17/04/02(日)01:38:56 甘木と... のスレッド詳細
削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。
画像ファイル名:1491064736815.png 17/04/02(日)01:38:56 No.418337405
甘木と云ふ者が窯場を訪ねて來て、「お孫さんを下さい」と云ふ。さう云はれたつて、どう云ふだか解らない。尋ねてみると、「Idolにし度い」と云ふので益解らない。一言「出て行け」と云つて、直に引き歸して貰つた。阿氏に聽いてみると、「あら、先生、その手の事には通じておいでと思つてゐましたのに」と云つて笑ふ。曰く、Idolとは有象無象の前で歌舞を披露して廻る者の事らしい。成程藝者より尚惡い。大事の孫にそんな變な事をさせる譯には行かぬ。愈腹が立つて來る。 翌日、甘木氏再來す。手土産と云つて、灘の生詰を寄こして來る。 「貴君、しつこいね」 「先生が良いと仰る迄、何度でも來ますよ」 「何べん來たつて同じだよ」 「何がお氣に召さないのです」 「厭だから、厭だ」 「はあ」 さう云つて、甘木氏は名刺を置いて行く。いつそ破り捨てやうとも思つたが、孫が奥で一部始終聽いてゐて、名刺を嬉しさうに眺めるのだから仕樣が無い。仕樣が無いから、灘の生詰を飲む。他人から受ける施し程厭なものは無い。然し、他に酒が無いから仕様が無い。さう思ひながら、酒を酌んでゐるうちに寝てしまふのだから、余計に始末に負へないのである。