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    17/10/17(火)12:27:14 No.459958608

    川の流れの中を、縫う様に人の手が流れてくる。 人の右手の、手首から先に見えた。それはそして無闇に美しかった。 陳腐な例え方で言えば、白魚の様なーーそんな指が実在するかは知らないが、それは真に人間離れした艶やかさであった。 だが仮に人間の物でないならば何物でもない、やはり人の手であった。 少年が虫取り網を振り回してこちらへ走ってきた。何かが重い羽音を立てた。 赤い甲虫。彼らは白い手の甲に群がり、表皮をかじる。背中がもぞもぞ蠢く。 忽ち彼らは皮を食い破り、隠されていた腐肉が顕わになった。 手が開いた、いや、肉が僅かに動いた。そして筋肉の間から這い出した緑色の蛆が甲虫達とまぐわう 。 厭らしいと思った。マッチをすり、火を近づける。 虫達がパチンと弾けた、続々と。私はその音を驚きを以て聞いた。 澄んでいた、そしてある種の強烈な威力を感じた。 私はその音に宇宙の開闢を見た。一つ一つ、弾ける度に、輪廻する命、虫達、そして私自身を見つけた。 ところで少年には右手が無かった。彼は水上の右手を拾う、と足を滑らせ川に落ちた。 右手は水の上をどこまでも緩やかに過ぎてゆく。 彼は動かない。冷たくなっていた。