17/07/26(水)20:08:51 トト... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1501067331430.jpg 17/07/26(水)20:08:51 No.442254653
トトリはミミに触れるのが好きだった。トトリの横に座る彼女の体温は身体へとじんわり伝わり、芯までを癒してゆく。緊張して体を硬くしたミミの様子は微笑ましく、愛おしい。ミミに体を擦り付けて手を重ね、小指から親指まで順に丁寧に愛撫していく。一本、一本。触れる度にミミの顔はかぁ、と赤くなる。彼女は嫌がっているが、トトリはミミのごつごつと努力を感じさせる指が好きだった。 トトリは腕を絡める。 「ね、ミミちゃん。これからどうする?」 トトリの熱を帯びた声がミミの耳元で囁かれ、鼓膜を甘く揺らす。 「どうする、って、どういうことよ」 ミミはみっともないほどにどもる。トトリの前では、ミミは貴族らしい毅然な態度を保つことができない。 「ミミちゃん、顔真っ赤だよ」 トトリは悪戯っぽく笑った。
1 17/07/26(水)20:09:41 No.442254838
いつになれば気付くのだろうか。トトリはミミの腕が自分の肩に回ることを、その手がトトリの体を撫でてくれる時をずっと待っていた。しかし、このもどかしい時が続くのも悪くない。一生をミミと過ごすのならば、きっと時間の問題だ、そう考えていた。。ミミが一度勇気を出せば、すっかり押し切れることをトトリは知っていた。 ミミは、トトリの強すぎる攻めに参っていた。嫌ではない、ないのだけれど。最近のトトリは少し積極的過ぎる。妙に甘えたで、事あるごとにミミの体を触れたがる。今のように、指をねっとりとなぞってミミを困らせる。胸に鼻を擦り付けて、上目遣いに見つめ笑いかけられた時などたまらなかった。ミミはトトリの清らかさを穢したくない、トトリへ少しでも情欲を抱いている自分にどうしようもなく自己嫌悪を感じていた。トトリの柔らかい、可愛らしい笑顔が、ミミの情欲をどうにか霧散させてゆくのが救いだった。幸せだった。 しかし、その笑顔が他人へと向けられると、途端に胸に暗いものが浮かんでくる。トトリは優しい。見た人をたちまち幸せにする笑顔を振りまくのはいいことだ。
2 17/07/26(水)20:10:03 No.442254907
トトリが笑う度、この世界には幸福が溢れていく。何も悪いことはない。 そんなことは分かっていたが、やはり嫉妬を覚えないではない。些細なことで拗ねてしまう、ミミの子供っぽい性格を理解して、そんなミミのことも好きだと言ってしまうトトリの言葉もくだらない嫉妬を助長させる。 まるで麻薬のようだ。トトリの笑顔を見ると収まり、離れると深く気分が沈む。いくらなんでも依存しすぎだろう。一度、体からトトリを抜かなければ。お互いのため良くない。 「ね、ミミちゃん。今度採取に付き合って欲しいの。ミミちゃんが一緒だと心強いな」 「……ごめんなさい、どうしても外せない仕事があるの。また今度誘ってね」 「…そっか、仕方ないね」 ミミはトトリへの依存を気付いてからは、トトリとの同行を、アトリエへ訪れることを出来るだけ避けた。何度もありもしない仕事を理由にしていた。思い上がりじゃあない、きっとトトリも私のことを求めているはずだ。だからダメなんだ。だからこそ離れなければいけないんだ。 しばらくトトリの笑顔を見ていない。
3 17/07/26(水)20:10:26 No.442254986
自分は何をしているんだろう。貴族としてのミミ・ウリエ・フォン・シュヴァルツラングよりも、トトリにとっての「ミミちゃん」を優先してしまっているのだ。きっとトトリは喜ぶだろう。もしかしたら、いや、きっとお母様も喜んでしまうだろう。貴族としての誇りよりもトトリに出会ったことを喜んでしまうだろう。それがよくない。まるでこれまでのミミを蔑ろにしてしまうようだ。ミミは貴族としての自分を誇りに思っていた。母を、母へと名を継いできたあらゆる人間を、深く尊敬している。貴族よりも優秀な人間はいくらでもいるだろうが、それでも貴族よりも尊い人間は居ないと思っていた。もはや今の時代、貴族の名が意味を持たないことを理解しながらも。そう思っていた。誇りに思っていた。 それでも、トトリのことを何よりも大切に思ってしまっている。トトリと一緒にいたい。トトリと一緒になりたい。トトリに自分の人生を、自分にトトリの人生を捧げて欲しい。くだらない、くだらない。
4 17/07/26(水)20:10:43 No.442255043
自分とトトリは結婚できない。子供を作ることもできない。貴族としての自分を裏切れない。一緒になれない。それだけだ。それが全てだ。下種な欲望が母への想いを上回っているなんてこと、あってはならない。どれだけ想っても、結ばれることは無いのだ。 もう10日もミミと触れていない。明らかにミミは自分を避けている。どうして。自分で気づかない内に何かしてしまったのだろうか。理由もなく自分を突き放すような人間ではない。事情があるならば話してほしい。ミミが困っているのなら助けてあげたい。力になりたい。それでもミミは、それすらもさせてくれないのだろうか。ミミにとって自分はその程度の存在だったのだろうか。 どうして。 どうして。 どうして。 どうして。 「ミミちゃん」
5 17/07/26(水)20:11:07 No.442255136
ペイパーキャノーン!
6 17/07/26(水)20:11:12 No.442255145
ある日、ミミはメルルから同行を頼まれた。 「ミミさん、明後日アトリエに来てくれませんか。ちょっと採取に付き合ってほしいんです」 「いいわよ、最近暇だしね。体が鈍っていたとこなのよ。…なんなら、もっと私に仕事を回してくれてもいいのよ」 「ありがとうございます!明日の深夜に私のアトリエに来てくださいね!」 錬金術師にとっては夜にしか採取出来ない素材はいくらでもある。深夜に訪れることも珍しくないだろう。 ミミはメルルの誘いに快諾した。本当は毎日のように、八つ当たりのように魔物を狩り続けていたにも関わらず。それでも大義名分があるのならばそれに越したことは無い。とにかく槍を振るえるならばそれでいい。槍を振っている間はトトリのことをいくらか忘れられる。 ミミが約束の時間にアトリエへ向かうと、ふと違和感を感じた。アトリエの窓から明かりが差していない。もしかしたらメルルは眠ってしまったのかもしれない。夜も深い、その可能性は充分あるだろう。それでもミミは、夜道に暗く浮かび上がるアトリエに不気味ささえ感じていた。しかし、このまま引き返すわけにもいかない。扉に手をかける。
7 17/07/26(水)20:11:38 No.442255247
「メルル姫、来たわよ。居ないの?」 やはりアトリエにはメルルの寝息どころか、人気すら感じられない。どういうことだろう。 「ミミちゃん」 ミミの体が驚きで跳ね、すぐに声の聞こえた方、ミミが開けたドアの陰へ振り向いた。 「ミミちゃん」
8 17/07/26(水)20:12:31 No.442255459
暗くて表情はよく見えないが、聞き間違いようもない、トトリの声だ。メルルに嵌められたことを知る。 「どうしたのよ、明かりも点けないで」 「ミミちゃん、最近私のこと避けてるよね?」 トトリはミミの問いには答えず、淀んんだ暗い声を吐き出した。 「そんなこと…確かに最近は一緒に居られていないかもしれないけれど」 「26日」 「え?」 ミミには言葉の意味が分からない。さっきからトトリは、脈絡の無い言葉を感情の伺えない声で話し続けている。
9 17/07/26(水)20:13:00 No.442255556
「最後に二人きりになってから、もう26日にもなるんだよ」 「それ、は…仕方ないじゃない、もう子供じゃないんだから。お互いに仕事で都合が合わなくなることくらい珍しくもないわよ。実際これまでも、何週間も会えないことくらいあったでしょう?」 「嘘だよ」 「嘘?」 トトリは今どんな顔をしているのだろうか。ミミはトトリを前にして、不安を感じることなんてついぞなかった。今のトトリは怖い。トトリの顔を見たい。 「忙しくて会えないこと、喧嘩して気まずくて顔を合わせられないことはあっても、ありもしない仕事を理由に私を避け続けることなんて無かったよね」 トトリはとっくに気付いていたのだ。いや、当たり前だった。ただでさえミミは隠し事は苦手なのだ。一流の錬金術師であるトトリの鋭い目が、ミミの変化を見破れないはずもない。
10 17/07/26(水)20:13:41 No.442255681
「嫌だよ、ミミちゃん。私、ミミちゃんと離れたくないよ。もっと、ずっと、ミミちゃんと触れていたいよ。一緒にいたいよ」 トトリはミミとの距離を詰めると、ミミの胸に身体を預け、目を合わせた。不安と悲しみ、恐れ。ようやく見せたトトリの表情は、それらをないまぜにしたようで。今にも泣き出しそうだった。 途端、ミミの胸が罪悪感で満たされる。トトリからすれば、親しい友人が理由も分からず自分を避け続けているのだ。こんな顔をさせたのはミミ自身だ。お互いのためにと思った行動はただトトリを追い詰めていたのだ。ミミはそれを知った瞬間、自然と胸の内にトトリを抱きしめる。は、とトトリは短く息を吐いた。 「ごめんなさい、トトリ」 「私、自分のことしか考えていなかった。トトリのため、って思いながら自分が逃げるための浅ましい言い訳にトトリを使ってた。ごめんなさい、ごめんなさい」
11 17/07/26(水)20:14:02 No.442255760
仕方ない、必要なことだって。お互いのためにトトリと自分の気持ちを犠牲にできる、そんな自分に酔っていただけだった。ミミが考えるよりもずっと、トトリはミミのことを想っていたのだ。そんなことも分かってあげていなかったのだ。 「ミミちゃん……」 トトリは潤ませた瞳を閉じて、ミミに唇を差し出す。つまりそれは。そういうことだ。これをしてしまえば引き返せない。言い訳が付かない。 しかし、ミミとトトリが、何を誰に言い訳をするのだろう。トトリへの想いの前では、あれだけミミを阻んでいた理性の壁は無意味に思えた。
12 17/07/26(水)20:14:23 No.442255864
ミミはぎゅっと目を閉じて、ゆっくりトトリとの距離を縮める。緊張と期待がミミを震わす。 ようやく、ようやくトトリとミミとの距離がゼロになる。トトリの唇はしっとりと柔らかかった。心地良い弾力が唇を押し返しながらも、ミミのそれに優しく吸い付いて離そうとしない。意外にも二人の心音はごく穏やかだった。穏やかに、違うリズムを刻んでいる。それでも、触れ合うことはできた。全く違う二人は、唇を通じて確かに繋がっていることを実感できた。
13 17/07/26(水)20:14:40 No.442255919
「ね、ミミちゃん。これからどうする?」 「どうする、ってどういうことよ」 ミミの目はにっこりと優しくトトリを映していた。その目にもはや動揺は無い。 「ミミちゃん、可愛くないよ」 トトリは拗ねたように口を尖らせた。その頬は微かに朱に染まっている。ふふ、少し笑って答える。 「そうね、私はもう一度トトリと旅に出たいわ。トトリと一緒に並んで歩いて、見慣れた景色、見たことのない景色。私がトトリを、トトリが私を助け合って。苦しいことも、楽しいこともトトリと一緒に。ずっと、ずっとトトリと一緒に歩いていきたいわ」 「それ、プロポーズみたいだね」 「そうよ」
14 17/07/26(水)20:15:36 No.442256135
意地悪を言ったつもりのトトリの言葉をミミは簡単に肯定した。思わぬ返答にトトリは目を丸くする。 「私はもう逃げない。何がトトリと私を阻んでも、そんなもの乗り越えてやるわ」 ミミの眼は決意に満ちている。絶対に曲がることのない、心の芯に刻み込むように、自分に言い聞かせるように。ミミは強く言い放った。 ミミの言葉に篭った強い響きはトトリの胸を強く揺らし、心臓をどくどくと鳴らす。 ミミはたまにこんな表情を見せる。人を純粋に思いやる顔。表面の棘の内に秘める、どこまでも優しい、どこまでも美しい顔。それがトトリを惹きつける。
15 17/07/26(水)20:15:56 No.442256221
「ミミちゃん、ずっと一緒だよ。ミミちゃんが居れば、私はどんな時もきっと後悔しないから。きっと幸せだから」 どちらともなく、互いの体に腕を回し抱き合い、唇を合わせる。 トトリは、ミミに自分の心音を聞かせるのは恥ずかしかったけれど。今はしばらく、温かいミミの体に触れていたかった。
16 17/07/26(水)20:16:50 No.442256400
おしまい 三人称で書こうと思ったら視点ころころ変わって意味分かんなくなっちゃった
17 17/07/26(水)20:17:37 No.442256570
いい…
18 17/07/26(水)20:17:51 No.442256616
いい…
19 17/07/26(水)20:18:03 No.442256654
いいよね…
20 17/07/26(水)20:18:19 No.442256719
いい…
21 17/07/26(水)20:20:10 No.442257075
けっこうな怪文書にござった…
22 17/07/26(水)20:21:43 No.442257384
跡継ぎにホムンクルスをつくろう
23 17/07/26(水)20:25:12 No.442257980
いい…
24 17/07/26(水)20:34:23 No.442259713
こういうのでいいんだよこういうので
25 17/07/26(水)20:35:11 No.442259849
トトミミいいよね…
26 17/07/26(水)20:35:21 No.442259876
いい…
27 17/07/26(水)20:36:46 No.442260143
貴重なトトミミ補給
28 17/07/26(水)20:41:48 No.442261159
素晴らしい
29 17/07/26(水)20:50:48 No.442262919
お前がナンバーワンだ
30 17/07/26(水)21:01:48 No.442265174
ミミちゃんは童貞捨てたら強そう