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17/03/15(水)15:08:22 ローサ... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1489558102414.jpg 17/03/15(水)15:08:22 No.414774485

ローサム(ローアサ)のSSです ホワイトデーには1日遅れですが投稿させていただきます よろしければお付き合いください

1 17/03/15(水)15:08:48 No.414774553

「ホワイトデー、ですか?」 「ええ。アッサムは何をお返しに贈るのかなと思って」 とある日の食堂。 私は、同級生のダージリンからそんな話を聞いた。 「……興味ありませんね」 「あら、ローズヒップから何かもらったのではなくて?」 バレンタインデーに贈ったものの返礼を受ける日、それが3月14日。所謂ホワイトデーだ。 私は後輩であるローズヒップからチョコレートをもらった。 彼女が作ってくれたというそれは、形も不揃いで少し崩れてしまっているものもあったけれど。 チョコと一緒に「彼女の気持ち」も受け取ってしまったからか、妙に大切なものに見えてしまって。 冷蔵庫に大切にしまい、一人の時に紅茶と一緒にいただいている。 口の中でゆっくりと時間をかけて溶けていくそれは、彼女の優しさや温かさを感じる味で。 ……食べる度に、毎回口元がほころんでしまうのは誰にも言えない秘密なのだけれど。 「確かにもらいましたが、何を返すのかを貴女に教えるとでも?」 「あら、手厳しいわねアッサム」

2 17/03/15(水)15:09:07 No.414774599

根掘り葉掘り聞かれても、正直なところ困ってしまうのが目に見えていた。 だって、人から品物を。 それも「私の気持ちです」と、言外に「好きです」という想いが込められたチョコを初めてもらって、冷静に対処することが出来ると思っているのだろうか。 私が初めて「好き」という感情を持った相手に。 相手も私に対して同じ想いを持っていると知った時に。 「こんな格言を知っている? 『進むべき道を進めば、賢くなる。』」 「ミア・ファローですね」 格言を聞きつつ、私は席を立つ。 あの子に何を贈ろうか考えながら……。 「今回は、私が彼女にお返しをする番。か……」 私は自室に戻ってノートパソコンで色々と調べることにした。 張り切りすぎても私らしくないだろうし、かといって無関心を装うと彼女が悲しむのは明らかだった。

3 17/03/15(水)15:09:29 No.414774649

だから、程よく、それでいてキチンと彼女に感謝の気持ちが伝わる物が良い。 調べると、一般的にはキャンディやマシュマロ、チョコレートでお返しをしても良いらしい。 「でも、私は……」 言って、ベッドに潜り込む。 「私らしいお返し」とは何だろうかと考えながら、微睡みの中に落ちていった。 ノートパソコンの画面に、とあるホームページを映しだしたまま……。

4 17/03/15(水)15:10:25 No.414774811

○●◎●○

5 17/03/15(水)15:11:05 No.414774933

そして、当日。 「お待たせしましたですわ!」 「大丈夫よ、私も今来たところだから」 放課後。私はローズヒップを誘って、とある場所へ連れて行くことにした。 嬉しそうに、楽しそうに。 並んで歩く彼女の桃色の髪が、ふわりと揺れる。 揺れる髪を横目に、私の心も嬉しくなる。 「今日はどこに連れて行ってくれますの? アッサム様!」 「そうねぇ…… とっておきの場所よ」 行く場所は決まっている。 でも、それを今知らせるわけにはいかない。 優しく彼女の手を取って、学院の裏手へと歩を進める。 戦車道履修者が集まるクラブハウス――――通称『紅茶の園』のちょうど裏手に差し掛かったあたりで、一旦足を止める。 「……素敵なお庭ですわ!」 「学院で管理している庭園よ。春先や夏には、ここでお茶会もできるの」

6 17/03/15(水)15:11:45 No.414775061

英国調の庭園には、四季折々の花々が咲き誇る様子を見せる。 ところどころに小さいながらも水路が走っており、そこに架かる橋にはテーブルが備えられている。 庭園の美しさや水のせせらぎを見聞きしながら、ゆったりとお茶を楽しんだり読書をするには最高の場所だ。 学院の文化祭にはこの庭園が開放され、その美しさや手入れの状態から聖グロリアーナの優雅さや気品を知らしめる一助になっている。 今はダフォディルという黄色い水仙やクロッカス、チューリップあたりが見頃かしらね。と案内しながら、彼女を庭園の奥へと導いていく。 「綺麗ですわ……」 石畳をゆっくりと歩きながら、彼女が感嘆の声を漏らした。 「貴女をここに連れてくるのは、初めてかもしれないわね」 少しの後悔を滲ませた声を、思わず出してしまう。 彼女の指導に戦車道全国大会、そして大洗女子の存亡をかけた大学選抜との戦いがあって。 結局ここで彼女とゆっくりお茶会を楽しもうと思っていた私の願いは、ついに叶うことはなかった。 OGになれば、ここに立ち入ることも少なくなるだろう。 ――――ならば、せめて「あの場所」だけでも連れて行ってあげないと。

7 17/03/15(水)15:12:18 No.414775128

そう思って、彼女を誘ったのだった。 「所々にテーブルと椅子が置いてあるのは、そのためですのね」 「ええ。お茶会だけでなく、軽い打ち合わせをしたり読書をしたりするには良い場所なの。 ……こっちよ」 言って、私は「目印」を確認して彼女を案内する。 庭園は、石畳が敷かれており芝生には入らないように区分けがされている。 静かな庭園に響く2つの足音と彼女の明るい声が、私に心地よい旋律を届けてくれる。 私はしばし、その音色を楽しむことにした。 用務員が使う用具置き場を通り過ぎ、学院の校舎も見えなくなって――――紅茶の園から微かに見えるか見えないかの位置に「そこ」はある。 「……この先は、少し道が細くなるから気をつけてね」 「はい! アッサム様がお側にいてくださっているから、大丈夫ですわ!」 きゅっ、と。私の手を握ってくる彼女。 私はさながら、お姫様を守る騎士のようだった。 ……やっぱり、恥ずかしい。この子は時折こうやって「恥ずかしいセリフ」を仕込んでくる。 一体、どこで学んだのかしら……

8 17/03/15(水)15:12:59 No.414775226

気付けば、彼女の手を少し強めに握り返していた。 「あの景色」をみて、彼女は喜んでくれるだろうか。 そして、彼女にキチンと「お返し」を出来るだろうか。 不安な気持ちは、彼女にも伝播してしまったようで。 「……アッサム様? 大丈夫ですの? お加減が優れないとか……?」 「え、あぁ。 大丈夫よローズヒップ。 心配かけて、ごめんなさい」 不安げな彼女を安心させるように微笑む。 ……何度やっても、自然な微笑みになっているか心配だ。 そして、白い木製の扉の前に立った私は、彼女に一つ「魔法」をかけることにする。 ここからが大切なのだから。 「ここから先は、目をつむっていてもらえるかしら」

9 17/03/15(水)15:13:30 No.414775295

「え、マジですの!? 『関係者以外立ち入り禁止』って書いてありますわ!」 扉には『STAFF ONLY』と書かれた札が付いていて、彼女はそれに気付いて大声を出す。 「……静かに。 とても大切なことなの、お願い」 はしたないと思いつつも、当然の反応かもしれないわねと苦笑する。 「ま、周りが見えなくなりますわ」 「大丈夫。私がちゃんと手を繋いであげるから」 目を閉じたことで視界が奪われ、不安がる彼女の手を両手でそっと包み込む。 途端、彼女の頬がうっすらと赤くなった。 「……照れているの? ローズヒップ」 「そ、そそ、そんなことありませんですわ!」 からかいがちに聞いてみると、可愛らしい反応が返ってくる。 本当、可愛らしい子。 「アッサム様の手が温かくて、まるでアッサム様に包まれているようですもの!」 「……バカ」 まただ。また「恥ずかしいセリフ」だ。

10 17/03/15(水)15:14:08 No.414775391

私が返答に困るセリフを、他の子に言われたら困るようなセリフ。 他の子に同じようなセリフを言っていないことを願いつつ、私は彼女の手を取って白い扉を開けた。

11 17/03/15(水)15:14:34 No.414775447

○●◎●○

12 17/03/15(水)15:15:36 No.414775584

「わぁ……! 綺麗、綺麗ですわ……!」 私の案内でとある位置まで連れてこられ、目を開けた彼女が最初に発した言葉がコレだった。 「いつ見ても、本当に綺麗ね……」 連れてきた私も、思わず呟く。 私たちの視線の先には、スノードロップがその白い花を一面に広げていた。 まるで、雪が降ったように。白い絨毯を引いたように咲き誇るそれをみて、私の「開花予測」が当たっていたことを心の中で小さくガッツポーズをする。 「すごい!すごいですわアッサム様!」 「……ふふ、喜んでもらえて何よりだわ。 こっちへ。お茶にしましょう?」 この白い庭園にも、1箇所だけテーブル席がある。 そこは、白い花の絨毯を一望出来る場所。腰掛けた彼女が、何度目か分からない「素敵」とか「綺麗」を連呼していた。 それを横目に、私はテーブルに水筒とカップ、クッキーを置いてお茶会の準備を始める。 放課後ということもあってお茶会の様相はそれなりだけれど、持ってきた紅茶もクッキーも、私の考えつく中で最高の品を持ってきた。 「あぁ、アッサム様! わたくしもお手伝いいたしますわ!」 「いいえ、ローズヒップ。 今日は私にやらせて?」 「は、はいですの……」

13 17/03/15(水)15:16:21 No.414775669

気持ちだけ受け取っておくわ。と微笑みながら感謝の言葉を述べて、カップに紅茶を注いでいく。 カップに落ちていく、濃く深い紅色。 「……このお茶っ葉、もしかしてアッサムですの?」 「あら、よく分かったわね。 さすがよ、ローズヒップ」 お茶っ葉という表現はこの際避けておいて(むしろ彼女らしいので余所で使わなければ大丈夫、と判断する)、水色と香りで茶葉の種類が判断が出来るようになったのは、むしろ褒めるべきだろう。 「えへへ……」 彼女のふにゃっとした笑顔に、私は思わず顔を背ける。 だって、可愛いのだもの……! 冷静さを保っていられるはずがない。頬も上気しているのが自分でも分かるくらいだ。 「……さ、さぁ準備が出来たわ。 お茶会、始めましょうか」 「はいですわ!」 向かい合わせに座って彼女が紅茶をゆっくり飲む様子を見つつ、私は紅色を纏ったカップに口を付けた。

14 17/03/15(水)15:16:45 No.414775736

○●◎●○

15 17/03/15(水)15:17:47 No.414775884

お茶会が酣(たけなわ)になってきた頃、私は鞄からもう一つの「お返し」を取り出してテーブルに置いた。 「ローズヒップ。 これ、受け取ってもらえるかしら」 目の前に、小ぶりな紙袋が置かれてキョトンとする彼女。 「ありがとうございます! って、何ですのこれ?」 「ふふ、何かしらね。開けてみて?」 包装紙を丁寧かつ慎重に解いていく彼女を見て、ほんの少し前はビリビリに破いていたのにね……と、微笑ましい気持ちになる。 「わぁ……!」 中に入っていたのは、有名メーカーの化粧品詰め合わせセット。 シャワージェルにボディミルク、ハンドクリームにリップクリーム。 その全てが桜の香りを纏っているというそれは、初恋の香りがするとも言われていたり、いなかったり……。 私が彼女へ抱いた初めての気持ち。大好きという気持ちを、この「お返し」に込めることにした。 「使ってくれると嬉しいのだけれど……」 「……たくし」 俯く彼女。包装紙を持つ手に雫が落ちていった。 「ローズヒップ?」

16 17/03/15(水)15:18:23 No.414775964

「……わたくし、嬉しい、です! ここまで、アッサム様にしていただける、なんてっ……!」 顔を上げた彼女は、涙でぐしゃぐしゃになっていた。 立ち上がって、彼女の涙を拭いてあげようと近づくと、彼女に抱きつかれた。 「うっ、うわああああん!! アッサム様!アッサム、さまぁ……!」 「ローズヒップ、喜んでもらえたようで何よりだわ……」 嬉しさのあまり泣きじゃくることでしか、その想いを表現出来ない彼女。 その声を背中に聞きながら、私は彼女の背中を優しく包み込んだ。 ふと花畑の方をみれば、白一色だった景色が夕陽を浴びて先ほどとは違った美しさを醸し出していた。 「……素敵ね。本当に、綺麗だわ……」 私はポケットからスマートフォンを取り出して、シャッターを切っていた。 ふと、こんなことを思ってしまった。 彼女と、この景色を撮っておきたい。と。 かけがえのない思い出として。彼女との大切な一ページとして。

17 17/03/15(水)15:19:38 No.414776124

「ローズヒップ」 「あっさむ、さま……?」 ひとしきり泣いたのか、目を真っ赤に腫らせた彼女。 「ほら、涙を拭いて。 写真を撮りましょう?」 「で、でもわたくし泣いてしまいましたし……」 「大丈夫よ。その表情も、記念の一つよ?」 優しく語りかけて、テーブル席へ。 水筒の上に小さなデジカメを置き、タイマーをセットする。 かろうじて、テーブル席の位置は逆光にならないようだった。 「無理に笑わなくても良いわ。 ありのままの貴女で写ってちょうだい」 「……はい!」 タイマーの刻限を知らせる橙色の点滅が、徐々に早くなっていく。

18 17/03/15(水)15:19:59 No.414776169

寸前に彼女をチラリと見た。 無理しなくてもいい、と言ったのに。 あの子は、満面の笑顔を浮かべていた。 カチリ、とシャッターの落ちる音が、静かな庭園に囁くように響く。 それはまるで、私たちのこれから始まる道への扉が開いたかのようだった。

19 17/03/15(水)15:20:39 No.414776261

終わり ローサム(ローアサ/サムヒップ)はいいぞ

20 17/03/15(水)15:23:17 No.414776592

いい... お互いがお互いを大好きな気持ちが伝わってくる...

21 17/03/15(水)15:25:37 No.414776867

こんな時間に良い物をありがとう…

22 17/03/15(水)15:26:02 No.414776915

よいぞ… ローズムが感じられる…

23 17/03/15(水)15:28:03 No.414777181

いい…

24 17/03/15(水)15:29:36 No.414777399

甘ーいですわー! とっても素敵なアフタヌーンティーですわー!

25 17/03/15(水)15:30:11 No.414777483

いいぞ…

26 17/03/15(水)15:32:43 No.414777796

ローサム・・・いいですわよね・・・・

27 17/03/15(水)15:33:30 No.414777879

泣きじゃくるヒップを抱きつつさらっとスマホ出すあたりのアッサムのらしさ好き…

28 17/03/15(水)15:34:30 No.414777995

ローッサ!

29 17/03/15(水)15:36:32 No.414778281

アッヒッ!

30 17/03/15(水)15:37:51 No.414778449

アッップ!

31 17/03/15(水)15:55:31 No.414780723

本文(テキストファイル)はこちらからどうぞ su1785873.txt

32 17/03/15(水)15:58:40 No.414781138

ありがたい…

33 17/03/15(水)16:01:47 No.414781565

季節の変わり目で弱った体にロッムが染みる…

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