虹裏img歴史資料館

画像ファイル名:1491124852064.jpg 17/04/02(日)18:20:52 No.418473198

この前祇園で知り合った女の人から、とんでもない縁談がきて困っていると愚痴をこぼされた。 中京で老舗をいとなむ家の、令嬢であるという。さぞかし、気位も高かろう。私は彼女にたずねてみた。どんな縁談がくるようになったのか、と。 「山科の男から話があったんや。もう、かんにんしてほしいわ。」 「山科の何があかんのですか」 「そやかて、山科なんかいったら、東山が西のほうに見えてしまうやないの」 しかし、それのなにがつらいのか。くらしていくのに不都合なところは、どこにもない。東山の裏側をながめてすごすというだけのことなのに、どうしてたえられないのか。 そう思いはするものの、私はそれ以上問いつめることができなかった。追求すれば、こちらの生育地も、逆にたずねられるだろう。嵯峨で育ったと告げられた彼女は、鼻であしらいながら、言いはなつにちがいない。 ―えらい西のほうやん。東山なんかかすんで見えへんのちちゃう？どうりで、うちの悩みなんかわからへんはずやわ。 脳裏にうかんだこの逆襲で、私の心はおじけづいた。京都はやはりこわい、そしていやな街だったんだなと、考えこまされる。