17/09/06(水)23:15:22 SSです ... のスレッド詳細
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17/09/06(水)23:15:22 No.451258064
SSです 苦手な方はご注意ください
1 17/09/06(水)23:15:46 [1/9] No.451258166
そろそろ今日最後の休み時間が終わる。 行かなくちゃ。そう決意を固めて、呼吸を整えて廊下に出る。 しかし緊張で汗ばんだ手のひらが気になり、水道で一度洗って拭き上げる。 ハンカチを仕舞い終えて教室に向かうと、西住さんが武部さんと五十鈴さんと一緒に歩いてくる姿を見つけた。 私は頑張って笑顔を作り弱々しく右手を上げ、声を掛けようと口を開く。 「西住さん。もし可能なら今から私も友達と一緒に戦車道を履修したいんだけれど」 そう告げるだけでいい。自室で何度も声をかける練習だってした。 しかし、その口からは挨拶すら出てくることがない。 もう全国大会の一回戦も終わり、二回戦のアンツィオ高校戦も近づいている。 「また声をかけられなかった…でも次は頑張るんだねこにゃー!」 そう声に出し意気込んではみるものの、結果を思うとただの現実逃避にすら思えてくる。 私は自己嫌悪の重さで背中をより深く丸め、とぼとぼと教室に戻る。 ネット上でなら、あの二人とならいくらでも話せるのに。 どうして現実だと声を出す事も出来ないんだろう…。
2 17/09/06(水)23:15:53 No.451258200
どう注意すれば良いんだ?
3 17/09/06(水)23:16:02 [2/9] No.451258241
春にあった選択科目の説明。その時に戦車道が復活したと聞き、私は大いに奮い立った。 ネットゲームの中だけではなく、自分自身で戦車を動かせる! 授業が終わればそそくさと家に帰ってゲームをする、それが色あせた青春だとは思わない。 ただ、現実でもそんな事が出来るんだと喜んで選択教科の用紙に名前を記入する。 しかし書き終えて冷静になると、ひとつの問題点に気付いてしまう。 ゲームとは違い、現実では参加者全員はもとより戦車内で他のメンバーともコミュニケーションが必要ではないか。 クラス内ですらろくに話した事のない私が、知らない人たちとやれるのか? そう悩んだ結果、好奇心よりも怖さが膨らんでいった私は別の科目を履修する事にした。 ネットゲームで知り合ったぴよたんさんとももがーさんのお二人も同じらしく、「怖いよね」「戦車内で合わせられないと潰れちゃいそう」などと傷を舐めあった。 これからもこうしてネットゲーム上で仲良く出来ればいい。私たちはそう語り合った。
4 17/09/06(水)23:16:26 [3/9] No.451258342
しかし、一回戦。サンダース大学付属高校との試合で私達の気持ちが揺り動かされる。 中継を見ていた私たちは、その夜大いに盛り上った。 「凄かったね、最後の狙撃」 「隊長の西住さん以外は初心者でしょ?いきなり勝利だなんてありえなくない?」 「皆初心者なら私達でもできるのかな」 「二人とならリアルでも話せるだろうし、私達三人で乗れるならやってみたいなぁ」 私自身、その場の盛り上がりで口にした冗談半分の言葉だった。 「それ、いいね。それなら私達でもやれそうじゃない?」 ももがーさんがノッて来る。 「戦車ってまだあるのかな。せっかくなら参加くらいならしてみたいかも」 ぴよたんさんまで…?私は慌てて発言を取り消そうと打ち込むが、「そうなれたらいいな」という気持ちに負けて書き込んだメッセージを送信することが出来なかった。 書き込んだメッセージを消去し、私はどこかわくわくしながら書き直す。 「じゃあ、話すだけ話してみよっか。まだ話した事は無いけど西住さんとは同じクラスだから話すチャンスはあるし」 「そっか、じゃあお願いするね。もしそうなったら私達のオフ会も兼ねて初対面かな?」 「あはは、楽しみだね」
5 17/09/06(水)23:16:43 [4/9] No.451258429
そんな風に話していたのに、私は参加を伝えるどころか声をかけることすらできなかった。 私は二人に申し訳無さと情けなさで背中を丸めながらパソコンを起動する。 既に二人はログインを済ませており、私は失敗した事を伝える。 「…と、いうわけで無理でした。申し訳ないです」 私は今回も残念な結果を報告する。 「話しかけるのって勇気がいるよね。次頑張ればいいっちゃ」 ぴよたんさんがそう慰めてくれる。 「でも変わらないと夏が終わっちゃうよね…」 そう弱音を吐いてしまうが、いい案は浮かばない。 あと一歩を踏み出せないもどかしさを感じながら、全国大会二回戦の日は近づいていた。 試合の直前に参加するのも失礼かもしれない。 そんな後ろ向きな考えばかりしてしまう私は、チャットでも打ち込む量が減ってしまう。
6 17/09/06(水)23:17:00 [5/9] No.451258512
口数が減ってしまうことへの気まずい雰囲気を私自身が感じてしまう中、ももがーさんが「今のままで駄目ならキャラを作ったらどう?」という奇抜なアイデアを出してくれる。 「キャラって、どういうこと?」 私は藁にもすがる思いですぐにそう飛びついた。 「語尾とか、自分じゃない何かを演じたら怖がらずに話しかけられるんじゃないのかなって思ったんだけれど」 「私はももがーだからもも。ねこにゃーさんはねこだからねことかにゃー。ぴよたんさんはぴよ。こんな感じ?」 「そうそう、安直でも演じたら変われるかなって思ったんだぴよ」 「あはは、それならかわいいにゃー」 「…語尾にももってだけだと苦しいからナリとかも混ぜていくもも」 「これならやれそうだにゃー!流石に試合直前に言うのも失礼だろうし、一回戦でもし勝ったら行ってみるにゃー!」 「その意気だっちゃ!一回戦の応援もこれで頑張るぴよ!」 「そうもも!ねこにゃーさんならやれるナリ!」 そう二人に応援をされた私はゲームを終えた後にまた話しかける練習をする。 今度こそ。キャラを作って自分を演じてでも話しかける。 そんな願いを込めながら、西住さんに話しかける案を練る。
7 17/09/06(水)23:17:24 [6/9] No.451258625
三人で話し合い、勝負は二回戦の後にすることとなった。 敗退してしまえばもちろん参加は出来なくなる。 しかし二回戦までは時間が無く、もう一度参加表明するには既に履修している人たちに迷惑だと思った為の判断だ。 それまでにどうするか。私達三人は遊びながらもチャットで話し合い、対策を練る。 例えば一人称。 「私」という一人称も自信の無さからか声が小さくなるワードであると気付いた私は、その日からは私ではなく「ボク」にすると二人に宣言をした。 か細い声の「私」ではなく、力強い「ボク」。これならきっと怖くない。…それはきっと気休め程度なのだろうけれど、それでもいい。 帰宅したボクはすぐにPCを起動する。 「ごめんなさい、遅くなっちゃいました」 「語尾忘れてるぴよー」 「ごめんなさい、遅くなっちゃったにゃー」 「それでいいぴよ」
8 17/09/06(水)23:17:50 [7/9] No.451258723
「私はもっとパワーアップしたいにゃ!」 「でも、他になにか出来ることってあるナリ?」 私は鼻息を荒くしながらキーボードを叩く。 「一人称も変えようかと思うにゃ」 「私、じゃなくなるもも?」 「うん、ボクにしたら気持ちも強くなるかなって考えたにゃー」 「うん、期待してるぴよ」 「アンツィオはノリと勢いで楽しむって聞いてるナリ。ねこにゃーさんもノリと勢いでやってやるもも!」 「ありがとうにゃー。やってやるにゃー!」 「その意気もも!」 「ねこにゃーさんならやれるぴよ」 そうだ。ボクとももがーさんはまだ来年がある。でもぴよたんさんは三年生。三人でやるにはもう時間が無いのだ。 それでも不甲斐ないボクに任せてくれているのだから頑張らなくては。 この二人と、もっとたくさんの思い出を積み重ねる為にも。
9 17/09/06(水)23:18:15 [8/9] No.451258829
二回戦、大洗女子学園はアンツィオ高校を圧倒した。 これは勢いだけではなく実力があるのではないだろうか。 次の対戦相手となったプラウダ高校との試合も大番狂わせを起こせるのではないか。 大洗に住む方々だけでなく、戦車道に興味を持つ人たちがそんな議論をし始めていた。 曰く、ベスト4なだけでも奇跡だ。流石にプラウダ高校が相手では無理だろう。 曰く、黒森峰ならまだしもプラウダなら付け入る隙があるはず。 曰く、一発勝負では何があるかわからないし優勝だってあり得るのではないか。 私達が遊んでいるゲームのチャットでも例外ではなく、オープンチャットで同じ様に議論している人たちもたくさん居た。 その情熱に浮かされる様に、その日の私はやる気に満ちていた。 いつもより早く学校に登校をし、西住さんが来るのを待つ。 そして試合中とは違う柔和なその顔を見た私は西住さんの席へと足をすすめる。 「に、西住さん…」 声は小さいが、気付いてくれた西住さんがこちらを見上げてくる。 緊張で頭が真っ白になりかけるが、ボクは引かない。 ネットゲームで知り合ったまだ顔も知らない二人に後押しをされる様に言葉を紡ぐ。
10 17/09/06(水)23:18:42 [9/9] No.451258962
「ありがとう。戦車の数にも限りがあるけど、参加してくれるなら嬉しいな。とりあえず会長に話してみるね」 そう西住さんに答えられたボクは、残りの授業もうわのそらなまま過ごしふわふわとした足取りで帰宅をする。 自室に戻るとベッドへと飛び込み、重圧からの開放感と達成感を満ち溢れた感情を吐き出す様にゴロゴロと転がった。 うへへ、と漏れ出てしまう声を押し隠す為に枕に顔を埋める。 どれだけそうしていただろう。何時に帰ったのかも思い出せないので時計を見ても把握は出来ない。 吐き出しても体内から湧き出し続ける喜び浮かされ続けていた私は、ふとPCが目に入る。 そうだ、二人に伝えないと。 私はゲームを起動し、グループチャットに入室する。 「あ、おかえりぴよ。今日は来ないと思ってたっちゃ」 「今日は遅かったナリ。居残りでもしてたもも?」 二人からの声に対し、私はわざと遠回しにこう伝える。 「お待たせ。やっと会えるにゃ」 そう伝えたボクは、離席中のマークを付けて声を殺す為に布団へと戻る。 それから数分後、またPCの前に戻ったボクは二人からたくさんの祝福の言葉と宣戦布告のメッセージを見て腹を抑えながら笑い転げた。
11 17/09/06(水)23:20:42 No.451259477
この調子なら確かにぐふふうぇへへへへ言ってそうだな…
12 17/09/06(水)23:21:03 No.451259564
来たのか!
13 17/09/06(水)23:21:33 No.451259696
キモい
14 17/09/06(水)23:22:15 No.451259889
メーテル似の美少女がやってると思うとなかなかシュールな光景だ!
15 17/09/06(水)23:23:20 No.451260141
ここから最終的に筋肉さんチームになると思うと感慨深…い…?
16 17/09/06(水)23:30:33 No.451261919
いい...
17 17/09/07(木)00:04:18 No.451270152
前にメモ住で言ってた話書いたんだ よかったぞ
18 17/09/07(木)00:10:23 No.451271626
三式チトの前でメーテルとちっこい派手な子と巨乳人妻がオフ会するってのも中々いいやね
19 17/09/07(木)00:14:01 No.451272491
>どう注意すれば良いんだ? 奇天烈な格好して場違いな所でトンチンカンな事言うと皆に引かれるかもしれないからコミュ障は気をつけるんだ つまり勇気とノリと勢いだ