17/05/22(月)17:17:12 彼女の... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1495441032855.jpg 17/05/22(月)17:17:12 No.428720844
彼女の溜息が夜空に溶けて、東京の海の靄となる。 音だけを残す深黒を鏡面に、街に浮かぶ赤や黄色や白の瞬きはさながら失われた星々のようで、海と空と街中との中で二人は閉じ込められていて。 「んー、いい風」 頬に残した微熱、太陽の揺らぎ。街灯の小さな傘下に彼女はライトアップされたシンデレラ。 酔いを覚ますためなんて洒落て言ってはみたものの、実際そこそこに効果はあったらしい。彼女の絡んだ指先は徐々に確信を持った狩猟者のように俺の手の甲を撫でている。 「試合に勝つとお酒が美味しい。お酒が美味しいとアフターも楽しい、そうだよね?」 俺を光の下に連れ込んで、白光の下にその笑顔。 「ん、うん」 「さて、そろそろ帰ろっか。お風呂入らないと、汗かいちゃった」 赤、青、黄色に白、それから君。沢山の輝きに囲まれて、そんな中、たった一つ残った月がとっても青くて。 こんな気持ちいい風の日は。こんな月の青い日は。 「君さえ良ければ、遠回りして帰ろうよ」 何の思い出もない帰り道、二人の記憶を刻むように。偽りの星の中、優しげな風の中、涼しげな波音の中、塗りたくった月の下。 この帰り道よ、もう少しだけ。
1 17/05/22(月)17:19:29 No.428721207
青春きたな…
2 17/05/22(月)17:28:02 No.428722532
月がとっても青いから~♪
3 17/05/22(月)17:29:30 No.428722756
>月がとっても青いから~♪ いい歌だよね…
4 17/05/22(月)17:44:06 No.428725041
君とはつくづく合わないな。そんな事を言ってみては、二人の違いを楽しむ俺がいた。 君とはつくづく合わないから、俺は何度でも君に合わせよう。趣味も、好みも、生活も。全てを君に捧げれば、君の止まり木になれるような気がしたから。 「ねーねー、今日、元気ないよ?」 お気に入りのチームが勝った日、彼女はご機嫌で俺を看破する。 そんなことないよ、いつも通りさ。強がりで笑うと少し不満気に頬を膨らませて、同い年の癖に年長者みたいだ。 「分かるよ、いつも見てるんだもん。今日くらいゆっくり休んでよ。家事、任せてばっかりだしさ」 どうせなら、一週間くらい任せてみたいものだけど。台所に立つ君も、掃除機をかける君も、洗濯物を干す君も、最高に絵になるだろう。ああ、君は美人で可愛いから。
5 17/05/22(月)17:44:25 No.428725094
「もう寝る……」 負けると分かりやすいくらい不機嫌になるのも、それはそれで。同い年の癖に子供みたいに甘えん坊で、我儘で、だけどそんな君に合わせてみたり。 「お風呂に入って歯を磨きなさい」 「いいじゃんさぁ、一日くらい。アイドルって多忙なんだよ」 そんな事言って拗ねたフリしても、本当は構って欲しいだけなんだろう。言葉の代わりに小さな頭を撫でると深く目を瞑る君。 「いつも、お疲れ様」 「そちらこそ」 「それから、ありがとう」 「こちらこそ」 照れ臭そうな笑顔。ぶきっちょな感謝。それから、形成途中の親愛。 俺は、どうだろう。君に上手に合わせられているだろうか。いつの日かもっと自然になるだろうか。それまで一緒に居られるだろうか。 俺の問いに彼女は、細腕の抱擁で答えてくれた。
6 17/05/22(月)17:45:25 No.428725245
急や
7 17/05/22(月)17:49:35 No.428725946
姫川のことになると早口になってしまう
8 17/05/22(月)17:55:03 No.428726871
姫川はかわいいからな…
9 17/05/22(月)17:55:14 No.428726905
いちゃいちゃしやがって…
10 17/05/22(月)18:13:47 No.428730205
長い髪が無造作に散らばって、白い布団に細い線となった。手櫛をかけられるのが好きなのか、君はごろごろ転がって、俺の指先から逃れてしまう。 「捕まえてごらんってやつ?」 「どうだろうねー」 背中を向けた彼女の髪を何度も何度も掻き分けて、そこに何の意味もない。 それに気付いたのか、また、ごろり。腕の中に転がった君は、確信犯の癖に。 「ふふ、捕まっちゃった」 髪に絡めた指先はそのまま後頭部に続いて、糸をそうするようにくいと引き寄せると何の抵抗もなく君は俺の胸に顔を埋める。 今日は、そういう気分でしょうか。 空気を震わせることのない納得。散らばった長い髪はそのままに、二人はごろり。 手櫛をかけられるのが好きなのか、彼女は俺の下で髪を乱した。