虹裏img歴史資料館

画像ファイル名:1491317074034.png 17/04/04(火)23:44:34 No.418952574

梨園国の東の山に、大きなる蛭有り。 九代目の御世に、一の中年(ちゆうなん)、其の山に来り住みき。 この大きなる蛭に睇(めかりう)ちて愛欲を生じ、心に繋(か)けて恋ひ、六時毎(ごと)に願ひて云ひしく、「彼の大蛭の如き好き男を我に賜へ」といひき。 中年、夢に大蛭と婚(くなが)ふと見て、明くる日瞻(まば)れば、彼(そ)の蛭の尻、不浄被(かがふ)れ、?(けが)れたり。 中年視て、「我は似たる男を願ひしに、何ぞ忝(かたじけな)くも蛭自(みづか)ら交はる」と云ひ、其の蛭に婬を服(ぶく)せしめ、絞(くび)り死(ころ)す。 然(しか)る後に、中年屍(しにかばね)を抱(うだ)き、山を廻り、愛婚(くながひ)し、まらを接(す)ひ、山、婬精染み穢れたり。 神識(たましひ)は、業の因縁に従ふ。大きなる蛭の死たるも、前世の宿業の招くところなり。 或いは蛇馬牛犬鳥等に生れ、先の悪契に由りては、蛭と為りて愛婚し、或いは怪しき畜生とも為る。愛欲は一つに非ず。