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17/05/28(日)00:09:48 ガルパ... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1495897788834.jpg 17/05/28(日)00:09:48 No.429826529

ガルパンSS

1 17/05/28(日)00:11:03 No.429826997

――――それは逸見さんに才能がないからだよ エリカは勢いよく起き上がり辺りを確認する。見慣れた内装に見慣れた家具、ここは自分の部屋でそして現実であり先ほどの光景は夢であることに安堵の息をつく。 それと同時に身体に悪寒が駆け巡る。気づけば背中や腋の下に大量の汗をかいていた。 悪夢を見たことと寝間着に纏わりつく汗がエリカを不快にさせる。 シャワーで汗を流すか。 エリカは浴室に向いたっぷりと時間を使いシャワーを浴びた。 汗とともに嫌な記憶を丹念に洗い流すように。 これで何度目だろう?エリカはここ最近さきほどのような夢をみる。 詳細は違いはあるが大筋は変わらない。 最後には他人に淡々と冷酷に告げられる。

2 17/05/28(日)00:11:41 No.429827251

――――才能が無いからだよ 冷やかしでもなく自分を馬鹿にしているのではなく、物が重力で地面に落ちることを告げるように淡々と発せられる言動。 さらに夢では告げられる相手が性質が悪い。 昨日は敬愛する前隊長西住まほで今日はその妹の西住みほだ。 このような冷酷な言動をする人物ではないということは分かっている。だがもしかするとそう思っているかもしれない。 猜疑心が働き最近ではまほと以前どおりに接することができない。 元はといえばあれを見てしまったからだ。一週間前にあれを見なければこんな気持ちを抱えずに済んだのに

3 17/05/28(日)00:12:53 No.429827615

☆☆☆ 「クソッ!」 エリカは自室の机でノートを纏めながら苦々しく呟きその声は薄暗い部屋に静かに響く。 戦車道ノート。その日ごとの練習や試合などの良かった点、悪かった点、思った事を書いていく戦車道の日記のようなものである。 エリカはそれを中学生の頃から書き記しているが、西住まほから隊長の座を引き継いでからある内容にある変化が見られるようになった。 隊長に就任する前までは自分なりにも良かった点なども書かれていたが、今では悪かった点や自分の力量不足への不甲斐なさなどネガティブなことのみが書き記されるようになっていた。 そして今日はより一層その傾向が強かった。 エリカが黒森峰の隊長に就任してから暫く経ったある日、西住みほが黒森峰にやってきた。 大洗の生徒会長の思いつきであんこうチームのメンバーが聖グロリアーナなりサンダースなりに遊びに行っており、そしてみほが黒森峰に派遣されたそうだ。 そして黒峰代表としてまほとエリカがみほをエスコートする。学園艦を廻り戦車道の演習を見学した。 演習を見ている最中にまほがある提案をする。

4 17/05/28(日)00:13:43 No.429827875

みほ、模擬試合をしてみないか? そしてエリカとみほを隊長にした三対三の練習試合が行われた。 まほとしてはいくつかの狙いが有った 一つは妹の黒森峰の戦車道に無い独自の感性や思考法に触れることで隊員に刺激を与えたかった。 そしてエリカ。 隊長に就任してからどうも調子が悪く思い悩んでいるようでスランプに陥っている感がある。 みほを相手にすることでスランプを脱出するきっかけになるかもしれない。そういった願望も含まれていた。 エリカはノートを纏めながらは今日のみほとの試合について試合の経過を振り返る。 結果は接戦だったが、だがみほと自分の間には遥かに大きな壁が間に隔たっていることを実感した 状況を把握する力、判断の素早さと正確さ。何一つとっても前隊長西住まほやその妹である大洗女子の隊長西住みほに勝る点が見つからない。 以前からはこの二人より劣っているのは自覚していた。だがどれほど劣っているまでは分かっていなかった。 同じ立場になって、そして試合することでより一層二人との差が浮き彫りなっていく。

5 17/05/28(日)00:14:04 No.429827992

エリカは実力における才能の比率は少ないと考えていた。今まで積み重ねてきた努力が実力に現れる。 まほやみほは西住流の人間として幼少期から訓練を積んできた。自分との差はその積み重ねてきた差である。 自分もそれ以上のものを積み重ねればいずれ追い付き追い越すことができるはずである。 だが最近ではある考えが脳裏にへばりつき一向に離れない。 ――――才能の有無は抗いようのない絶対的なものなのかもしれない? 隊長になってからはこの考えを振り払うように練習量を増やし戦車道にかける時間を増やした。 だがそれでもあの姉妹との距離が縮まったという実感がいっこうに湧かない。 この考えを必死に振り払おうとするが日に日にその存在は巨大化し、そして今日さらに膨れ上がった。 エリカはノートに今日の出来事を書き記し逃げ込むようにベッドに飛び込んだ。

6 17/05/28(日)00:14:47 No.429828201

(眠れない) ベットに入ってから数時間が経ったかもしれない。 眠気は訪れずエリカの目は冴えきっていた。 眠ろうにも今日の試合に負けた悔しさ。これからへの自分への不安。様々なネガティブな考えが脳内をかき乱し睡眠を妨げる。 エリカは思い立ったように布団から飛び出しテレビの電源を入れる。 このような時はベッドに入って寝ようとしても眠ることができない。 眠気が来る限界まで起き、余計なことを考えられないほど眠気がきたら眠る。 これが経験測から基づくエリカの対処法だった。 エリカはリモコンを手に取りチャンネルをザッピングする。 何か気が紛れるような面白い番組をやっていればよいのだが。 ニュース番組、映画、音楽番組、バラエティ、どれもエリカの手を止めるほど興味を抱かせるものでは無かった。 いっそのことネットサーフィンで時間を潰すか、そう思った矢先にチャンネルを変える手が止まる。 その番組はアニメだった。エリカにとってアニメとは無縁の生活だった。 小さい頃に見た記憶があるぐらいのもので、アニメは朝方にやっているものと思っていたがこんな深夜にやっているものと少しばかり驚くほど興味のないものだった。

7 17/05/28(日)00:15:22 No.429828434

『ちくしょーーー!どうして!?どうしてお前なんだよ!!!』 だがそのキャラクターの鬼気迫る、いや悲痛で悲壮な叫び声がひどく心に響いた。思わずチャンネルを変える手をとめるほどに 『俺は努力したよ!お前の十倍、百倍、千倍努力したよ!先輩に認められるために!!あいつに勝つために!それこそ朝から晩までこれの事だけを考えて…全てを捧げてきたのによ、なのにっ……』 そしてエリカは作品に一気にのめり込んだ。正確に言えばこのキャラクターに感情移入していた 今この瞬間見た作品なので詳しいことは分からない。だがセリフだけでこのキャラクターは血を滲むような努力をしてきたのは分かる。 エリカも少なからず努力を積んできた自負があった。隊長になってからはさらに努力した。 そして先輩に認められるために、あいつに勝つためにという部分。そこもエリカと重なる部分だった。

8 17/05/28(日)00:15:49 No.429828742

エリカにとって西住まほは憧れだった。 西住流の名を背負いその名に恥じない素晴らしい実力。その憧れの人と一緒に戦車道をやるために、認められるために懸命に努力をしてきた。 副隊長に任命された時はその場で躍りたくなるほどほど嬉しかった。 憧れの西住まほと一緒に試合ができる!これほど嬉しいことは今までの人生でなかった。 そして西住みほ。 同じ一年にして隊の副隊長。西住まほの右腕を任された実の妹。 最初に抱いたのは嫉妬だった。 だがその類まれなる実力に嫉妬心すら消し飛んだ。 いつからか憧れになり、いつの日か西住みほを越えるという想いはエリカの原動力の一つになっていく。 この発言をうけてもう一人のキャラクターは淡々と告げた。

9 17/05/28(日)00:16:24 No.429828980

『それはお前に才能が無いからだよ。単純にそれだけのことだよ。一々大声で騒ぐほどじゃない』 そして才能無さを嘆いたキャラクターはその競技を辞めた。 言葉は槍となってエリカの心を貫いた。 番組が終わった後も薄暗い部屋の中でエリカは放心状態でただテレビを眺め続ける。 彼の努力のすべてはたったの一言で片づけられてしまった。何とひどい話だろう エリカにとってはそれはあまりにも残酷な光景であり、まるで自分の戦車道人生をすべて否定されたようだった。 これはフィクションだ。現実では無い それに才能が無いと言われながらも努力で成功してきた人間は星の数ほどいる。 だがそう考えようとしてもあのキャラクターのセリフが頭から離れない あのアニメの1シーンはエリカにとってひどく現実感がある光景だった。 まるでこれから自分に起こる出来事をアニメにしたように。 エリカの意志とは関係なく頬に涙が流れていた。

10 17/05/28(日)00:17:03 No.429829229

☆☆☆ まほは自室で机に向い書類を整理するなか手元にあるコーヒーに口をつけ一息つく。 気がかりがあるせいか作業は進まなかった。 その悩みは黒森峰現隊長逸見エリカだった。 以前から思い悩み焦燥感にかられている感があったが、それに拍車をかけるようにひどくなっていた。 焦りがミスを産み、1週間前では考えられないほどの凡ミスを連発していた。 さらに隊員への接し方が八つ当たりめいている。以前は厳しい物言いだが他人のことをおもいやっていたが今ではそれがまるでない。 そんなことをしていれば隊員達の顰蹙を買うのは自然な事だった。 このままでは纏まるものも纏まらない。最悪エリカを隊長の任から解任し他の人間にすることも視野に入れなければならない。 まほ自身誰よりもエリカの実力と可能性を買っていた。できるならばいつものエリカに戻るのを待ちたかった。 いつ元に戻るか分からないエリカを待ち続ければその分新チームの練度の向上は遅れる。そうなれば来年の大会に優勝する確率も下がる。 二年連続で優勝を逃したなか今年こそ優勝をしなければならない。 そのためには不安要素は切り捨てなければならない、例え隊長であっても。

11 17/05/28(日)00:17:30 No.429829395

☆☆☆ 「クソッ!!」 エリカは自室にたどり着くとすぐベッドに向い。鬱憤をぶつける様に枕に向けて拳を振り下ろした 何もかもうまくいかない。 才能がすべてという考えを懸命に覆そうと思うにも、それを否定する呪詛が頭に響き渡りあのアニメのシーンを脳内で強制的に再生させられる。 そのせいで平常心を失い常に苛立ちその結果凡ミスを連発した。さらに他の隊員にもイライラを発散するように厳しくあたった。 自己嫌悪に陥り振る舞いを正そうとしても反射的に当たってしまう。 さらにあの自分が親しい人に才能が無いと通告される悪夢を見るせいで寝不足になり、エリカの平常心を削ぐのに拍車をかけていた。

12 17/05/28(日)00:22:48 No.429831587

もしエリカが隊長就任当初にあのアニメを見ていたらどのような反応をしたか? 恐らくここまで心が囚われて平常心を削がれることが無かっただろう。 才能の無さを通告され競技を止めたキャラクターを見て、才能を言い訳にして挫折した根性なしと蔑むだろう。 それほどまでに努力を積み重ねていけば道が有ると信じていた。 だが隊長に就任してからの日々で前隊長のまほとの実力差を痛感し、演習でみほとの差を痛感した。 これがエリカの心の防波堤にヒビを入れ、崩壊させた。 怒り、絶望、様々な想いを拳に乗せ渾身の力で枕を殴打する。だがその時エリカにカレンダーが視界に入りふと見て手を止めた。 あのアニメから1週間か、そしてアニメは1週間に一回放送するはず。 PCを立ち上げその番組を調べると予想通り今日放送するようだ。 エリカはそのアニメを見ることを決意する。

13 17/05/28(日)00:23:12 No.429831812

本来なら目にも入れたくない。だがあの才能の無さを宣告され競技をやめたキャラクターの行く末が気になっていた。 あのままで今後一切作中に出ないかもしれない。だがあのまま自分の存在を全否定される結末は惨すぎる!何かしら救われる結末があるかもしれない。そんな淡い希望を抱いていた。 そしてそのキャラクターが救われることでエリカ自身も救われたかった。 夜は更け時刻は午前一時を過ぎそのアニメは始まった。 エリカの願望通りそのキャラクターは出てきた。 アニメを視聴した後は久しぶりに悪夢に魘されることは無く熟睡した。 そしてその日を境にエリカは戦車道の演習に出なくなる。

14 17/05/28(日)00:26:06 No.429832876

続きのテキスト su1880046.txt 某アニメの再放送に触発されて書いてしまった。

15 17/05/28(日)00:32:19 No.429834836

間違いが有ったので修正版 su1880059.txt

16 17/05/28(日)00:32:20 No.429834842

ピンポンか… その内アクマって呼ばれるようになっちゃうんだ… それはともかく隊への奉仕活動…? 夜の西住流的な意味で…?

17 17/05/28(日)00:33:20 No.429835196

落ち込んでるときに見ると辛いアニメってあるよね

18 17/05/28(日)00:48:45 No.429840156

戻ってきて良かった… 少し泣く

19 17/05/28(日)01:02:27 No.429843998

このエリカならいつか追いつきそう 大学選抜のエリカもこんなかんじだったなぁ…

20 17/05/28(日)01:04:27 No.429844533

何事も目標に届かないくらいが長続きするからね…

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