17/05/02(火)03:19:45 キタ━━━━━... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1493662785415.jpg 17/05/02(火)03:19:45 No.424448654
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
1 17/05/02(火)03:41:42 No.424450082
小梅が8月15日放送予定の2時間ドラマに出ることになった。 毎年恒例の終戦記念日もので、役柄は学徒出陣で特攻隊員となり戦没した主人公の妹である。主演は気鋭の若手俳優で、小梅自身の出番こそ多くはないが、そんな主人公の妹役ともなればインパクトは大きい。まだ駆け出したばかりの小梅にとっては大抜擢である。 ところが、撮影が始まってから、現場ではいきなり窓ガラスが割れたり、セットの壁に黒いぼんやりとした染みが何箇所も浮かんだりと、ハプニング続きだった。 撮影の後こっそり小梅に尋ねてみると、「いっぱい、来てる……」との事だった。 急遽、セットの四隅に塩を盛ってみたり、現場近くのそれなりに由緒のある寺社仏閣の神主や住職にお祓い、供養を依頼してみたものの、結果はなしのつぶてで、このままでは撮影続行が危ぶまれた。しかし、せっかく小梅が努力して掴んだチャンスが、このような形で失われるのは惜しい。自分なりにどうにか出来ないものかと三日三晩考えた。対処法を調べてはみたものの、分野が分野だけに眉唾ものばかりで、そもそも生身の人間が幽霊と立ち向かうなど可能であろうか?と疑念が増えるだけだった。
2 17/05/02(火)03:42:01 No.424450101
結局、制作サイドの発案で、ロケ地を変更した上、まずはいかにも幽霊が出そうな戦争シーンではなく、日常場面の撮影を集中的に行うことになった。ところが、撮影の度に怪現象が一つ、二つならず発生し、遂には収録音声をチェックしていた音響スタッフが、うめき声だの、甲高い調子っぱずれの歌声だの、どこの国の言語か分からない叫びやつぶやきが入り混じったのを聴いているうちに、胃を壊して入院してしまったとの事だった。 結局、お祓い、供養をしてもダメ。撮影場所、撮影シーンを変えてもダメ……何が原因なのか全く分からなかった。制作サイドではドラマの企画自体の見直す方向で話が進められ、関係者の間では週刊誌やスポーツ新聞に面白おかしく書き立てられないよう箝口令が敷かれた。そうして企画全体の方針が決まるまで撮影は一切中止され、小梅と私は指示を待つよう言い渡された。その帰路、制作テレビ局の建物から出ようとすると、小梅が「プロデューサーさん…ちょっと、いい、ですか……」と声を掛けてきた。いつにまして深刻な様子が表情から看て取れた。何事か聞いてみると、「どうして、あの子達が来てるか、分かった……」と言う。
3 17/05/02(火)03:42:39 No.424450136
小梅に案内されるままにビルのエアコンの室外機が置かれた辺りに出ると、室外機のファンの中から言葉にならないうめき声の数々が、私にも聞こえてきた。 「いま、ここに、いるのはね…日本の兵隊さん……こっちは、インドの……イギリスの軍人さん……それからピー屋…?、の、おばさんと……日本軍の、道案内してたおじさん……みんな、ビルマで、病気になって、亡くなって………それで、その…プロデューサーさんのひいおじいさんのこと、知ってるって……」と、小梅が言った。 それを聞いて、私は目眩に襲われた。昔、亡くなった祖母から聞いた話を思い出した。 私の祖母の父、つまり私の曽祖父は、先の戦争でビルマ戦線に従軍して、撤退まで生き延びたものの、祖国の土を踏む前に亡くなった。祖母が言うには、終戦からしばらく後に曽祖父の元上官が遺骨を持ってきて、一家の前に頭を深く下げて詫びながら、こんな話をしたというのだ。
4 17/05/02(火)03:42:54 No.424450149
――曽祖父は、文字通り馬の屍肉を喰らい泥水をすするような劣悪極まる衛生状況のビルマ戦線でも、ひときわ戦病死者が多かった部隊に配属されていた。その中で、軍医であった曽祖父は、物資不足を補うため、伝染病に罹患していた人間の血から血清精製を試みる任務に就いていた。血液の採取元には、日本軍の戦力とならない者、すなわち懲罰房に収監されて銃殺を待つばかりの脱走兵、英印軍の俘虜、慰安所の者、道案内の現地人など―その中でも身寄りの無い者が選ばれた。曽祖父は医師でありながら、これらの病人に治療を施すのではなく、専ら血清精製の試料採取元として扱っていた。しかる後、日本軍はビルマで撤退を重ね、昭和20年8月15日を迎えた。その日、曽祖父は、所属部隊の司令部に呼ばれて銃殺された。ビルマでの血清精製試験の件が連合軍に発覚することを恐れた上層部が、口封じのため、直接の担当者であった曽祖父を抹殺したのである。そして、曽祖父の死は、公式には撤退中における不慮の事故死とされたというのだ―― まさか、これら全員が私の曽祖父の所為によって斃れた人々の霊だというのか……
5 17/05/02(火)03:43:20 No.424450177
さらに小梅は続けた。 「でもね…みんな、プロデューサーさんに、何か、するつもりはないって……ただ、みんな、家族がいなくて、お墓もないから…だから、自分の事を誰かに、覚えていて欲しかったんだって………」 それは、そのとおりかも知れない。家族のあった私の曽祖父でさえ、誰の記憶にも留められなくなろうとしていたのだ。私も今、ここで死者の声を聞かされるまで、ビルマ戦線の中で敵味方のべつまくなしに死屍累々を重ね、やがて軍上層部に抹殺されたという曽祖父のことなど、気にも留めていなかった。実際のところ、祖母の話も半分与太だろうと信じてもいなかった。まして、この死者達の声に、誰か耳を傾けることがあっただろうか?うだるような熱帯の泥沼の中で、訳も分からず病に冒され、治療も受けられずに死んで、葬られることさえなかったこの人々の事を、これまで誰が記憶し、追悼し、弔っただろう? 私はその場に跪くように座って頭を下げ、両掌を強く合わせて、いま声を聞いた死者達の安らかな眠りを、祈った。傍にいた小梅もしゃがんで一緒に手を合わせてくれた。
6 17/05/02(火)03:43:37 No.424450196
結局、例のドラマは企画中止になり、その枠には昔の戦争映画を放送することに決まった。 心霊現象については相変わらず箝口令が敷かれ、当事務所にも表向き「予算とスケジュールの都合で企画変更」と通知された。 私から上司にその旨報告に行ったところ、「まあ、今回は残念だったね。でも、仕事は中止になってもツテは出来たわけだし、これにめげず頑張ってよ?」と、なんとも拍子の抜ける答えが返ってきた。
7 17/05/02(火)03:43:54 No.424450211
それからしばらく経った8月15日夜、私はちょうど仕事が空いていて、ぼんやりとテレビを眺めていた。9時になって、映画が始まった。当初小梅が出演予定だった枠の代番。奇しくも「ビルマの竪琴」だった。 埴生の宿も 我が宿 玉の装い 羨まじ のどかなりや 春の空 花はあるじ 鳥は友 おゝ 我が宿よ たのしとも たのもしや 主題曲が流れてきて、格別悲しいとも思わなかったけれど、涙がほろほろと流れてきた。私は自宅のソファに腰掛けているのに、なんだか自分がかつての曽祖父と同じように、ビルマの泥濘の中にいるような気がしていた。
8 17/05/02(火)03:44:21 No.424450226
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9 17/05/02(火)03:44:44 No.424450248
そして、映画が終盤に差し掛かった頃……部屋のドアに、年の頃四十程だろうか、いかめしい面構えの男が立っているのに気がついた。その男は、大きなマスクで顔を覆い、白いゴム手袋を両手につけて、白衣の下に詰襟服を纏っていた。紛れもなく旧日本軍人の亡霊であった。軍人の亡霊は、腰から拳銃をそっと取り出し、銃口を私に向けて、こう言った。 「私を恨むな。しかし軍機は守られねばならぬ」と。 そして、軍人の亡霊は引き金を弾き、その弾は私の左胸下に直撃した。幽霊の拳銃なので血は出なかったが、致命傷を負わせるには十分だったようだ。次第に呼吸ができなくなり、脈が絶えていくのが自分でも感じ取れた。目の前が霞んで、何も見えなくなった。ただ、私がこのまま起き上がれなくなっても、小梅と過ごす日々は明日も変わりなく続くのだろうと思われた。そうであれば、ちっとも怖い気がしなかった。
10 17/05/02(火)03:47:33 No.424450367
えっ急に…
11 17/05/02(火)03:48:48 No.424450429
やば…
12 17/05/02(火)03:50:58 No.424450523
し、死んでる…
13 17/05/02(火)04:09:19 No.424451304
死んじゃってるわ
14 17/05/02(火)06:41:13 No.424456503
ナニココ
15 17/05/02(火)06:49:12 No.424456848
ちょっと待て!誰の手記なんだこれは
16 17/05/02(火)06:55:55 No.424457158
素直に読みふけってしまったけどどういう事だってばよ!?