」 「”魔弾”に”狐”行く先行く先に待ち伏せてやがる!」 「九連覇は伊達ではなかったんです」 うんうんと頷くアズミにルミが噛みついた。 「なんだよ政治闘争がお得意のBCがなに偉そうに」 「あらやだ。うちは結構強いのよ? それに外交戦術も手際がいいの。上品なのよ」 「なにそれ。サンダースが。下品っていうの?」 「ま、味は単調よね。いつだってシャーマン。しょっぱいわー」 「あら? 万年貧乏学園艦のひがみかしら」 「え? エースがいないBCが、なんか言った?」 大きなため息をついて、愛里寿は再び指揮艦の顔に戻る。 「三人とも、止めろ」 「「「はっ!」」」 頭を抱えて数秒、それから顔を上げた。 「……学園艦に皆が持っている複雑な想いはよく判った。この件はしばし考える」
7 17/10/27(金)23:19:45 No.462008508
「え? もしかして家元にご相談ですか?」 メグミが心配そうに尋ねた。愛里寿の母、島田千代は笑顔を絶やさない美しい女性だ。しかしその内面は苛烈で容赦ない。彼女はシナモン達の動向を聞けば許さないだろう。メグミ達も口ではなんとでも言ったが、事を大きくして貴重な手駒を失うのは困る。愛里寿は微笑した。 「まさか。 お母様は私に全権を任せて下さっている。それを裏切る真似は出来ない。こちらで上手に処理するさ。 みんな。下がっていい」 綺麗な敬礼が並んだ。 一人になったのを確認すると、愛里寿は白い執務机の下段から、大辞典ほどの大きさのボコのぬいぐるみを引っ張り出してしばらく愛でた。 「聖グロリアーナ、か……」 それからぎゅっとぬいぐるみを抱きしめて、電話を手に取る。相談するつもりはなかった。ただ、話しておいた方がいいかもしれないと思っただけだった。 彼女はきっと自分のとりとめのない想いを全部聞いてくれるだろう。愛里寿の話し相手は、もうボコだけではなかった。 *
8 17/10/27(金)23:20:27 No.462008670
「それで愛里寿さんがうちに連絡を下さったわけですか」 秋山優花里がニコニコしながら珈琲を支度する。武部沙織はふうん、という表情を浮かべて、生徒会室の小さな白い冷蔵庫から牛乳の支度をした。優花里の珈琲は濃すぎるんだから。お砂糖もいっぱい入れた方が美味しい珈琲だよね。まあ、あたしはカロリーオフだけどさ。 「相談ってほどじゃないんだけど、どんな学校なのか聞かれちゃった」 西住みほはおっとりと笑って、仲間が急に居なくなって寂しくなったのもあるかもね、と付け加えた。 「理由もわからずに、勝手に友達がいなくなるのってショックだから」 「自分がどれだけ相手を想っているかは、伝えないとわかりませんよね」 五十鈴華は目を細めた。 「愛里寿さんも、もっと隊員と接する必要があるのかも」 「それでも、みぽりんに話してくれるようになったってことはさ、いい傾向じゃないの? あたしはいいと思うな。華だって、恋人が出来たらいろんなことが変わってくかも」 「たしかに。生徒会長になってから華は変わってきたかもねい」
9 17/10/27(金)23:21:06 No.462008815
口を挟んできたのは角谷杏だ。すらっとした足を高く掲げて、振り下ろすように長椅子から起き上がると、干し芋に手を伸ばした。 「きっとここにいるみんなが少しずつ変わっていってるんだよ。同時に変わらない信念みたいなのもある。例えば沙織の、モテたい願望とか……」 「ひどい会長! じゃなかった杏さん! あたしけっこうこれでも人気者なんですからね!」 ぶーっと怒ってみせる沙織に、優花里ははいとマグを手渡した。 大洗学園艦の生徒会室だ。一見、時代を感じさせるものの比較的新しく出来たフロアに見える。ただよく見ると、剥げかけたペンキを上から改めて白く塗り直したりしている。杏が横になっていた合皮のソファだって中のスプリングはへたりかけていて、予算がついたら買い換えようと言っては代が変わって、訪れる生徒のお尻を支え続けている。 「多分、うちとグロリアーナの繋がりの深さから連絡くれたんだと思うんだよね」 みほは強めの珈琲とお茶菓子を口に含む。小さな餃子みたいな形をした栗きんとんだ。ほろりと溶けて苦みに合う。 「聖グロリアーナに何か起こる、ということでしょうか」
10 17/10/27(金)23:21:30 No.462008915
華が考え込んだ。生徒会長に就任する前、華は単身で聖グロリアーナに訪れたことがある。歴史を感じさせる面持ちの荘厳なゴシックスタイルが要所に生かされたデザインを持つ。迎賓館のハンマービーム屋根はまるで教会のようで、そこに立つダージリンは敬虔な聖者のようにも見えた。 みほは考え考え。 「正直なところ、わたしもよく聖グロリアーナって判らないんだ。 あそこはあそこで、ってより、学園艦ごとでこだわりとか違うから」 「黒森峰は勝ち続けることか」 毛布にくるまって寝ていた麻子がむっくりと起き上がって言った。みほははははと笑う。 「そうだね。少なくともここ十年は勝ち続けることが目的だったかな。 でも、もうそろそろいいかなって空気もあったの」 「そうなんですか?」 優花里が目をパチパチさせる。そりゃそうだよ、とみほ。 「お姉ちゃんが来るまでは、お母さんが作戦計画を立ててたんだよね。まあ、あの人は計画通りに事を進めるの大好きだからさ。命令通りにやってたら勝てたんだ」
11 17/10/27(金)23:21:53 No.462008999
「そんで西住のおねーちゃんがやってきたら、おかーさんはそれを止めたってことか」 杏の質問にみほは頷く。 「充分結果も出せたし、家元襲名も決まったし。あとはお姉ちゃんに託そうって話になってたから。 あ、連覇が止まるって思われてたのは、お姉ちゃんが負けるって思われてたわけじゃないよ? 負けて当然って理由が他にあったの」 「そうですねえ。なにせ西住まほはすごい選手だって小さい頃から評判でしたから! でも、ならなぜ負けて当然って?」 明るい声の優花里に、沙織が腰を浮かせる。ただ遅かった。みほは明るく言った。 「うん。その次の隊長は、わたしの予定だったからね」 顔が真っ赤になる優花里を沙織はじとっと睨む。まったくこの子はすぐ地雷踏むんだから。ただみほ自身はまったく気にしていないようだ。 「もしわたしが黒森峰の隊長になったら、絶対優勝は無理って雰囲気はあったんだ。だから逆にお姉ちゃんが負けてみんなホッとしたの。ううん。かえって喜んだ人もいるかもしれない。 ああ、西住まほも人の子だったんだなって」
12 17/10/27(金)23:24:23 No.462009581
軽い口調で重い話題。 でも、華はちょっと嬉しかった。弱音や過去を話してくれたら、私達がそれをサポートすればいいから。華は優しく言った。 「それでもお姉さんは奮戦して、正々堂々と私たちと戦った。妹の、みほさんの為に力を貸してくれた。 私は西住まほさんもみほさんも、とても素敵だと思います」 「西住さんだって、立派に隊長としての責任を果たした。大事な戦いを落とさずに勝ち抜けたんだからな」 麻子の褒め言葉をありがとうと受け取って、みほは口を閉ざす。沙織はみほの隣に腰掛けた。ぎいっとソファーが声をあげる。 「みぽりんどうしたの」 「うん。そのことなんだけどさ。黒森峰の人って、戦車道辞めちゃう人が多いんだよね」 「え? そうなの?」 驚いたのは沙織だけではない。華も目をぱちくりさせる。優花里はさっきの失言で頭が醒めないようで「ああ言われてみればですねえ」なんて言っている。 「そういえば”魔弾”のザミエルさんも大学選抜にいらっしゃらなかったですしね」 「誰それ」
13 17/10/27(金)23:24:53 No.462009711
「黒森峰の名狙撃手ですよ。まほさんの先代の先代の副隊長、でしたっけ。”魔弾の射手”って戯曲に出てくる、百発百中の悪魔の名前でしたね」 「数葉さんは訓練はやってるけどね。もう表舞台に立つ気はないみたい。あとその呼ばれ方あんまり好きじゃないみたい」 優花里の知識に細くするみほに、杏は干し芋を食べながら呑気な声を出した。 「結局西住流って全国にあるし、むかーしからやってる実力者もたくさんいるから、選手になるって選択肢が重いんだよねぇ。気軽に出来ないっつーかさ」 暗い表情になるみほに、杏は首を横に振る。 「でもそれって黒森峰だけの特徴じゃないじゃん。まだ練習場とか豊富なだけ西住流のがマシだって」 「そうなんですけど、もっと戦車道が身近になってもいいと思うんですよね。気軽にみんなが楽しめる方法とか……」 沈思するみほのもう片側に優花里が腰掛ける。 「タンカスロンとかですか?」 「野試合も結局、ゼロから始めるって難しいから。例えば学生時代ちょっと囓って、それから三十歳くらいになってまた始めよう、って言ったとき出来るかな」 「あ、それは」 優花里の声はしなしなとする。みほは訥々と語る。
14 17/10/27(金)23:25:20 No.462009804
「戦車を手に入れるのもメンバーも。きっと学生時代以上に難しいと思う」 「アラサー&パンツァーか。いんじゃない? そういうのも」 杏は満面の笑みを浮かべる。 「ただそうなると、戦車道の実力以外のものが必要になるねい。将来のテーマにしても面白いかもしれない」 ただの雑談が、ずいぶんすごいところに広がってしまって、みほは力なく笑う。 自分がやりたい戦車道は見えてきた。 でもそれがどこまで繋がっているのかまでは、まだみほには判らない。 そのとき喧しい声が廊下から響いてきた。 「あらあら。河嶋さん、どうしたんでしょうか」 廊下の向こうから響いてくる声に華が小首を傾げる。沙織はすぐに気づいた。 「ああ、お客さん連れてるんだ」 電気ポットに水を加えるために立ち上がると同時に、ガラッと生徒会室のドアが開いた。 「やっほー!」 「遊びに来ました」 「いまー、おやつ食べてるんですかー?」
15 17/10/27(金)23:25:53 No.462009932
「あのね! 桃ちゃん先輩と会ってね!」 「……」 「すいません皆さん。おじゃまします」 澤梓が頭を下げる。そこには一年生に囲まれる河嶋桃の姿があった。 「……まったく! 折悪くこいつらに見つかったせいでとんだ散財だ!」 「桃ちゃん先輩がケーキ屋さんの前で立ち止まっていたのが悪い!」 両腕を上げる阪口桂利奈に、そうだそうだの大合唱が続いた。無口な丸山紗希まで手を挙げている。梓は苦笑して肩をすくめてみせた。 「体力作りのトレーニングで、学校周りをぐるっと回っていたんです」 「それでみんな体操着なんですね!」 優花里がパンと手を打った。みずみずしい素足が赤い短パンからスラリと伸びている。元気いっぱいの一年生に相応しい格好かもしれない。 「買い物してるのをじっと見つめてた六人に、シュークリームでも買ってやろうかって言ったのは、桃ちゃんなのよね」 遅れて入ってきた小山柚子に、河嶋は、よけいなこというな! と声を上げた。 「くせになる! いつもいつもと思って貰っては困るぞ! 大体うちの学園艦は貧乏なんだからな!」 「え? 生徒会費でお菓子買ってるんですか?」
16 17/10/27(金)23:26:16 No.462010038
尋ねたのは宇津木優希だ。とろんとした甘い声に、これは桃ちゃんのお小遣いで買ったのよ、と柚子。 「ちょっと大事な話があったから、みんなにも聞いて貰いたいしね」 「ああ、そうだ。大叔父から聞いたんだが、聖グロリアーナが……」 話し始めた河嶋を止めたのは杏だ。 「それ、もう西住ちゃんから聞いた」 「え? 誰からだ」 「愛里寿ちゃんから電話があって」 「島田が?」 いぶかしげな顔をした河嶋がふと華の座る机の上を見て、大げさに驚いた。 「五十鈴……お前、自動車部にこんなもの買ってやって、いいと思ってるのか!」 「いいじゃないですか。ずいぶんユニークだったもので」 にこにこする華を河嶋は睨む。覗き込んだ柚子はじっくり見つめた。 「サンダースのお古なんだね。桃ちゃん、値段もずいぶん安いよ」 「そんなことは判ってる! しかしここはちゃんと予算をわきまえてだな!」 「まーまー、かーしま。これからは次の世代に託して、我々は静観しよーよ」
17 17/10/27(金)23:26:51 No.462010177
「……ですが」 「引退した人間は、もう口出しする権限ないんだよ。見守るしか出来ないのさ」 やったあシュークリームシュークリームとはしゃぐ一年生に、沙織は「ちゃんとお礼言った?」と尋ねる。麻子は自分の分のお茶菓子があるか意地汚く見ていたのを、みほに見られて慌ててそっぽを向いた。そこに優花里が耳打ちしてみほは「そうだね」と言った。 「直接電話してみよう。 華さん。電話借りるね」 どうぞ、と差し出された据え置き電話のホットコールのボタンを押したとき、杏は妙な顔をした。 「なあかーしま。おまえの大叔父さん、聖グロリアーナの教師なんだよな」 「はい。練習試合の取り付けのときも取り次ぎを頼みました」 「何故その叔父さんがお前に連絡を取るんだ? OGの話だろう?」 「ええ。OGの話です。なんでも昨日――」 「もしもし」 みほの声で、周囲は静まりかえった。事情がよく判らない一年生も黙って大洗戦車道隊長の電話する姿を見つめている。 「なんか小耳に挟んだんだけど、そっちはなにかあったの?」 『ええ、まあ、なにかあったというか』
18 17/10/27(金)23:27:35 No.462010343
オレンジペコが困ったように言った。 『あのですね。わたしの隊長就任に物言いがついたんです。 先輩方が昨日、わたしを隊長にするのはダメだと乗り込んできたんです』 (続く
19 17/10/27(金)23:29:22 No.462010752
su2080066.txt 昨日のtxtプラスになります 次回は明後日予定です
20 17/10/27(金)23:35:30 No.462012103
>けじめつけさせましょう! 指一本置いてかせましょうよ! これルミさんの気がする
21 17/10/27(金)23:43:57 No.462013932
>なあかーしま。おまえの大叔父さん、聖グロリアーナの教師なんだよな そう言われてみればそうだった
22 17/10/27(金)23:45:23 No.462014269
あの落ち着いてる様に見えて根っこは桃ちゃんと同族な…
23 17/10/27(金)23:45:33 No.462014304
アラサーさん!
24 17/10/27(金)23:48:17 No.462014925
>そう言われてみればそうだった オリジナル! オリジナル設定です!!
25 17/10/27(金)23:49:16 No.462015133
役職を解かれて逆に自信を取り戻す この場合は自身かな? 身も心も全てが選抜の穂村ではなかったのだ
26 17/10/27(金)23:49:48 No.462015259
桃ちゃんが先輩してるのいいよね…
27 17/10/27(金)23:53:07 No.462015947
ダーさん達増援組の出発を見ながら大洗を心配して「桃…」って呟く河嶋教授だ
28 17/10/27(金)23:54:26 No.462016238
>お母さんが作戦計画を立ててたんだよね ずるいと思ったけどスポーツなら監督が作戦立てるのは普通か
29 17/10/27(金)23:55:52 No.462016546
多分黒森峰の学園長に十年前 「西住しほ君 黒森峰戦車道は廃部だっ!」って言われた
30 17/10/27(金)23:56:17 No.462016646
>桃ちゃんが先輩してるのいいよね… レジ前で店の外からの視線を感じながらボソッと追加でシュークリーム頼む桃ちゃんとそれ見て微笑む柚子ちゃん想像しやすすぎる…
31 17/10/27(金)23:59:32 No.462017314
サバイバルウォーで見守る笑顔やエキシビションと愛里寿ウォーでのやり取り見てるとウサギさんチームと桃ちゃんの関係って何か暖かい雰囲気があって好き
32 17/10/28(土)00:02:02 No.462017845
弄りやすい先輩とはつまり一緒にいて楽しい先輩ということで後輩は懐く
33 17/10/28(土)00:04:09 No.462018234
>弄りやすい先輩とはつまり一緒にいて楽しい先輩ということで後輩は懐く おかーさん型先輩が竿りんなのに対しておねーさん型先輩が桃ちゃんだよね…
34 17/10/28(土)00:05:23 No.462018477
劇場版のさーよーならーのシーンで駆け出すウサギさんに最初に反応して止めようとするのも桃ちゃんじゃなかったっけ?
35 17/10/28(土)00:06:44 No.462018739
左様
36 17/10/28(土)00:09:26 No.462019326
これOGの物言いの道具というかいちゃもん付ける為だけに立場上対抗馬にされたルクリリさんが面倒だなぁってなってるやつだな…
37 17/10/28(土)00:10:51 No.462019611
「澤、オレンジペコの事が心配なのか?」 「私には戦車道チームという家があって河嶋先輩や西住隊長という姉がいます…でも、今のペコには…」 みたいな郷秀樹と伊吹隊長みたいな澤桃もいいと思うんですよ
38 17/10/28(土)00:12:35 No.462019946
>郷秀樹と伊吹隊長みたいな澤桃 わかるけどたとえが古いな!?
39 17/10/28(土)00:14:49 No.462020435
俺はHTC2での 「澤ー!お前だけが頼りだ、私は好きだぞ」が気にいってるんスよ