虹裏img歴史資料館

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17/03/28(火)20:30:26 SS ... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1490700626666.jpg 17/03/28(火)20:30:26 No.417474014

SS そどまこ 冷泉麻子はヒトの身でありながら夜行性と言えるほどの夜型である。暗くなるほど眼はぎんぎらと冴え、日付が変わるあたりが一番アグレッシブになる。 夜目覚め朝だらだらする。他の人類はさておき、少なくとも彼女にとってはそれこそが正しい生活スタイルだった。 それはとある平日深夜のことである。時計の針が0時を少し過ぎる頃、彼女はおもむろにコートを出して近所のコンビニに向かった。 こんな時間に起きて外出すれば明日の朝をどんな気持ちで迎えるかは簡単に予想出来るのだが、寝付けないものは寝付けないのである。 いっそ何か軽く腹に入れて、それから寝ようと考えたのだ。 もしこれを沙織にでも見られればまたさぞ煩いお説教を頂いてしまうだろうなと思いつつ、深夜なら誰か知りあいと合う事はまずないだろうと思っていた。 だからこそ、コンビニの入り口で見慣れたおかっぱ頭を見た時は、麻子なりに心から驚いたのである。

1 17/03/28(火)20:30:52 No.417474114

一番見られたくない人に見られた。という顔をして大洗女子学園風紀委員園みどり子はコンビニ前で出会ってしまった麻子を見たまま動かなくなる。 麻子はそんなそど子にお構いなしに、片手を上げて昼間より1.2倍の元気な声で挨拶をした。 「おう、そど子」 「れ、冷泉さん……」  声を掛けられたそど子はぎくりとして後ずさる。その姿はデニムズボンにTシャツ、上からコートを羽織るだけの簡素なもの。 いつも制服をきっちり着こなす姿を見ている麻子にとっては、そんな様子のそど子は随分と新鮮に映った。 「こんな所で何してる」 「な、何よ、別になんだっていいじゃない! それより冷泉さん、深夜の出歩きは校則…い、はん…」  いつもの調子で言いかけた言葉が途中で勢いを失う。麻子は無表情ながらどこか楽しむように言った。 「校則がどうした、言ってみろ」 「あ、う……規則は破るためにあるのよ!」 「おおー」

2 17/03/28(火)20:31:25 No.417474210

そど子の開き直り宣言に麻子は気の抜けた声で感嘆する。彼女はあの廃校騒動があってからというものの、規則に対し少しだけやわらかくなった気がする。 よい事だ、ついでに私の遅刻を見逃してくれるようになればもっといい。と麻子は勝手な事を考えながらうんうんと頷いた。 一方のそど子はどうにもばつが悪く、落ち着きなく目線を泳がせていた。彼女の目的も実のところ、麻子と同じようなものである。 しかし風紀委員として体裁が悪いので誰にも会わないようにするつもりだったが、 まさかよりにもよって天敵・冷泉麻子と会ってしまうとは思わなかったのである。 いっそまわれ右して帰ろうかとも思ったがそれも大げさな気がして、結局そど子は麻子と二人で店に入った。

3 17/03/28(火)20:31:48 No.417474294

◆■◆ 麻子はハムカツとコーヒーを、そど子はあんまんと豆乳を買って店を出る。どちらから言い出したわけでもないが、二人は並んで帰路を歩いていた。 三月の風が潮の香りを運んでくる中、そど子は気まずい沈黙を誤魔化すようにひっきりなしに言葉を投げかけていた。 「……いい? これは買い食いじゃないんだからね。私は風紀委員として……」 「はいはい」 そんな彼女の話を聞いているのか、いないのか。 全てを見通したような様子でふらふらと歩く麻子だったが、不意に空を見上げて立ち止まる。 とにかく会話を途切れさせない事に夢中だったそど子はそのまま一歩、二歩と進み、十歩も進んだ所ではたと気付くと慌てて振り向き麻子のもとへ戻った。 ちょっと冷泉さん、急に立ち止まらないでよ。 そんな事を言おうとしてそど子は麻子の視線を追う。その先には、どこぞの家の塀から突き出た桜の木があった。

4 17/03/28(火)20:32:25 No.417474422

三月とはいえまだ初旬。春は遠く、細い枝の先には小さなつぼみがぽつり、ぽつりと膨らんでいる。 花見をするにはあまりに寂しいその枝を、麻子は身じろぎせずじっと見ていた。 そど子がその様子に怪訝な顔をしていると、ふっと麻子が呪文を唱えるようにぼそりと呟く。 「……いつ咲くんだろうな」 「あと少しでしょ。春も近いんだし」 なんてことのない風にそど子が話すと、麻子はほんの少しだけ惜しむように肩を落とす。 コロッケをもう一口食べながら、彼女は白い息を吐いて言葉をつづけた。 「これが咲くころには、そど子も卒業か」 真意の読めない平坦な声に、どきり、とそど子の胸が跳ねる。 卒業。別に特別嫌なわけでも、あえて考えないようにしていたわけでもない。 けれど、こんな時間に、他ならぬ麻子の口から言われるその言葉は、何故だかそど子の心を大きくかき乱していった。

5 17/03/28(火)20:32:50 No.417474508

「……な、なによ突然。いなくなってせいせいするとか、言うんじゃないでしょうね」 「いや」 そど子の冗談交じりの言葉は、しかし麻子の短い言葉に切って捨てられる。 彼女はそのまま顔だけそど子の方に向けると、いつも通りのむっつりとした表情のまま呟いた。 「ちょっと寂しい」 詩を読むようにさらりと言われたそんな言葉に、いよいよそど子の顔は赤くなる。 どうにも麻子の顔を見ていられず体ごとあさっての方向に背け、おかっぱを揺らした。 「っ、だったら! ちゃんと毎朝早く学校に来なさいよ!」 照れ隠しのようなそど子の言葉に、麻子はやれやれと息を吐いて肩をすくめる。 この声とも三月でお別れか、などと考え柄にもなくセンチメンタルに浸るが……。 不意に、ずんずんと前を歩くそど子がくるりと振り返り、怒ったような、恥ずかしいような顔で小さく、ぼつりと呟いた。 「……それなら、少しは長く一緒にいられるじゃない」

6 17/03/28(火)20:33:10 No.417474579

そど子はたったそれだけを言うと、顔の熱を冷ますように前だけを向いて早足で駆けていく。 残された麻子はしばらく口を開けてぽかんとしていたが、やがて我に返ると慌ててそど子の背中を追いかけた。 「やるな、そど子。今のはちょっとときめいたぞ」 そんな不敵なセリフを誰に言うでもなく口にして、麻子は顔にほんの小さな笑みを浮かべる。 月明かりの下、追いかけっこをするように歩く少女たち。 いずれ来る開花の時を予感しながら、二人は春風から身を隠すように夜の中へと消えていった。

7 17/03/28(火)20:38:15 No.417475612

てきすと! su1801587.txt だらけた私服姿の風紀委員 いいよね…

8 17/03/28(火)20:45:59 No.417477434

夜も時計が頂点を越えればエンカウント率も下がるしね 特に学生が多数を占める学園艦の甲板ともなれば尚のこと きっと時々割とよく頻繁に買い食いしてたんだろうな…

9 17/03/28(火)20:47:19 No.417477762

きたのか!

10 17/03/28(火)20:50:03 No.417478499

そどまこいい…

11 17/03/28(火)20:52:51 No.417479195

これは…いい…

12 17/03/28(火)20:55:58 No.417479911

アアー…これはあれですね そど子は当然レシートなんかも受け取ってしっかり入出帳…家計簿かなんかも付けてるに決まってるじゃん? そんでこの半年で腐れ縁以上ニア友達くらいの距離になったれーぜーさんが遊びに来た時に帳面とレシートの束を見つけて目聡く時刻まで気付いてこの深夜の逢瀬がなくてもバレちゃうやつだな

13 17/03/28(火)20:56:01 No.417479921

ディモールト・ベネ…

14 17/03/28(火)20:57:37 No.417480333

麻子って基本かっこいいよね

15 17/03/28(火)21:00:15 No.417480968

やれやれ系でCOOLだからね …午後からは

16 17/03/28(火)21:04:35 No.417482094

無表情系ではまったくないんだけど なんかプレミアム感あるよねれま子スマイル

17 17/03/28(火)21:19:31 No.417486083

いい…

18 17/03/28(火)21:27:04 No.417487894

アーイイ… 近いけど近すぎないこの距離感も良いですね…

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