17/06/30(金)03:33:17 SS 愛... のスレッド詳細
削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。
画像ファイル名:1498761197059.jpg 17/06/30(金)03:33:17 [sage] No.436648648
SS 愛里アズ 『産みたて卵のFlan』 百合・産卵が含まれます ご注意を、稚拙な文ですがよろしければ引き続きどうぞ
1 17/06/30(金)03:33:34 [sage] No.436648665
朝日が窓から厚いカーテンを裂きながら陽光を部屋に垂らす、思わず目を細めるような明るさは活気を運ぶはずだったのだが、想定された効果とは裏腹に、私は深くため息をついていた。 目覚ましの代わりに携帯電話からベルの音が鳴り響いた後、通話口越しに我らが敬愛する戦車道の隊長が今日の講義と、戦車道の演習を休む旨の連絡を届けてきたからだろうか。 告げられた理由は体調不良、酷い風邪かどうかを訪ねたら、兎に角大丈夫だからとしか言葉を返されなかった。 最近の若者らしく、SNSのチャット欄経由で休みの連絡を届け出なかったのは褒めるところだろうか? だが私として大切な焦点として重要なのはそこでは無く、あの小さく揺れる乳白色の髪の色をしばらく見てないと言うところに尽きる。 「嫌われたかな」
2 17/06/30(金)03:33:58 [sage] No.436648690
ぼそりと鬱っぽいと自嘲しながらも、それでも愛里寿に嫌われたのでは無いかという根拠の無い自虐妄想に駆られそうになる。 心を落ち着けようとタバコを一服口にくわえて、ふと彼女がある日私のタバコを一瞥して、顔をしかめていたことを思い出す。 火をつけかけていたタバコのフィルターをかみしめた後、吸い殻入れに投げ捨てた。 ため息をつき、購買で買ったあめ玉を口の中に放り込んで、チェリーの味が口の中に広がっていくのを楽しんだ。 舌で転がすと、カコカコと歯に当たる音が響きわたり、とても楽しい。 そんな時、愛里寿がふと私が立ち食いをじぃっと見ていたことを思い出す、……行儀悪かったかな。 「あ、駄目だ、ちょっと泣きそう」
3 17/06/30(金)03:34:17 [sage] No.436648714
愛里寿の目線を思い出せば思い出すほど、浮き上がるのは彼女から嫌われてしまったのでは無いかという疑問ばかり。 なんで今日に限ってこうもネガティブな気分なんだろう、こういう時は私も友達の伝手を使うに限る。 具体的には。 「メグミ、出席届け私と隊長の分出しといて」 「えっ!あんたまた!?」 「……今朝からちょっと気分がのらなくて」 隣の棟に住まう親愛なる友人殿に両手をすりあわせながら、頭を下げる。 口にした理由はそれこそ適当に言ったが、メグミはため息交じりに手を振りながら頷く。
4 17/06/30(金)03:35:15 [sage] No.436648771
「高くつくわよ」 「……BCの、ウィスキーマカロン」 「はぁ……今後ともご贔屓に」 「やっぱり持つのは友人よね、何時もありがと」 そう言って私はメグミに手を振る、そんな彼女を私はお菓子につられる安い女だなんて思わない。 女子は誰だって甘いお菓子には弱いのもの、それが高い店の逸品なら尚更だ。 私はメグミと別れた後、カタカタとローファーで床のタイルを蹴りながら寮の道を自室へと戻っていく。 結局、自室に戻って何でもなくだらだらとしているのだろう、そう思いながらも階段を上った後、部屋のドアを開けた。 そこから見えたリビングからは、鮮烈な夏の日差しが部屋に刺さっているのが見て取れる。 私はため息を吐き出しながら、後ろ手でドアの鍵を閉めた後、衣服を脱ぎ捨て椅子の背もたれに放り投げる。 今日は誰とも会わないだろうから、部屋でゆったり過ごすに限る。
5 17/06/30(金)03:36:05 [sage] No.436648819
だけど、そういう日に限って私の携帯はうるさく騒ぐものだ。 今朝と同じベルの着信音に私はふと、何かあったのかと逡巡しつつ放り投げた衣服から携帯を取り出す。 携帯の呼び出し音に出ると、恐る恐る口を開く。 「はい、アズミです」 言った後に、まるで叱られた子供みたいだななんて思いだながら、相手の返答待ち。 自主休校への些末な罪悪感と、しわがれ声の教授の嫌みったらしい声を思い出すと頬が微妙に引きつるのを感じた。 だけど電話口に響いたのは、ひどく具合の悪い幼い声。
6 17/06/30(金)03:36:26 [sage] No.436648836
「……アズミ……少し、来て」 「ど、どうされました!?」 「いいから……部屋の鍵は開けてあるから……」 愛里寿は口数が少ないから、体調が悪いのか不機嫌なのか分かりづらい。 不安と、彼女の機嫌の具合を図りかねた私は彼女の呼び出し理由を聞くこともできず、床に落ちた衣服を羽織って部屋を飛び出した。 廊下を慌ただしく駆けて、何度か入ったことのある愛里寿の部屋のドアを開く。 愛里寿はいささか疲れたような顔をしながら、布団に仰向けに寝そべっていた。 青ざめた顔色からは酷く具合が悪そうに見え、私は胃をぎゅぅっと潰されるような感覚に見舞われた。 「隊長、どうしました!?」
7 17/06/30(金)03:36:51 [sage] No.436648863
そういう私の声に反応して顔をゆがめながら、愛里寿がベッドから上体を起こす。 「……アズミ、肩貸して」 「えっ、は、はい!」 私は言われるがままに、愛里寿の伸ばした手を受け取り肩を貸しながら立ち上がる。 「……ちょっと、体調が悪いから……一緒に病院に……」 「そ、そんなに体調が悪いなら、救急車を……!」 そう言って私が携帯電話を出そうとしたところで、私の手首に愛里寿の手が伸びる。
8 17/06/30(金)03:37:37 [sage] No.436648902
「……救急車は駄目」 「何、で……ですか」 そういう私に対し、愛里寿は少しだけ目を細めながら、嬉しそうに頬を綻ばせながら呟く。 「子供が……できた、私とアズミの子供」 あまりに突拍子も無い、空想めいた言葉の意味をしばらく考え、答えを見つけあぐねた。 そして、私の口から静かに吐き出されたのは、『はぁ』という意味をなさい言葉だった。 あまりに何もかもが結びつかないが、愛里寿はとてもうれしそうに携帯を取ろうとした私の手を取り、自身のお腹に優しく押し当てた。 愛里寿のお腹はふにふにと柔らかく……そして、臍の下に奇っ怪なこつこつとした石のような堅い何かを感じ取った。
9 17/06/30(金)03:38:07 [sage] No.436648931
「ね……?分かる……?私とアズミの卵、お腹の中で動いてる……」 そう言って私の指先に触れた愛里寿の柔らかな肌と筋肉の下にある、奇妙な堅い感触が私の意識を益々混濁と困惑に陥れた。 「卵……?愛里寿、さん……何を……?」 「アズミは知らないの……?女の子同士で相手の子供が欲しいって思ったら、女性は卵を産めるようになるんだよ……?」 私はそんな話は義務教育を経て、一度たりとも耳にしたことは無い。 島田一家の義務教育はどうなっているのか、一度あの飄々とした顔の女主人に問い詰めた方がいいのでは無いだろうか。 いや、だが今私がなでているすべすべとした少女の腹の中には、確かに堅い輪郭と、奇妙な膨らみの感触を私の手の平に届けている。 私の常識と今現在愛里寿の中に起こっている事象の釣り合いがとれていない、信じるべきは机上の常識ではなく、手中の現実だ。 愛里寿に肩を貸しながら、部屋を出て寮の廊下を歩き始める。
10 17/06/30(金)03:38:31 [sage] No.436648961
「分かった、分かったわ、何も分かっていない気がするのだけれど、それでも一応分かったことにする。それで……病院に行って、愛里寿……はどうしたいの?」 敬語も忘れ、私はただ愛里寿に言葉を紡ぐ。 そこまで言って、私は改めて何を言ったのかを思い返し、愛里寿の顔を苦々しい顔で眺める。 愛里寿が返す言葉なんて分かっている、彼女は卵を胎内に宿した理由を口にしている。 「決まってる、アズミとの子供が欲しい」
11 17/06/30(金)03:39:21 [sage] No.436649008
私は彼女の決意を秘めた瞳と、紅潮した頬が私の顔を見つめ返す。 少しの時間が流れた後、私は彼女から顔を反らして廊下から見える外の風景を眺める。 窓の外では雲がせわしくなく動き、黒色の雲を遠くから運んでくる。 不安をかき立てるような雨雲は、私の心を写しているかのようだった。 「……ちょっと考えさせて」 私は愛里寿へそう言って、車庫までの道を歩いた。 ---
12 17/06/30(金)03:40:11 [sage] No.436649054
車の中で、助手席に腰掛けた愛里寿は嬉しそうにこれからの事を語り。 私はウィンカーでポツポツと降り出した雨をフロントガラスから剥がし、カーナビの指し示す方向へ車を走らせ続けた。 車内は奇妙な熱気に包まれていて、汗が額を伝いながら流れ落ちていく。 「……いつから? いつから愛里寿は卵を?」 私は単純に沸いて出た愛里寿に疑問を投げかけた。 質問の内容の意味を考えるたびに頭痛がする。 愛里寿は笑顔で私に言葉を漏らす。 「先月くらいから少し、お腹に違和感が出てきたの」 「……一人で、卵は妊娠して出産できるの?」
13 17/06/30(金)03:40:59 [sage] No.436649107
そうだ、勝手に恋をして、子供が出来るのならば相手なんか空想の相手で十分出来てしまう。 そして、その質問をした理由を考え、私は益々苦々しい顔をした。 外の雨脚はより強さを増していて、車の車窓を強く叩き始めている。 「ううん、二人で出産に必要な行為が必要だって、お母様が」 「……そう」 あの飄々とした若奥様が、愛里寿に子供が出来る結果だけを伝えている意味を考えてため息をついた。 それはまあいい、問題は幾つもある普通の人間は産卵なんてしない、それが私が考えた結論だ。 それなら世界は産卵患者で一杯に満ちているはずだ、そう思った。 だがしかし、私が愛里寿を運んだ産婦人科医は然もありなんといった顔を私に見せながら、口を動かす。
14 17/06/30(金)03:41:24 [sage] No.436649136
「恋煩いですね、この頃の年の女の子にはよくあることです」 「そんな馬鹿な……!」 私はドクターの言葉に、青ざめた顔で叫ぶ。 常識が再び私をあざ笑っているような気がして、気がつけば私は医者に吠えていた。 「馬鹿な……と言われましても……実際に彼女は女性型恋煩いで受卵期にあります」 口を空けながらドクターの言葉を聞いている内に、私の中の常識が音を立てて崩れていく。 なるほど、私だけが知らなかった事実なのだろう、もうそれは信じるしかない。 愛里寿が私をからかおうと、お腹に何かを仕込んだという可能性がかき消えたことに益々苦い顔をする。 「一般的には女性同士の恋による、脳内バランスの変動と恋愛感情の自覚によって、視床下部松果体から刺激された卵巣が、子宮への卵子の定着を発生させ。卵子の分裂と鶏卵化変化を起こした後、産卵の準備を整えます」 「……その後は?」
15 17/06/30(金)03:42:11 [sage] No.436649182
そう言った私の声は掠れている。 「パートナーとの、女性器同士の粘膜接触による卵細胞の受精反応……精子とは違うのですが、パートナーにその気がある場合、似たような液を発生させ、卵の受精卵へと変化を起こします。そして数ヶ月後、卵に覆われた子供を産卵します」 頭が痛い、世界はどうやら同性愛に優しい世界だったようだ。 だが私が知る限り、同性同士で子供を幼少期に育てていると言う話は聞いたことは無い。 「どうしますか、愛里寿さんのパートナー……にしては随分歳が離れていますが……」 医者の目と口ぶりは、言外に私に妥当性のある言葉を紡いでいる。 「アズミ、私……」 愛里寿の声は嬉しそうに上気した気配を漂わせいていた。 次に私が口を開くまで、だったが。
16 17/06/30(金)03:43:17 [sage] No.436649241
「……堕ろす事は出来るんですか?」 「アズミ!?」 愛里寿の驚いたような声に対して、産婦人科医の妙齢の女性はしゃべり出す。 だがここで驚いているのは愛里寿だけだ、そういう意味の常識だけがかみ合っている事に、なんとか世界はギリギリで理性を保っているように思えた。 「出来ますよ、今堕ろせば少し大きな鶏卵に似たものが、愛里寿さんの胎内から排出されます」 「アズミ、いやだよ……私アズミとの子供が欲しいの、二人で育てたい」 私は愛里寿の瞳に滲んだ液体を眺め、ため息を吐き出す。 呆れというよりは、これからの説得を思うと骨が折れるように思えたからだ。
17 17/06/30(金)03:43:41 [sage] No.436649261
「……ドクター、少し二人で話をしても」 私がそう言うと、ドクターは苦笑いしながら言葉を紡ぎ出す。 「それがいいと思います、子供の一生を決める大事な事です……慎重な選択をお願いいたします」 産婦人科医は、柔らかにふにゃふにゃと笑顔を漏らしながら私たちを診察室から送り出した。 愛里寿はお腹のへその下を手で撫でながら、悲しげな気配を私の背後から漂わせていた。 堪えきれずに見た外の風景は、鈍色の空模様を移し窓に雨水をたたきつけて、私の目線を遮っている。 忙しなく歩く看護師も、私たちのようなカップルなど見飽きてるのか、会釈をして通りすぎていくだけだ。 「嫌だよ……私、堕ろしたくなんかないよ……」 私は一日で酷使され、ボロボロになった常識を握りしめ、愛里寿へ向き直って口を開いた。 大学の先輩ではなく、人生の先輩として愛里寿に語りかける。
18 17/06/30(金)03:44:58 [sage] No.436649332
「……愛里寿、そこまで私を想ってくれているのも、愛してくれてるのも分かった、けど、けどね? これは子供の為でもあるの」 「子供のため……?で、でも、私頑張るから……!」 眉をひそめながら私は愛里寿の言葉を聞き、私はまた口を動かす。 「違う……頑張る、とか頑張らない、じゃないの。まだ私も、愛里寿も子供を育てるには若すぎるし、それにあまりに子供に対して無責任すぎる……子供を今産んだとしても、本当に育てきれるのか、幸せに出来るのかの確信はあるの?」 そういう私に対して、愛里寿は目尻に涙を浮かべ泣きそうな顔をした。 きっと生まれてから初めての衝動的な選択だったのだろう、ただただ好きで出来てしまって、それでしっかりやり遂げるのが責任だと想ってしまったのだろう。 だけど、それはただの彼女の思い込みであることを理解させなくてはいけない。 無責任非行の行く末なんて、考えるだけで背筋に悪寒が走る。 「たとえこのまま産んだとしても……子供がかわいそうよ」
19 17/06/30(金)03:45:26 [sage] No.436649365
そう言うと、愛里寿はしばらく目をつぶって数粒目尻から滴をこぼした後。 意を決したように面を上げて、私の顔を見た。 その顔を見て私は目線を反らしてしまう、愛里寿の良心を踏みしめてるような心地がして心地悪かったからだろう。 「……分かった、アズミも私の事をしっかり考えてくれた……だから、そう言ってくれたのね……」 私は内心胸をなで下ろす。 だが次に愛里寿の口から放たれた言葉に、目を見開く。 「だから、産んだ卵を、私と一緒に食べて」 「……食べ……?」 意味を理解しかねた、口を開けて愛里寿の吐き出す言葉を聞き続ける。 食べる?何を?ご飯を?いや、何一つつながらない、卵を?食べる?
20 17/06/30(金)03:45:48 [sage] No.436649385
「私と、アズミの初めての子供は諦める、だけどその命を無意味にしたくない」 私の口から吐き出そうとした言葉は、何の音も載せずただ吐息として吐き出される。 それでも尚愛里寿は私の手を握って、言葉を続ける。 「私の初めての恋と、その結末に一緒に向き合って欲しい……この胎内の命の芽生えが私の独りよがりだなんてことにしたくない」 私には二つの選択肢があった、食べると食べない。 だがそれには重要な意味が含まれる。 外では私の耳に聞こえるくらい、強い雨脚が窓を蹴飛ばしている。 「わ、私は……」 「ねえ、アズミ」
21 17/06/30(金)03:46:50 [sage] No.436649445
愛里寿の目は赤く潤んでいた。 少女に握られた私の手は、胎内の未熟な命に押し当てられた。 外から激しい雨音が窓をうち、私の耳朶を激しく叩いている。 「答えてよ」 愛里寿の言葉と同時に雷鳴が轟き、私の体を打った。 息が詰まった、私の思考はふわふわと空中に浮いていた。 ---
22 17/06/30(金)03:47:10 [sage] No.436649466
口が動いたのは覚えている、いや何を言ったのかも覚えているだけどそれを私は理解できていない。 無意識に動いていた、愛里寿の迫力は私のそれを明らかに凌駕していた。 私はただただ産婦人科の診察室の窓の外から遠くを眺めていた。 雨脚は段々と和らぎ、昼下がりの明かりを窓から降り注ぎ始めている。 「では……愛里寿さんは……その、『処女』ですか?」 「それが……?」 私は打ちのめされた思考のまま、ただ吐きかけられた女医からの言葉に言葉を返す。 処女という言葉に対する恥じらいなど、もはやどうでも良いと思えてしまっていた。 「その……処女を、手術で切るか、パートナーの手で切るかを決めて頂ければ、と思いまして」 「アズミ」
23 17/06/30(金)03:48:19 [sage] No.436649530
目の前で愛里寿が微笑みながら、私の顔を眺めている。 ただただため息をついた、深い思考など今の私には出来やしなかった。 曖昧に相づちを返し、女医に床にクッションの敷かれた部屋に案内される。 「それでは」 看護師はそれだけいうとドアを閉め、部屋から出て行った。 「床……ふかふかだね」 色気も何も無いような部屋、いや白塗りのサナトリウムというよりは暖色系の壁紙なのがせめてもの救いだというのだろうか。 こんなのは救いではない。 ムードとか、そういうのは考えないものなのだろうか…… ため息を吐き出しながら、壁紙から視線を愛里寿の顔へと移す。 少女は無垢を装いながら、頬を朱色に染めながら微笑んでいる。
24 17/06/30(金)03:48:39 [sage] No.436649551
「……好きにして良いよ」 耳朶を濡らすような甘ったるい言葉は魅力的な、甘ったるい不快感を私に運ぶ。 少女というには色気があり、大人というにはくすぐったいような声色。 目の前の少女のことを愛らしいと思ったし、抱きしめたいと何度でも思ったがそういう意味ではない。 だが、目の前の少女は明らかにそうではないようで、そしてそれに今更思い至った私は実に馬鹿だなぁなんて自嘲する。 愛里寿は自身の肩に掛かったサスペンダーを下ろし、スカートを脱ぎ、シャツを開けながら下着姿で私へすり寄る。 私はつばを飲みながら後ろ逃げようとして、背中に壁のクッションの柔らかな感触を感じ取る。 「……ねぇ……」 「ぁ……」 言葉はやはり出ない、愛里寿は膨れた腹部に私の手を宛がい微笑む。
25 17/06/30(金)03:49:00 [sage] No.436649579
「アズミなら、良いよ」 脳がズキズキと痛んだ、外からは雨と風が力強く窓を叩く音だけが響いていた。 私の手は愛里寿の手の導くまま、愛里寿の下着の中に入り込む。 下着はぬるぬると湿っていて、私はその暖かな生々しい感触につばを飲み込んだ。 「……はぁ……ねぇ……切ないよ……アズミ……」 請うような、苦しげな少女の声は私を崖から突き落とすような錯覚を覚えさせる、罪悪感を使命感に作り替える。 指を他人の体液で濡れた未熟な体に、ねじ込む。 指をぐぃっと押し込むと、苦しげな愛里寿の声の後……指先で何かを千切ながら押し広げる肉の感触が指に広がる。 「っぁ……ぁ……」
26 17/06/30(金)03:49:30 [sage] No.436649613
背筋にゾクゾクと嫌悪感と、罪悪感が走る。 こんな行為が許されるものだろうか、幼い少女を嬲るような、こんな行為が。 指先に少しだけ先ほどまで感じていた液体とは別の液体の感触……ああ、ついにやってしまった、私は目をつぶりながら指を引き抜こうとした。 「……ま……だ……」 「えっ……」 愛里寿は目尻に涙を浮かべながらも、肩を上下させながらにっこりと微笑んでいた。 「もっと……ね……?」 「そんな……」 愛里寿が私を部屋の壁に押し倒し、唇に口を重ねる。 私がただ呆然と口内を舐る舌の感触を感じた後、愛里寿の口から銀糸が私の衣服に落ちる。
27 17/06/30(金)03:49:52 [sage] No.436649635
「もっと、濡らさないと……痛いから」 「……」 免罪符と、理由付けを得た私は、目を細めながら指を動かすと部屋に湿った音が反響する。 私の膝の上の少女は、自身の青い性を貪る少女が愛らしくも淫らな声を零す。 もっと、もっとと強請る声と湿った水音。 果たして貪るのはどっちなのか、それすら今の私には酷く曖昧に感じられた。 そして……愛里寿が肩をふるわせた後、私の体にしがみつきながら耳元でささやく。 「好き……大好き」 余りに重たい告白、私はただ静かに綺麗な方の手で愛里寿の頭を撫でることしか出来なかった。 そして、そのまま愛里寿は私の上に乗ったまま、私の体に抱きつきながら肩をふるわせ始める。
28 17/06/30(金)03:50:12 [sage] No.436649647
「っぁ……っぅぅ!」 「あ、愛里寿!?」 「手っ……握って……!」 私は愛里寿の手を握ると、愛里寿は私の体に仰向けに倒れ込む。 荒い息、にじんだ額の脂汗、それの指す意味を考え私は身動きが出来なくなってしまう。 「は……ぁぁ……っ!」 そう言って少女は苦痛を覗かせる表情で、私の体に寄りかかりながら苦痛を堪えるような音吐を吐き出す。 それと同時に、私の目の前で理解しがたい現象が起きていた、少女の性器から少し大きな卵が頭を覗かせているのだ。
29 17/06/30(金)03:50:31 [sage] No.436649667
「あ、愛里寿……!」 「っぁぁぁあ!!っぅううう!!!」 額の脂汗もそのままに、少女は苦痛のうめき声を上げながら私の手をぎゅぅっと握りしめる。 その小さな体のどこにそんな力があるのか、全く分からないほどの力で私の手のひらを握りつぶす。 そして、何度かうめき声というよりは叫び声を上げた後、私のスカートの上に体液と少しの血の色に滲んだ卵がごろりと音を立てて転がっていた。 それから私は、ただ愛里寿の頭を撫でてぼぅっと放心していた。 卵は鶏の卵より少し大きい程度だろうか、だが本当に卵が生まれてしまった。 足の間で喘ぐ愛里寿は、ふらふらと上体を起こしながら卵を両手でつかみあげ、言葉を漏らす。 「ごめんね……今度は、ちゃんとママになってあげるから」 私はまた顔を歪めた。 ---
30 17/06/30(金)03:50:53 [sage] No.436649684
それから自室に車で帰って、愛里寿の抱えていた卵を目の前にため息を吐き出した。 あまりに現実味の薄い、鶏二個分ほどの大きさのそれは……確かに愛里寿の膣口から吐き出されたものだ。 私はそれを恐る恐るボウルに割ると、やはり鶏卵二個分ほどの卵白と卵黄がこぼれ落ちた。 だがにわかに、卵は暖かかった。 頭が動かなかった、恐る恐る卵の黄身に泡立て器で穴を開ける。 黄身が血が流れたような気がして、洗面台に吐き出しそうになる。 だが愛里寿が私に抱きつきながら口を動かす。 「これが……この子の弔いだから」 胃が重たい。 ただただ無心でボウルの卵をかき混ぜ砂糖と牛乳、バニラエッセンスを流し込んだ。 バニラの甘い匂いと、かき混ぜているものを考えずただ無心で手を動かす。
31 17/06/30(金)03:54:45 [sage] No.436649923
食器と泡立て器のこすれる音だけが部屋に響く。 出来た液体をコップ二つ分に流して、レンジにいれて暖める。 私はただスマートフォンのレシピに従うまま、何も考えずロボットのように手を動かし続け、そして待ってる間はぼぅっと虚空を眺めていた。 そして電子レンジが音を立てた後、部屋にバニラの甘い匂いが広がったのだけを感じ取った。 「それじゃあ、アズミ冷やしたら食べようか」 私は無言でうなずき、二つ分のカップの黄色い物体を見た。 普通ならば、おいしそうという感想が出るはずなのに、今はただただ何を見ているのかがぼやけていた。 何かの粗熱をとり、冷蔵庫に入れて冷やす。 その間、ただただ私は私にもたれかかる愛里寿の体温を考えつつ、虚空を眺めた。 何も考えたくなかった。 だが冷蔵庫のクッキングベルが完成を告げた。
32 17/06/30(金)03:55:05 [sage] No.436649939
「それじゃあ、食べようねアズミ」 私は、ただただ愛里寿に手を引かれ椅子に座らせられる。 自分の意思などどこに行ってしまったのだろうか、今朝までの常識はまだかえって来そうにない。 後ろで冷蔵庫のドアが開く音がして、二つ分のカップに黄色いプリンが入っているのが見える。 甘い匂いをさせるそれを、愛里寿はスプーンで掬い私の口へと運ぶ。 「はい、あーん」 そう言って、私の目の前に突き出された黄色い物体を口にねじ込まれ、咀嚼する。 「おいしい?」 そう聞いてくる愛里寿は余りに無邪気で、私は泣きそうな顔をしながら言葉を紡いだ。
33 17/06/30(金)03:55:51 [sage] No.436649987
「おいしいよ……とても……」 「そう……だとしたら、とっても嬉しい」 そう言って愛里寿は私に微笑みかける。 「私と、アズミの愛の結晶だもんね」 あまりの純粋な愛里寿の愛情は重たく苦しい。 プリンがぬるりと喉に滑り落ちた感触が余りに生々しく感じ取れた。
34 17/06/30(金)03:56:32 No.436650028
「多分……まだしばらく、産卵すると思うから……責任、とってね」 愛里寿の無垢な笑みが私にとどめを刺した気がした。 プリンは、おいしかった。 そして、もう私の逃げ道など無いのだろう。 嬉しいはずなのに、ただどこかこのプリンの味も、愛里寿の笑顔も私の心臓を握りしめている気がする。 ああ私は一生、この子から逃れられないんだなぁ、とぼんやりと思うのだった。 終わり
35 17/06/30(金)03:58:26 No.436650130
百合産卵が書きたかった 満足 寝る
36 17/06/30(金)04:14:40 No.436650811
私は良いと思う!
37 17/06/30(金)04:18:07 No.436650960
ブラボー…
38 17/06/30(金)04:24:40 No.436651204
こいつぁすげえや…
39 17/06/30(金)04:28:51 No.436651348
恋に夢中な愛里寿ちゃんはたまご産んじゃうよ…仕方ないよね…
40 17/06/30(金)04:33:00 No.436651523
>百合 うn >産卵 うn…?
41 17/06/30(金)04:38:20 No.436651712
産卵いいよね…
42 17/06/30(金)04:39:50 No.436651761
産卵…駄目だ 産卵する愛里寿ちゃんとか大分狂気だけど可愛いのにCLAMPしてしまう… 最初はオナニーで卵入れちゃった愛里寿ちゃんかと思ったけど医者が認めてて駄目だった
43 17/06/30(金)04:39:51 No.436651765
百合産卵いい…
44 17/06/30(金)04:45:27 No.436651972
普通にカニバってらっしゃる… 多分アズミさんは深酒のし過ぎで意識だけこの世界線に移っちゃったんだな… この後普通の性教育の本とかネットとか見たら当たり前に産卵の事が書いてあって 世界が自分の知ってる形から変わってることに気付いちゃうんだな… 狂気に落ちちゃうかもしれないな…
45 17/06/30(金)04:56:40 No.436652440
すげえ…呆然とし過ぎててちゃんと料理できてる…
46 17/06/30(金)07:27:19 No.436658129
なんか引き込まれるな...