17/10/11(水)19:48:21 デート... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1507718901957.jpg 17/10/11(水)19:48:21 No.458758895
デート ストーキング デート 「オレンジペコ」 はいはい来ましたよ、これは。 オレンジペコはにっこり笑った声の主を見た。紅茶のカップを手に、ゆったりとソファに腰掛けるのは聖グロリアーナ女学院、生徒筆頭であるダージリンだ。 「聞いている? オレンジペコ」 「はい、なんでしょうダージリン様」 にこにこしながらオレンジペコは、どう聞かない振りをしようかとお腹のなかで考えている。中等部からの付き合いがある、ダージリンの思いつきが不穏なときは、いつもこんな感じの声だ。もっともそれは彼女も理解していて、どうペコに「わかりました」と言わせようか狙っている。 選ばれた者だけが入ることを許される”紅茶の園”その蔓薔薇の部屋で午後の紅茶を嗜むダージリンとオレンジペコだった。 「明日、一緒にお出かけしない?」 「お断りします。その代わり一緒にバックギャモンでもしましょう。ガイスターもいいですね」
1 17/10/11(水)19:48:52 No.458759007
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2 17/10/11(水)19:49:38 No.458759176
しれっと誘いを打ち切って涼しい顔をしているペコに、ダージリンは言った。 「楽しいわよ? デートで二人きりの時間を味わう喜びを、一緒に堪能するの」 回りくどい謎めいた発言でオレンジペコは確信する。 「悪趣味です」 「どうして? たまたまわたくしたちの前を、アッサムとローズヒップが歩くだけよ」 「それが悪趣味だと言うんです。人はそれを、つけているというんですよ」 「”恋はまことに影法師。いくら追っても逃げていく”」 「シェイクスピアをひいてきてもダメです」 ピシッと突っぱねると、がくっとダージリンはうなだれて、弱々しくハンカチを取り出し目に当てた。 「わ、わたくしは、ただ、休日を二人で過ごしたいだけなのに……」 たぶんこれはこの人の本音だ。オレンジペコはわかっている。だからその傍らに腰掛けて、肩に手を回していった。 「それはきっとアッサム様とローズヒップさんも同じですよ。だから、ね?」
3 17/10/11(水)19:49:57 No.458759243
「しらない! ペコなんてしらない!」 ちゃっかりオレンジペコの胸元に頭を寄せてふるふると首を振ると、甘いにおいが立ちこめる。先輩の、ミルクと蜜と花の香りが混ざったようなにおいをお腹いっぱい吸い込んで、オレンジペコはため息をつく。 押し切られるのも時間の問題だった。 ◆◇◆ アッサムとローズヒップが映画を観に行くという話は、一ヶ月程前から囁かれていて、いまだに行っていないことがおかしいくらいだった。 嬉しいことがあると全身で喜びを表現するローズヒップでさえ、とても冷静な笑顔で。 「今週映画観に行きますの」 と口にした。オレンジペコの隊長就任の手紙の整理をしているときだった。各校と関係者に送るものだ。OGの方々に送付する分もある。 首元にまとわりついてきた長いお下げを払って、ルクリリは言った。 「ニルギリ。あなたちゃんと”清教徒”のとこにお礼状入れておきなさいよ。書いてたでしょ?」
4 17/10/11(水)19:50:16 No.458759319
「え? ……やっぱり私、クロムウェル派作らないといけないんでしょうか」 大会でクロムウェルの使用をOGから特別に許可されたニルギリは、眼鏡の奥から情けない視線を向けてきた。オレンジペコは微笑する。 「約束したのはダージリン様ですし、あの方がなにを考えているのかはわたしにもよくわかりません」 「ですよねー」 ほっとした顔のニルギリはさておいて。ローズヒップはデートのメニューを上の空で口にする。 「その後、ケーキを食べながらお紅茶を。それから……」 「本屋に寄って、戦車道の本を選んで、一緒に帰ってくるんでしょ? 知ってるわよ」 ルクリリがちょっと肩をすくめる。 「先月から言ってるじゃない。別に映画行くことが目的じゃないんだから、さっさと行ってくればいいのに」 「そうでございますわねえ。いまこうして決まっても、なんだか頭がふわふわしてますのよ」 青い三つ折りのパンフレットを封書に入れながらローズヒップは応えた。 「戦車道大会が終わった辺りに、アッサム様が声を掛けて下さったんですわね。それからつい今週まで放置プレイですもの。いまでも夢のよう」
5 17/10/11(水)19:50:31 No.458759374
最近ちょっと彼女は大人びて見える。人形っぽいというか。魂が吸われているというか。 「アッサム様は罪な御方ですね」 ニルギリは中身をちらっと確認して、封をのり付けする。 「ローズヒップさんをこんなになるまで待たせて、平気なんですもの」 「まあ! 仕方ありませんわニルギリさん。エキシビジョンとか大洗の件とかいろいろありましたもの」 抗議、というよりさも驚いたというふうにローズヒップは言った。ルクリリはOG用の手紙を確認し、封書に詰める。重なりあうそれを一つずつとっては、オレンジペコが蝋燭の蝋を垂らし刻印を押していく。 「楽しいデートになるといいですね、ローズヒップさん」 オレンジペコは当たり障りのないエールを送った。そこを冷やかすのがルクリリだ。 「ま、ダージリン様とオレンジペコみたいに中等部から一緒だと、その辺は余裕よね。 ホットボコとか」 「ルクリリさん」 余計なことを言い出したルクリリのせいで、オレンジペコの脳裏に封印していた記憶が蘇る。
6 17/10/11(水)19:50:53 No.458759456
「羨ましいですわ。中学時代のダージリン様って、いったいどんな感じだったんですの?」 ローズヒップの表情がキラキラッと光った。ぼーっと物思いにふける彼女よりも、いつものローズヒップらしい。ルクリリからの不意打ちに頭が混乱しかかっっていたオレンジペコが「そうですねえ」と口走っていた。 「冷たい人だな、って思いました。得体がしれないっていうか、なんていうか……」 そうだ。 オレンジペコはダージリンのことを、冷たい人だと思っていた。 ◆◇◆ 「来たわね」 そうダージリンは囁く。 「来ましたよ」 オレンジペコは応える。 二人は既に映画館の前の喫茶店で陣取ってモーニングティーを嗜んでいた。 鳥打ち帽に分厚い眼鏡。二人のなんちゃってシャーロック・ホームズは、無事気づかれず監視する。 学園艦は小さな街だ。生活の為だけでなく、娯楽施設も用意されている。この映画館はきちんと最新作が回ってくる貴重なもので、ただしアニメの類いはなかなか回ってこないことでも有名だ。
7 17/10/11(水)19:51:12 No.458759532
落ち着いたコンクリート造りの劇場に集まる老若男女。そこにチラリと見知った影を見つけて、乾いたサンドイッチをオレンジペコは口に詰め込んだ。 「ふぁいいまひたね」 「ふぉにょにょーにぇ」 二人で紅茶を煽って喫茶店から飛び出す。実際はもう二人分の席をとってある。最後尾の席だ。今はインターネットで予約出来て便利。ちなみにさっきの会話は、入りましたね、そのようね。 「追跡よ」 わくわくした声でダージリンはうろうろする。予約をとったのはいいものの、どうやってチケットを手に入れるかわかっていないのだ。オレンジペコはそっとスマートフォンを取り出すと、端末機にあててピピッした。 「ペコ、ペコ」 ダージリンは肘でつつく。ローズヒップがアッサムにポップコーンを買って貰ったのを見つけたのだ。 「仲良しいいわね。ね、ペコ。あれを二人で食べるのよ」 「……キャラメルと塩と、どっちがいいですか」 オレンジペコの質問にダージリンは小首を傾げる。 「わたくし、自分が食べたくていうわけじゃないのよ。ただ……」
8 17/10/11(水)19:52:21 No.458759806
「キャラメルと塩、どっちがいいですか。わたしはキャラメルがいいと思います」 「ごちそうしてくれるの?」 ダージリンの目がキラキラと輝く。どれだけ興奮しているのやら。 「わたくしもキャラメルがいいと思っていたの。どうしてそれがわかったの?」 「どうしてもなにも」 オレンジペコは照れ笑いをする。どうせダージリンはアイスティーを飲むに違いない。それなら甘いものだろう。こうしたとき素直に甘えてくるのがダージリンのいいところだ。 「そういえばペコ」 館内の座席に腰掛けて、ダージリンは囁いた。 「わたくしたち、映画館デートって初めてよね」 「ですね」 オレンジペコは頷いてポップコーンをかじった。 「わたしたちはいつもちょっと気取ってましたから」 「そうね。確かに映画館でポップコーンなんて俗ね」 ダージリンはそういうとアイスティーを口に含んで言った。
9 17/10/11(水)19:52:43 No.458759890
「”人生の目的は行為にして思考にあらず”俗は俗として楽しみましょう。 今度改めて、二人きりのデートもいいわね」 オレンジペコは力なく笑う。 つまりこれはやっぱりあくまで、アッサム様の監視なんですねダージリン様。 * 初めて会ったダージリン様は今と変わらず美しくて、そしてどこか冷たかった。 それは元々そういう人物だかららしく、誰かが言うように進級された先輩のことを恋い慕うからというのも理由かもしれない。鋭利な視線と引き結ばれた唇。両のお下げに結われた金色の髪は、来年のいわゆる聖グロリアーナ結びを意識しているのかもしれない。お下げを特殊に編み込んで、上級生は髪型を作る。 そんなダージリンがオレンジペコに話し掛けたのは、六月のある日のことだった。 「ねえあなた。ずいぶん綺麗な装填をするのね」と。 まだ互いに、本名で呼び合った頃だった。 ◆◇◆
10 17/10/11(水)19:53:13 No.458759997
映画の後、アッサムとローズヒップは館内の階段を上り、大扉から出て行った。人はそこそこ入っていて、盛況な上映だった。ダージリンとオレンジペコは静かに後をつける。 お揃いのチェックのスーツはまるで姉妹のようだ。時折建物の陰に入って、話し込む二人を観察する。 「お昼はどうするんでしょう」 オレンジペコにダージリンは「さあ」と返事した。 「先に本屋に向かうのかもね」 ところが向かった先は雑貨屋だった。おしゃれな文具も置いてある場所。それから紅茶専門店に入り、アクセサリーの豊富な別の雑貨屋へ。 「ダージリン様」 「なあに? ペコ」 「あの。そろそろわたしたちも、別行動しませんか?」 くいくい、と袖を引っ張るオレンジペコを、ダージリンはきゅっと睨み付けた。 「それはダメ」 「どうして?」 「だって、アッサムが困ると……かわいそうじゃない」 ついにたまらずペコがダージリンの土手っ腹に指先を突っ込む。甲高い声を上げて慌てて口を塞ぐダージリン。 「ちょっとペコ! なにするの?」
11 17/10/11(水)19:53:55 No.458760170
「ダージリン様はアッサム様を侮り過ぎですよ!」 大通りから入り込んだ路地で、オレンジペコは食ってかかった。 「あの方はあなたと同い年で、ちゃんとした方です。心配しなくてもちゃんとローズヒップさんと楽しいデートをなさいますよ」 「……そうね。でも、もうあの二人が一緒にこの学園艦にいられるのって、あと半年くらいなのよ?」 寂しい言葉に、オレンジペコはぐっと口をへの字に結んだ。 「それってわたしたちも同じですけど」 「あら、ペコ、それは違うわ」 ダージリンは小さな声で囁く。 「わたくしとペコは卒業しても一緒だもの」 唐突な言いように、オレンジペコはかわいらしい太眉の間に一本の深い皺を作った。なにを言ってるんだろうこの人は。けれどダージリンはそんなの全然関係なしに歌い上げる。 「朝、わたくしが目を覚ますと、あなたがおはようのキスをくれる」 「ちょ!」 「そして二人で朝ご飯の支度をして、今日のスケジュールを確認。行ってきますのキスをして出かけるのよ」 「まっ」
12 17/10/11(水)19:54:36 No.458760343
「仕事の手を休めたときにはあなたとSNSでおしゃべり。もちろん友達はあなたもわたくしもお互いだけじゃないから、必ずしもそうはいかないでしょうけど、週末には二人が好きなお菓子かお酒を持ち寄ってパジャマパーティー」 「だ!」 「そりゃあこれから何があるかわからないけれど、なにもなければこれはきっと確実だわ。 オレンジペコ。わたくしはあなたを信じてもいいのかしら?」 「わたしのこれからがどうなるのかわからないのに、勝手に予定を立てないで下さい!」 手から汗が出る。それはダージリンの手をしっかり握っているからで、涙がこみ上げそうになる。ダージリンがチラチラと雑貨屋を伺っているのも気に入らない。 でもダージリンの告白を聞いて、膝が笑って仕方ない。小刻みに震える指先が、嬉しいって言ってるみたいで恥ずかしい。 「いいですかダージリン」 がぶり寄りみたいにダージリンを路地の壁に追い詰めて、オレンジペコは背伸びをする。 「わ、わたしだってこれから、運命の後輩に出会うかもしれないし、結婚だってするかもしれませんよ」
13 17/10/11(水)19:55:20 No.458760541
「でも、そんなアクシデントがあっても、わたくしとペコは一心同体共同体だもの。アッサムとローズヒップがわたくしたちのレベルまで来てるかどうかは、まだわからないわ」 「余計なお世話ですよ!」 ダージリンの肩に頭を乗せる。心臓がバクバク言ってる。 「わたしだって、あなたと二人きりで過ごしたい」 「ペコ……」 そっと二人の唇が触れそうになったその瞬間だった。 「やば!」 「バレた!」 路地の向こうにちらっと人影が見えた。 「ペコ!」 「はい!」 「追うわよ!」 さっきまでのときめきはどこへやら、二人は猟犬となって走り出す。逃げる二人は黒いスーツにサングラスで、これまた諜報員丸出しの装いだ。きゃーっと声をあげる二人はたちまち襟首を捕まえられる。 「ルクリリ! ニルギリ!」 ダージリンの声に二人が縮こまる。
14 17/10/11(水)19:56:00 No.458760706
「何故あなたたちがわたくしたちの後なんかつけていたの?」 ダージリンの冷ややかな声を、オレンジペコもとどめるつもりはない。キスしそうになる瞬間なんて、人に見せたいものでもない。困った顔のルクリリがニルギリをちらっと見た後で「実は」と告白する。 「あの、アッサム様が、ダージリン様とオレンジペコが絶対明日つけてくるから、それを写真に撮って見せてと依頼してきたんです」 「あの二人のスパイぶりは、さぞかわいいでしょうから、とその――」 ダージリンの頬に赤味がさして、それから大きなため息が出た。 「つまりきっとわたくしたちがあなたたちの尾行に気づくまでも、アッサムの計算のうちだったってことね」 「はい、そして」 ルクリリはさっとスマートフォンをダージリンの前に突き出した。 『尾行がバレたら、私たちに連絡すること。これも全部計画通りよ、ダージリン』 「アッサム!」 『合流してみんなでお茶をしましょう。グループデートも楽しいでしょう?』 「ぐる!」 窒息しそうになったのはニルギリだった。 「でーと!」
15 17/10/11(水)19:57:18 No.458761029
「……そんな、よろしいんですかアッサム様。お邪魔するような真似をして」 心臓をバクバクさせるニルギリを尻目に尋ねる、オレンジペコに応えたのは、いつもの元気いっぱいのローズヒップの返事だった。 『申し訳ないもなにも、監視付のデートよりはマシですわ! たっぷり奢って貰うつもりですから、覚悟なさいまし!』 ◆◇◆ 六人で合流して、スポーツバークリストファー・ロビンに向かう。ポピンズがしばらく休みの看板を出していたからだ。クリストファー・ロビンは、昼は未成年歓迎の、蜂蜜ケーキでもてなしてくれる。 「そんなにわたくしたちのデートが気になるなら、皆さん初めからグループデートしようっておっしゃっていただければよろしかったのですわ!」 ローズヒップは遠慮なく五段重ねの蜂蜜パンケーキをパクつく。アッサムは四段重ねだ。生クリームをたっぷり絡めて頂く。 「ダージリンとオレンジペコは、私たちの心配をしてくれたのよ。なにせこの二人は中等部の時からの知り合いなのだから。 あの息のあった文化祭……素晴らしかったわ」
16 17/10/11(水)19:58:08 No.458761215
「ちょっとアッサム様」 「あれは確かに、なかなか傑作だったな」 「ルクリリ様も!」 慌てふためくオレンジペコに、どうしようかなと勿体ぶった表情でルクリリはジャンボホットケーキに切れ目を入れる。ニルギリとのシェアだ。あーんして、ニルギリの口に詰めるのが楽しいらしい。喉を詰まらせそうになりながらニルギリが尋ねる。 「ふぇ? なにかなさったんですか?」 「興味深い話ですわね」 ローズヒップが身を乗り出す。ダージリンはちょっとだけ眉を曇らせて、ふわふわ蜂蜜ケーキを一口分すくいとった。 「ちょっとした演し物よ。ね、オレンジペコ」 「私、思えばあれを見て大笑いしたのが、あなたへの興味の始まりだったのかも」 アッサムの思い出し笑いに、オレンジペコが引き攣った。そうだ。この人は確か、同じ中等部にいたのだった。ルクリリも同様。一方ニルギリとローズヒップは聖グロリアーナ系の別の学園艦。 「もっと冷たい人だと思ってた。それがねぇ……」 クスクス笑われるたびに、オレンジペコの頬が赤くなる。ダージリンとのキスシーンを写真に撮られる方が、まだマシだった。 *
17 17/10/11(水)19:58:57 No.458761422
ダージリンは冷ややかな人だった。 理性的で冷静で、格言でもって相手を黙らせる先輩で。オレンジペコは密かに慕っていた。 それがある日、ちょっといいかしら、と声をかけてきたのだ。 「あなたの装填はとても美しいわ」 優しい微笑を向けられたのがあまりに嬉しくて、ダージリンの口車にまんまと乗せられてしまったのだ。 二人で青い法被を纏う。頭にはねじりはちまき一丁。ふんどしを履こうという案は流石に却下した。ダージリンが何を考えているのかわからなかった。わかったけれどわからなかった。 体育館の舞台に据え付けられたのは17ポンド砲。文化祭のお笑いの発表にしては随分ものものしい装いで、ダージリンが叫ぶ。 「聞いて下さいまし。ショートケーキにコーラを合わせた方がいたんですの」 「なんですって!」 オレンジペコは装填する。 「おやりになるわね!」 ダージリンは砲座に就く。
18 17/10/11(水)20:00:04 No.458761686
「グロリアーナは黙って」 「ダージリン」 ドオオオオオオオオン! 「グロリアーナは黙って」 「ダージリン」 ドオオオオオオオオオオオオオン! 美しい装填である。 オレンジペコのキレのある装填である。 空砲とはいえ、17ポンド砲の大音量が体育館を震わせた。 周囲はぽかーんだった。口元には変な笑いが浮かんでいた。誰かが大きな声で爆笑していた。では、あれがアッサムだったのか。 呆気にとられた拍手のあとで、ダージリンは言った。 「ちょっと面白くなかったわね」 それからうっすら汗をかいた笑顔になった。 「シリーウォークにしておけばよかったかも!」
19 17/10/11(水)20:00:19 No.458761746
* バットを持ったプーさんの絵がプリントされたテーブルに、ニルギリとローズヒップが突っ伏した。アッサムは言う。 「ねえダージリン。もしかしてあなた、あれが原因でティーネーム決まったの?」 「まさか。アールグレイ様は初めからわたくしにダージリンを下さるつもりでしたわ」 「そうね。”鉄”のダージリン」 聖グロリアーナの威光を高めたとのことで、ダージリンには在学中に名誉の称号が与えられた。強く固く貫く鉄の女の称号。 「私たちの時代も、もうおしまいね」 しんみりした空気を壊すみたいに、ルクリリはニルギリにあーんさせる。後輩の一切れを頬張ったあと、わざとらしく肩をすくめて見せた。 「それにしても、楽しみでぼーっとしてしまうくらいだったデートに、とんだお邪魔虫で困ったでしょ、ローズヒップ」 「あ、いえ、そんなことは」 苦笑するローズヒップに、ニルギリも眼鏡の奥からからかうように目を細める。 「だって、デートの終わりにファーストキスとか、期待してたんじゃないの?」 「え? ファーストキスならもうすませましたわ」
20 17/10/11(水)20:00:37 No.458761805
あっけらかんとしたローズヒップに、ダージリンがフォークを落とした。目をパチパチさせてローズヒップは続ける。 「デートの予定が決まったあと、アッサム様が。楽しいデートになるといいわねって。 ああ! そうですわね。それでなんだか頭がぼーってなってしまって。わたくしったら、少なくとも在学中は、アッサム様からキスして貰える立場になったんだなって思うと、なんだか嬉しくて。 それで別にデートはついででもいいかなって気持ちになったんですの。もちろん、二人でお出かけっていうのは特別ですけどでも」 「ステイ、ローズヒップ。ステイ」 アッサムが顔を隠す。でも隠し切れてない。耳までが赤い。ローズヒップはアッサムがなんでこんなふうになっているのかいまいちわかっていない様子で、ルクリリやニルギリは開いた口が塞がらない。 小さな咳払いのあと、ダージリンはアッサムの肩に手をかけた。 「安心したわ、我が右腕。 あなたがちゃんとした砲手だって、わたくしもよく知っていたはずですのにね」 アッサムは震える。 「だ、ダージリン! うるさいわね!」
21 17/10/11(水)20:01:03 No.458761899
ぱっと開いた顔は、笑い出しそうな怒り出しそうなちょうど天秤がゆらゆらしている顔で、いつも冷静沈着なアッサムがこんな真っ赤な顔をしているのは初めて見る。 「そ、そ、それ以上言ったら、ぶ、ぶっとばすわよ!」 ダージリンは笑って力一杯ハグをして。 「すいませーん」 オレンジペコは軽く手を挙げる。 「フォーク、代わりをお願いできますか?」 半泣きのアッサムがダージリンにハグ仕返すとき。 ローズヒップは背中からもたれかかって、先輩の頭をぽんぽんって慰める。(了
22 17/10/11(水)20:02:29 No.458762209
su2059596.txt テキストです アレは入れようかどうか悩んで、入れました やっちまったなぁ!
23 17/10/11(水)20:08:08 No.458763477
愉快な紅茶一家過ぎる…
24 17/10/11(水)20:15:39 No.458765248
クロムウェル係は大変だ 派閥と言おうにも人数が少な過ぎて存在感が無いし 去年あれだけクロムウェルで暴れたアールグレイも公式大会ではチャーチルに乗ってたからとちゃっかりチャーチル閥に収まってるから後援も望めない
25 17/10/11(水)20:18:06 No.458765893
なければ作ればいい ニルギリ! クロムウェル閥!!
26 17/10/11(水)20:19:22 No.458766170
あ ボコのお面被って17ポンド撃つって書き忘れてた ホットボコ
27 17/10/11(水)20:19:43 No.458766259
心せよ 汝が友人をストーキングする時友人もまた汝をストーキングしているのだ
28 17/10/11(水)20:23:02 No.458767025
ペコちゃんの装填は優雅だからな… 一度見たら忘れない
29 17/10/11(水)20:31:03 No.458768957
心ここにあらずなヒップは想像してみるとなかなか美人さんだな…
30 17/10/11(水)20:40:28 No.458771245
>ホットボコ あぁ! クールポコに対してのホットボコか!
31 17/10/11(水)20:42:31 No.458771734
なるほどなぁ そういうことか