虹裏img歴史資料館

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17/03/31(金)02:57:27 三ノ宮... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1490896647749.jpg 17/03/31(金)02:57:27 No.417943665

三ノ宮の駅から摩耶と六甲の峰を脇に眺めながら漫然歩いていると、灘の辺りに迷い出た。白い土壁が立ち並んでいて、酒蔵の並びらしかった。することもないので壁を伝って歩いていると、いきなり複雑な造りのビルディングに突き当たった。私は田舎者だったので、「大きいなあ、こんなに大きいのは三井か三菱だろう」と呆けた事を云っていると、ビルディングの下から女の子が私の方を見ていたのに気がついた。女の子は異人のように金いろの巻き毛で、美しい絹織の洋服を着て、薔薇色の頬をしているのに、地べたに茣蓙を敷いて、その上に坐って、じっと金平糖を焼いている。「お嬢さん、ずいぶんと稼ぎましたね。このビルディングはきっと金平糖の稼ぎによるものでしょう」と私は云った。すると、女の子は青ざめ、しくしく泣き出した。泣きながら、「それは云ってはならないお言葉ですわ。金平糖は甘いお菓子でしてよ」と云って、私の右手に、ひと握りの金平糖を和紙で包んで呉れた。私は、女の子が泣いている訳が分かった気がした。私の母も金平糖を焼くときは同じように地べたに蓙を敷いて、一本、二本と、泣きながら金平糖の数を数えていたからだった。

1 17/03/31(金)02:57:57 No.417943720

私は、女の子がくれた金平糖を夕日に透かし見ながら、「ありがとう」と云った。もう日が落ちていて、お別れの時が迫っていた。 「さようなら」、と女の子が返事をした。 「ありがとう」 「さようなら」 「ありがとう」 「さようなら」 「ありがとう」 「ありがとう」 女の子は、別れ際に、「ありがとう」と云って呉れた。それで、私は、何だか自分の全てが救われた気がしてきた。 「ありがとう、ありがとう、ありがとう……」 私は大きく左手を振って、何度も繰り返し云った。云っているうちに、泪が一ぱいに溢れてきた。そのうちに空が暗くなってきて、ほとんど何も見えなくなっていた。女の子とビルディングは消えてしまって、私の掌の中の、ひと握りの金平糖だけが残っていた。 「お母さん、ぼくを愛して呉れてありがとう」 星が一つ二つと夜空に灯ってからも、いつまでも、いつまでも、私は左手を振り続けていた。

2 17/03/31(金)02:58:15 No.417943747

天国や~!

3 17/03/31(金)02:59:31 No.417943870

成る程桃華ちゃまはお母ちゃま

4 17/03/31(金)03:53:02 No.417947024

うわあー!

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