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17/07/21(金)12:49:04 西住S... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1500608944307.jpg 17/07/21(金)12:49:04 No.441087759

西住S! お昼の人はいただきます! 今起きた人はおはようございます 西住みほことベタ住です いろんな世界からやってきた西住みほたちの、世界を守る為の戦車バトル 今日は18章『軍神 欠住』の前半になります! 欠住の心を覗いて、お姉ちゃんを狙ってるってわかったわたし ついにお姉ちゃんSと欠住が戦うけど、いったいぜんたいどうなっちゃうの!? su1946028.txt

1 17/07/21(金)12:49:50 No.441087933

18  西住まほは、警戒を強めた。  やるべきことは合流だ。出来れば、スーパーアンコウと合流するのが望ましい。自分たちが生き延びるのならその方がいい。ただ。 「一騎打ちに持ち込めば、早々負ける戦いでもない」  西住まほが応えた。これはナポリンの姉の方だ。迷う車長は陽住の姉になる。 「わっはっは、お姉ちゃんのちからにおそれをなしたか」  笑うのは陽住だ。いや、そういうことじゃないでしょ、と突っ込むのを止めたのは逸見エリカ、if住のパートナー。自信を失い一転気弱になったエリカだが、大洗女子に転校して柔軟さを身につけた。個人のパーソナリティーの強烈さが思わぬ戦果を上げることがある。そして今出来る自分の最大の判断は……。 「後退しましょう。スーパーアンコウとも連絡を取り合って、一時合流。その後、我々が盾になり相手の戦力を削るというのは」 「このまま待機ですか? それとも後退? どうします、まほ隊長」

2 17/07/21(金)12:50:20 No.441088042

 鬱住の赤星は、この状況で見定めている。西住まほがどれほどの者かを。どちらの戦略を取ったとしても欠住とやり合うことは必死だろう。だとすればどこでどう戦うかが戦略眼の見せ所だ。  二人のまほは目配せして頷いた。行くか。行くしか。 「前進しろ赤星。あの大軍が来たその先に、おそらくみほがいる」 「え?」  驚くエリカにまほが言った。 「いいか。いずれにせよ我々を狙うのなら待つ必要はない。これから仕掛ければいい。読みが間違っていたとしてもあの軍団が出てきた場所に、何も無いのか何かあるのかチェックする斥候が必要だ。もし本当にオリジナルのみほがいたら助けることが出来る。そしてそこに欠住が出たら、予定通り倒す。  電撃戦を仕掛ける」 「はい!」  エリカが応えるのと同時に、ティーガーⅠはゆっくりと滑り出した。整備は万全だ。最大速度ギリギリまで加速してなお履帯がついてくるのは、赤星の操縦センスのおかげでもあるか。

3 17/07/21(金)12:50:52 No.441088143

 干上がった海の砂は、すでに砂ではない固くボコボコした何かになっている。影住の集団はすでに最後尾が見えていた。そこを貫く虹色の光。装填を済ませているエリカは即席の地図を監視する。敵の大軍と戦闘距離への到達時間、進んできた方向から敵の現れた位置を特定する。 「おそらくあともう十分ほど走らせれば到着します」  影住が単独で世界を行き来出来るとするのなら、なにも軍団を作って進行する必要はない。標的間近に現れて攻撃すればいいだけの話だ。しかし一点に固まって進行するというのなら、誰かが意図的に集団を用意したとしか思えない。それならばその位置に何かがあると考えるのがいいだろう。 「思った通りだ」  まほがキューポラから身を乗り出して言った。 「十字架に貼り付けられたみほが見える」  淡々と状況を報告するまほの冷静さだ。即座に意識を集中しベタ住を呼び出す。 『現在、西住みほオリジナルらしき人物を発見。これから救出に向かう! ム!』  ベタ住の了解、の声を待たず、赤星が超進地転回で方向を変えた。そのまま後退。ティーガーの居た辺りに爆炎が上がった。

4 17/07/21(金)12:51:31 No.441088299

「いたか」  戦車が前進する。砲が火を吹く。即席の塹壕に隠れているⅣ号を吹き飛ばすように榴弾が弾けた。狙いは完璧だ。だが読まれていた。 「早い!」  あまりに早すぎる次の攻撃。装填の素早さの印。普通の選手ならここで終わっていただろう。土煙漂うなかで、狙いも完璧だった。だがすんでのところで避けた  1000mはある。見えるのはⅣ号、正面から受け止めても白旗は上がるまい。だが油断は禁物だ。 「削れるだけ削る」  こちらは次も榴弾の指示。それから先方の視界から外れるような蛇行を行う。蛇行の幅を広げて予想をつきにくくする。だが、次は当たった。砲手の腕が一級だ。いや、指揮官の腕がいいのか。 「距離を稼げ。至近距離で討つ」  地図の上に、みほのいると思われる位置に印をつける。 「この方向に向けては、砲を撃てない。おそらく相手も撃たないはずだ。オリジナルには、おそらくまだ価値がある」 「あれ? でもさっき隊長、この方向に榴弾撃ちましたよね!」  叫ぶエリカに、撃った、と事実確認をする。

5 17/07/21(金)12:52:00 No.441088398

「地面に向けて撃った。破片が飛び散っても、みほも西住の者だ。そのくらいで根は上げまい」 「いやいやいや、これだから西住流は……。もうちょっとみほのこと心配しましょうよ!」  エリカの指摘ももっともではある。ただそれを遮ったのは当のみほ……いや、陽住だった。 「うるさいなif見は! お姉ちゃんがだいじょーぶっていったら、だいじょーぶなの!」 「え? いや……」 「おねえちゃんはつよいんだよ!」  いや、そんなことは知っている。強く間違えない。だからこそ怖い。かつてついて行こうと思った背中は、あまりに遠くなってしまってエリカは逃げた。  だが、こうして傍らで、共に戦えるなら、信じるしかないか。そこまで考えてエリカは気づいた。 「まほりん――何故焦るんですか?」 「ん?」  追加の砲を撃って、まほりんが首を傾げた。こちらはナポリンの姉だからまほりん。念のため 「余裕があるのなら、ここで後退してもいいですよね。なんにしても敵のフラッグ車はあそこにいるわけで、もし空間を通って移動できたとしても、はりつけになったみほの位置は特定出来たわけですから、それだけでも充分な戦果です」

6 17/07/21(金)12:52:47 No.441088552

 まほりんは頷く。しかし声は固い。 「考えてもみろエリカ。何故私達がここに居られるのか。この世界の私達は、まだカーボンになっていない。彼女たちが存在するから我々もここに居られるんだ」 「……と、いうことは」  赤星が薄暗い笑みを浮かべた。 「こっちはタイムリミット有りってことね! もっと早く言って下さい、隊長」 「不確定な情報だから、口をつぐんでいたんだ。すまない」  ティーガーの速度が限界を超える。繊細なドライブテクニックで成せる技だ。 「突っ込んでくる!」  急な方向転換で履帯が外れなかったのは、テクニックのおかげではない。ただの奇跡だ。こちらの焦りを充分に掴んでの戦術。すれ違いざまに衝撃が襲う。装甲に守られたものの、無事では済まない。 「砲塔が旋回しない。」  まほりんが舌打ちする。実際は左右に軽く振れるが、九十度の角度に砲を向けられないのは痛い。

7 17/07/21(金)12:53:22 No.441088663

滑るように移動し、きれいな超進地転回を見せるⅣ号に、ティーガーⅠはバックのまま猛進した。今度はこちらから体当たりを仕掛ける番だ。軽くフェイントを仕掛けつつ突っ込む。おそらく欠住は射撃するという手段もあったに違いない。ただ、万が一外した場合、射撃後の隙に体当たりを受ければダメージが大きいのはⅣ号の方だ。それを警戒させるほど、赤星の操縦は巧みだった。代わりに突撃を敢行するⅣ号。  みほが乗っていた。  彼女の片腕は失われ、ただ制服の袖が軍旗のようにはためいていた。  身を乗り出し、こちらを全て覗き込むようにして。  すれ違う。 「て――――っ!」  まほが叫ぶ。まほりんが撃つ。Ⅳ号のシュルツェンがはじけ飛ぶ。これは体当たりでだ。もう片方がはじけ飛ぶのは砲撃のせいだ。まほは一回のすれ違いで、装甲を剥ぎ取ることにしたのだ。後ろを取ろうとするⅣ号に、今度は正面からの突撃を挑む。これをみほは受けて立った。すれ違いざまの砲撃は、両者とも外れる。

8 17/07/21(金)12:53:42 No.441088719

「まほりん」  まほが言った。 「あのみほが軍神と呼ばれる理由が分かった。あの子は、私達のみほよりもずっと避けない」  勝利の為に身を乗り出しさらけ出し、相手の車長を見つめる。何を考えているのか見通す為に。弱点を見つけて叩く為に。  まほりんは言った。 「だから右腕が飛んだか」 「おそらく飛ばしたのは私達だ」  Ⅳ号戦車も止まる。おそらく作戦会議をしているに違いない。誰と? 影住と? それとも。 「――それとも、なら、おそらくこの事件にはあともう一つ裏がある」  まほりんの言葉にまほは頷いた。 「ああ、あのみほは博打を打っている。大きな賭けだ」 「だいじょうぶ! みほは、おねえちゃんにかけるよ!」  陽住が割って入った。車内に笑いが満ちる。まほが言った。 「おそらくさっきので、みほはわたしのパターンを見越したはずだ。みほは、心の細かい動きから、指示の傾向まで観察して把握して、そして落とす。だから……」

9 17/07/21(金)12:54:00 No.441088763

 まほの作戦を聞いて、まほりんが口元を歪めた。 「悪いお姉ちゃんだ」 「よく言われる」  まほは言った。  無邪気で無垢な妹を、大洗に追放したのは西住まほ、陽住の姉だった。質実剛健の姉と、カリスマと運の妹。一度分かれることで、関西方面から関東方面に地盤を固め、いずれ西住流一派に日本戦車道を統一せしめんとする企み。大洗を潰すつもりだった。そうすれば姉が居ない中で戦うという初めての経験を終えて、みほはまた自分の手元に返る。しかしまほは、西住流は敗北した。みほは大洗に残った。 「お姉ちゃん、だいすき! でもね。大洗のみんなもだいすきなの!」  みほは明るく言った。 「華さんも優花里さんも麻子さんも沙織さんも、わたしが行く限り、地獄の底までついて行くって! 変だね。わたし、みんなと一緒にいるだけで天国なのに」  まほは目を閉じた。  後悔は無い。 「赤星。行くぞ」  指示を出した。陽住が歓声をあげる。 「さすがお姉ちゃん! かんぺき! むてき! サイコー! これだからわたしおねえちゃんだいすきなんだ!」

10 17/07/21(金)12:54:20 No.441088817

「お姉ちゃんも、みほが大好きだよ」  初めて口に出した。  エリカが涙を堪えた。クールに振る舞っていたはずの赤星も、そっと服の袖を使う。  陽住は一瞬あっけに取られた顔をして、それから頬を染めて極上の笑顔。 「うん! しってた!!」  最後の突撃に向けて、戦車が動き出す。  欠住が進撃の合図を出したのは同じくらいだった。  ここまでは計画通りと言っていい。ただ装甲を脱がされるのは、もう少し時間が経ってからだと思った。時間稼ぎにもならない。なにが軍神だ、と自嘲的な笑いが漏れた。  この荒れ地は、まるで自分の心の中のようだ、と欠住は思う。真っ暗で真っ黒で、最後の光もいま消えようとしている。 「パンツァー、フォー」  快速。  矢のようにⅣ号が突き進む。今度こそ仕留める。お姉ちゃんは足止めに来るはずだ。彼女が狙っているのは相打ちだ。時間のない今はそれがベストだろう。さすがだ。もう仕掛けに気づいているとは。  風に、髪がなびく。服がばたばたと風を孕む。

11 17/07/21(金)12:54:41 No.441088887

 Ⅳ号と欠住は空間移動が出来る。しかしその間は完全無防備だ。本当は離れた場所に現れてお姉ちゃんに奇襲を挑もうとしていたのだが、こちらに向かっていると知って待ち受けることに決めた。  さすがはお姉ちゃんだ。  全てのタイミングは完璧なはずだった。だが、予定が外れた。突然ティーガーが横面をこちらに向けたのだ。  撃った。避けられた。そのまま相手は後進。いや、待て、何故移動する。このままぶつかれば、ティーガーの白旗が出るかもしれないが、こちらも無事では済まない。まあ、そうなったらその前にさっきの砲が辺り、砲の反動を上手く利用してこちらが止まるだけだが。  目を細めて見つめる。お姉ちゃんがいる……しかし。お姉ちゃんじゃない! 「そか……お姉ちゃん、二人いたもんね」  おそらく車長のお姉ちゃんがお姉ちゃんに代わったのだろう。このお姉ちゃんは、欠住が推測するもう一つの策を実行するに違いない。 「……えげつない」  みほの口元が上がった。 「でも、さすがお姉ちゃん」

12 17/07/21(金)12:55:12 No.441088976

 ティーガーは、はりつけのみほを背にしていた。  欠住から砲撃すれば、絶対にオリジナルに被害が出る。  欠住はどうするか。やはり撃たない。撃てない。突っ込んできたⅣ号が、今度は横腹をさらけ出している。まほりんの戦術眼の確かさだった。  アンツィオに妹が行くように仕掛け、自分は大洗に出奔し、廃校になる大洗女子を戦車道で盛り立ててから再び黒森峰に戻った。プラウダの奇襲を予測出来ずに負けた西住流次期党首の、姑息な工作だった。短期間で強豪並みの力を身につけた大洗を、もう一人の西住流、西住みほことナポリンが率いる。二つの西住流が頂上決戦するために。  ――ま、お姉ちゃんは狸だから、心配してないけどね。  さっきの、妹の言葉が思い出される。出来れば狐と呼んで欲しかったな。確かに周囲を欺き操りしてきた。でもみほが大好きなのも、本当なんだよ。  だから、欠住。お前も救う!  救う為には勝たねばならない。どんな手段を使っても!

13 17/07/21(金)12:55:36 No.441089050

 赤星は前進した。今だと思った。まほが砲手なら射止められる。これで詰みだ。あそこで留まらなかったのは、みほの腕を知っているからだ。エリカに去られ、西住流に縛られたみほはふぬけのようだった。それがこっそり大洗のエリカと連絡を取り合い、彼女の居場所を確保する為に可能な限り手を貸した。薄暗い顔をして、それでも決して諦めなかった。一秒も隙もなく責め立てて、ようやく討てる人だった。  途端、操縦が効かなくなった。 「ううっ!」  二人のまほもうずくまる。エリカも強烈な目眩を感じた。 「お姉ちゃん! みんな! どうしたの!」  陽住が叫ぶ。  まほが呻いた。 「……ここの世界の、私達が侵食された」 「大丈夫だ……目眩が酷いだけ……うわっ!」  強い衝撃! 立て続けに、二度、三度!

14 17/07/21(金)12:55:52 No.441089098

「うおおおおっ!」  まほが吠えた。砲塔を動かす。……動かない! 「やられた……。赤星、後退……」  指示が、暗い戦車の中で霧散した。  プツン、と途切れた意識に。  わたし、ベタ住は震えた。 「お姉ちゃんがやられた。西住研究所も、落ちた」

15 17/07/21(金)12:58:11 No.441089496

うわああああお姉ちゃん負けちゃった! どどどどどうしよう っていうか、陽住のラッキーってどこいっちゃったのよぅ これからどうやって戦えばいいの? 明日は『軍神 欠住』の後半! 遅くなったらごめんね!!!

16 17/07/21(金)13:03:06 No.441090366

仕事中に来た! あとで見る!

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