虹裏img歴史資料館

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17/04/29(土)18:16:30 奈緒と... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1493457390112.png 17/04/29(土)18:16:30 No.423893669

奈緒と私と二人で、夕方前の道玄坂を登っていた。どこへ行こうというわけでもなかった。ただ、途中塩をたっぷり振った馬鈴薯揚げを買い食いして、時々奈緒に小言なんか言われながら、西日が差し出した猥雑な雑踏を山の手に抜けるまで二人一緒に歩いているのがなんとなく心地よかった。 ちょうど坂の頂上手前、性風俗店が居並ぶ辺りを歩いていると、大八車を曳いた乞食とすれ違った。かなり年老いた乞食で、頭には糸くずのような髪の毛がひょろひょろとまばらに伸びていて、ひび割れて黒ずんだ素肌の上に青いジャージを着ていて、歯はほとんど残っておらず、瞳は半ば白く霞んでいた。いかにも汚らしい、これぞ乞食爺という乞食だった。 すると、その乞食は私の目を見つめながら、「徂徠豆腐に揚げ豆腐。ひとつお豆を煮ておくれ」と、歌いだした。ひどく嗄れて、それでいて不思議と聞き取りやすい低い声だった。 その途端、私の隣にいた奈緒が突然くらくらと地面に倒れ、乞食が倒れた奈緒を恐ろしく俊敏な動作で大八車の上に乗せて、坂の脇の路地に走り出した。腰が曲がった老人なのに走るのが速くて、私が全力で後を追っても、姿を見失わず着いていくのがやっとだった。

1 17/04/29(土)18:17:11 No.423893793

私が乞食を追って路地に入ると、老人は空ビルの中に入っていった。エントランス前には『平成女学校』とピンク色の文字で書かれた電光看板が壊れたまま置かれていた。私が息を切らしながらビルの入口にたどり着くと、ガラス戸ごしに、奈緒を載せた大八車と例の乞食の姿が見えた。急いで警察に通報しようとしたものの、電波が圏外になっていてダメだった。あの大八車が電波を邪魔して届かなくなっているようだった。 それが分かると目の前が急に眩んできて、頭が火照り出たような気がした。奈緒のことを考えると悔しくて涙が出てきた。ごめん、奈緒。ごめん……いつも私のことを心配してくれてたのに、奈緒には文句ばっか言っててごめんね。ごめん、助けられなくて、ごめんね………そうして私の全身から力が抜けていって、次第にその場に立っていられなくなって、そうしているうちに目の前の景色が段々白く溶けていった。

2 17/04/29(土)18:18:44 No.423894092

ぎゃーす、と鴉が鳴く声で目を覚ました。そこは内装が全て取り払われて打ちっぱなしのコンクリート壁が剥き出しになったビルの中だった。ビルの天井の隅では、鴉が針金ハンガーなんかの残骸で巣を作っていた。 私は、シーツやマットがところどころ黄色や茶色に変色した、見るからに不衛生なベッドの上に寝かされていた。どうやら私はビルの入口で倒れて、ベッドの上に運び込まれていたようだった。起き上がろうとしたけれど、全身が金縛りに掛かったように重くて動かなかった。左隣には同じように汚らしいベッドに奈緒が寝かされていた。奈緒は白雪姫のように眠り続けていた。 こういうのは昔、病院のテレビで見たことがあった。昔の特撮ドラマの再放送で、親友同士が悪の秘密結社に拐われ、こうして2人並んで手術台に載せられて改造人間にされるのだ。改造人間……あまりに恐ろしくて、なんだか自分が夢を見ているような気がしてきた。そういえば小さい頃、自分が15歳の誕生日までに死ぬだろうと思っていた。そのとおり、私は15歳の誕生日を前に死んだのであり、それから後のことは全部死んだ私の夢なんだろうと、そういうふうに考えると何だか恐怖心も遠のいていった。

3 17/04/29(土)18:19:25 No.423894259

私は死んだ…私は死んだ…私は死んだ…目をつぶって、心の中で繰り返していると、傍らに腐臭とともに人の気配が現れるのを感じた。例の乞食なのは間違いなかった。それから乞食は私の左隣で何やらもぞもぞと動き出しているような音をさせていた。恐怖半分好奇心半分で左目を少し開けてみると、なんと恐ろしい事、乞食は奈緒のスカートを脱がせていて、既にショーツに手を掛けていた。 それに気が付いて、怖かったけれど、私の中にふつふつと正義の怒りめいたものが湧いてきて、両目を見開いて、遂に「ねえ、あんた何やってんの!?」と、喉の奥から声を振り絞った。すると、例の乞食がこちらをのっそりとした動作で振り向いた。その時、乞食の姿を間近で見て、私はそれまで勘違いをしていたことに気付いた。乞食の上着のはだけた部分からは、干からびた糸瓜のような乳房がのぞいていた。この乞食は女だったのだ。そして、乞食女は、妙に落ち着きのある低い声で、「この娘の月のものの血はな、この娘の月のものの血はな、毛生え薬になるのじゃ」と言った。私の頭は言葉の意味の理解を拒んだ。ところが、私の目が乞食女の言葉の意味を無理やりに理解させた。

4 17/04/29(土)18:19:44 No.423894325

そう言うと、乞食女は、いつの間にか奈緒から脱がせていた生理用ナプキンのクロッチ部分を、べろり、べろりと舌で2,3回舐めだした。すると、白い糸くずが僅かに垂れるだけだった乞食女の頭から、たちまち黒く豊かな長髪がふさふさと生えてきた。私は思わず息を呑み、老婆の変身の不思議から目が離せなくなっていた。そして、髪が生えそろったかと思うと、次第に海老のように曲がっていた乞食女の腰がまっすぐに伸びて行き、ひび割れ黒ずんでいた肌が白く艶やかな柔肌に変化していって――それから私は、「阿ッ」と、思わず声を漏らした。乞食女が奈緒の経血を舐めて若返った姿は、私がよく知る人物――渋谷凛――そのものだったからだ。

5 17/04/29(土)18:20:04 No.423894388

驚きのあまり、私が「嗚呼…」と言葉にならない声を出していると、渋谷凛になった乞食、あるいは乞食だった渋谷凛は、「おはよ、加蓮。具合はどう?」と、いつも渋谷凛がそうするような調子で私に話し掛けてきた。頭の中が混乱し切って、私が何も答えられずにいると、「もう遅いし、無理はよくないから、駅まで送ってくよ」と言って、私の身体を抱き上げて、大八車に乗せた。私は訳が分からず、されるがままに身体を抱き上げられ、大八車に乗せられた。そうして、凛になった乞食女あるいは乞食女だった凛は、自分のジャージのポケットから新品の生理用ナプキンを取りだし、それを奈緒のショーツに当てて、何事も無かったかのように奈緒にショーツとスカートを穿かせた。奈緒は相変わらず眠ったままだった。それから、奈緒は私と一緒に大八車に乗せられて、凛になった乞食女あるいは乞食女だった凛に曳かれて、駅まで向かって行った。駅に着くと、凛になった乞食女あるいは乞食女だった凛は、私と奈緒を降ろして、「大丈夫?歩ける?」と私に尋ねてきた。私は、何も言えず、ただ「阿…」と声を漏らした。気が付けば私は立ち上がって、自分の二本の足で歩行していた。

6 17/04/29(土)18:20:19 No.423894429

それを見て、凛になった乞食女あるいは乞食女だった凛は、「よかった。じゃあ、帰ろっか。奈緒はまだ起きないみたいだから、私が送ってくよ。家、近いしさ」と言って、奈緒を背中におぶって、地下鉄の改札を通り、電車に乗った。それから、次の駅で奈緒をおぶったまま下車し、「それじゃ、またね」と言って、私に手を振り、出口まで歩いて行った。私は無言のまま二人を見送って、それから自分の額に手を当ててみたけれど、別に熱くも冷たくもなかった。ポーチに入れていた薄荷飴を舐めてみたら、いつもどおりスースーして薄荷の味がした。この日から、やはり私は15歳になる前に死んでいて、それから後の出来事は全て死んだ私が見ている夢なのだと、そんな気がしてならない。

7 17/04/29(土)18:33:02 No.423896764

どういうことなの…

8 17/04/29(土)18:41:39 No.423898146

なにこれ…

9 17/04/29(土)19:07:54 No.423902721

そんな気がしてならない。まで読んだ

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