17/04/08(土)20:51:10 雨もり... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1491652270249.jpg 17/04/08(土)20:51:10 No.419701321
雨もりと料理の湯気で、ぶよぶよになった場末のアパートの便所の隣に、地下アイドルのウサミン君が住んでいた。 三メートル四方の小さな部屋に似合わず、ひろびろと見えるのは、壁ぎわによせて置かれた椅子があるだけで、ほかにはなんにもなかったからである。机も本棚も、衣装やお化粧道具さえも売り払ってパンに代えた。今残っているのはその椅子とウサミン君との二つだけ。しかしこの二つもいつまで残っていられることか? 夕食時が近づく。なんて鼻が敏感になったんだろう、とウサミン君は考える。複雑な匂いの複合を、彼女はその遠近と色彩に区別して嗅ぎわけられる。ああ、電車通りの肉屋で揚げている豚肉のイェロー・オーカー。果物屋の店先を流れてきた南風のエメラルド・グリーン。パン屋から流れてくる感動的なクローム・イェロー。下のおかみさんが焼いている魚、多分鯖の物悲しいセルリアン・ブルー。 そうそう、ウサミン君は朝からまだ何も食べていなかったのだ。