17/05/22(月)23:23:24 はいふ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1495463004007.jpg 17/05/22(月)23:23:24 No.428802946
はいふりSS らすと (過去作) その1 ss291364.txt その2 ss291365.txt その3 ss291366.txt
1 17/05/22(月)23:24:32 No.428803277
「……本国から、研究者が日本に来ることが決まったらしい」 いつものように、二人で入った風呂から上がった後のことだ。 ドライヤーで乾かした長い銀髪を美波が櫛で梳かしてやっていると、テアがそんな言葉を口にした。 「元々別件で来る予定だったが、そのままRatTウィルスの研究チームに合流するそうだ」 感染した比叡を止めたことでトラック諸島を経由したパンデミックは未然に防ぐことは出来たものの、漂流中に回収された物資などに紛れ込んでいたRatTによる感染は各国でも見られている。 現在、世界各地で入港した船舶には三日間の検疫が義務付けられているという話も、美波の耳に届いていた。 「加えて、カリキュラムを見直した結果、我々はもう少し日本に留まることになったとも言われた」 そこで一度言葉を切り、テアは美波の反応を伺うような視線を向けた後、ぼそりと続ける。 「……つまり、お前をシュペーに乗せて連れ帰る必要はなくなったということだ」 「そうか」 しかし、美波の反応は素っ気ないものだった。 全く動じた様子もなく、テアのさらさらとした色素の薄い髪を梳かし続けている。
2 17/05/22(月)23:25:56 No.428803626
「少しは、驚くかと思ったんだがな」 「既知の話に驚けと言われてもな」 美波の黒髪を梳かしながらつまらなさそうに言うテアに、美波は肩を竦めてみせる。 近々ドイツの研究者が日本に来ることは美波のラボでも話題になっていたことだ。 もちろん、その研究者がRatTウィルス研究に従事するという噂も、当然彼女の耳に入っていた。 今更驚けというほうが無理がある話だ。 「……お前とこうするのも、今日で最後になるだろう」 そう言って櫛を操るテアの手は、いつもより丁寧に感じる。 「その割には何もしてこなかったな」 「なんだ、してほしかったのか?」 「そういうことじゃない」 悪戯っぽいテアの言葉に、美波はふるふると首を横に振った。 風呂の後に食事をとる。よって、風呂では互いになにもしない。 ここ数日の内にできた、二人の不可侵条約だった。
3 17/05/22(月)23:27:23 No.428803991
「もういいだろ。それより、食事にしよう」 「そうだな」 「準備する。そこで待ってろ」 「手伝ってもいいが?」 「邪魔になるからやめろ」 「……ふん」 ぴしゃりと告げられた美波のつっけんどんな言葉に、テアは鼻白んだ様子でそっぽを向く。 そんなテアには目もくれず、美波は小さな踏み台に登ってキッチンに立った。 「……ところで、料理は誰に教わったんだ」 「うちの主計科からだ。テスト勉強を見る代わりに、菓子の作り方を教わるついでだったが」 包丁で手際よく材料を切りながら、振り向きもせず質問に答える。 「親からではないのか」 「6歳の頃にはもう大学で、その数年後には国外だぞ? いつ教わる暇がある」 「まあ、そうか」
4 17/05/22(月)23:28:23 No.428804237
親の顔より、教授の顔の方が覚えているかもしれないくらいだ。 別に不仲というわけでもないが、頻繁に顔を合わせる機会がない。 病院船に勤める彼女の両親は常に多忙だったし、美波も学業と研究に明け暮れていたからだ。 流石に留学から帰ってきたときはそれなりに長く休みをとって構ってくれたし、つい先日の騒動から帰還したときも、心配して会いに来てはくれたけれど。 「家族と疎遠なのか。あまり喜ばしいことではないな」 「お前も人のことは言えんはずだが」 「……」 図星だったのだろう。テアは答えず、それきり黙りこんでしまった。 それを良いことに、美波は調理の手を進める。 程なくして、出汁や醤油のやわらかな香りが美波の部屋に漂い始めた。 「出来たぞ」 炊飯器から白米をよそい、肉じゃがの入った器や味噌汁の椀と共にテアの前に置く。
5 17/05/22(月)23:29:28 No.428804480
「またこれか……」 器に盛られた肉じゃがを見るなり、テアが小さく不平をこぼした。 実のところ、ここ数日ずっと二人の夕食は肉じゃがだった。 残念なことに、美波の料理のレパートリーは非常に少なかったのだ。 「食堂ならここを降りてすぐだぞ」 「食べないとは言っていないだろう」 「なら、納豆を出されないだけありがたいと思うことだ」 にやりと笑って箸を押し付けると、テアは渋々とそれを受け取った。 そのまま、二人でいただきますをして食べ始める。 「……しかし、お前も毎日これで飽きないのか?」 やりにくそうに箸を動かしながら、テアがそんなことを聞いてくる。 大分慣れてきたとは言え、やはりどこか辿々しい手付きだった。 一人で食事ができるようになるためのリハビリとして始めたことだが、残念ながら効果的とは言い難いらしい。
6 17/05/22(月)23:30:20 No.428804675
「好物に祟り無し」 「なんだ、それ」 「好きなものはいくら食べても害にならない、という意味の言葉だ。それに」 「なんだ」 「肉じゃがはつかみやすい肉から、崩れやすく力加減をしなくてはならないジャガイモまである、箸の訓練に適した料理だ」 「そんなものか」 「そんなものだ」 「ふん……」 納得したのかどうかよくわからない反応をして、テアが再びジャガイモと格闘を始める。 刺し箸をしなくなっただけ、最初よりはよくなった方か。 何食わぬ顔で箸を進めながら、美波は心の内でそう呟く。 最初の頃は箸の用途が分からなかったのか、フォークのように突き刺して食べようとしていたくらいだ。 その頃に比べれば溢さなくもなったし、成長したと言っていいだろう。
7 17/05/22(月)23:31:31 No.428804932
「……フォークを使わせてくれ」 「郷に入っては郷に従え、だ。箸に慣れれば、フォークやスプーンくらいいくらでも使えるだろ」 「まあ、その理屈は分からなくもないが……」 味噌汁を啜りながら、テアが不満げな視線を向けてくる。 このリハビリは、美波から持ちかけたものだった。 先日のファミレスでの一件をダシにして少し煽ったら、テアはすぐに乗ってきた。 まあ、恐らくは自分でも流石に不味いとは思ったのだろうが。 (しかし……思い出すな) 相変わらず不器用なテアを見る美波は、アメリカから帰国してすぐの頃を思い出していた。 アメリカでは箸を使うことなどほとんどなかったものだから、帰ってくる頃には美波はすっかり扱い方を忘却していた。 そんな彼女の為に、両親は肉じゃがを作って箸のトレーニングをさせてくれた。 そんな思い出もあって、肉じゃがは彼女の好物の一つとなっていた。 ……まさかそれを自分で作って、誰かに振る舞うことになる日がこんなに早く来るとは思わなかったが。
8 17/05/22(月)23:32:26 No.428805140
「……最後の晩餐くらい、食べさせてくれてもいいんだぞ?」 「随分と庶民派な最後の晩餐だな。なら庶民派らしく大人しく座って食べる方が絵になるぞ」 「つまらんやつだ」 にべもなく却下され、テアが仏頂面で白米を咀嚼する。 ……最初の頃に比べると、随分と気安い関係になったものだ。 ホクホクのジャガイモを口の中で転がしながら、そんな事を思う。 もう、ここに来る理由がなくなった。 先程の言葉を美波に告げるその少し前くらいから、テアが事あるごとにシュペーへの勧誘を口にすることは少なくなっていた。 当たり前のように美波の元に来て、夜を明かしてまた去っていく。 勧誘の言葉は、風呂に入っていて話題がないときに思い出したように口にする程度になっていた。
9 17/05/22(月)23:33:09 No.428805304
美波はその度に律儀に断っていたものの、そのことを指摘することはなかったし、テアがここに来ることをやめさせようともしなかった。 来るというのなら当たり前のように受け入れたし、部屋にも泊めた。 求めるというのなら拒まなかったし、自ら誘うこともままあった。 けれど、そんな日々を繰り返す内に、あの二度目の夜を迎えた時のような中毒じみた依存心は、いつしか消えてしまっていた。 飽きた、という訳ではないと思う。 ただ、満たされてしまったのかもしれない。 「……どうした? わたしの頬に米粒でもついているのか?」 「いや……」 どうにも、手が止まっていたらしい。 呆けたように自分を見ていたことに疑問を感じたらしいテアが、美波の顔を見つめていた。 なんでもない、と言って美波はニンジンを口に放り込む。 ほっこりとした優しい甘みが、意識を現実に戻していく。
10 17/05/22(月)23:34:09 No.428805568
どちらにせよ、明日からこいつが来なくなったところで、私の日常は変わらない。 そんなことを考えながら、美波はそう確信していた。 未練がないかと問われれば、よくわからないとしか言えなかったが。 「おかわりはしないのか?」 「ん? ああ、必要ない」 テアに指摘されて、美波は自分の食器の中身が空になっていることに気がついた。 どうやら、上の空で食べきってしまったらしい。 気付いてみれば、腹も満たされている。 テアの方も、もうほとんど空になりかけていた。 「そういうお前はどうするんだ」 「私ももう結構だ。手が疲れた」 「そういう理由か……」 満腹になったとは言わないテアに呆れたように肩を竦め、美波は食後の茶を淹れることにした。
11 17/05/22(月)23:35:05 No.428805806
「……こうしてお前と寝るのも、今日で最後か」 食事を終え、後片付けも終えた二人は、歯磨きを済ませてベッドに潜り込んでいた。 少し動けば鼻先が触れ合いそうになるほどに近い互いの吐息は、当たり前だが歯磨き粉の香料の香りがする。 「なんだ、寂しいか?」 美波の言葉に、テアがからかうように言う。 「どうということはない」 「ほう」 「お前の方こそ、どうなんだ」 「そうだな──」 テアは少し考えるような素振りをした後、小さく笑った。 「次に泊まるときは、ニクジャガ以外のものが食べたい」 「……なんだ、それ」 「流石に毎晩ニクジャガは食べ飽きてしまったからな」 「……ドイツ人は芋とヴルストがあれば生きていけると聞いたが?」
12 17/05/22(月)23:35:43 No.428805984
「誰から聞いたんだそれ」 「お前のところの副長がそう言っていたらしいが」 「何か誤解があるような気がするが……」 まあいい、と言って、テアが軌道を修正する。 「……今度、シュペーにも来るといい。なに、もう乗れとは言わん。客賓として丁重にもてなそう」 「ほう、お前が手料理でも振る舞ってくれるのか」 「……善処はしよう」 美波がにやにやと笑みを浮かべながらそう問うと、苦い顔をしながらテアは頬を掻いた。 「……まあ、お前には世話になった」 「全くだ。……まさか、こんなことになるとは思わなかったがな」 「……そうだな」 最初にしたこと、されたことを思い出して、二人は頬を染めた。 本当に、こんな関係になるとは思いもよらなかったからだ。 「……」 「……」
13 17/05/22(月)23:36:24 No.428806119
暫し、二人は無言になる。 その間、美波はテアの顔をじっと見つめていた。 テアもそれに気付いて、見つめ返してくる。 美波は大粒のトパーズのような瞳の中に、潤んだ眼をした己を見る。 テアの右手がするりと伸びてきて、美波の髪を軽く撫でる。 さらさらとした射干玉色の黒髪は抵抗することなく、その白く細い指に掻き分けられていく。 そのまま、テアの小さく柔らかな手は美波の頬を撫で、首筋を伝い、やがて胸元でその歩みを止めた。 そうして鼓動を確かめるように彼女のささやかな膨らみ抑えるテアの手を美波が掴んで、咎めるように甘く食んだ。 歯形も残らないような、けれどほんの少しだけチクリとする甘噛み。 それに仕返しするかのように、テアの唇が美波の首筋へと押し当てられた。 「んっ……」 その柔らかな口付けの感触に、美波が小さく呻く。
14 17/05/22(月)23:37:12 No.428806338
「ふふっ」 その反応を楽しむようにテアが微笑み、続けざまに耳の中へと舌先を忍ばせた。 美波もまたテアの背に両の腕を回して、逃さぬようにと捕まえる。 蛇のように伸ばされた舌から逃れるように、美波はテアの頭を引き寄せ、その耳朶を食んだ。 「く、ぅっ……」 ひとしきりそうした後、二人は互いのパジャマのボタンに手を掛けていく。 服はもう、邪魔でしかなかった。 「はぁっ……はぁっ……」 「んぅっ……ふっ……」 一糸まとわぬ姿になって、互いの荒い吐息を浴びながら。 恋人のように互いの指を絡めて手を繋ぎ、深い深い口づけをかわした後に。 二人は夢中になって、互いの体を貪っていた。 美波がテアの乳首を舌で転がし、テアが美波の秘部を指で弄ぶ。 何度も何度も繰り返されてきた行為の果てに鋭敏になった二人の感覚は、快楽の波濤を幾重にも二人の躰へと広げていった。 躰を重ね、もうどちらのものとも区別がつかないくらい愛液と唾液にまみれて、二人は夢中で互いを求めていた。
15 17/05/22(月)23:37:43 No.428806464
これで最後だから。 これが最後だから。 そんな思いが、ますます二人の情動を加速させる。 「みな、みぃ……!」 「てあ……!」 そんな、最後の時に。 二人は初めて、互いの名を呼び合っていた。 互いに、もう限界が来ていることを察していた。このままきっと、同時に意識を虚空に飛ばしてしまうであろうことにも。 だから最後に、二人は唇を重ね合う。 そうすれば、行き場のない快楽が二人の躰を駆け巡ることを知っていたから。 「「───!」」 おかしくなりそうな程に強烈な快楽の渦に、二人は意識を投げ出し、闇の中にその身を委ねた。
16 17/05/22(月)23:38:29 No.428806685
「……世話になったな」 「ああ」 翌朝。 いつもの制服姿に着替えてドアの前に立つテアを、同じくいつもの白衣に身を包んだ美波が見送る。 「……とはいえ、我々が日本にいる内は何度でも顔を会わすことになる。別れというのは大袈裟かもしれん」 「……そうとも限らん。咫尺天涯、近くにいても会えないこともよくあることだ」 「なら、もう少し別れを惜しんだらどうだ?」 「惜しんでいるとも。十分すぎるくらいに」 「……とてもそうは見えないが」 「愛想が悪いのはお前も似たようなものだろう」 減らず口を返して、美波は口の端を持ち上げる。 テアも彼女の意思を汲んだのか、それ以上はなにも言わず、手をひらひらと振ってその場を去っていった。 「河梁之吟……は必要ないだろう」 その小さな背中を一瞥して、美波は部屋の中へと戻る。
17 17/05/22(月)23:39:29 No.428806946
「……ん?」 と、何やら連絡が入っていたらしい。 テーブルに置いた携帯が、通知のランプを点滅させていた。 「ふむ……学校に集合か」 内容は、幸子からの召集命令だった。 「あ、鏑木さん! おはようございます!」 「うむ」 セグウェイに乗り、校門の前で待っていた幸子と合流する。 どうやら、少し早く来てしまったらしい。 幸子と美波の他にはまだ誰も来ていなかった。 「しかし、何の召集だ? 晴風なら先日復活祭をやったはずだが」 セグウェイから降りて、幸子にたずねる。
18 17/05/22(月)23:40:04 No.428807088
先日、クラスがあわや解散の危機、というとんでもない噂に振り回された挙げ句、そのままの勢いで決まった晴風の復活祭。 その開催で大騒ぎしたことは、美波の記憶にも新しかった。 「いえ、それがですね──」 「おう、ココにミナミではないか!」 「あ、ミーちゃん!」 と、そこにヴィルヘルミーナがやって来た。 鷹揚に手を上げるミーナに、幸子がぶんぶんと手を振った。 「久しいな、納沙幸子」 「あ、テアさんも! 二人でいらしてたんですね!」 それから、ミーナの影に隠れていたテアが、ぬっと顔を出す。 幸子はミーナに向けたテンションのまま、テアにも挨拶を返した。 テアも、軽く手を振ってそれに応じる。
19 17/05/22(月)23:41:47 No.428807502
「む」 「ん」 それから、美波とも目があった。 「……」 「……」 互いに、無言で会釈をする。 「また会ったな」と美波が目配せすると、テアも「私の言った通りだろ」と微笑みかけてくる。 どうやら、召集というのにはドイツも関わっているようだ。大方、次の航海演習の打ち合わせだろう。 「なんだ、二人とも知り合いか?」 「あら、いつの間に仲良くなってたんです?」 そんな二人の様子に親しいものを見たのか、ミーナと幸子が二人にそれぞれ問いかける。 「「いや……」」 二人は気取られぬように横目で合図をして、ほとんど同時にこう返した。 ただの顔見知りだ、と。 ……何故なら、それは二人だけの秘め事だったから。
20 17/05/22(月)23:43:51 No.428807983
おしまい テキスト版 ss291375.txt OVA前に終わらせておきたかった
21 17/05/22(月)23:44:20 No.428808118
えっちいにゃあ…
22 17/05/22(月)23:44:35 No.428808184
い、いかんッ!
23 17/05/22(月)23:45:15 No.428808334
なんで年少の2人がこんなにアダルトなんじゃ!
24 17/05/22(月)23:48:51 No.428809168
こんなに続くとは思ってなかったぞ「」長のエッチ!!!
25 17/05/22(月)23:49:11 No.428809248
> 美波は大粒のトパーズのような瞳の中に、潤んだ眼をした己を見る。 > さらさらとした射干玉色の黒髪は抵抗することなく、その白く細い指に掻き分けられていく。 この表現好き
26 17/05/22(月)23:52:35 No.428810060
ついに参戦かワシかと思ったぞワシ
27 17/05/22(月)23:58:10 No.428811367
絵面がやばすぎる…
28 17/05/23(火)00:07:56 No.428813555
テア艦長は合法だろうミーナさん…ぶっかけたいにゃあ…
29 17/05/23(火)00:13:27 No.428814766
めっちゃエロい↓めっちゃエロい↓↓
30 17/05/23(火)00:20:06 No.428816173
ss291375.txt あれ…「」っチーにテキスト版のリンク繋がってないな
31 17/05/23(火)00:21:49 No.428816607
サッチー最近調子よくないね