17/05/05(金)03:03:55 ウサミ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1493921035873.jpg 17/05/05(金)03:03:55 No.425067872
ウサミン君は、雨粒と空気の湿り気を四十年間吸い続けて壁紙も畳もぶよぶよになった、六畳一間の星に住んでいました。 朝、ウサミン君はこの星を出て電車に乗り、街の雑居ビルの3階にあるカッフェでお給仕の仕事をしています。そうして稼いだお給金でパンと野菜とわずかな魚を買って暮らしているのでした。 お給金が出る前の日などは、パンを買うお金がないので、ウサミン君は代わりに夢を食べていました。 ウサミン君の星の裏にある小さな公園のベンチに座って、子どもたちが持っている玩具のスコップ、誰かの飲みかけの珈琲の缶、セミの抜け殻、鳥、ずっとブランコを漕いでいる若い男の人の背広、子どもを迎えに来たお母さんの履いている靴なんかを眺めながら、ウサミン君はお腹いっぱいになるまで夢を見るのです。 そうして公園で見た夢を忘れないように、星に帰るとすぐに帳面に丁寧な字と挿絵で書き残すのでした。いつかウサミン君の星がどんどん大きくなって、このまあるい惑星をそっくり飲み込んでピンク色の風船、きらきら星、パンジーの花なんかでいっぱいにして、その真中でウサミン君が自分の作った歌を歌う夢を……。 そう、ウサミン君は貧しいIdolでした。
1 17/05/05(金)03:07:18 No.425068127
ある日、ウサミン君が月に一度のお給金の日に電車に乗ってカッフェに出ると、入口のドアにはこんな紙が貼られていました。 お知らせ 弊店は勝手ながら今般閉業と相成りました。 長らくご愛顧頂きまして誠にありがとうございました。 店主 店のドアの鍵は開いたままで、中に入ると一晩のうちにすっかりがらんどうになっていました。 要するに夜逃げでした。 店主は、ただ一人の店員だったウサミン君に一言告げることもなく、レジスターや金庫の中は空っぽで、伝票も出納帳も、恐らくリース品であっただろうウォーターサーバーまで持ち出して、どこかへ姿を消してしまったのです。 ウサミン君はしばらく虫かごの中に入れられたバッタみたいに店のあちこちを跳ね回っていて、それから不眠症の幽霊みたいな格好で外に出ました。 ポケットの中、財布の中を撫で回したって、十銭白銅貨が3枚、五銭青銅貨が1枚、一銭青銅貨が2枚。これ以上は何も出てきません。今月のお給金が出ないので、ウサミン君は今日も昨日に続いてパンではなく夢でお腹をふくらませなくてはなりません。今日一日は凌げるかもしれませんが、明日、明後日、いつまで続くだろう……。
2 17/05/05(金)03:09:45 No.425068333
それに、ウサミン君は貧しいIdolでした。職業安定所に行ったって、貧しいIdolの労働を買う人はそうありません。貧しいIdolは、その貧しさ故に貧しくなるのです。そんな不合理な貧しさを、ウサミン君はよく知っていました。そして、極度の貧しさとひもじさのために毎日パンを食べずに夢ばかり食べているうちに、自分の体全体が夢になって消えてしまった貧しいIdolのことも。 ビルの下の街では、戦争特需が終わったというのに忙しさだけは変わらない工員達がドンブリの内容物を短時間で胃袋の中に詰め込み、「大量馘首断固反対」と書かれたノボリを揚げた組合員達が資本家の雇ったごろつき連中に次々と殴り倒されていました。 そんな様子を見て、ウサミン君がこれから毎日夢ばかり食べて、いっそのこと体ごと夢になってしまおうか、と考えていたところ、ビルの階段の手すりに猫が座っているのに気が付きました。 猫は、ウサミン君の顔を見るなり、低い声で「だーん」と鳴きました。それからのっそり歩きだして、手すりの上に乗っていたウサミン君の左手に擦り寄ったかと思うと、ウサミン君の影だけを残して、ウサミン君の体をぱくりと丸呑みしてしまいました。(つづく)
3 17/05/05(金)03:27:40 No.425069777
つづくの…?
4 17/05/05(金)03:35:37 No.425070451
つづく…?
5 17/05/05(金)05:08:51 No.425076241
これなんだウサミンがロボとかそんな話か