虹裏img歴史資料館

1 17/05/28(日)21:53:29 No.430044210

「……戦車道をやめます」 みほのその宣言を聞いた時……、まほは暫しの間、茫然自失していた。

2 17/05/28(日)21:54:21 No.430044436

…みほが戦車道を……止める？ 耳にはその言葉が入っていたが、脳がそれを咀嚼し理解するまで時間を要した。 そしてその意味を理解したとき、まほの喉はカヒュッっという音を出しながら呼吸のバランスを崩し、手先は振るえ、唇は微振動を繰り返していた。 「…学校はどうするの？」 「戦車道が無い学校に転向したいです…。 　できればここから遠い所へ…」 「…そう。……好きにしなさい」 そう締めるとしほはもう話す事は無いと言わんばかりに立ち上がり、まほを一瞥だけするとそのまま退室した。 続いてみほが退室すると、思考と意識を取り戻したまほが何とか震える足で立ち上がり、みほを追いかけた。

3 17/05/28(日)21:55:19 No.430044714

「ま、待ってみほ！」 「なぁに？お姉ちゃん？」 呼掛けにゆっくりと此方を向くみほの表情にまほは少しだけびくりと戸惑った。 目に光が無い。表情に色が無い。 笑みだけは普段と変わらないが、その奥には無色灰色の感情が広まっているようにしか見えなかった。 「戦車道を辞めるのか…？ 「うん」 「……黒森峰から…、私と一緒の学校から出て行くのか？」 「うん」 今この時、まほはどのような表情をしているのか自分でも解らなかった。

4 17/05/28(日)21:55:37 No.430044812

「な、なぁ…考え直そう。 　今はお母様もみほもちょっと熱くなっているだけだ。 　ちょっと時を置いて、ちゃんと謝ればお母様もきっと「お姉ちゃん」 「私、戦車道はもう辞めるよ」 感情が抜け落ちたかの様な笑顔で、何の色も含められていない言葉が事態の深刻さともう手遅れだという事をまほにはっきりと理解させた。

5 17/05/28(日)21:56:05 No.430044938

……冗談ではない。 そんな事はまほにはとても許容できなかった。 妹が戦車道を辞めるなんて。 あれだけの才覚を持つ妹が戦車道を辞めるなんて……！ 自分に唯一戦車道の、ひいては人生の意味や意義や面白さを教えてくれる妹が…！

6 17/05/28(日)21:56:30 No.430045026

……いや、違う。 実際は、才覚の有無は関係ないのだろう…。 自分を打ち負かす事も、予想だにしない行動を取ってくれる事も。 そんなものは"おまけ"でしかないのだ。 ただ、ただただ……妹と一緒に戦車道をしたかっただけなのだ…。 いや、戦車道ですらなくても良かったのかもしれない。 何でも良かった。 妹と一緒に何かができるならばそれで良かった。 ただ、まほが戦車道だけしか知らないから戦車道しかないのだ。 だからみほが戦車道を辞めると宣言した時、まほにとってそれは世界の終わりを意味していた。

7 17/05/28(日)21:56:49 No.430045109

……いや、それですらどうでもいいのかもしれない。 結局の所、何であれまほの傍にみほがいればいいのだ。 それだけでいい。それ以外要らない。 まほの人生において、みほがいない人生など考えられないのだから。

8 17/05/28(日)21:57:10 No.430045199

「……わ、解った。戦車道はやらなくていい。 　うん、そうだな。み、みほがやりたくないのなら無理にやらなくていいだろう。 　だから転校などしなくて良いだろう？戦車道活動は休止してまた気が落ち着いたら再開すれば……」 「……」 「……い、いや！そうだな！もう今後は一切戦車道をしないんだったな。 　うん…そ、それでもいいさ。みほがやりたくないのならそれでもいい……。 　であれば機甲科には居辛いだろうから普通科に転科すればいい。 　寮からは出ないといけないが……どこか学生用のアパートを借りればいい。 　……そうだ、私も寮をでて一緒に住もう。 　二人で住めば何も心配は無い。 　何も転校なんてする必要は無い……無いんだ……そうだろう…みほ……」 「………」 「……みほ？」

9 17/05/28(日)21:57:29 No.430045281

無言だった。 四年前と一年前には自分が進学して別の学校に行く事をあれだけ泣きながら嫌がって、自分に縋り付きながら離れたくないと言ってくれた妹が 三年前と半年前には一緒の学校に通えると花が咲いた様な笑顔で自分に飛びついてきてくれた妹が 転校して姉から離れるのだと、その無言さが何よりも雄弁に返答していた。 その表情には何れの感情も見出せることなく、まるでまほには何も興味が無い様な視線で自分を見つめているように感じられた。

10 17/05/28(日)21:57:46 No.430045353

（いや……ひょっとして…私はもう姉として見捨てられているのではないだろうか？） そう考えてしまうとそれを足掛かりとして思考は加速していく。 （一体何時から私は姉として見捨てられたのだろうか？ 　何時から情けない姉だったのだろうか？ 　幼い頃に周囲の評判から庇ってやれなかった時？ 　黒森峰に入学してから自分の都合で性格を矯正させた結果、命の危険に晒した時？ 　いや、違う……ラストチャンスは恐らくあの時だ）

11 17/05/28(日)21:58:06 No.430045445

まほの脳裏にフラッシュバックする先ほどの光景。 何時もの様に自分を頼る妹の視線。 見た事の無い自分に縋る様な妹の視線。 あれが妹からの最終通告だったのではないだろうか？ あれが妹からの最後のSOSだったのではないだろうか？ あの時が岐路だったのではないだろうか？ あの時に動いていれば、声をかけていれば、庇っていればまだ私は姉でいられたのではないだろうか？

12 17/05/28(日)21:58:43 No.430045608

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13 17/05/28(日)21:59:03 No.430045711

そう考えた時、まほはみほの足元に縋りついた。 己が知らず知らずに寸前で逃した機会をもう一度だけ与えて貰える様に、慈悲を請うように必死に縋りついていた。 「お、お願いだ、みほ！私を置いていかないでくれ！ 　私が悪かった…!もう…お前抜きの人生など耐えられないだ…！ 　姉などという偉そうな立場じゃなくてもいい！ 　お前が望むのなら…ペットとしてでも構わない！ 　頼むから傍にいてくれ…！ 　みほがいなくなったのなら私は…！」

14 17/05/28(日)21:59:18 No.430045777

彼女から捨てられない様に媚びなくてはならない。 彼女に飽きられない様に細心の注意を払わなくてはならない。 ･･･彼女の為に生きなくてはならない。 取り返しのつかないようなミスをしてしまったまほは今この瞬間に誓った。 だから…だから許してほしいと…。 同時に何故この心境にもっと早く……いや、つい数分前に持てなかったのかと心底後悔していた。

15 17/05/28(日)21:59:35 No.430045857

しかし、みほは涙を流しながら己の足に縋りつく姉をしゃがみこんでそっと優しく頭を抱えると 「……ごめんね、お姉ちゃん」 と言って最後の別れの様に頭をそっと一撫でしてから立ち上がると、まほの方を一度も振り向くことなく廊下の奥へと消えていった。 「……あっ」 髪に感じていた最後の感触であるみほの指先が離れると名残惜しげに言葉が漏れたが、それ以上の言葉を紡ぐ事はできず、まほはただそれを見送るばかりであった…。

16 17/05/28(日)22:01:27 No.430046398

他で書いていた短編集 su1881229.txt

17 17/05/28(日)22:04:47 No.430047393

お姉ちゃんかなり依存している…

18 17/05/28(日)22:04:51 No.430047403

続き待ってた…切ねえなあ

19 17/05/28(日)22:05:51 No.430047705

>そう考えた時、まほはみほの足元に縋りついた。 >己が知らず知らずに寸前で逃した機会をもう一度だけ与えて貰える様に、慈悲を請うように必死に縋りついていた。 >「お、お願いだ、みほ！私を置いていかないでくれ！ >　私が悪かった…!もう…お前抜きの人生など耐えられないだ…！ >　姉などという偉そうな立場じゃなくてもいい！ >　お前が望むのなら…ペットとしてでも構わない！ >　頼むから傍にいてくれ…！ >　みほがいなくなったのなら私は…！」 これダー様のやつだ…

20 17/05/28(日)22:06:28 No.430047912

お姉ちゃんと斑鳩先輩が死んじまうー

21 17/05/28(日)22:09:12 No.430048761

間違いは結果が出てからじゃないとわからないからね…

22 17/05/28(日)22:10:53 No.430049282

黒森峰がますます辛気臭くなるまう・・・

23 17/05/28(日)22:12:43 No.430049893

これお姉ちゃんが鬼神に変わるか抜け殻になるやつだ

24 17/05/28(日)22:14:04 No.430050263

みぽりんにとっては戦車道をやることでお姉ちゃんがお姉ちゃんでいてくれるんだと感じてたのかな でもお姉ちゃんしてくれなくなっちゃった じゃあ戦車道やめるね…

25 17/05/28(日)22:15:32 No.430050737

でもこれハッピーエンドになるから…

26 17/05/28(日)22:16:02 No.430050890

お姉ちゃんの幼少期からの一番大切な事や生き甲斐が全て消えちゃう訳だからね…

27 17/05/28(日)22:16:09 No.430050935

決勝戦で勝ってれば先輩とライブに行くくらい幸せだったのに…

28 17/05/28(日)22:27:09 No.430054456

>でもこれハッピーエンドになるから… ほんとかー？ほんとーにハッピーエンドかー？

29 17/05/28(日)22:30:16 No.430055474

このお姉ちゃんみぽりんの事を監禁しそう…

30 17/05/28(日)22:31:14 No.430055765

>このお姉ちゃんみぽりんの事を監禁しそう… ふざけるな…！私から離れるなんて絶対に許さない！ とか 私から離れていくならいっそ…！ とかやりそう

31 17/05/28(日)22:36:00 No.430057295

>>このお姉ちゃんみぽりんの事を監禁しそう… >ふざけるな…！私から離れるなんて絶対に許さない！ >とか >私から離れていくならいっそ…！ >とかやりそう 許されないぞそんな...ってボブになってるお姉ちゃんが見えた 「まほ」みほのパンツは光った

32 17/05/28(日)22:40:32 No.430058728

足を動けないようにしてずっと飼うんだ…

33 17/05/28(日)22:44:55 No.430060075

みほが言ったごめんねが西住流として判断を下してたしほの側についてるまほの気持ちに沿うことができないことへの謝罪ならまほの必死の縋り付きはみほからするとまだ意思を曲げて戦い続けてくれって脅迫のようにも聞こえてるんだろうな

34 17/05/28(日)22:45:45 No.430060343

こっちがペットになるのが嫌ならペットになってもらうね…

35 17/05/28(日)22:49:42 No.430061680

これ将来しほの事を刺して家元になりそう…

36 17/05/28(日)22:51:36 No.430062253

>これ将来しほの事を刺して家元になりそう… 西住流はシスだった？