17/09/06(水)22:47:23 ガルパ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1504705643173.png 17/09/06(水)22:47:23 No.451250742
ガルパンSS ・姉の異常な愛情 または如何にして西住まほは戦車道に対して意義を感じる様になったか これまで su2012222.txt su2012225.txt
1 17/09/06(水)22:49:11 No.451251296
第六話 【私はもう怒った、耐えられない!】 -1- 一体全体私は如何してこんな所にいるのだろうか? 横には隊長が、そして正面にはずらりと多様な年齢の男女が……。 いや、年齢は多様と表現するのはおかしいだろう。 少なくとも50歳を超える方々だ。 いずれも小娘である私からすれば貫禄も自信も、そして何よりも放たれるプレッシャーが半端無い。 そんな方々と対等に……いや、むしろ上の立場の如く振舞っている隊長を横目に私は再び思う。 如何してこんな所にいるのだろう……。 副隊長の逸見とかを連れてくれば良いのに……。
2 17/09/06(水)22:49:30 No.451251419
-2- 「斑鳩、ちょっと付き合ってくれないか?」 隊長にそう声をかけられて私は「いいですよ」と気軽に返事をした。 だって、隊長のその軽い声のかけ様はまるで「ちょっと学校から離れた所に美味しいケーキ屋ができたんだ。一人で行くのも少し恥ずかしいし帰り道に一緒に寄らないか?」と言いたげな気軽さだった。 となれば別に大した用事もある訳ではないのだから条件反射で返事をしてもおかしくないだろう。 ところがだ。 私がそう返事するなり「良かった。では今日は公欠扱いになるからすぐに移動するぞ。もう迎えは来ている」とだけ伝えられ、連れて行かれるとそこにはヘリが待機していた。 一体何事かと目を白黒させている内に私はヘリに搭乗させられ、一般庶民の私にはどう表現すればいいか解らないが、如何にも高級そうな和風の料亭か宿の様な建物に連れてこられた。 そしてある一室に通されて今この現状という訳だ。
3 17/09/06(水)22:50:11 No.451251607
隊長が用意された座布団に正座をするのを見様見真似で私も正座をする。 その動作だけでも何度か失敗しそうになり、自分でも異様に緊張しているのが解る。 何故ならどう見てもこの人達が只者に見えない。 私の何倍もの人生を責任を負って成功を積み上げ自分に自信という物を感じている方たちだ。 そして実際に隊長から紹介されてそれは事実と判明した。 老齢の女性達は西住の重鎮、長老とも言えるような方達であり、男性達はこの熊本……いや、九州で聞けば誰でも知っているような企業の社長や会長と議員や首長であるらしい。 「まほお嬢様、今日はお忙しい中、我等の為に御足労いただきありがとうございます」 そう言いながら斑鳩の五倍は人生を積んでいそうな女性が深く頭を下げると、それに習う様に周囲の人間も頭を下げた。
4 17/09/06(水)22:50:27 No.451251695
「いえ、これも次期当主としての勤めです」 一泊置いてから隊長が声をかけると、それがまるで許しが与えられたかの様にゆっくりと彼女等は頭を上げた。 「お連れの方もようこそいらっしゃいました」 すると今度は先程の隊長ほど深く長くは無いが、それでもしっかりと私に頭を下げてきたのだ。 「え、あ、いや、そんな。あ、いえ此方こそ」 咄嗟の事であたふためき、支離滅裂な返答をしつつ自分の名前を告げながら私はガバりと頭を下げた。 下げた後に何だこの返答は。まるで意味が解らないと顔を赤くしたり青くしたりしたが、お歴々は一切気にしていないようだった。
5 17/09/06(水)22:50:44 No.451251772
それもそうだろう。 この人達は斑鳩という人物そのものには欠片も敬意を払っていない。 この場以外で出会ったのならこんな丁寧で下出に出るような態度を取る訳がない。 西住家の次期当主である御嬢様の御学友であり連れであるからこうした態度に出てるのだ。 私自身は面識がある訳でもないので当たり前である。
6 17/09/06(水)22:51:04 No.451251868
一方でそんな人達から下に置かぬ態度を取られながらもそれを当然の様に受け入れている隊長にやはり住む世界が違うのだなと強く実感した。 斑鳩も一般庶民であるから感覚としては解らないが、この九州で戦車道を歩み、黒森峰に在籍しているのだからある程度は理屈として知っていた。 西住家は元々古くからある由緒正しい武家である。 列記とした領地を持った大名であり、華族でもあった西住家は熊本においては間違いなく統治者であり支配者でもあった。 無論、日本においては昭和22年に法の下の平等と貴族制の廃止によって華族制度も撤廃されているし、華族だからと言って皆優雅な暮らしができる訳ではなく財政破綻によって華族の身分を返上する家も後を絶たなかった訳でもある。 しかし、西住家は自身の支配圏に強い影響力を残したまま家を存続させる事に成功した家であった。
7 17/09/06(水)22:51:19 No.451251938
戦前では広い土地を小作に貸し出す事で収益と影響力を確保し、戦後に農地改革が行われた時も山林を多く保有していたのでそれほど痛手ではなかった。 その後も、土木・建築・自動車・鉄道・電気機械・造船は勿論、その中でも二次大戦後に重工業を代表する基幹産業である鉄鋼業を飛躍させた造船に関してはいち早くその重要性を重視し、海に面している熊本の利点を最大限に活かした。 この時の保有会社、技術力、ノウハウを生かして国内でも最大規模の黒森峰学園艦を西住の主動で造船し、開校している。 また西住の保有する戦車の管理・保管・運用もそれら重工業の力が大きい。 それだけではなく金融・通信・輸送・保険・エネルギー産業といった企業もそうだ。 それらの会社は西住が創立・設立に関わっており、上層は関係者によって地位を占めているし筆頭株主でもある。 無論、政治基盤に関しても抜かりはなく、県知事や他の首長も基本的には西住の関係者かまたは息のかかっている者である。 大なり小なり西住の影響と支援を受けているのだ。
8 17/09/06(水)22:51:45 No.451252030
全国規模とはいえ戦車道流派としての収入だけであの経済規模が成り立つ訳がない。 こうした背景により、西住流は戦車道を過不足なく行えるだけの基盤があるのだ。 だからこそ自分達より遥かに若い娘に頭を下げ、尊い者として置くのだ。 こういう場面を見るたびに西住流の家元、即ち当主というのは単に戦車道が卓越していれば良い訳ではないのだなと縛全に思う。 この人達が隊長に敬語を使うのは義務である。 しかし、隊長がこの人達に敬語を使うのは義務ではない。 配慮なのだ。
9 17/09/06(水)22:53:27 No.451252493
-3- 「本日お越しいただいたのは他でもありません。 今年の戦車道全国高校生大会の勝算についてお聞きしたいのです」 「勝算……ですか?」 「はい、私達と言えども夢想家ではありません。 現実において全くの無敗とは行かない事は承知しています。 また、まほ御嬢様の力量についてもやはり疑う余地はありません。 しかし、それでもほぼ確実と言われていた去年は残念ながら敗退してしまいました。 それが不運によるものだという事も疑問の余地はありません。 それでも我等は不安に思ってしまうのです。 今年こそは無事優勝できるのだろうかと……。 小心者の要らぬ不安だとは重々理解していますが、どうかこの蚤の心臓を安心させてくださりませんか?」
10 17/09/06(水)22:54:18 No.451252712
先程から代表をしていた老婦人が静かに言葉を繋げた。 顔に刻まれた皺の数からすればそうとうな高齢だと言う事が覗ける。 しかし、着物に身を包んだその姿が正座をする姿はその年齢を一切感じさせなかった。 しっかりと折り曲げられた足とそこからピンと伸びて微動だにしない背筋。 少なくとも自分より遥かに美しい正座である。 今でこそ話し口調から好々爺を感じさせるが、一皮剥けば歴戦の戦車乗りの姿が出てくる事は疑いもなかった。
11 17/09/06(水)22:54:40 No.451252815
どうやらこの方々は黒森峰が優勝できるのかと不安に思っているらしく、それがこの会合の主目的らしい。 しかし、西住流の方々は解るとして、企業や政治家の方々は西住流の興廃がそれほど気になるのだろうか? 正直なところ、西住流が負けても彼等の会社の運営が傾くとは思えないが。 最も社会経済など殆ど解らない身である。 戦車道に限らず有名企業が社会人チームを作り、それに決して安くない投資をして勝たせる様にしてる事もあるのだからそれの延長線、または肥大化挿せた様な感じで私の知識が及ばない所で経済に関係してくるのかもしれない。 または単に私の想像が及ばない位、西住の影響力が精神的な面でも高く、繋がりと誇りを共有化していて、まるで己の事の様に西住流を応援しているのかもしれない。 そのどちらか、あるいは両方かもしれないが、私から見れば少なくとも全員が真剣に心配しているのが確実であった。
12 17/09/06(水)22:54:49 No.451252848
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13 17/09/06(水)22:55:21 No.451252979
どちらにせよ、何故自分がこの場にいるのか解らない。 何か粗相はしていないだろうか、又はしてしまわないかと思うと胃が痛いと感じてくるほどだ。 何せここにいる人達は直接的・間接的にしろこの熊本の殆どに関わっている人達だ。 私の父親の働いている会社もこの人達の会社か、または影響下にある会社だろう。 また西住流の方々に不興を買えば私の戦車道人生はそこで終了したも同然である。 緊張に無意識に私の手は右胸へと動いた。
14 17/09/06(水)22:56:14 No.451253201
「決意と意気込みによる勝算と現実的な側面から見て予想した勝算。 どちらをお聞きになりたいですか?」 隊長がそう言うなりお歴々の内の男性方が少しだけざわついた。 しかし、西住流の老婦人達は一切動揺する事無く「では決意の程を」と聞き返した。 「全身全霊を持って準備し、百戦百勝を信じて勝負に挑む次第です」
15 17/09/06(水)22:56:29 No.451253256
通常、こういう場で勝負に対する意気込みと来れば殆どの人間が似たような事を言うだろう。 しかし、発言したのは西住まほである。 私は当然、おそらくはこの場にいる人達も彼女がどういう存在かはよく理解しているだろう。 彼女を知る人間ならばそれが決してその場限りで表面上の決意ではなく、心の底から真意として発言しており、そしてそれを必ず実践するだろう事は疑い様も無いだろう。
16 17/09/06(水)22:57:12 No.451253416
「……それは妹君が相手でもですか?」 私はその瞬間だけ胃の痛さを忘れた。 そうだ、妹様だ! 妹様が戦車道大会に出てくるのだ! 私が守れなかった妹様が。 あの時何もできずに何も声をかけれなかった妹様が。 もう戦車道をやる事は無いと思っていた妹様が! ……再び戦車道に戻ってきてくれた事は嬉しい しかし、それは黒森峰ではなく別の学校でだった。 それを知った時、私は一体どういう感情を抱いたのだろうか?
17 17/09/06(水)22:57:28 No.451253490
「無論、そのつもりです。誰が相手だろうと私は西住流そのものです」 「……では現実的な勝算についてお願いします」 「九割程です」 再びざわめきが場を支配した。 ただし今度は私と西住流の老婦人達からも音が漏れていた。
18 17/09/06(水)22:58:10 No.451253642
「……内訳をお聞きしても?」 「今回のトーナメントでは黒森峰は最良の場所を引いたと判断しています。 四強の内、私たちを除く三強と当たるのは準決勝と決勝の二回。 私達黒森峰が最強であるというのは疑い様も無い事実ですが、それでも三強は侮れません。 二度戦いその二度とも確実に勝利するとは断言できません。 恐らく5%程で敗北の可能性があります」 「5%が二度で10%の敗北率。だから九割という訳ですね」
19 17/09/06(水)22:58:26 No.451253687
ざわめきが継続して場を支配する。 人によっては弱気だと、場合によっては敗北主義者だと罵るかもしれない。 だがこれを言っているのは西住まほなのだ。 あの天才西住まほなのだ。 逆に考えれば"勝負は時の運"の要素が強いフラッグ戦の戦車道において優勝九割を宣言しているのだからこれは賞賛してしかるべきだろう。
20 17/09/06(水)22:58:42 No.451253751
「いいえ違います」 しかし、隊長はあっさりと否定した。
21 17/09/06(水)22:59:00 No.451253813
「二校と戦ってどちらかに敗れる可能性が5%です」 「……それでは計算が合いません。残りの5%は何処に?」 「大洗です」 瞬間、ざわめきが肥大化した。 私自身も驚きの声をあげてしまった。
22 17/09/06(水)22:59:16 No.451253874
「……それほど妹君を買っていると? 確かにあの方も非凡天才と称して差し支えは無い方でした。 まほ御嬢様は私たちに思う事があるかもしれませんが、それは理解しています。 むしろ理解できない節穴など西住流に必要ありません。 ……しかし、大洗は初心者ばかりで保有している戦車の数も質も下の下と聞きました。 如何に妹君とはいえ、優勝どころか決勝に来るのも難しいのでは?」
23 17/09/06(水)22:59:35 No.451253955
「確かに以前の妹ならば難しいでしょう。 私たちはトーナメント配置は最良に近かい物ですが、一回戦目にサンダース 準決勝でプラウダ、そして決勝で私達と戦う大洗は最悪に近い。 以前の妹ならばあの戦力でサンダースにすら勝利する事は困難です。 万が一、勝利しても使用車両が増える準決勝では万に一つもプラウダに勝ち目はない。 そんな妹が、大洗が決勝までこれたのならば妹は以前の妹ではない。 私のコピーに過ぎない妹ではなく、妹自身の戦車道を見つけている筈です」
24 17/09/06(水)22:59:50 No.451254019
「……つまり、四強に負ける確率が5%。 大洗に負ける確率が5%という訳ですね」 「それは少し語弊がありますね。 妹が決勝まで登ってくる確率が5%です」 ……それはどういう事なのだろうか? 場の雰囲気がそう疑問に感じる中で隊長はゆっくりと湯飲みで舌を湿らせると言った。
25 17/09/06(水)23:00:05 No.451254082
「決勝まで登ってきたのなら先程仰ったように妹は自分の戦車道を見つけています。 その場合、私は100%負けます」
26 17/09/06(水)23:00:25 No.451254155
場のざわめきは収まった。 ただ、静寂だけが場を支配していた。 続く
27 17/09/06(水)23:03:22 No.451254899
>緊張に無意識に私の手は右胸へと動いた。 こいつまた持ってやがる…
28 17/09/06(水)23:04:22 No.451255149
西住家でかいな…
29 17/09/06(水)23:07:44 No.451256077
地方の有力者ってその地方だけだけど半端ない権力あるからね…
30 17/09/06(水)23:08:00 No.451256136
>こいつまた持ってやがる… そりゃ捨てるわけがない
31 17/09/06(水)23:09:37 No.451256578
ああこれ言うつもりでこの場に来たならそりゃエリカは連れてこないわな
32 17/09/06(水)23:12:18 No.451257268
西住家は敷地の中に演習場とあの飛行船が収まる格納庫あるからね…
33 17/09/06(水)23:14:19 No.451257783
>西住家は敷地の中に演習場とあの飛行船が収まる格納庫あるからね… ヘリが着陸できる広さの庭とかね…
34 17/09/06(水)23:14:54 No.451257935
せいじによると劇場版で小さい頃の二人が運転していた場所全部私有地だしね
35 17/09/06(水)23:18:18 No.451258846
実際原作でも戦力にかなり差があるのに負けているからな黒森峰…
36 17/09/06(水)23:27:37 No.451261227
金持ちである事や権力がある事をこれだけ具体的に挙げられるの普通に凄いと思った
37 17/09/06(水)23:29:10 No.451261593
この斑鳩完全にモブだ!
38 17/09/06(水)23:41:05 No.451264421
学園艦を自分で作ってるらしいからとんでもない経済規模だとお思う 帰国したドイツ軍人の協力があったらしいが