虹裏img歴史資料館

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17/07/05(水)00:18:36 SSを... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1499181516335.png 17/07/05(水)00:18:36 No.437706158

SSを書いたよ ペパロニ入部編

1 17/07/05(水)00:19:02 No.437706260

そもそも、戦車道なんてちっとも始めるつもりじゃなかったんだ。 今でこそドゥーチェの副官としてそれっぽい所を見せちゃいるが、もともと私はド素人。 七人家族で住むには狭っ苦しい名古屋の町工場の娘で、戦車道なんて、たまに国営放送を回した時に目に入るお嬢様の競技だと思ってた。 戦術だの戦略だのチームワークだの、バカ学校出には難しい事をこねくり回してちんたら進むしょっぱいデントーブゲー。 だから偏差値と校風に惹かれて(特に偏差値は重要な問題だった)アンツィオに進学した時だって……戦車道やろうなんて事は、これっぽっちも思っちゃいなかったんだ。

2 17/07/05(水)00:19:17 No.437706317

一年の春、どうにか進学し高校へ滑り込んだ私は買ってもらったばかりの携帯を見つめていた。 画面に並ぶのはもちろん、可愛い同級生そして綺麗な上級生たちの連絡先。大通りでジェラートを味わいながら眺める成果は、私の心を大いに慰めてくれる。 やはりアンツィオに来てよかった。ノリが地元と近いし、可愛い女の子が多い。何より遊び慣れてる子ばかりだからお互い面倒がないし、パスタもうまい。 さっそく今晩あたり、誰か誘って遊びに行こうか……私がそんな事を考えながらバニラジェラートをもう一口食べたときである。通りの向こうが、にわかに騒がしくなり始めた。 屋台の呼び込みや女の子同士のお喋りとは違う、きっちりとした目的のある呼び声。どうやら、必修選択科目の履修勧誘のようだ。 私は大した興味もなくそちらに目を向ける。お勉強に関する事は聞こえないように出来ている耳だが、必修である以上いつかは選ばなくちゃならないものだ。 授業なんて選びたかないなあ、と思いつつ私は少し考える。

3 17/07/05(水)00:19:37 No.437706399

料理道……は少し考えたが、オリーブオイルの作り方やピザ生地の発酵のさせ方からやるらしく、とても面倒そうなのでパスした。 やっぱり、やるなら身体を動かすものだろうか。蹴球道(要するにサッカーだ)あたりがいいかもしれない。 練習は厳しめだそうだが体力にはそこそこ自信あるし、何よりモテると聞く。 ……でも考えることはみんな同じのようで、毎年履修者が多くレギュラー争いも厳しいらしい。レギュラーになれないのはちょっと嫌だ。 それからしばらく考えるものの、結局私の頭は「選びたかないなあ」という元の場所に帰結する。 迫ってくる締切日、そう言えば申込書どこやったっけという不安。 せっかく気持ちよくなってた心に水を差された事にイラっとしながらも、私はジェラートのついた親指を一口舐めると通りの向こうへ歩く。 とりあえず勧誘を近くで受けてみなくちゃ頭も回らないし、それに何より、どの授業にどんな可愛い女の子がいるかだけは早くに調べておく必要があった。

4 17/07/05(水)00:19:56 No.437706465

通り一面は明るい喧騒でいっぱいになっていた。 道の真ん中を歩くのは、私と同じ新入生のみんな。その両端には横断幕やのぼりを持った選択科目履修者が、自分の授業に引き込もうと大きな声を上げている。 やっぱり一番の盛り上がりを見せていたのは蹴球道の面々。人数が多いだけにやることも派手で、サッカーボール型のフーセンを上げながら肩を組んでチームソングらしきものを歌っている。 その賑やかさに惹かれる女の子も多い。私も少し見に行こうかと思ったが、あまりに人でごった返していたので後回し。 人の少ない方をゆっくり歩くと、チェス道、フェンシング道、金床飛ばし道(なんじゃそりゃ)の先輩方がこちらに期待するような目を向けてきた。どれもピンと来ず、曖昧に笑って通り過ぎる。 気がつけば道が開けていて、もう勧誘の一団は終わりだと気づく。 やっぱり目ぼしい科目はなかったけど、もう一周くらいしておこうか……。 そう考えて私がくるりと踵を返すと、胸にふわりと、柔らかいものが飛び込んできた。

5 17/07/05(水)00:20:14 No.437706536

「きゃっ」 「わ、っと……」 急に振り返ったからか、オリーブ色の髪をした女の子とぶつかってしまう。 手に持っていた紙束が路上に散らばり、何枚かが風に舞った。 「あ、ご、ゴメン! 今拾うから!」 「いえ、そんな……私も前見ていなくって、ごめんなさい」 少し癖のあるソプラノでその子は言った。もちろん私は急いでしゃがみ込んでさっさと紙束をまとめると、倒れたままのその子に手を差し伸べる。 するとその子は少し迷ったが、おずおずと私の手を握って立ち上がる。 華奢な見た目に似合わず逞しい手をしていて、私は思わずその子の事をまじまじと見つめた。 厚ぼったい眼鏡に、野暮な感じのでかい三つ編み。手入れがなされていないのか髪は少しぼさついていて、制服のシャツも少しくたびれ気味。 アンツィオにしては珍しいタイプの女の子。……だけど驚いたのは、眼鏡の向こうに覗く瞳がすっごく、すっごく綺麗だったことだ。

6 17/07/05(水)00:21:28 No.437706817

「怪我、ない? えーっと、安斎、さん?」 「えと、はい。大丈夫です。……あれ? どうして私の名前」 「ほら、このチラシに書いてあるからそうかなって。えーっと……戦車道? やってるんだ」 手元の紙に目を落としながら、人の良い笑みを浮かべる。 紙には「戦車道履修者募集」の文字とともに、安斎さんが書いたのであろうかわいい戦車のイラストが載っていた。 私がチラシを読み上げると、安斎さんは私の方にぐいと身をよせて目をキラッキラに輝かせる。 「戦車道に興味があるんですか!?」 むぎゅうと柔らかいものが私の身体に触れる。眼鏡越しの瞳はやっぱり綺麗で、心臓が高鳴るのを感じた。 「あの、戦車道、学園長の支援を受けてまた始まる事になったんです! うちはイタリア戦車中心だから個性豊かで他とは一味違う戦車道が楽しめるんじゃないかなって、  えと、それで、弾薬も燃料も全然余るくらいありますし基本的にタンケッテでのかく乱戦術が中心になるので、ええっと、あ! あと今後の結果次第ではP40が動かせるかもしれなくって、それから──!」 「ちょ、ストップ、ストップ!」

7 17/07/05(水)00:21:43 No.437706871

熱っぽく目をきらきらさせて語る安斎さんはすごく素敵だったが、分からない単語を並べたてられた私は思わず話を途中で遮ってしまう。 安斎さんはすぐにはっとして顔を真っ赤にし、身体を離して恥ずかしいげに顔をそむけ、もじもじと両手をすり合わせた。 「まあまあ、落ち着いて。えっと、私さ……」 「あ、え、えと、あのう……」 自己紹介をしようと思ったのだが、それより早く安斎さんは全力の勢いでチラシを一枚私に差し出す。 名刺でも渡すかのように頭を深々と下げ、上ずったソプラノで叫ぶように言った。 「もしよければ、是非来てください!」 愛の告白のようないっぱいいっぱいの言葉と、一枚のチラシ。 安斎さんはそれだけを残すと、こちらの返事も聞かずにくるりと背を向けて走り出す。

8 17/07/05(水)00:21:58 No.437706926

「あっ、待って、電話番号! ……行っちゃったかあ」 連絡先を聞こうと思ったのだが、既に安斎さんは人ごみの中。 私はしばらくの間チラシを片手に立ち尽くし、それから道のど真ん中にしゃがみ込むとどっと疲れたように溜息を吐いた。 ……一見イケてなさげに見えるけど、真っ白な肌にキラキラした瞳。オリーブ色の髪もちょっと手入れをするだけで全然見違えるだろう。 そして、いい意味でアンツィオ生らしからぬ性格。好きなものにあんなに夢中になれるなんて、恥ずかしがりやな性格と相まって、ものすごく魅力的に映る。 一言で言うならば、めちゃくちゃカワイイ。 この日に出会った女の子全てがぶっ飛んでしまうような可愛すぎる女の子との出会いに、私はこの年一番の雷に打たれたような衝撃を受けていたのだった。

9 17/07/05(水)00:22:57 No.437707131

ながいので残りはテキストで! ちなみにCV33の操作を教えるシーンが出てくるけど もちろん動かし方なんて一切分からないから全部適当だぞ!信用すんなよ! su1925694.txt

10 17/07/05(水)00:25:22 No.437707676

ここからあの大学選抜戦でのジェットコースター大立ち回りに繋がるの…いいね! この場合だと麻子に負けず劣らずペパロニが操縦手の天才ということになる気がする

11 17/07/05(水)00:29:56 No.437708549

(「」ーチェ…ペパロニさんの出身地は栃木ですよ…)

12 17/07/05(水)00:31:46 [sage] No.437708938

>(「」ーチェ…ペパロニさんの出身地は栃木ですよ…) ごめん!そして指摘ありがとう! 好きに吊るしてくれ!

13 17/07/05(水)00:34:11 No.437709431

ペパロニの出身は益子焼で有名な益子だ! ちょっと行ったところににツインリンクもてぎっていう超有名な大規模サーキットコースがあるんだぜ!

14 17/07/05(水)00:34:54 No.437709565

>少し癖のあるソプラノの変な声でその子は言った

15 17/07/05(水)00:38:05 No.437710111

初期安斎は本当に人集め苦労したんだろうなと… あのスタイルにするまでにどんな苦い思い出を背負ってきたんだろう

16 17/07/05(水)00:38:36 No.437710185

いい...

17 17/07/05(水)00:39:30 No.437710339

というかあのアンツィオってアンチョビの流派全部注いだ結晶だろうし あの全国大会で背負ってるものはまほにもみほにも負けないくらい重いと思うんだよね

18 17/07/05(水)00:42:43 No.437710942

芳賀郡益子町大字名古屋かも知れない ペパロニ家の屋号が名古屋かも知れない 益子から下請の関係で引っ越したかも知れない ちよみ先生の出自を隠すためボカしたかも知れない なんにしてもいい話だったから細かいことは気にしなーーい

19 17/07/05(水)00:43:12 No.437711042

「アンチョビ姐さん髪綺麗なんすから人集めするならもっと見せにいった方がいいっすよー」 「そうですよー」 「そうですか…?」 「アンチョビ姐さん目綺麗なんすから人集めするならもっと見せにいった方がいいっすよー」 「そうですよー」 「そうかなー?」 「アンチョビ姐さん隊長なんだから称号とかつけた方がわかりやすくていいっすよー」 「そうですよー」 「そうかー?」

20 17/07/05(水)00:46:02 No.437711610

一生懸命チラシ配るドゥーチェになる前の安斎いい… ふとここで放送前にチラシを配るシャーマンキチを思い出す

21 17/07/05(水)00:48:32 No.437712118

>というかあのアンツィオってアンチョビの流派全部注いだ結晶だろうし >あの全国大会で背負ってるものはまほにもみほにも負けないくらい重いと思うんだよね だからこそさあ、大洗とやって負けた時に「今年こそは勝てると思ったのになあ」って笑いながらいうとこが泣けるんだよね… ほんとは一番つらいのドゥーチェだったろうに

22 17/07/05(水)00:53:25 No.437713021

いい試合をして 美味しいご飯を食べた 勝つことも負けることもあるけど試合後に対戦相手と一緒に食べるご飯は美味しい それはアンツィオにとってかけがえのない経験だよ

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