虹裏img歴史資料館

1 17/08/11(金)00:17:42 [49/60] No.445432971

　やはり、高速飛翔体の連鎖衝突による物理的破壊は難しいかもしれない。破壊を考えるより、都市建設者群のコントロールに関する部分を弄った方がよいかもしれず、プランがぐらぐらと揺れる。 　いっその事、福田屋建設者群をコントロールして、防壁を郊外の我が家近辺に張り巡らせ、蚕食させる間に時間を稼ぐというのはどうだろうか？ 　福田屋百貨店の端末を弄るにはどうしたらいいだろうか？せっかく手に入れたフラグメントが通用しないというのはもったいない。 　この辺りで一番近くにある砦跡に行ってみることにする。 　移動には高速飛翔体を用い、福田屋のシャトルバスだった経路を用い、サイバネティクスな密林と化した城砦跡にたどり着く。 　中のエアポケットと化した空間に入っていくと防人等がいた形跡がある。彼等はここで戦い散っていったのだろう。 　都市公共衛生委員会と防人が激しく争ったのだろう。あちこちの壁が変形している。ここは福田屋百貨店の研究所であるが、それでも百貨店という名目の名残で何もないショーウィンドウやショーケースがぼんやりと佇んでいた。

2 17/08/11(金)00:18:00 [50/60] No.445433033

　鍵はここにあるのだろうか？ 　机の中に残されていた端末にアクセスすると、パスコードが表示されたので、サイファー・コード・ブレイカーを用いてクラックする。 　関係者以外見ないという認識の元かけられたパスワードだったためか、あっさりと暗号解読される。量子暗号だったらこうはうまくいかなかっただろう。 　ディスプレイ上に福田屋建設者群の特殊極まりない様々なタイプの物が表示される。栃木では中禅寺湖ぐらいでしか使う事はなさそうな、水中専用の架橋用建設者や、都市建設者群が作った構築物の上からバイオ素材で作られた浸透型板状コート材などを貼り付ける、浸食型の建設者等など、よくもこれだけ対応策を考えたものだとあきれるほど、特殊な用途に使われる建設者たちがいた。 　無限福田屋百貨店計画のおかげで都市の遺構のあちこちに福田屋の跡地が、現在営業しているしていないに関わらず点在している。 　これならば、店舗構築型の建設者群と浸食型の建設者群を郊外の我が家から離れたところに集めれば、都市建設者群を一時的にではあっても防ぐことができそうだった。

3 17/08/11(金)00:18:17 [51/60] No.445433092

　何より福田屋が近所にできるので買い物には便利そうだ。防人しかいない福田屋になってしまうかもしれないが。 　さらに探索を続ける。無限福田屋計画は、郊外に向かって展開する事を基本としているが、中心街の都市構築物の上書きと、本店・インターパーク店・鹿沼店の防衛にウェイトが設定されているようだった。 　都市構築物を上書きされた後、さらに都市建設者群に上書きされると都市建築のウェイトが低くなり積極的に構築を行わなくなるという欠点があるようであった。 　浸透型の素材を使った後、その素材を粉砕再構築してハックした後都市建設者群に上書きされると、さらなる上書きがうまくいかなくなったり、逆浸透されてしまうため、さらに上書きというのが難しいらしい。 　そこら辺の弱点を克服する研究というのは福田屋側でも行われていたようであるが、ここにある研究成果からうかがい知れる限りでは、なかなかうまくいかなかったようだ。

4 17/08/11(金)00:18:35 [52/60] No.445433171

　福田屋百貨店本店を訪れることにする。本店は家からそれほど離れていない位置にあった。福田屋百貨店建設者群の詳細な情報を外部記憶媒体にダウンロードし、僥倖な事に簡易操作マニュアルも手に入ったので、これらを活用することにする。 　福田屋百貨店本店は研究施設こそ鹿沼店に移設しているのだが、福田屋建設者群を最も早く使い始めている店舗である。 　何らかのヒントはあるかもしれない。 　建物の上に都市構築物が何重にも重なり層をなした密林のごとき店舗である。地下駐車場から内部へ入ると、想像していたより小綺麗な普通の店であった。 　防人と思われる人物の数も少なく、外見からは想像できないほどに平和であった。 　一般的な販売区画がどこまでも続き、そしてこれまた一般的な販売員が店内で接客をしている。どこに市民は隠れていたのかと不思議になるほど宇都宮市民が集まっていた。 　平成初頭には宇都宮の人間は全員福田屋に集まると言われた通りである。平成中期の学生時代を思い出す。

5 17/08/11(金)00:18:54 [53/60] No.445433259

　宇都宮市もまた企業からの税金で成り立ち、建設計画を立てている。今の知事も市長も建設業界の出である。福田屋のような大企業は生かさず殺さず搾り取るという方針の表れであろう。そして搾り取った蜜を持ってして宇都宮を建設者達の群れで、新宇都宮タワーに住む乙女たちが大地のマントを織りなすかが如く、都市を織り紡いでいった。 　福田屋本店のシャトルバスは生きていて、すぐ近くの済生会宇都宮病院などとも連携がとれていた。もっとも病院とは思えない有機的な組織に覆われ、新宇都宮タワーからの指示で雨が降った後は、水たまりにホテイノウキブクロのような不気味な生き物が沸いていたりした。 　天の日差しから身を守ってくれるのが新宇都宮タワーから広げられる帆で、農業に影響のない範囲で、都市が過熱するのを防いでいた。そもそも農業は屋内で行われるのが一般的になってはいるのだが、都市の衛生のためにはシャワーは必要なようである。

6 17/08/11(金)00:19:10 [54/60] No.445433316

　宇宙が巨大なコンピュータであるという仮説があるが、都市は各部品ごとに演算機能を持たされており、一昔前の言い方をするのであればユビキタスといえるのかもしれない。 　都市の各部分に取り付けられたセンサーが都市にたまった熱情報を新宇都宮タワーに集約する。すると、その時々に応じて気象をコントロールしている。新宇都宮タワーの演算能力が巨大だといっても、こうした都市に埋め込まれた微細な演算能力も馬鹿にはできないのだ。　この宇都宮市は何を考えて横たわっているのだろう？新宇都宮タワーが脳であるなら、各都市のパーツは内蔵であるようだ。臓器にも記憶は宿るという。宇都宮は巨大な人体であるのだろうか？ 　狭い空から人工的にばらまかれた雨は、それでも都市を潤し彩りを与える。空気中の塵の量は明らかに減っていた。 　新宇都宮タワーに二重に虹が架かる。一種幻想的な風景ではあるが、あの塔には宇都宮の地で死んでいった者達の魂が捕らわれており。それらを燃やすことによって無限に演算を続けているのだろう。あれは一種の墓標なのだ。

7 17/08/11(金)00:19:30 [55/60] No.445433397

　そう思うと、打ち壊さなければならないという思いが再燃する。まずは福田屋建設者群を一カ所に集め都市建設者群の計画を攪乱するのが良さそうだ。 　まずは動かなくては。自分が変わらずして他の何者が変わるというのだろうか？ 　法を犯しフラグメントを手に入れ、新宇都宮タワー内部の図面まで入手したが、散々迷いに迷った末、比較的セキュリティーの低い福田屋百貨店の建設者群をコントロールすることに目標を設定した。 　都市建設者群はカオス理論に従いマンデルブロート集合体のように都市を構築していく。放っておけば何もしなくても都市全体を人口密度や土地の情報を読み取り街を成長させていくはずであった。 　しかしそこに反旗を翻したのが無限福田屋計画における福田屋建設者群である。 　無限福田屋計画のためもとより混沌に満ちた無秩序な都市計画は、様々な素材を糊塗しあう、恥の上塗りならぬ、都市の上塗りといった状況に追い込まれ。都市計画はあえなく混乱する。 　無限福田屋計画は今のところ都市計画に抗仕切れていないし、やはり自治体と一企業では資本力が違うだけあり、福田屋は勢力を広げるたび都市に上書きされていった。

8 17/08/11(金)00:19:47 [56/60] No.445433448

　企業と地方自治体では資本力が違う。これにより福田屋の計画はうまくいっていなかったが、福田屋がここまで持ちこたえているのには、企業保護の他にもオリジナルの建設者群を生み出す開発力と、地方自治体ならではの予算の使い方が関係していた。 　地方自治体の定めとして都市整備の年間予算計画の立て方にある。 　予定された予算を一年間で使い切るために、都市建設者群は都市構造を改革し続ける。しかし、この都市建設者群は昭和の頃からソフトウエアのアップデートと細かい改修だけでここまで使い続けられてきた。 　平成はもう三十年たつ。昭和の御代から使い続けられてきたということはいったい何年ものなのだろうか？ 　改修に関しては無限福田屋百貨店計画に対抗するため、福田屋建設者群の設置した装置を破壊、素材と化してリサイクルする装置や、あるいは破壊までいかなくとも、福田屋の構築物のシステムをハックする機能をつけたりと細々とした改修は行われている。 　しかし機体に目をやればどうだろう？平成中頃に作られた都市建設者群はまだいいとして、昭和の機体がメインで動いている。

9 17/08/11(金)00:20:04 [57/60] No.445433500

　平成になって作られた都市建設者群は僅かばかりの試作品などが試験的に投入されているだけである。 　もちろん、中長期計画で都市建設者群のリプレースを行おうという声は上がっていたが、無限福田屋計画阻止計画を過剰に行う事での税収の低下を恐れ。また過剰な都市の構築により無限福田屋計画に追随する企業が現れるのを防ぐためでもあった。 　香琳堂などが計画を実行したら、今頃宇都宮は｢かりんとう饅頭｣が溢れ、みんみんや正嗣が無限に増殖すれば、乾涸らびた暗渠になっている川やアンダーなどは水餃子でグツグツと煮立ち、空からは焼き餃子が降っていたことだろう。 　恐ろしいではないか。これでは火傷をしてしまう。 　そうならずに済んだのは、ひとえに宇都宮市の金銭事情によるところとなる。 　そこで、福田屋建設者群を一カ所に集結させ、都市を癌化させる。そこに免疫抗体細胞のように集まってきた都市建設者群をまとめて行動不能にすれば、かなりの長期間にわたって都市の構築は止まってしまうであろう。 　問題は都市側が大量の都市建設者群一括リプレースに乗り出せば、自分の首を絞めることになるであろう諸刃の刃である。

10 17/08/11(金)00:20:20 [58/60] No.445433548

　新宇都宮タワーをはじめとして、都市の計画を統括する機構を混乱させることを考えなくてはならない。ああ、やることは一杯だ。 　時々思うのだ、新宇都宮タワーの量子コンピュータを冷却しているのは光格子時計のようなレーザーによる、粒子の振動を魔法波長で光の格子の中に閉じ込めるレーザー冷却法ではなく、地殻にまで根を張る新宇都宮タワーの底が、地獄につながっていてコキュートスや八寒地獄から吹き上がってくる冷気で冷やしているのではないかとさえ思っていた。 　そんな地下に行かなくともこの世は地獄に満ちあふれている。 　そこまで考えたところでまた統合失調症の症状が出る。思考が纏まらない。地獄の毛虫が見える。考えが纏まらない。こちらに背を向け俯いた女の影が見える。知覚が鈍磨する。知らない言葉で見えない女が必死に何かを伝えようとして囁いてくる。こちらも必死になって聞き取ろうとするが何も理解できなくて、悲しさだけが募る。囁き女にもそれが伝わり悲しげな口調になる。だが何を言っているのかはわからない。 　相互の理解ができないということは悲しいことだ。悲しさも集まれば海となり、苦い水が口腔を満たす。

11 17/08/11(金)00:20:43 [59/60] No.445433610

　逆流性食道炎の症状が出て、胸が一気に焼ける。気持ち悪い。今日は切り上げてここまでにしよう。寝れば胸のムカつきは治る。だが飲んでいる眠剤は悪夢の種である。また眠れない夢を見るのだろう。 　男は本を紐解く。 　群れなして歩く盲目の羊達は、同じく盲目の羊達の一群に混ざろうと、牧羊犬の凶悪な吠え声に追われて移動する。 　羊飼いは遠くにいる。その遠くには神の国へ至らんとする高い塔が見える。 　塔はとても高く、その先端は虚空に消えていったが、神の国へと到達したという話は聞かない。 　凶悪に牧羊犬が吠え立てる。 　牧羊犬に指示を出す羊飼いはあの塔に住んでいるそうである。 　また別の羊飼いが指示を出す。 　あの群れを食らえと。 　男は睡魔に負けそこで本を閉じた。 　ハッテン取締官は、街の風紀紊乱を許さない。街角でハッテンする者があればこれを取り締まり、何処かへと連れ去る。 　デュバリエ政権時にいた秘密警察トントンマクートのように、ホモ共を拉致し、魂を量子コンピュータの燃料としてしまう。この街はホモ野郎の魂を燃料に回転している。

12 17/08/11(金)00:20:59 [60/60] No.445433661

　男好きの男はこの街に住む資格を剥奪されている。ハッテン取締官はホモ共がバーチャルネットワーク上で、電脳ハッテンするのも許しはしない。ニューラルネットワークに侵入し異常電圧をかけ電磁パルスを発生させ脳を焼き切る。 　このときホモ達は一種のエクスタシーに達し、激しい射精をする。脳幹が焼かれる瞬間にかかる負荷が性的快感に似ているのであろうと推察された。 　地獄への道は蜜で舗装されている。 　ハッテン取締官は遠隔操作でホモ達の脳をハックし、焼いて回る。射精したズボンがびがび、ぬちょぬちょのぬるぬるにチンポまろびだしたドホモ共の快感チンポを回収して、都市に馴染ませるため回収した死体を、都市の中の勇気転換炉に放り込み、魂を取り出した後、ホモのザーメン臭い死体をバターみたいに都市に塗りつけて、メンズミルクびゅっびゅっと絞り出し、乾かし、コーティングすることで街はハッテンする。 　ハッテン、ハッテン、僕の街。ハッテン取締官は今日もゆく、あてどなくさまよう孤独な魂を再利用するために。

13 17/08/11(金)00:21:26 No.445433754

よろしければおひねりは｢そうだね｣いただけるとありがたいです

14 17/08/11(金)00:23:29 No.445434185

いついつもの感じになるかと思ったら…

15 17/08/11(金)00:24:02 No.445434302

>48/60 うｎ…？

16 17/08/11(金)00:25:40 No.445434627

ハッテンの日には間に合わなかった様子かな… こんだけの名文なら仕方ない

17 17/08/11(金)00:33:05 No.445435957

>ハッテンの日には間に合わなかった様子かな… あーハッテンの日ですか 完全に失念していましたね とりあえずちびちび書いていて 適当にたまったら投下という感じですので 400字詰め原稿用紙換算で70枚書きました >>48/60 >うｎ…？ これの前に60レス分あると言うことです

18 17/08/11(金)00:42:22 No.445437580

>これの前に60レス分あると言うことです わかっとるわ！

19 17/08/11(金)00:42:31 No.445437607

もう60まで来たのか…

20 17/08/11(金)00:46:10 No.445438239

こんな長い怪文書初めて見た…

21 17/08/11(金)00:47:54 No.445438527

来年の学園祭の本には載せない予定ですので 遭遇したら珍獣でも見かけたような感じで読んでやってください

22 17/08/11(金)00:48:55 No.445438727

なんで読みやすいんだろ…

23 17/08/11(金)00:58:21 No.445440347

>こんな長い怪文書初めて見た… むかし100レススクリプトは一度あった

24 17/08/11(金)01:08:42 No.445441920

とりあえずスレとは関係ないのですが ウンベルト・エーコの小説講座: 若き小説家の告白 が面白かったです 小説講座とはいうもののエーコの文学講座という感じです 面白いので文学講座とかに興味のある方にはおすすめです

25 17/08/11(金)01:10:36 No.445442234

>むかし100レススクリプトは一度あった なそ にん

26 17/08/11(金)01:15:24 No.445442952

私はこのスレを初めて開いたフランスからの旅行者なのですが 全部読みたいです助けてほしいのですが