虹裏img歴史資料館

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17/07/02(日)23:35:16 SS『こ... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1499006116974.jpg 17/07/02(日)23:35:16 No.437304596

SS『こころスカー』 ~Self Portrait②~ 新カメさんチームの車長、愛澤こころちゃんのお話です *こころちゃんシリーズ続編です ●前回● 過呼吸を起こしたこころちゃんは倒れてしまいます

1 17/07/02(日)23:35:32 No.437304679

「あれ?ここは…私のお部屋だ」 気付くと自分の部屋のベッドに横になって居た。 ヘリで眠ってから帰宅するまでの記憶がない。 目を擦りながら間違ってないか周りを見回した。 うん。私のお部屋で間違いない。 「愛澤さん、起きた?おかゆあるから食べない?」 「に、西住隊長?なんでいらしてるんですか?ま、まさかぁ…」 声をかけられるまで西住隊長がいらっしゃる事に気づかなかった。 「そのまさかだよ。大丈夫。とっても軽いからびっくりしちゃった」 ん?そのまさかって…おんぶですか…? 明るい栗毛色の髪を揺らして微笑みかけてくれる西住隊長。 ふわふわした雰囲気でとっても可愛らしい。 うん、この人がこんな近くに居たら好きになるのは無理もない。 澤先輩の気持ちも逸見先輩や赤星先輩の気持ちも理解できた。

2 17/07/02(日)23:36:12 No.437304882

「ご、ごめんなさい!私…お薬飲んで寝ちゃって!申し訳ございません!!」 「また謝る…そんなに私って怖い?愛澤さん、入学した時すごく甘えてくれたのに…最近は梓ちゃんばっかり」 「本当に申し訳ございません!!あの時は…その…恐れ知らずと言うか…」 悲しそうに眉を下げた西住隊長に申し訳なくて、おろおろしながら謝った。 「ペコさんとの写真、素敵だね。枕元に置いてあるんだ。あそこにかけてあるコートだね…大事にしてるんだ…」 枕もとに置いているオレンジペコさんと一緒に撮った写真を見つかってしまった…クローゼットに仕舞ってなかったコートも… 「いやいや何一つとして機密情報はもらしてません!!ごめんなさい!!西住隊長と澤先輩と撮った写真もホラ!!ここに置いてますから!!」 機密情報なんてない…ウチの学校にはないんだよ… 本当の事を言う。 ちょっぴり怖かったの西住隊長の事が。ちょっぴりだ。本当に。 大きすぎる。私がどんなに見上げても背中は全く見えない。 西住隊長と呼び続けているのはその畏怖のせいだ…学校以外で過ごす時間が少ないのもあるんだけど…

3 17/07/02(日)23:36:30 No.437304959

「あ~あ…梓ちゃんばっかり。疲れちゃったなあ…こころさん?少し壁際に寄って?そう。…おじゃましまーす」 「西住隊長…何を…」 「あなたにとって梓ちゃんがお母さんなら私はお婆ちゃんだもん。いつもね甘やかしてばかりってお母さんに叱られちゃうんだよ。でも仕方ないよね?可愛いんだから」 ベットにもぐりこんできた西住隊長は優しく腕枕をしてくれた。 甘くて良いにおい。熱すぎず冷たすぎずほど良い人肌感。可愛らしい声。優しいしぐさ。 「西住隊長…そんなに私の事お話するんですか?」 「うん。梓ちゃんとね…どんどん大きくなるから…梓ちゃんが寂しいってね…だから叱ったの。あなたなんて私の気持ちわからないでしょーって」 「西住隊長の気持ちですか?」 「そう。お外に好きな人作って、後輩にも好き好きって言われて…それをただ見てるしかない私の気持ち…ね?」 「だったら…西住隊長がとっちゃえば良いんですよ!私なんて敵わないし、ペコさんももしかしたら…」 「はい、こころさん?"私なんか"禁止ね?次聞いたら…どうしよっかなあ…梓ちゃんの代わりに隊長やってもらいまーす!」

4 17/07/02(日)23:36:46 No.437305028

「それは勘弁して下さい!!まだできません!!言いませんから!もう言わない!!」 「そっ、それで良いの。じゃあ未来の隊長さん?おかゆ食べましょうね?」 西住隊長はそう言うとベッドからするっと出て、制服のリボンを直した。 「あ、あの!もし澤先輩の事好きなら…その…本気を出されたらいかがでしょうか?」 私も澤先輩の事は好き…なのだが、その時そう言わずにいられない何かを西住隊長から感じた。 西住隊長は背を向けて振り向かずに天井を仰いでこう言った。 「ダメだよ。あのコ…自分が納得しないと絶対にうんって言わないもの。そういう意味ではいい勝負。自分で育てたのに…それが…障壁が破れない」 シリアスな堅い空気は西住隊長の「おしまい」という一言で元の空気に戻った。 西住隊長はすぐに台所から温めたレトルトのおかゆと食器、湯豆腐(タレでなく塩少量)、魚肉ソーセージ一本(袋入り)とゆで卵二個(ハードボイルで殻つき)、バナナ三本(当然皮付き)を持ってきてくれた。 一番驚いたのは最後に持ってきて下さった30度前後に温められたポカリスェットがリットル単位で用意されていた事。

5 17/07/02(日)23:37:02 No.437305117

それを「どんどん飲んでね?まだたくさんあるから」と笑顔で言われた時には「はいぃ…」と項垂れるしかなかった。 この組み合わせは…初めて見た。 小皿に並ぶはビタミンB群が配合された50mgのカプセル、白い錠剤は亜鉛だと言っていた。そこに市販のビタミンCがたくさん。 食中に飲んでね?と言われた。 そして…「沢山おしっこをしなさい」と厳命された。 「こころさん、なんなら生理食塩水にしようか?ビタミンの調合に少しかかるけど…」 「いっ、いいえ!ご飯を頂戴します!!あー美味しそうだなあー!ゆで卵からいこーかなあー」 そう言って食べ始めた私をじーっと見ている西住隊長。 気まずくなって訊ねてみた。 「に、西住隊長は一緒にお召し上がりにならないんですか?」 「うん?んーん。食堂で"心臓にやさしいオムレツのチーズ入り"を食べてきたから。鶏肉のささみが無くてごめんね?上手に茹でるの大変だから…」 そういう問題では…黒森峰の諜報科に所属していると少しズレるんだろうか?入らなくて良かった。 「良く噛んで食べてね?見てるからね?」 この笑顔だ…この笑顔だと断るどころか期待に応えたくなる。

6 17/07/02(日)23:37:22 No.437305221

その後、たっぷり咀嚼して2時間かけて食事を終えた。味は…憶えていない。というより感じていなかったに近い。 食後、私が歯磨きをしている間に西住隊長がクッションやら寝具を丸めて作ってくれた簡易型の座椅子に座り、喉の様子と瞼の裏の色、また脈をとってから簡単な検査をしてくれた。 てのひらを握ったり開いたりする。 検査が終わると西住隊長は「こころさんが眠くなるように」そう言って掌をマッサージしてくれた。 少しくすぐったかった。 「あれ?こころさんもくすぐったいの?」 「いいえ、そこまでは。大丈夫ですよ」 「良かったあ…梓ちゃんなんて顔を真っ赤にして、ふぅぅぅうんとか、はぁぁぁああんとか言うんだよ?あ…ごめんね…ごめんなさい…」 「あははは…大人すぎてなんの事だか解りませんです…はい…」 それは西住隊長がマッサージをしたからだろう。 私が同じ事を澤先輩にしても「もう少し強く!」とか「良い感じ」とかで終わると思う。 この人は人を勘違いさせる天才だから…大洗(ウチ)のジゴロは世界一…

7 17/07/02(日)23:37:38 No.437305308

「そういえばこころさん、黒森峰の時入院してたでしょう?病院何処だった?」 「里見先生の所です。あの大学病院の分院です」 「ああ、内科の里見先生ね?外科処置は?」 「なんでも院外から来た先生で…本間先生って言うおじいちゃん先生でした。目の傷と骨折した右手、あと足の骨折の治療を同時にして1時間だったとか…」 「本間先生!?いらしたの!?本当に!?」 おっ!?強くなったあ!!うん!痛い!! 「はい。鼻の大きな優しい先生でしたよ?」 「…先生…また黒森峰に来て下さったんだ…お弟子さんは!?間先生っていう先生は居なかった!?」 西住隊長が興奮する度に私の掌には渾身の力がこもった指圧が入る。 これでは眠くならない…でも変な声を出すよりは良いか。 「はい。同級生にお孫さんが居たんですけど…孫の本間丈倫以外は見てないです」 「そう…ツギハギ先生は居なかったんだ…でも本間先生のお孫さんが同級生なのね。なんだか嬉しいなあ」 西住隊長も怪我をした事があったんだろうか?でも黒森峰の時の話を優しいお顔でされているのは私も何だか嬉しかった。

8 17/07/02(日)23:37:54 No.437305391

「こころさん、少しだけ…ごめんね?」 そう言って私の目の上に掌を置いて、瞼を閉じさせた。 「こころさん、今日みたいにお胸がハアハアって苦しくなったのは大洗に来てから?」 「はい?…いいえ…事故の車内で救援がくる寸前に…それで…意識がなくなって…気付いたら病院で…里見先生と本間先生が…」 「うん、もう良いよ。ありがとう。ごめんね?少し気になってたの。お薬はどんなやつだった?錠剤かな?飲むとすぐ眠くなっちゃうやつ?」 西住隊長はいつの間にかアロマオイルを手に付けて、前に骨折した右手のところを念入りにマッサージしてくれている。 「うーん…粉でした。量はすごーく少ないです。甘いのを混ぜてくれたって言ってました。ご飯の後に飲むんですけど飲むと寝ちゃいます。2時間くらいですかね。お薬はだんだん漢方になりました」 「そう…うん、さすが里見先生だね。もうお薬は飲んでないんだよね?」 「はい。大丈夫です。天気が悪い時に頭痛がするので頭痛薬を飲んでいます」 「…ならいいの。ありがとう。こころさん、ちょっと待ってて?このタオル借りるね?」

9 17/07/02(日)23:38:09 No.437305458

そう言ってタオルを二本持って西住隊長は台所に行かれた。ポットからお湯を出す音が聞こえる。 戻ってこられると温かくて湿ったタオルを首の後ろに当ててくれた。 「うん。これを目の上に。大丈夫。手を握ってるから。眠っちゃっても良いよ?」 「そんなあ…折角二人きりになれたのに…」 タオル越しに西住隊長は首をマッサージしてくれている。 時々西住隊長の良い匂いがして頭がクラクラして眠くなってきていた。 「西住隊長…ひとつ訊いてもいいですか…ずっと前から気になってたんです…」 このまま眠ってしまう前にどうしても訊きたい。ずーっと気になってたから… 「なあに?」 「西住隊長が…助けた…赤星先輩達のこと…もし…私だったら…私でも助けてくれましたか?」 一瞬だけ手が止まった。 「もちろんだよ。それが誰でも助けるよ。もちろん愛澤さんもね。訊かないでも判るでしょう?怖かったんだね…愛澤さんの時も私が居てあげられたら…ごめんね?」 知ってた。助けるって知ってた。そういう人だって。西住隊長は…そういう人だって知ってた。

10 17/07/02(日)23:38:39 No.437305615

喉の奥がぎゅーってなって、閉じた瞼から涙がボロボロ出てくるのが判る。早く止めなきゃ…そう思った瞬間におでこにやわらかい何かが触れた。 あたたかくて、やわらかくて、少し湿ったなにか。 「私は何も見てないから…さっき飲んだお水が目から沢山でちゃっても平気だよ。誰にも言わない…私と可愛らしい未来の隊長さんだけの秘密だから」 もう止まらなかった。その瞬間、タオルを取って西住隊長の胸で大泣きした。 泣き止んで落ち着いた頃、西住隊長はささやくように訊ねた。 「こころさん、誰かと一緒に眠ったのはいつ?私と梓ちゃんと一緒の時だけ?もし答えられないなら無理しなくて良いから」 質問の意図が解らなかったが、誰かと一緒にベッドで寝たのはお二人だけなのでそのまま答えた。 「うん。解った。なら今度また三人で眠ろうね?梓ちゃんも眠れていないみたいなの。今度は梓ちゃんを真ん中にしてね」 今度こそ眠りの誘惑に抗えなかった。 あの安心できた時間。 寝返りを打つ度に抱きしめてもらえる温もり。そのぬくもりに今包まれている。 私は西住隊長の心音を聴きながら胎児の様に安らぎの眠りに落ちた。 ○●○

11 17/07/02(日)23:39:22 No.437305819

翌日、学校に行って普段と変わりなく授業を受けた。 「こころ?アンタ…ううん。なんでもない。その調子なら大丈夫そうね?」 あさりが私を気にして何度も見に来てくれた。 「変なの…?」 変なのは私だったんだろう。 戦車道の時間になり、誰よりも先に戦車倉庫に行って私達の愛車38(t)ヘッツァーを見た時だった。 それまで感じたことのないような悪寒が全身を包んだ。 そして骨折した腕が痛む。次は呼吸が浅くなった。 ポケットに忍ばせて置いたビニール袋を口に着けて呼吸をする。 これで平気、そう思って一人で乗り込むとまた呼吸がおかしくなる。 右目の傷跡に鈍痛が走って頭痛が止まらない。 そう…その日を境に私は戦車に乗れなくなった。

12 17/07/02(日)23:40:13 No.437306033

よろしければ読んでみてください *少し長いので続きはtxtで…   su1923417.txt こころシリーズ暫定まとめ su1923410.txt

13 17/07/02(日)23:54:09 No.437310016

きたか!

14 17/07/02(日)23:57:01 No.437310772

仲間を見捨てなかったみほ 仲間に見捨てられなかった梓 仲間に見捨てられたこころちゃん 融合!

15 17/07/03(月)00:03:14 No.437312370

こころちゃんハッピーエンドまでの壁は高いね…まぁ高ければ高いほど乗り越えた時がキマるんだけど それはそれとして脇で地味にスーパードクター大戦になってて吹く 次が楽しみで仕方ない!

16 17/07/03(月)00:06:37 No.437313301

お大事に! こころちゃん同様身体は大事にせなあかんよ

17 17/07/03(月)00:08:25 [sage] No.437313756

>きたか! きたよ!ありがとう!! >融合! ここに澤ちゃん入れないとね…こころちゃんも見捨てられない人になりそうだね ありがとう!! >こころちゃんハッピーエンドまでの壁は高いね…まぁ高ければ高いほど乗り越えた時がキマるんだけど 一人じゃ乗り越えられない問題なんだと思うんだ…誰にでもあることなのかもしれないけど >それはそれとして脇で地味にスーパードクター大戦になってて吹く >次が楽しみで仕方ない! 今回有名どころで好きなドクターぶち込んでるからね!ありがとう!! >お大事に! >こころちゃん同様身体は大事にせなあかんよ ありがとう!夏風邪は酷いからみんなも気をつけてね!ありがとう!!静養します!!

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