虹裏img歴史資料館

1 17/07/30(日)00:32:01 No.442975778

21 　どこか遠くでわたしの声が聞こえる。 　エリカが、わたしにあの言葉を言ったときだ。 「ごめん……みほ……私今、まほさんと付き合っているの」 「え？　付き合ってるって、なにそれ？」 　わたしは答えている。 　エリカとなんとなく時間が合わなくなって、一か月くらいした矢先のことだった。 　わたしの家でエリカは、顔を上げずに告白した。わたしはとても卑屈な笑顔を浮かべた。 「それなら、しょうがないじゃん」 「え？」 「好きになっちゃったんでしょ？　それじゃあ仕方ないよ。心なんて、止められないしね」 　違う。本当はそんなこと言いたかったんじゃない。 　ふざけるなって言いたかった。殴って振り向かせたかった。出来なかったのは、それをするってことはわたしから関係を断ち切るってことだから。 　切るなら向こうから、言ってくるべきだ。そんなふうに思っていた。

2 17/07/30(日)00:32:16 No.442975851

　けれどエリカが言ったのは。 「ありがとう」 　だった。 　……。 　…………。 　いや、これ本当に最悪な記憶か？！ 　絶望？ 「違うだろ！」 　突っ込んだら思わず目が覚めた。 「ベタ住さん、大丈夫ですか？」 　オリジナルが声をかけてくれた。他のみんなは――倒れ伏している。あの絶望の世界に囚われているに違いない。 　わたしはオリジナルの横から空を見上げる。相変わらず暗雲立ち込めた、救いようのない空だ。そこに黒い何かが立ち上がっているのが見える。 　ああ、そうか。 　いまなんとなく気づいた。

3 17/07/30(日)00:32:32 No.442975928

「全然絶望じゃないじゃん」 『お前たち……何故目を開けている……。 　西住みほ、そして西住みほ！』 　狼狽した声が響いた。わたしは笑ってしまう。 「え？　わかんないかなあ」 『なにがだ』 「あなたが見せたのは、わたし達の過去の絶望です」 　オリジナルが、わたしの代わりに言った。 「確かに、もう二度と見たくないような絶望が、なかったとは言わないです。 　でも、それはもう過ぎ去ってしまったこと」 「あんたの見せられる絶望が、過去の絶望しかないんだったら、あんたは未来にあるもっと最悪の絶望よりも全然大したことないってことだよ」 　言い切ったわたしをカオスは笑い飛ばす。 『バカめ！　その絶望をこれから見せてやろうというのだ！』 「だったら先にその絶望を見せればよかったじゃん！　こっちの心折るならさ！　あんたにはできないんだ！」 　わたしの叫びに、改めてカオスがたじろいだ。オリジナルが静かに言った。

4 17/07/30(日)00:32:59 No.442976067

「わたしの絶望があるとしたら、友達と、バラバラになって二度と会えなくなることです。それはいつか訪れること……。 　でもそれは今じゃない！」 『ふざけるなぁぁぁああ！』 　巨大な声が天に轟く。 『それならば構わん！　そのピンクの戦車ごと、ぺしゃんこに潰してくれるわぁあああっ！』 　降って来る拳。 　その瞬間、スーパーアンコウが動いた！　間一髪で避ける。 「ナポリン！」 「あの後さ。わたし大洗に残ったんだ。アンツィオ、黒森峰との懸け橋になる為にね。 　あの人は狸だから、こうなるって思ってたんだよ。ほんとずるいよね、お姉ちゃん」 　ナポリンがカオスの足元を回る。さっきのうざ住の要領だ。 『二度通じると思うか！　うお！』 「鬱住！」 　スーパーアンコウから放たれた砲が、カオスの片足を消し飛ばした。ゆっくりと倒れ伏すカオス。

5 17/07/30(日)00:33:14 No.442976135

「……大洗から、正々堂々と戦いましょうって、メールが来たんだ……。 　みほさんと戦うなら、負けても悔いが無いって」 　鬱住の顔が真正面を向いている。それからちょっと笑った。 「それにだらしなくしてたら、小梅にまた殴られちゃうしね」 『こしゃくな真似をおおっ！』 「欠住、うざ住、大丈夫？　こっちはもう一押し。頼むわよ」 　通信からの返答は『了解』『判ってますって』の一声。向こうも大丈夫だったんだ。 　そして。 「ｉｆ住！」 「エリカが一緒に戦ったのは、決勝戦だけだった。彼女は悩んで悩んだ後で、ポルシェティーガーの車長になったの。 　あの自動車部に、エリカが入ったの。無敵よ？」 「どうにもならないことだって、そりゃある！」 　稲妻のように素早く装填が完了する。 「闇住！」 「わたしは、あの日からなにもかも変わって見える。

6 17/07/30(日)00:33:31 No.442976205

　でもオリジナル。判るよ。わたしだってみんなと別れるのは、嫌だ」 『おおおおおおおおおっ！』 　再びスーパーアンコウの砲がカオスを射抜く。次いで、欠住の砲も。うざ住なんか、戦車でカオスの身体に乗っかって、そのまま状態を引きちぎりながら走り抜ける。 　偽住は目を覚ましていた。黙って顔を強張らせていた。 「偽住……」 　声をかけると、偽住は「うん」と頷いて。 「ベタ住、おまえほんとかわいそうだな」と言った。 「え？」 「いや、ほんとあそこまで悲しい――。いや知ってたけど、実の姉に取られるとかさ」 「ちょ、ちょっと！」 　本気で心配してたときにそんなこと言われるから、わたしはカッとする。そんな心からかわいそがるなんて、冗談にしか思えないぞ！！　そこにｉｆ住がおっかぶせてきた。 「大丈夫。エリカはわたしが幸せにするから」 「……ベタ住、その気持ち判る」 「失恋は辛いよねー」 「青い鳥は近くにいるかもよ？　緊縛の仕方お教えしましょうか？」

7 17/07/30(日)00:33:46 No.442976287

　ええい！　うるさいうるさーい！ 　オリジナルは「大丈夫ですよ」と優しい声を出した。 「わたし達は一緒に戦って、遊んで。もしお互い会えなくなっても、自分の人生を歩むんです。 　それはわたし達の喜びで苦しみで、決してカオスから与えられるものじゃない！ 　だから！」 　カオスの足は徐々に回復してきている。けれど矢継ぎ早に撃たれる砲弾は、カオスの身体を次々に引き裂く。 『おおおおおおおっ！』 「いまです！」 　オリジナルの合図とともに、欠住と鬱住が図ったみたいにカオスの頭を撃ち抜いた！ 　爆散する暗黒。けれど皆、油断をしていない。さっきも蘇ったやつだ。もしかすると……。 『廃艦……廃艦……』 　うわ。空に眼鏡みたいなスクリーンが二つ浮いている……。 『大洗は、廃艦……全て終わる……正しい世界の為に……。 　お前たちは……お前たちの広がりは世界を圧迫する……。無駄……削減……廃艦……』 「きりが無いなあ！」

8 17/07/30(日)00:34:05 No.442976381

　闇住が毒づくのを、オリジナルが制した。 「とにかく、戦えるだけ戦いましょう！　もうカオスは人の姿をとれないくらい消耗しています！」 『バカめ！』 　突然雷が空から降り注いだ。 『うあっ！』 　うざ住の通信が入って、切れる。続いて欠住。 『きゃあああああっ！！』 「ちょっと待って、欠住！　うざ住！！」 　ｉｆ住が必死に呼びかける。オリジナルは戦車のなかにすかさず滑り込んでナポリンに指示をした。 「雷が襲ってきます！　わたし達はかわさないと！」 「判ってるけど、どうやって……あっ！」 　その瞬間だった。 　すさまじい衝撃に、わたしの身体が投げだされる。赤く干からびた大地に叩きつけられて、一瞬失神しかける。 　そこには真っ黒に焦げて白旗をあげたＣＶ３３と、Ⅳ号の姿。 　スーパーアンコウは消え去って、みんなが大地に転がっている……。

9 17/07/30(日)00:34:22 No.442976475

　まさか……そんな。 『ぐわーっはっはっは』 　高らかな笑い声は、カオスの勝利の声だ。 『どうだ！　お前達が見たがっていた絶望、今見せてやったわ！　フハ！　フハ！　フワーっハッハッハ』 「みんな……逃げ……て」 　最期の力を振り絞ってわたしはＥＳＰを使う。 　わたしの身体から抜け出た魂のようなものが、後方にいる仲間たちに危機を伝えに飛び出していった。

10 17/07/30(日)00:36:04 No.442976983

今日はここまで！ うわあ、ついにやられちゃったよ、スーパーアンコウ！ どうするどうするどうする、君ならどうする？ 圧倒的な力を持つカオス けれどみんなは戦いを捨ててはいなかった 次回　西住Ｓ　絶対勝利西住Ｓ！ 希望の未来にレディゴー！！！

11 17/07/30(日)01:16:55 No.442989634

西住Ｓが夜に来た！ 俺、今日の午前中から昼過ぎまでカタログを開いちゃ閉じての繰り返しだったぜ 嬉しいじゃねえか！こんちくしょう！

12 17/07/30(日)01:18:20 No.442990176

待って待って！ さっきあと２回て言ったよね？ 次回が最終回なの西住Ｓ「」？？

13 17/07/30(日)01:18:28 No.442990235

>西住Ｓが夜に来た！ >俺、今日の午前中から昼過ぎまでカタログを開いちゃ閉じての繰り返しだったぜ >嬉しいじゃねえか！こんちくしょう！ ごめんね！ 明日は昼までにはお届けするように頑張るよ！！

14 17/07/30(日)01:19:04 No.442990385

>次回が最終回なの西住Ｓ「」？？ 今日を含めたら三回だよ 明日一回 明後日一回

15 17/07/30(日)01:22:30 No.442991351

古今東西住がやられるとどうなるんだ

16 17/07/30(日)01:23:56 No.442991725

きたのか！

17 17/07/30(日)01:24:05 No.442991749

『絶望が訪れるのだ――フワーッハッハッハッハ ワハハワハハ ワーッハッハッハッハッハッハッハッハ』

18 17/07/30(日)01:25:05 No.442992005

今までスレに遭遇出来なかったから言えなかったけど 去年からずっと俺はこのスレ画が立つのが楽しみだったぜ西住Ｓ「」よぉ！

19 17/07/30(日)01:25:50 No.442992279

>今までスレに遭遇出来なかったから言えなかったけど >去年からずっと俺はこのスレ画が立つのが楽しみだったぜ西住Ｓ「」よぉ！ ありがたい……

20 17/07/30(日)01:27:04 No.442992692

君達…これ以上の抵抗は無意味だよ…ご理解下さい…フッフッ…ハーッハッハッ！

21 17/07/30(日)01:27:27 No.442992806

役人帰れや！

22 17/07/30(日)01:28:31 No.442993034

結末読みたい…でも終わって欲しくない ベタな感傷かもしれないが

23 17/07/30(日)01:29:39 No.442993290

なんか既に感動してる俺がいる…まだ早いぞ俺！