17/04/20(木)01:14:54 私は県... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1492618494972.jpg 17/04/20(木)01:14:54 No.422028684
私は県下一の名門女子校の入学試験に落第した。 やむなく志望よりずっと程度の低い新設校に入学したが、呆然自失——自分が落第した学校の制服姿を見る度に、私は内心、思い浮かぶ限りの言葉で毒づいた。 あの制服を着て街を歩いていれば、誰もが「ああ、あすこの生徒さんや。賢うて、ええ家のお嬢さんや」と、やっかみ半分、羨望半分の目で見てくれる。合否発表の日までは、その視線を浴びながら、わたくしは選良ですことよ、と言わんばかりのすまし顔で、肩で風を切って、六甲山の麓を闊歩する日が必ず来るものだと妄想していた。 それが、忘れもしない、霙が梅の蕾を厳しく打ち据えていたあの日から、私は人生の落伍者という烙印を自分の意識の中に深く刻まれてしまった。 二月ほど経って、下校路を極道者のような面構えをして歩いていると、以前の仲間に出くわした。彼女は私が遂に着る権利を得られなかった、あの制服を纏って、春の陽気をいっぱいに帯びた微笑みをたたえていた。 「ごきげんよう、橘さん。お元気でいらして?」
1 17/04/20(木)01:15:35 No.422028789
その微笑みのまま、彼女は話しかけてきた。それから、他愛もなく、とりとめもない世間話を始めた。彼女は学校の話題を巧妙に避けていた。それを言えば私が確実に傷つくであろうことを、よく理解しているのだ。私は暫らく相槌を打ってやり過ごしていたが、次第に我慢ならなくなってきた。それで、彼女が自分でお茶を煎れようとして失敗した話を面白おかしく―私にはちっとも面白くなかった―していたとき、とうとう言ってしまった。 「なんで、そんな話をするんですか…」 「えっ…」 相手の顔色が驚きと狼狽で色褪せていくのが見て取れた。
2 17/04/20(木)01:15:52 No.422028833
「『同じ学校に行けなくて残念ですわね』とか、『そちらの学校はいかが?』とか、なんで言わないんですか!?私が傷つくと思っているから?同情すると余計に惨めな気持ちにさせると思って?だったら…、だったら私に話しかけないで下さいよ!そうですよ、私だって貴女と同じ学校に行きたかった!でも行けなかった!私は行けなかったんですよ!!だから、私はもう駄目なんです!貴女と一緒に歩けないんです!貴女にどんな顔をして会えばいいか分からないんです!貴女はいいでしょうね……そうやって、上から見下ろすように、情けをかけてるのを気づかせないように、余裕振りかざしてお互い何事も無かったみたいにできるんだから!だけど…だけどそういうのが、一番傷つくんです!嫌なんです!だから私に話しかけないで下さい!だって、貴女と住む世界が違うんですから!貴女は、貴女のお友達と幸せに過ごしていて下さい!私のことなんか、落ちこぼれて、ダメになった私のことなんか、もう忘れて下さい!私は貴女と一緒にいる資格が無いんです!私のことなんか忘れてよ!もう見ないで!お願いだから話しかけないで!」
3 17/04/20(木)01:16:14 No.422028890
思う丈を吐き出すと、それまで屈辱感だとか、劣等感だとか、敗北感だとか、そういったものでいっぱいになっていた頭がすっと晴れて、目の前の景色が鮮烈に映り込んできた。そこには涙をいっぱいに溜めて、震えながら立ち尽くしている彼女の姿があった。――最低だ。私は自己嫌悪に目が眩んで、吐きそうになった。そうして、俯向いてぎゅっと拳を握りしめる彼女に背を向けて、脇目も振らず走り出した。傷ついているのは私?違う、彼女の方だ。私が彼女を傷つけた。何の落ち度も無い彼女を、自分自身の惨めな気持ちを晴らすために、敗北者、落伍者という立場を都合よく利用して、彼女の誠意をずたずたに切り裂いたのだ。そんな思いが頭の中をずっと巡って、走りながら涙が止まらなくなった。悔しさに噛んだ唇が血を流しそうになった。 その晩、家に帰ると何も食べずベッドにうつ伏せになって、すっかり涸れたと思っていた涙を再び流しながら、そのまま眠ってしまった。
4 17/04/20(木)01:16:47 No.422028964
それから三日ほどして、私の机の上に白い便箋が置かれていた。裏には今時古い映画でしか見ないような瀟洒な封蝋が推されていた。彼女からの手紙だった。開けてみると、あの日の事で私へのお詫びの言葉が丁寧な字で書かれていた。「あれからすぐにお詫びしたかったのですが、メールでは不躾かと思い、お手紙にて失礼致します。」「二ヶ月もずっと連絡もしないで、急に話しかけてしまって、貴女がお怒りになったのも当然の事と思います。」「どうか私の軽率と非礼をお許し下さい。何卒ご寛恕頂いて、また親しくお付き合いできたら幸いです。」大体そんな事が書かれていた。本当に謝らなければならないのは私の方なのに。ここでも、私は彼女に負けた気がした。不意に、そんな敗北感で心を満たされて、また沸々と自分の惨めさに対する苛立ちが募って、気がつけば彼女の手紙を破り捨てていた。 散り散りになった紙片を目にして、私はあの日と同じ失敗を繰り返した自分に気付いた。
5 17/04/20(木)01:17:06 No.422029018
「ああ…」自分でも驚くほどうわずった嗚咽が喉の奥から漏れた。 ――神様、あなたが望むことは何でもします。どうか時間を戻して下さい。出来ればあの日の前に、それが叶わなければほんの10分でも構いません。彼女の心を二度も踏みにじった自分を無かった事にして下さい。―― けれども、時計の秒針は一刻一刻を正確に刻み続けて、私の心は…彼女の手紙は、千々に砕けたまま戻らなかった。
6 17/04/20(木)01:19:44 No.422029387
破くなよ
7 17/04/20(木)01:23:09 No.422029819
これは…つらい…
8 17/04/20(木)01:23:49 No.422029886
やっぱり橘はこの世界線でも貧乳なのか
9 17/04/20(木)01:27:22 No.422030352
深夜に辛いものをみせるな…
10 17/04/20(木)01:28:57 No.422030649
中盤以降の流れが好き
11 17/04/20(木)01:29:22 No.422030712
深夜にこんなものをお出しするなど… 救いはあるんだよね?
12 17/04/20(木)01:31:14 No.422030971
おかしい・・・リロードしても続きが表示されない・・・
13 17/04/20(木)01:34:38 No.422031455
読んじゃった ええやん…
14 17/04/20(木)01:45:11 No.422033109
ここから紆余曲折してNear to youするんでしょ そうだと言え
15 17/04/20(木)01:45:39 No.422033192
橘は折れると弱そう
16 17/04/20(木)01:46:43 No.422033350
よくない方向にこじらせて折れた結果だな
17 17/04/20(木)01:59:29 No.422035377
この育ったちゃまの胸のふくらみが俺をダメにするんだ・・・ いっぱい出る・・・ 揉みたい・・・ さするように撫でるように揉みたい・・・ スッゴイ高級な下着つけてるだろうからちょっとでいいから見せてもらいたい・・・ 見せてもらった瞬間に下衆にも暴発して前かがみになりたい・・・ 橘つらいな・・・
18 17/04/20(木)02:23:06 No.422037694
都合のいいハッピーエンド妄想して寝る!