虹裏img歴史資料館

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17/04/14(金)23:00:41  聖グ... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1492178441392.jpg 17/04/14(金)23:00:41 No.420923434

 聖グロリアーナの優雅な休日。  そんな軽やかな文字が、美しいレタリングとともに誌面を飾っている。  石畳の街並みをゆったりと歩く少女たちの写真で、大判の雑誌の見開きいっぱい。  月刊戦車道の企画である。  大学選抜との試合の後、月刊戦車道ではにわかに高校戦車道界の人気が高まった。それに応えるため、月刊戦車道でも”選手の素顔に迫る”などと銘打ってさまざまな企画を各校に持ち込んだ。もちろん中にはあまり戦車道と関係のない、女の子をまるでアイドルのように扱う軽薄な記事もあって、学校の中には断るところもあったが、聖グロリアーナは違った。 「わたくし、受けた勝負は逃げませんの」  とは、紅茶の園の主であるダージリンの言である。  彼女は実に積極的に取材に応じた。中には健康的な水着のピンナップなどもあったのだが、ダージリンは楽しそうにその全てに参加した(数年後、ダージリンはこの軽率な行為を大いに後悔することになる)。  付き合わされるのは、主にオレンジペコとアッサムであった。それに最近ではローズヒップ。

1 17/04/14(金)23:01:02 No.420923525

「あれは恥ずかしいって……」  実に常識的な考えを持つルクリリは、四人の誌面での活躍を横目に、ほっと胸をなでおろしていたのだった。  しかしここしばらくで風向きが変わった。  ピンナップの申し込みがルクリリにも来るようになったのである。  この変化には、聖グロリアーナ一般生徒たちの組織的なアンケートハガキ攻勢があったのだが、ルクリリはそれを知らない。  ダージリンは取材の申し込みを断ることを許さなかった。あれよあれよと言う間に、ルクリリの等身大看板までも制作されてしまったのだ。サンプルを貰ったルクリリは、それを完全に持て余して、後輩であるニルギリにあげてしまった。イライラしたときにでも殴るといい。もっとも、ニルギリがそんな子ではないことはよく知っていたが。まぁ、ハンガー代わりにでもすればいいのだ。  この見開き写真も、その流れのうちの一つであった……。

2 17/04/14(金)23:01:20 No.420923614

 ルクリリは、発売日よりもちょっとだけ早く届いた月刊戦車道を開くと、うーん、と唸った。  写真には、中央にはもちろんダージリン。脇を固めるオレンジペコとアッサム。そして跳ね回るローズヒップ。その少し後ろにルクリリが写っている。とっておきのよそいきだ。  しかし、本来はこの写真にはもう一人いたのだ。 「あ、あの、先輩……」  ルクリリの横で、たっぷりした胸の前で両手を心細げに合わせた眼鏡の少女がおずおずと言った。 「私……腰のところと足しか写ってないんですけど……」 「うん……」  ルクリリは自分がお世話係として世話している(お世話されている、の間違いだろう、とパーシバルあたりは笑うだろう)ニルギリの方をちらりと見て、それから視線を月刊戦車道に落とした。  この写真は、タイトル通りに、我らが聖グロリアーナ生の休日、というコンセプトで撮影されたものだった。

3 17/04/14(金)23:01:41 No.420923715

 学園艦の中でも写真写りのいいヨーロッパ風の一角を舞台にして紅茶の園の中核メンバーを動員したもので、絶対に写真に写りたくない魂を抜かれると主張するルフナの代わりに、一年生のニルギリが抜擢されたのだ。  カメラ慣れしているダージリンやオレンジペコ、アッサム、あるいはカメラを気にしないローズヒップと違い、取材初体験のニルギリはガチガチに緊張して、やわらかそうな身体をこわばらせた。だからルクリリは彼女を安心させようと、ずっと隣にいるようにしていたのだった。  しかし、ひょっとするとそれがよくなかったのかもしれない。  見開きを飾る写真の中で、ニルギリはアッサムのふわっとした金髪の後ろに入ってしまい、スカートの一部がかろうじて写っている程度だったのだ。

4 17/04/14(金)23:01:59 No.420923799

「あー……残念だったね」  ルクリリは横目でニルギリの方を伺う。  ニルギリがこの取材を大いに楽しみにしていたのは知っている。  いや、楽しみに、というと語弊があるかもしれない。なぜって、ひどく緊張もしていたから。  せんぱい、せんぱい、となついてくれるこの後輩は、撮影の間中、ずっとルクリリの隣から離れなかった。  それでもなんとか撮影を終えたときには、ほっとして夕日を背景にとびっきりの笑顔で笑ったものだった。もしルクリリがカメラを持っていたなら、そここそ撮影しただろうに。  そんなニルギリだったから、きっとさぞかしがっかりしているだろう、と思った。

5 17/04/14(金)23:02:19 No.420923882

 はたしてニルギリはむしろ困っていた。 「実は……おかあさんに、次の月刊戦車道、私、載るよって言っちゃったんです……」 「うえ」  ニルギリは結構なお嬢様で、ご両親からの期待も大きいと聞いている。娘が紅茶の園の一員に選ばれたのだから、期待していないはずがない。ルクリリの両親でさえそうなのだ。その娘が一年生にして車長を勤め、虎の子のクロムウェルを任された上、とうとう晴れ舞台の月刊戦車道に掲載されるとあらば……。 「もう、喜んじゃって……親戚に配るって言って、予約しちゃったらしくって」  ニルギリはため息をつく。 「がっかりするだろうなぁ……」  自分よりも家族をがっかりさせることを気に病んでいる様子のニルギリを見て、ルクリリは、彼女らしいな、と思った。  そうなると、できることならなんとかしてあげたくなる。 「ねぇニルギリ。予約って何冊してたか、解る?」 「え? うちと、お祖父様の所と、おじいちゃんのところで、三冊のはずですけど……」

6 17/04/14(金)23:02:34 No.420923956

 ルクリリは届いた月刊戦車道の冊数を確認した。三冊。もちろん、ダージリン様が一冊と談話室に一冊と戦車道の資料室に一冊の予定だったが、なに、発売になってから買えば済むことだ。 「ニルギリ」 「はい?」 「わたしに任せなさい!」 「へぇ?!」  胸を叩くルクリリに、ニルギリはきょとんとする。 「任せるって……」 「三冊、ニルギリが出てる月刊戦車道を作って、ニルギリのご実家で買った分とすり替えればいいんでしょう? 任せて」 「そんな、どうやって……」 「なんとかするわよ。発売日は明後日だから、明日中に完成させれば、明後日こっそり学園艦を抜け出して本屋さんに行って……」 「そんなことして、また見つかったら……」 「大丈夫だってば!」  ルクリリはニルギリを抱きしめて安心させると、きょろきょろと周囲を見回してから、月刊戦車道三冊を、さっと服の下に隠した。 「ニルギリが困ってるなら助けるのがあたりまえでしょ!」  ルクリリは歯を見せて笑って、それからニルギリの手を引くと、こそこそと電算室に向かった。

7 17/04/14(金)23:02:49 No.420924026

 電算室で画像処理ソフトを使ってページを作りすり替える作戦を立てたルクリリは、まずはニルギリの写真を撮った。  電算室は薄暗い。誰か(特にダージリン)に見つかると明らかに面倒なことになるし、そうでなくても電算室の使用には基本的に許可がいる。管理はアッサムで、普段であれば鍵を開けっ放しにすることなど有り得ない。ルクリリはローズヒップに今日の文のおやつを提供することで、電算室にいたアッサムを連れ出してもらったのだ。ここを使える時間は短い。 「ほら、笑って、笑ってよ」 「こ、こうですか?」 「そうそう……あ、ちょっと角度変えて……」  薄暗い中、ルクリリとニルギリは二人きりで急いでシャッターを切った。  そうして撮影したニルギリの顔を、コンピュータに取り込んだ見開きページの得意げに微笑むダージリンの顔に重ねる。 「えええええ?! ダ、ダージリン様を消しちゃうんですか?!」 「だって他にちょうどいい場所ないじゃない。アッサム様は髪の毛が違うし、ニルギリはペコよりもその……おっぱい大きいし。ダージリン様の体格なら、ごまかせないこともないかなって」

8 17/04/14(金)23:04:02 No.420924403

「いくら偽物作るって言っても、でも消しちゃうのは……恐れ多いっていうか……」  そういうとこだけ思い切りいいんだからなぁ……。と、ニルギリは口の中で呟いた。  それに、実を言うとダージリンの場所は、困るのだ。 「大丈夫だって……あの人他にもいっぱい写ってるし、一枚くらいいじったって平気平気」  画面の中で雑に切り抜かれたニルギリの、すこし緊張した赤い顔を重ねる。部屋が暗かったので、少し明るさを補正すると、それはそれで色が合わない。 「ウーン」  ルクリリは唸った。 「こういうの、情報部の人は詳しそうですよね」  ルクリリの肩から覗き込むようにして、ニルギリも画面を覗き込む。自分の顔があっちこっち動くのは、ちょっと落ち着かない。ニルギリがみじろぎするたびに胸が当たって、ルクリリは肩を揺すった。 「わたし、情報部に友達いないもん」 「アッサム様はこういうのは……」 「あっはは! 見たことなかったっけ? アッサム様は絵はぜんぜんよ。センスがないの……ルフナ様は得意なんだけど。アップの所に置くとやっぱ目立っちゃうなぁ……わたしと差し替えるか」 「先輩、消しちゃうんですか?!」

9 17/04/14(金)23:04:28 No.420924530

「べ、べつに消えるわけじゃないわよ。売ってる方はわたしがいるんだし、それに別にこんなもん……」 「でも……」  ニルギリは口ごもる。  理由があった。  ニルギリがお母さんに自慢した内容は、月刊戦車道に写真が載るよ、だけではないのだ。 「あのね、お母さん。私、月刊戦車道に写真が載るの!」 『へぇ! やったわね、えーと、ニルギリ』 「えへへ……。ダージリン様がメインで私はオマケなんだけど」 『それでも、すごいことよ。お母さん、おばあちゃんちとかにも買っちゃうからね。おばあちゃん、元聖グロだから喜ぶわよ!』 「グロリアーナ」 『おっと、また怒られちゃう』 「ウン。それでね」  ニルギリは確信を持って言った。なぜって、そうするために撮影中の立ち位置に気をつけていたから。 「私の隣に写ってるのがね、私の大好きな先輩なの!」

10 17/04/14(金)23:04:47 No.420924639

 もちろんルクリリはそんなことは知らない。  写真が載ってさえいれば、いいのだろう、と考えている。ルクリリは腕を組んだり頭を掻いたり真剣だ。そんなルクリリの横顔を、ニルギリはすこしだけ申し訳なく、でも、今彼女の頭を独り占めしているんだというかすかな満足感を持って眺めた。 「まぁ、たしかにわたしの頭に重ねたらおさげがへんになっちゃうなぁ。後ろに回しときゃよかった」  ぎいっと、椅子の背もたれを鳴らして、ルクリリが言う。アッサムが厳選した人間工学に基づいた椅子は、小柄なルクリリの体重を不平も言わずに受け入れる。 「もういいですよ。そろそろアッサム様が戻ってきちゃいます」 「え、そんなに時間たってる?」 「結構」  ルクリリは素早く作りかけのファイルを保存すると、立ち上がった。 「え? どうするんですか?」 「どうって……隠れるのよ」 「はぁ?」 「その掃除用具入れに隠れて、アッサム様が帰るのを待つの。そうすればゆっくり作業できるでしょ」 「あの、狭いところに?」 「嫌?」 「と、とんでもない! でもそこまでしなくても……」

11 17/04/14(金)23:05:04 No.420924729

 ニルギリがわたわたと言う。  確かにルクリリの計画は納得できるものだ。アッサムはローズヒップによる足止めの効果時間が切れたらここに戻ってくるだろうが、電算室の女王とて別にここでコンピュータを枕友達に寝ているわけではない。  長くても一時間ほどで寮に戻るだろう。  作業後に消灯後の寮に戻るのは骨だろうが、ルクリリには実績がある。  アッサムがこの部屋で何らかの作業をしている間、二人はあの掃除用具入れにぎゅうぎゅうに隠れていればいい。ルクリリは小柄な方だし、きっと彼女には自身があるのだろう。ニルギリは、先週から甘いものを食べてちょっと太ってしまったことを真剣に後悔した。  問題は別にあるのだけれど。 「ほらほら、早く!」  ルクリリはニルギリの手を引いて、掃除用具入れに隠れる。掃除用具入れはアッサムの性格を反映してきちんと整理整頓されていた。ルクリリはモップを置くに蹴り飛ばし、バケツを外に蹴り出して、ごく狭い2フィート四方ほどの空間の中で後輩と身を寄せ合った。  ばたん、と内側からスチールの扉を締めて、空気抜きのスリットから外の様子を伺う。

12 17/04/14(金)23:05:22 No.420924825

「こういうの、ゲームであったよね」 「え、やったことないです」 「じゃ、今度一緒にやろう。大佐」 「大佐?」 「なんでもない……もっとこっち寄って」 「は、はい……」  ルクリリは堂々としたものである。イタズラを楽しんでいるフシさえある。ニルギリは、掃除用具入れが真っ暗であることをいいことに、大好きな先輩の横顔をじっと見つめた。  ルクリリは他人のことに全力を出せる人物だ、とニルギリは思った。それも気取らず、自慢げなふうでもなく、むしろそれを自分の欠点だと思っている。思い立ったら行動してしまうことを。それが美点であると他のみんなは知っているのに、彼女本人だけは知らないのだ。  だから多分、今ニルギリのために(ややずれているとは言え)できることを全部やろうとしているルクリリ先輩は、困っているのがニルギリでなかったとしてもそうするだろう。そう、ニルギリは思った。 「せんぱい」 「ん? 狭い?」  それを口に出そうとして、ニルギリは慌てて口をつぐんだ。暗闇は怖い。心の鍵が緩みがちになる。 「すこし」  ニルギリは代わりに、だいすきなせんぱいの身体をぎゅっと抱きしめた。

13 17/04/14(金)23:05:39 No.420924914

 はたしてその時間は、わずか数分で終わりを告げた。  ローズヒップの耳を引っ張ったアッサムが大股で戻ってきてきょろきょろと電算室を見回し、なぜかついてきていたダージリン(と、オレンジペコ)が外に出されているバケツを目ざとく見つけて、そしてダージリンは目を細めてにやにやと笑いながら、掃除用具入れの扉を開けて。 「ご、ごきげんよう……ダージリン様……」  ルクリリがおずおずと言い、ダージリンはにやにや笑いの絶好調で応じた。 「ごきげんよう。お邪魔だったかしら?」  ◇◆◇ 「なるほどね。そういうことだったの」  電算室の絨毯敷きの床に正座させられたルクリリとニルギリは、がっくりとうなだれた。 「大問題です。申し訳ありません。私のセキュリティが、こんな方法で破られるなんて……」  アッサムはローズヒップから取り上げたルクリリのおやつ袋を手にして、こちらもがっくりとため息。 「こんな格言を知ってる? 決してギブアップしないヤツを打ち負かすことだけはできない」 「ベーブ・ルースですね」  オレンジペコは苦笑する。

14 17/04/14(金)23:05:57 No.420925008

「先輩は悪くないんです! 私が無理を言って……」 「ニルギリ。実行犯はわたしです。ニルギリはそこまでしなくていいって言ったのに、わたしが無理に誘ったんです」 「ロッカーに連れ込むのも?」 「ええと、それも」 「まぁ大胆。時間を稼ぐなら、それをローズヒップに教えるべきでしたわね」 「ダージリン!」  アッサムに睨まれるが、ダージリンはどこ吹く風だ。 「そんなことよりね、ルクリリ」 「はい」  ルクリリは首をすくませる。  アッサムが管理する紅茶の園の電算室に無断で侵入し、その機材を利用し、ええと、それから届いた月刊戦車道を盗み出したのもあるか。ルクリリは自分の罪状を数えた。でも全部未遂だし、たいしたことにはならないだろう。そうたかをくくった。 「あなた、とっても悪いことをしたのよ。解っていて?」 「はぁ」 「本当に……ひどい人。あなたはわたくしを裏切ったの」  おや、とルクリリは思う。おもったより風向きが悪いぞ。これはひょっとしてまずいことになるのではないだろうか。

15 17/04/14(金)23:07:17 No.420925436

「あ、あの、ダージリン様……?」 「だってね」  ダージリンは立ち上がると、まるで悲劇を演じる舞台女優のようにくるりとその場で一回転し、天を仰いで叫んだ。 「こんな面白そうなことを、わたくしに教えてくださらないんですもの!」 「はぁ」  その場の全員が、ぽかんと口を開ける。ダージリンはにこにこと指を鳴らすと、どかっと椅子に腰を下ろした。 「ペコ。ルフナを呼んで頂戴。アッサム。月刊戦車道で使っている紙は何かしら?」 「王子製紙のコート紙90キロですね」 「ではそれをすぐに手配して。ペコ、わたくしの部屋からハンチングを持ってきてくださる? 気分を出したいから」  ダージリンはうきうきと指示を出し、きょとんとするルクリリとニルギリにも命じた。 「さ、あなたたちは今すぐあの日の服に着替えてらっしゃい。日が暮れちゃったら素材が撮れないもの!」  楽しそうに動き回るダージリンに、二人は顔を見合わせた。  ダージリンはじっと月刊戦車道に目を落とす。 「これ、わたくしとニルギリを差し替えましょう。センターって言うんですたっけ? 真ん中よ。きっとお母様もお喜びになるわ」 「え、いえ、その」

16 17/04/14(金)23:07:35 No.420925516

 ニルギリが慌てる。それは、すこし困る。ダージリンの場所に入ると、隣はオレンジペコだ。彼女は同級生である。お母さんに話した内容と、矛盾する。 「ええと、そんな、恐れ多いです……」 「何言ってるの。わたくしがいいと言っているのだから……」 「そうじゃなくて、その……」  ニルギリはちらりとルクリリの方を見て、それから困ったようにうつむいた。ルクリリは目をぱちぱちして首を傾げる。 「いいじゃない、ニルギリ。ルフナ様がやってくれればきっといい感じに作ってくれるって。それとも、何か理由でもあるの?」 「それは……」  ルクリリにじっと見つめられて、ニルギリは口ごもった。 「ニルギリはさぁ、もうちょっと自分の話をしてもいいと思うよ? 怒らないし、びっくりもしないよ。大丈夫だから」  ルクリリに言われるまでもなく、ニルギリは自分の欠点については承知していた。  引っ込み思案でうつむきがちで、自分の心に素直に従うことができない。でもひょっとしたらだからこそ、惹かれるのかもしれない。

17 17/04/14(金)23:07:50 No.420925595

「ん?」  ルクリリがにかっと笑って、ニルギリは困ってまたうつむいた。 「……あの、ダージリン様」  二人を交互に見てから、くすりと笑ってオレンジペコが口を挟む。 「何もこのページをコラージュしなくても、他のページを差し替えればいいのではないでしょうか。我が聖グロリアーナのピンナップが見開き一つである必要はないのではないかと……。例えば、広告ページを一つ抜いちゃうとか……」 「! さすがオレンジペコですわ!」  なるほど言われてみればその通りだ。  新たにニルギリも写っている写真を撮影し、他のページと差し替えればいい。ただ、ページはまとまっている必要があるだろう。不自然になる。裏面が見開きの写真でないほうがいい。どうしたって印刷とプリントアウトでは違いが出てしまう。  ダージリンは見開き写真のページの次のページを確認し、頷いた。 「ここ。ここをニルギリの写真に差し替えましょう」  ダージリンは、金髪の少女が星条旗のビキニ水着で副隊長二人を引き連れて笑っている写真ページを指差した。

18 17/04/14(金)23:08:05 No.420925666

「え。サンダース大附属の写真じゃないですか。いいんですか?」 「ここなら裏は単なる文字広告。それにニルギリのお祖母様は我が聖グロリアーナの卒業生なのでしょう? 下品なサンダースの写真よりも、孫娘の晴れ姿をお喜びになるはずよ」 「はぁ……。まぁいいですけど。それなら、写真はニルギリさんとルクリリ様の二人にしてはどうでしょう。こう、歩いてる感じで……」 「え、どうして……」  ダージリンは不満げだ。多分、また自分が真ん中で写りたいと思っていたのだろう。 「せっかく水着にしようと思いましたのに」  それ以上だった。 「あの、特集は、私たちの休日じゃないですか。それならなるべく続きにしたほうが違和感がないでしょう? それにほら、見開きではルクリリ様も小さくしか写っていないですし……」 「それもそうね……」  ダージリンは口をとがらせたが、すぐに気を取り直して手をぱちんと鳴らして立ち上がった。 「さ、追加ロケよ!」  ◇◆◇

19 17/04/14(金)23:08:23 No.420925763

 アッサムの手回しによって、ページを差し替えられた月刊戦車道は無事本屋さんを介してニルギリの実家に届けられた。 『月刊戦車道、見たわよ!』  早速お母さんからかかってきた電話をとって、ニルギリは少し汗をかいて笑った。 「ど、どうだった? 変じゃなかった?」 『ぜんぜん! かわいく写ってたわ! すごいじゃない、キャプション! ”聖グロリアーナ期待のコンビ”! でもこの”みんなと離れて二人きりのデート”っていう煽り文句は、ちょっとやりすぎじゃない?』 「あはは……」  それはダージリン様に言って欲しい。  ニルギリは、焼き増ししてもらって写真立てに入れたそれを手に取る。  写真の中では、石畳の街をルクリリとニルギリが、やや固い表情で顔を赤くして歩いていた。 『うまくやってるみたいね、えーと、ニルギリ』 「うん」 『いい先輩たちじゃない』 「みなさん、素敵な方ばかりなの」

20 17/04/14(金)23:08:38 No.420925844

 ニルギリは心の底から言って、受話器に向かって微笑んだ。電話の向こうでお母さんがくすくす笑うのが解る。 『今度は、ちゃんと載るといいわね』 「……え?」  驚くニルギリをよそに、お母さんはくすくす笑って追い打ちを入れると、電話を切った。  ◇◆◇  お母さんは、完璧に作られた月刊戦車道と、自分で買ってきた月刊戦車道を並べると、愛する娘を取り巻く素敵な先輩たちのことを想像して笑った。 「二度も騙されてあげないからね!」  END

21 17/04/14(金)23:09:19 No.420926027

su1822614.txt てきすとー

22 17/04/14(金)23:13:08 No.420927078

きゃわいいSSだった…

23 17/04/14(金)23:16:30 No.420928029

ダージリン様絶好調

24 17/04/14(金)23:18:17 No.420928520

かわいい… >ローズヒップに今日の文のおやつを提供することで 絵に描いたモチならぬ文字が書かれたオヤツでしたわー!!

25 17/04/14(金)23:19:32 No.420928850

>絵に描いたモチならぬ文字が書かれたオヤツでしたわー!! ひええ! ありがとう! 今、これの裏を書いてるから終わったら透過するね

26 17/04/14(金)23:21:34 [セイロンさん] No.420929415

裏だけに透過して投下… 日数は10日くらいかしら…

27 17/04/14(金)23:21:47 No.420929475

>センターって言うんですたっけ? 訛っておられる

28 17/04/14(金)23:23:37 No.420930033

>訛っておられる ぎゃー ありがとう! やっぱセルフチェックはだめだな!

29 17/04/14(金)23:26:09 No.420930754

ニルギリ→ルクリリいいよね… ちょっと雑で奔放なせんぱいに憧れる大人しくて引っ込み思案の後輩とか王道だよね…

30 17/04/14(金)23:30:11 No.420931799

>「私……腰のところと足しか写ってないんですけど……」 >「うん……」 やっぱり ニルギリさんだったんだ ね

31 17/04/14(金)23:32:50 No.420932430

やっぱ先輩してるルクリリ先輩は良いなぁ

32 17/04/14(金)23:34:15 No.420932773

この時差し替えたちょっと思い出のある月刊戦車道が3年後くらいにカウンターパンチを食らわしに来るんだね…

33 17/04/14(金)23:35:02 No.420932979

しかし絵が駄目となるとあの無駄に凝ったデータ画面はGI6のフォーマットなんだろうか…

34 17/04/14(金)23:37:06 No.420933500

>「せっかく水着にしようと思いましたのに」 ひどい

35 17/04/14(金)23:38:16 No.420933816

ケイダジさんのルクリリ&ニルギリ久しぶりに読んだ イジメっ子画板でバーン!で廊下に立たされたルクリリ先輩からルクリリSSが増えた気がする ダンスの話も良かったよね

36 17/04/14(金)23:39:44 No.420934188

シスタールクリリのパーシバルが輸入されてる

37 17/04/14(金)23:41:52 No.420934726

ニルギリさんはもっとクローズアップされてもいいと思うの

38 17/04/14(金)23:42:42 No.420934923

ニルギリさん、おっぱい大きくて全体的にふかふかしてそうでかわいい

39 17/04/14(金)23:42:54 No.420934970

su1822681.jpg 健康的なのいいですよね 健康的で

40 17/04/14(金)23:44:03 No.420935238

>su1822681.jpg このドヤ顔である

41 17/04/14(金)23:44:33 No.420935355

ちょっとおっちょこちょいだけど後輩思いで正義感強くて義に熱くて男前な聖グロのナイト…それがルクリリ!

42 17/04/14(金)23:44:54 No.420935433

一応TV版けだと声が無いアッサムさんよりかはドラマCDとかに出しやすい気はする

43 17/04/14(金)23:45:38 No.420935600

画板でぶん殴るの、かわいいと思うんだ 自分が被害者に鳴らない限りは

44 17/04/14(金)23:46:05 No.420935707

>ちょっとおっちょこちょいだけど後輩思いで正義感強くて義に熱くて男前な聖グロのナイト…それがルクリリ! そんなできすぎた創作みたいな人間がいるものか! なあニルギリ!

45 17/04/14(金)23:46:58 No.420935906

>ルクリリの等身大看板までも制作されてしまったのだ 自分の部屋に置いて眩し気な眼差しで見つめるてるニルギリが見える

46 17/04/14(金)23:47:23 No.420936010

>画板でぶん殴るの、かわいいと思うんだ >自分が被害者に鳴らない限りは ルクリリさんの後ろ回し蹴りは絶対パンツが見えちゃうタイプの蹴り方だからアニメにはできないんだ わかって欲しい

47 17/04/14(金)23:49:02 No.420936418

>自分の部屋に置いて眩し気な眼差しで見つめるてるニルギリが見える 寒い日はマフラーかけてあげたり帽子かぶせてあげたりしてるんだ… で、部屋に遊びに来たルクリリ(本人)に「…笠地蔵?」とか言われる

48 17/04/14(金)23:49:03 No.420936420

>自分の部屋に置いて眩し気な眼差しで見つめるてるニルギリが見える いかんな ちょっと妄想がピンクサイドに行きそうだ

49 17/04/14(金)23:50:01 No.420936657

ニルギリ→ルクリリの、秘めた矢印に悩む後輩を心配する先輩とか、いいよね…

50 17/04/14(金)23:50:15 No.420936711

朝目を覚ますとおはようございますって挨拶してるんだ… 少し持っていてくださいねって帽子とか預けるんだ…

51 17/04/14(金)23:51:17 No.420936984

着替える時はちょっと照れて向こう向けたりするんだ…

52 17/04/14(金)23:51:33 No.420937044

>そんなできすぎた創作みたいな人間がいるものか! >なあニルギリ! え!?…そうかも知れませんね… でもでも…ルクリリ様が気がついておられないだけで意外といらっしゃるのではないかと…思いますよ

53 17/04/14(金)23:52:11 No.420937203

>でもでも…ルクリリ様が気がついておられないだけで意外といらっしゃるのではないかと…思いますよ えー? 例えば?

54 17/04/14(金)23:54:21 No.420937704

丸眼鏡の奥の大きな瞳は俯かれると眼鏡の反射で見えなくなるからもっといつもこっちの顔を見て話して欲しいルクリリさんと瞳を覗かれるのを意識するとどうしても俯いてしまうニルギリさんか…

55 17/04/14(金)23:54:27 No.420937733

>>でもでも…ルクリリ様が気がついておられないだけで意外といらっしゃるのではないかと…思いますよ >えー? >例えば? あの…その……内緒です…

56 17/04/14(金)23:55:55 No.420938061

ルクニルいいよ…王道の味がするよ…

57 17/04/14(金)23:56:16 No.420938143

内緒か… 内緒ならしかたないな うん 教えてくれる気になったら教えてね

58 17/04/14(金)23:56:35 No.420938220

そ…それより練習に遅れますよ! (真っ赤な顔で駆け出すニルギリ)

59 17/04/14(金)23:57:55 No.420938538

ニルギリに、あのFGOのマシュの「せーんぱいっ」をやってほしい…

60 17/04/14(金)23:58:44 No.420938702

いい…

61 17/04/14(金)23:59:08 No.420938782

https://www.youtube.com/watch?v=WYbYNmM5Nzg これの最後のやつ…

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