17/03/07(火)01:36:18 逸見誕... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1488818178857.jpg 17/03/07(火)01:36:18 No.413094203
逸見誕中に終わらすのは失敗したけど昼間に急に電波が来たから昨日お出ししたみほエリSSのスピンオフ?を仕上げたよ! でも出番はみほエリよりさおりんのが多いよ! やだもー! ※若干のまほミカ要素あり
1 17/03/07(火)01:36:41 No.413094243
「えー!みぽりん、黒森峰に行くの!?」 そのニュースを聞いて開口一番、私の叫びは部屋にいた全員の衝撃を誘った。 ゆかりんは傾けていたコップの中に飲んでいたコーヒーを吹き出し、華は「まあ…」なんて言って心配そうに眉をひそめる。 テーブルに突っ伏して半分寝ていた麻子ですらうん?と片目を開けて場に参加する意思を見せるほどだ。 「帰ってしまう、という事ですか?黒森峰に?」 「ににに西住殿ぉ!いくらなんでも急であります、あんまりです!来年からの大洗戦車道はどうすれば…!」 「ちょ、ちょっと待ってよ!」 そして最後の一人、爆弾発言の主のみぽりんは明らかに慌てた様子で私たちの喧騒を押し留めた。
2 17/03/07(火)01:37:01 No.413094293
「黒森峰に行くって、転校しなおすとかそういう意味じゃないよ。この前エリカさんがうちに泊まったでしょ?その時に機甲科の引き継ぎ作業がようやくひと段落付いたから、よければちょっと遊びに来ない?って言われただけの話」 「な、なーんだ…よかったぁ…」 「びっくりしたよ、もー!彼氏ができたとかってレベルの驚愕だったんだから!」 ちょっぴり憤慨して頬を膨らます。 「みほさんは沙織さんと違って既にお手つきですよ?」 「…そもそも沙織が早合点して叫ぶのが悪い」 「むぎゅう…」 と思ったら間髪入れず、華と麻子からいつも通りの容赦のない辛辣ツッコミが入った。 そんなに言わなくてもいいじゃない、少し早とちりしただけなんだから! とは言えまぁ確かに麻子の言う通りではあるので、ちょっとだけ反省する。
3 17/03/07(火)01:37:23 No.413094339
苦笑するみぽりんがそれでね、と言葉を続ける。 「もしもその気があったら、みんなも一緒に来たらどうかって言ってたよ。…なんだかんだでいつも迷惑かけているしね、なんて言ってる時だけはものすごく不本意そうだったけど」 おおぉ、と目を輝かすゆかりん。 根っからの戦車好きであるゆかりん的には、高校戦車道の押しも押されぬ王者・黒森峰の見学なんて特大イベントにカテゴライズされる事だろう。 しかし日にちが十日後の日曜だ、と聞くや否や弾んでいた眉が下がり、明らかに落ち込んでしまう。 「う、再来週末でありますかぁ…うーん、その日は私の家ぐるみで学園艦版海楽フェスタでの町内会の出展に協力しなければいけないので…」 「私もです。フェスタで五十鈴流の生け花を展示させてもらう事になっていまして、家元の代理として出席するので欠席するのはちょっと難しいかと」 「麻子は…」 と私が隣に視線を走らせると、誤報を乗り越えた幼なじみは再びまどろみの世界に入り始めてしまっていた。 「寝るから行かない、って理解でよさそう」
4 17/03/07(火)01:37:41 No.413094374
「沙織さんは?」 「私?」 確かに回答していないのは私だけで、みぽりんが私に意見を聞いてくるのはまぁ妥当の方向性だろう。 「もちろん!私は行くよっ!」 「え、本当?」 私のアグレッシブな返事にちょっとびっくりしたらしきみぽりんは、しかし嬉しそうに目を輝かせる。 まぁ確かに、えりりんと一緒に遊びに行くと言うだけなら私も空気を読んで辞退し、みんなと一緒にフェスタに参加していた…しかしそれはそれ、これはこれ。 古巣に遊びに戻るのだと言うなら、向こうでもみぽりんの昔の知り合いが集まってくるだろう事はありえそうな線だった。 それにえりりん自らが私たちも一緒に招待したと言うし、それだったら遠慮する事はないんじゃないだろうか。 みぽりんの母校に興味がある、というのもあるが黒森峰と言えば戦車道、戦車道と言えばモテ道! 戦車道を志す者の聖地とも言える黒森峰に行けば、私の将来の素敵な旦那様探しにも何らかの役に立つかもしれないのだ!
5 17/03/07(火)01:38:02 No.413094421
「みんなで行けないのは残念ですが…」 「次の機会がありましたら、その時は是非私も…!」 「あ、うん。エリカさん…というか黒森峰とのわだかまりももうないし、たまには来れば?って言われたから…その時は一緒に行こうね」 「はいぃ!」 「沙織、お土産はアレでいいぞ。前に逸見さんが持ってきたアレ…」 「銘菓黒森峰まんじゅうですね?」 「え?持ってきたのって手堅くバウムクーヘンとかじゃなかったっけ?」 そんなとりとめのない話をしながら、私は招待主のツンケンした顔を思い出していた。 えりりん…逸見エリカ。 第一印象はとにかくいやなやつだったが、みぽりんと仲直りするために自分から胸襟を開いてきた。 私たちもそういう姿勢なら協力したいと思えたし、何よりみぽりん自身が拗れてしまった糸を直したいと思っていたのだ。
6 17/03/07(火)01:38:25 No.413094475
双方がヘタレながらも歩み寄っているなら、関係修復も決して不可能な話ではなくって…むしろ…気付いた時には… ここまで考えて、私はつい鼻をひくつかせてしまった。 二人きりにさせた誕生日の翌日、迎えに行ったみぽりんのマンションの戸口から色んな意味で真っ赤な顔だけ覗かせたえりりんと、ドアの奥から漂って来る濃い香りは当然、もう部屋のどこにも残っていない。 しかしまあ、ここまで親密になるとは思いもしなかった。 みぽりんにカレシの一人くらい作ってみなよと煽った事はあるが、まさかカノジョを捕まえてくるとまでは、とてもとても。 でもま、愛情っていろんな形があるものだし、そこは別にいいと思う。 親友が幸せなのなら、私だって嬉しいのだ。 「ふふ~ん。それじゃあ三人とも、僭越ながら私、黒森峰に潜入調査に行ってきます!お土産は期待してていーよっ!」 「せ、潜入調査って…」
7 17/03/07(火)01:38:47 No.413094516
そして、その10日後の朝。 フェスタ自体はまだ始まってはいないが、私とみぽりんは背後の賑やかな喧騒を聞きながら空から降りてくる黒森峰の校章が入ったヘリコプターを出迎えていた。 「あれだよねー、みぽりーん?」 「うん、黒森峰のドラッヘ」 高度が下がってくるにつれ、操縦席にそろそろ見慣れてきた銀髪の姿が見える。 …同時に、何やらこう、緊張しているような表情も。 「…?えりりん、どうしたんだろ?なんか顔固いよね?」 「どうしたんだろう…」 ヘリが完全に着地するまで私たちは首を傾げていたが、その理由は搭乗口のドアが開いた時に分かった。
8 17/03/07(火)01:39:12 No.413094564
えりりんと一緒に降りてきたのはなんと、みぽりんのお姉ちゃん…西住まほさんだったのだ。 「おっ、お姉ちゃん!?」 「みほ、久しぶりだ…ええと、沙織さんもこんにちは」 「あ、こんにちはっ」 「みほ、沙織、待たせて悪かったわね…」 まほさんと一緒にいるだけならいつもの事だし、そこは大丈夫だとは思うが、今回は本人の妹であるカノジョを迎えに来ているという状況なのだ。 これでまほさんが同乗して来たら緊張するのも無理はないだろう。 「お疲れ様、えりりん。悪いけど、帰りもよろしくね…それからさ、胃薬とか、いる?」 「…いいわよ、ご心配どうも。ほら、早く乗った乗った」 確かに今回は日帰りなのだし、ドラッヘは夜間飛行には不向きだと聞く。 いくら偶然大洗と黒森峰の各学園艦がそれぞれ近くの海域を航海中だったとは言え、あまりのんびりしている余裕はない。
9 17/03/07(火)01:39:49 No.413094670
あんまり特異な状態すぎて時間の間隔がよく分からなかったフライトは、時間にして1時間半程度で終わった。 正直何話していいんだか探り探りみたいなところはあったが、幸い乗り合わせとしては知り合いが多い席だったからみんな無言の気まずいだけの空の旅にはならなかったのが救いだった。 少なくともこれに乗った初めての時…麻子のおばあが倒れたと聞かされて気も気じゃなかった時、しかも飛ばしているのは当時の印象最悪だった頃のえりりんだったなんて時よりははるかにマシだ。 大洗よりも全然大きい黒森峰の学園艦が眼下にぐんぐん近づいてくる。 ヘリポートには私たちがヘリを待っていた時のようにして、下手したら何十人もの人の群れがいるのが見える。」 「そろそろ降りる準備、してもいいわよ」 「うん、エリカさん」 「はーい!」 そんな私たちが身支度を整える中、一番後ろの席に座っていたまほさんは何故か動く気配を見せなかった。
10 17/03/07(火)01:40:13 No.413094729
「あれ。あのー、まほさん…行かないんですか?」 「…まほさんはね…」 着陸動作をこなすえりりんの声に苦いものが混ざる。 「私はここで待っている。こう言っては何だが、連日の別れを惜しむ群れに少し疲れてしまったから」 「えぇ…?」 「機甲科の皆には私がこのヘリに乗っている事すら黙っているんだ、実は。みほたちとの再会を邪魔してしまう事にもなりかねないし、ここで読みかけの小説でも片付けているよ」 眉をハの字にしたみぽりんがまほさんをなんとか説得しようとする。 「そんな、一緒に行こうよお姉ちゃん。みんなもきっと…」 「悪く思っている訳じゃないのはもちろん分かるさ。ただ、私個人の望みとしてはあの子たちには変わったお前たちときちんと会ってもらいたい、と言うのもある。そう長く待つわけでもなし、後でエリカに様子を聞かせてもらうよ」 「でも…」
11 17/03/07(火)01:40:37 No.413094787
みぽりんの説得は、残念ながらそこでストップしてしまった。 着陸したえりりんがヘリのドアを開けるが否や、割れんばかりの歓声がヘリの中に響いたからだ。 「みほさん、お帰りなさい!」 「元副隊長、お久しぶりですッ!」 「元気にしてましたか!?」 「副隊長…じゃない、次期隊長もほら、早くー!」 「は、はわわ…」 歓迎モードに慌てたみぽりんはヘリから降りてしまう…が否や、再会を喜ぶ黒森峰機甲科チームに取り囲まれた。 「あ、ちょっ、みほぉ!?コラ待て、あなたたち待ちなさいっ!」 みぽりんの(ある意味での)危機に焦ったえりりんが飛び降りるが、見事にみぽりんの二の舞になって飲み込まれただけだった。
12 17/03/07(火)01:41:00 No.413094843
そのままみぽりんとえりりんを飲み込んだ人の海はわいわい楽しそうに騒ぎながら遠ざかっていく… そんな中で「ちょっ、ちょっと待って…」と慌て通しのみぽりんや「みほー!みほー!」と助けようとするように手を伸ばすえりりんの姿がちらちら見える… それだけ言うと恋愛小説かなんかで主人公がヒロインを助けようと必死に海を泳ぐ様を思わせるが、実際に目にするとただただシュールなだけだった。 そして、ヘリの中には完全に降りるタイミングを逃してぽかーんとしている私と、元々降りるつもりのなかったまほさんだけが残された。 「…騒がしくて恥ずかしい限りだ」 「あ…いえ…」
13 17/03/07(火)01:41:24 No.413094899
…こう言っちゃ何だけど、気まずい。 教えてくれた理由が理由なだけにまほさんをヘリから引っ張り出すのは酷だし、かといって一人にしておくのも気が引ける。 みぽりんとえりりんは黒森峰機甲科の波に巻き込まれるようにして行ってしまったし、 しかし、逆に考えればこれはチャンスでもある! 戦車道とはこれすなわちモテ道、そして目の前には国内最強候補の一人とも目されるまほさんがいるのだ。 これは…色々と聞きだすチャンス。 そして戦車道は本当にモテるものなのかというのを見定めるまたとない機会! そんな風にやる気に燃えている私の様子に気付いてか気付かないでか、まほさんは静かに口を開いた。 「…沙織さん」 「ひゃっ、ひゃいっ!?」 いきなり声をかけられたもんだから流石にビックリする。 そりゃまぁ、今まさに会話を切り出そうとはしていたのだけど!
14 17/03/07(火)01:41:52 No.413094972
そんな私の心境を知ってか知らいでか、まほさんは表情を変えないまま言葉を継いだ。 「すまない、驚かせてしまったな」 「いや、そういう訳じゃ…」 「私に付き合って狭苦しいヘリの中にいる事はない、君も外に出るといい。多分外部のイメージよりはここは柔らかいところだと思う」 「え、でもまほさんは」 「先も言ったとおりだ、私はいい。ここしばらくバタバタしていたし、少し休むよ。自慢するわけでもないが、皆の前に出れば人だかりに囲まれてしまうんだ」 まったく気にもしたような様子もなくそんなことを言うものだから、私は一発で分かってしまった。 …他人から距離を取られることに慣れた人の態度だ、これ。 多分まほさんは面識が特にある訳でもない、しかし高圧的な雰囲気を与えがちな有名人と同じ空間にいるから私を委縮させてしまっているとでも思っているんだろう。 だから自然に私にそんなプレッシャーに耐える事はないと助け舟を出しているわけだ。 結果自分はこんなところで一人待つことになるが…相手に負担を与え続ける訳にもいかないだろうという判断。
15 17/03/07(火)01:42:14 No.413095030
…遅まきながら、みぽりんが転校してきた理由の欠片が見えた気がした。 まほさんはまだ個として強い心を持っているからまだしも、みぽりんが持っているのは柔らかい心だ。 そんな子が自分ではどうしようもない事で周りから距離を取られ、ついでに当時のみぽりんは自分の道に自信を持てずじまいだったはず。 …相当なプレッシャーだったんだろうな、きっと。 「…私、ちょっと分かったような気がするんです。まほさん」 「…うん?」 「えりりんって、昔からみぽりんに対してああして物を言ってたんでしょ?」 誘導に従って外に出ないどころか、逆にいきなり話題を振ってくるのはさすがの西住流も慣れていなかったらしい。 わずか困惑した仕草でまほさんは顎をつまむと、静かに私の質問に答えた。 「…そうだな。みほが黒森峰にいた頃…状況に関わらず、遠慮なしに堂々と声をかけていたのはエリカくらいのものだった。…今の君のようにな」 そう答えるまほさんの態度には、ちょっとの興味と感謝があった…ような気がする。
16 17/03/07(火)01:42:41 No.413095083
「こんなところで私と話に付き合ってくれる、か。こう言っては失礼だが変わっているな、君は…」 「えへへ、よく言われます。それよりやっぱりそっかぁー」 当時のみぽりんにとって、えりりんは家族以外で唯一対等な態度で接してくれてた人間だったわけだ。 実際の状況なんて知らない。 でも、この私の推測が正しかったとすれば…逸見エリカという人間は、どれだけ西住みほの心の支えになっていた頃だろう。 これは… 「…昔っから好きだったんだね。これは、きっと」 「誰が、誰を?」 「そりゃあ、みぽりんがえりりんを、ですよ!逆はちょっと分からないけ…ど…」
17 17/03/07(火)01:43:05 No.413095152
あ、しまった。 つい勢いに乗って言ってしまった。 いや正直周りから見たらモロバレなんだけど、本人たちが一応隠そうとしてる事を言っちゃうなんて流石にこれはよくな…! 「…そうかもしれないな。上手く言えないが…今のあの二人は、当時の感情を正しく表に出せているように感じる」 …いこともなく。 「…やっぱり分かってました、みぽりんとえりりんの事?」 「さすがにそこまで鈍くはない。…それともひょっとして、いるのか?あの距離感を見て気付けない者が?」 「悪いけど突撃モードの知波単の人たちでワンチャンスってぐらいじゃないかなぁ…」 西住みほと逸見エリカの交際は公然の秘密であることがあっさりと明らかになり、私たちの話のサカナになることが大決定してしまった。
18 17/03/07(火)01:44:17 No.413095300
「…今思うと、エリカも当時から大分みほを意識していた、と思う。単純にみほが副隊長で自分が一部下だからというだけではなく、私との関係性、みほ自身の才能への憧憬、信用できるパートナーとしての好感…諸々が混ざった大きな感情を、エリカは向けていたな。…もっとも、負けたことで視野が広くなった今の私が当時を思い返して初めて分かった事だが」 「ほほう…じゃあつまり、ある意味二人は当時から両想いだった、って言う感じですか?」 「少なくとも、お互いに一種の矢印を向け合っていたのは確かだと思う。しかし…」 ここでまほさんのきれいな眉が曇った。 「二人とも、それに気づいていなかったんだろう。…今を見てしまうと、あの頃の二人は大分よそよそしかった」 個人として見えていなかったんだ、相手を。 「みぽりんにとってのえりりんは遠慮ないのがありがたい部下Aで、えりりんにとってのみぽりんはライバル心全開の副隊長…みたいな?」 「多分、それ以上の認識はなかっただろう。さっきの二人と比較してエリカは盲目的に、みほは臆病にすぎた、という感じかな。そうして互いに踏み込み切れずにいる内に…」
19 17/03/07(火)01:44:44 No.413095365
まほさんがそっと目を伏せた。 …そう、例の事故があったんだろう。 そのせいでみぽりんは… 「そうだ。積もり積もったプレッシャーに心が耐えきれず、戦車道がなかったはずの大洗に行った」 ここで、さすがに私はちょっと申し訳なさを感じてしまう。 いや、私は何にも悪くないけど!? 結果オーライで終わったけど、やっぱり当事者としてちょっと! 「君たちと一緒に時間を過ごしたからこそ、みほは自分が間違ったものなどではない事に気付けたんだろう。そして、そんなみほを前にしたエリカも苦しみ悩んだ。最終的に負けたことであいつもふっ切れてみほと仲直りをしに行ったようだが…」 「多分、その途中で今まで考えたことなかったような事を色々考えて、えりりんも変わったんですね」 「副隊長である以前にみほはみほで、部下である以前にエリカはエリカ…そんな一見当たり前のような事を気付くのに、長く時間がかかったんだな」
20 17/03/07(火)01:45:11 No.413095425
ふ、とまほさんは苦笑する。 「そうなれば意識が向かうのはレッテルではなく、今度こそ相手そのものだ。自分同様の人間に対してだったら、口から出る言葉だって変わるだろう」 「私たちはあくまで間接的にファイトー!ってしただけで、直接は知らないんですけど…多分色んなことを話したんでしょうね、みぽりんもえりりんも。…ま、そうしたらそんなに矢印向き合ってるのに気付いたんだから何にもならない訳ない、かあ」 「今や『逸見はいつになったら元副隊長との仲を大っぴらにバラすのかな?』なんて、黒森峰でも語り草だよ」 「ぶふっ!」 さっきのみぽりんを迎えた機甲科の賑わいを見た時も思ったが…やっぱりみんなJKなんだね、黒森峰も。 「…そんなにですか?」 「…エリカは妙な所で鈍い」
21 17/03/07(火)01:45:40 No.413095490
―例― 「エリカさん」 「ん、どうしたの赤星?」 「みほさんに手紙を書こうと思うんです。あの時のお礼とか、なんとか…でも何を書くか少し思い浮かばなくてアドバイスとかあったらほし」 「あの子は桜とか好きだしペール系のピンクの便せんとかだったら掴みもいいんじゃないかしらああでも一応言っとくけど今更事故の事についてはすみませんでしたとかそういうようなのをつらつらだらだら書くのはほんとやめておいた方がいいわみほ自身あのことは気にしてると思うけど今のあの子は前向きだからその話題はあまり喜びそうにもないと思うわよ最適解としては現状の機甲科の近況報告とかどうかしら私も伝えてはいるんだけどみんなの事を大事に思ってるタイプだから別の人から聞くだけで高飛びするくらい喜ぶと思うけどドがつくお人好しだからダイレクトに悪口でも書かない限りはだいたい好反応だと思うわよまあそんなことを書くようなら私が直々に張っ倒すけどおっとそうね私なら近況報告しつつみほたちの事を聞くかしら大洗では楽しくやれてて思い入れも相当強いみたいね聞かれたら喜ぶわよきっとったくあの子は恥ずかしげもなく友達の自慢して見てらんないったら」
22 17/03/07(火)01:46:24 No.413095576
「…あの」 「これでみほへの態度を隠せているつもりでいるんだ」 「えりりんってバカなんですか?」 「…エリカはいい人間だ」 反応に困るからそう言う当たり障りのない言葉を選ぶのはやめてほしい。 「…とにかく、今の二人がああしてうまくやれているのは喜ばしい事だ。…私にも、そう言ってもいいかもしれない友人がいる」 誰の事かは知らないが、まほさんは自分とその友人とやらの関係を例として挙げた。 「冷静タイプという以外はおよそ正反対だが、私はあいつを、あいつも…多分、私の事を個人として尊敬していると思う。常識なんかでは縛れないし測れない厄介な奴だが、どうにも嫌いになれない。そういう関係をみほとエリカが築けているのなら…うん、やはり私は嬉しいかな」 そう言って、まほさんは…本当に嬉しそうな、きれいな微笑みを浮かべた。
23 17/03/07(火)01:46:49 No.413095624
その笑顔で、私は当たり前のように思っていたことを再認識した。 やっぱりまほさんって、みぽりんのお姉ちゃんなんだ。 自分に近しい誰かの事を気にかけて、大事に思って、その人にいいことがあれば自分もすごく嬉しい。 それはすっごくみぽりんに似ているように思えた。 お姉さんだからって立場だからなのか、みぽりんの優しさよりも上から見守ってあげるというお母さん的な感じの印象も受けるけど、とにかく優しい人なんだ。 「沙織さん」 「あっ、はい!」 そんな事を考えていた私は、まほさんへの返事が一瞬遅れた。
24 17/03/07(火)01:47:15 No.413095695
「今のエリカが…そして、みほがあんなに充実した顔ができているのは紛れもなく君の…そして大洗の皆さんのおかげだと思う。二人の姉として先輩として、心から礼を言いたい」 「まっ、まほさん…!」 そんなことを言って深々と頭を下げてくるまほさんに私は慌ててしまう。 テレビでも取り上げられているような人に頭なんて下げられると、流石の私もテンパってしまう。 「そして、改めて」 「ふえ?」 頭上げてくださいよう、なんて言おうとしたところにぴったりタイミングを合わせたかのように、まほさんは頭を上げて私を見据えた。 しかし、その目は厳しいものじゃなくて…大学選抜が終わった後、みぽりんと桟橋で何事かを話していた時の優しい目。
25 17/03/07(火)01:47:46 No.413095766
「これからも妹の事をよろしく頼みたい。これからも色々と面倒をかけたりするだろうが、君たちさえよければ、みほの…それとエリカの、力になってやってくれないか」 「…そんなこと」 どこまでも二人を慮る頼みに、私は胸を張って答えた。 「言われなくっても当然です。むしろこっちからバンバンお節介焼きます!だって、みぽりんもえりりんも…私の大事な友達ですから!」 「そうか」 そうして私たちは同じく二人を見守る者どうし、笑い合った。
26 17/03/07(火)01:48:29 No.413095855
「あー。それにしてもまほさんみたいなお姉さんがいて、みぽりん羨ましいなー!」 「…む」 話に区切りがついたので力が抜けてんーっと伸びをすると、まほさんがどこかおかしな反応をした。 「お姉ちゃんとして妹想いで…やっぱり戦車道とかだとまほさん厳しそうだけど、えりりん達もあんなに慕ってるんだからやっぱりいい人だよ!」 「…まぁ」 また反応、眉がほんのちょっぴり下がって、ぴくぴくと動いてる。 「こんなまほさんみたいな人が代表格なんだから、やっぱり戦車道は良妻賢母への近道なんだよねっ!みぽりんやえりりんに負けていられないし、私もバリバリ戦車して、バリバリモテるんだから!」 「…そう、そうだな。それは…いい事だ」
27 17/03/07(火)01:48:59 No.413095915
どうも歯切れが悪い…何か気になる事で…も? …あ。 ひょっとして… 「…あのぉー、まほさん」 「ああ、うん。何だろう、沙織さん」 「その、ダメだったら全然いいんです。もしまほさんさえよかったら、なんですけどぉ…」
28 17/03/07(火)01:49:45 No.413096028
くわぁ疲れた、という表情のえりりんがみぽりんと一緒に帰ってきたのはそれからしばらくした後だった。 少し離れてみほさんバイバーイ!また来てねー!なんて大声をあげている黒森峰機甲科の皆さんを尻目に、ドラッヘが飛び立つ。 飛び立ってから少し経った辺りで、ヘリを操縦するえりりんがぶつくさ文句を言い始めた。 「いくら何でも、人の疲労を考えずに騒ぎすぎよ…!」 「ま、まあまあエリカさん、私もみんなに会えて嬉しかったし…」 「久しぶりに元副隊長に会ってテンション上がるのも分かるけど、限られた時間で引っ張り回しすぎ!私だってドラッヘで2往復しなくちゃいけないのに…ったく…隊ちょ…まほさんにも窮屈な思いをさせて…」 「ごめんねお姉ちゃん、沙織さん。置き去りにする気はなかったんだけど、人の流れに逆らえなくて…」 「いいさ。私は元々降りるつもりはなかったし、沙織さんがいてくれたから退屈もせずに済んだ。ありがたいよ」 「そう?…ありがとう、沙織さん。今度みんなで来るときは一緒にゆっくり黒森峰を回ろう?」 「ん、そうするよ。でも今回はほんとに大丈夫だって。色々お話できて楽しかったし!」
29 17/03/07(火)01:50:38 No.413096134
操縦席からちらりとこちらを見たえりりんがわずかに申し訳なさそうな顔をする。 「…こっちから誘っておいてこの扱い、悪かったわね沙織。この埋め合わせは今度試合以外で会う時にさせてもらうわ」 口は悪いけど、相変わらず律儀だ。 「もー、だからいいんだってば。えりりんの面白いお話とかも聞けたし?」 「なっ!?まっ、まほさん…!」 「すまないとは思う。だが、いい話題になった」 「ですよねー。あー、色々聞けてすごく参考になった!そうですよねー、『まぽりん』!」
30 17/03/07(火)01:51:22 No.413096226
「ふえ!?」 「くひゅッ」 まぁ、そういう反応になるよねぇって。 でもちょっと揺れて怖かったからパイロットにはきちんと操縦桿を握っていてもらいたい。 一瞬の心神喪失状態から立ち直ったえりりんは青筋立ててるような勢いで勢いで私に噛みついてくる。 「ちょっと、沙織ッ!あなた一体誰に物を、よりにもよってまほさんになんて口を…!」 「エリカ」 今にも操縦桿を手放して睨み付けてきそうな剣幕の、そんな血気盛んな啖呵はとうにまほさん本人に止められてしまった。
31 17/03/07(火)01:51:57 No.413096301
「は、はい!」 「いい」 「えっ?」 「いい」 「…………分かりました…」 ウソだろオイ状態のえりりん、沙織さんすごい…!なんて顔で私を見ているみぽりん。 そして当のまほさん本人はいつもと変わらない無表情だったが、どことなく目がキラキラ輝いているような気がした。 「…………はぁ」 なぜか少し頭の痛くなってきた私は、軽くため息をついた。 黒森峰って…戦車道が強い代わりに不器用な人しかいないのかなあ?
32 17/03/07(火)01:52:21 No.413096350
…あっヤバ、お土産忘れた。 おわり
33 17/03/07(火)01:57:25 No.413096981
ぶっちゃけほんとに電波がビビって来ただけなのを勢いで書いただけだったから削り切れずに長くなっちゃった…精進しなきゃ それからコラの雑さは時間の都合で勘弁願いたい! こちらテキストです su1776146.txt
34 17/03/07(火)02:05:48 No.413097937
さおりんはさあ…グレートマザーなの?
35 17/03/07(火)02:13:17 No.413098823
母性がすごい
36 17/03/07(火)02:18:57 No.413099411
みほー!みほー!がかわいい
37 17/03/07(火)02:24:29 No.413099920
最後のお姉ちゃんかわいいな!?
38 17/03/07(火)02:28:34 No.413100356
あいつ
39 17/03/07(火)02:32:48 No.413100806
早口になってるのがレッドスターかと思ったらやつでダメだった
40 17/03/07(火)02:34:18 No.413100934
>み >ほ >最 >高 >よ >ね
41 17/03/07(火)02:34:27 No.413100943
凄く健全かつ綺麗でkawaiiな落し方でほんわかしました 途中で淫行してる人たちがいた気がするけど
42 17/03/07(火)02:37:17 No.413101193
>み >ほ >最 >高 >よ >ね バレるとか考慮しとらんよ どうやって見つけたのあんなもん…
43 17/03/07(火)02:38:42 No.413101298
またおまけあるじゃねーか! ありがたい…
44 17/03/07(火)02:40:48 No.413101476
最適解とか高飛びとか妙な単語使うなあと思ったらなんか見えたとしか…
45 17/03/07(火)02:45:13 No.413101824
お姉ちゃんはほんとにお姉ちゃんだなあ…
46 17/03/07(火)02:46:36 [まぽりん] No.413101942
まぽりん
47 17/03/07(火)02:48:59 No.413102119
オワコンだな
48 17/03/07(火)02:54:08 No.413102561
「友達」に逃げなかったやつ えらい