虹裏img歴史資料館

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17/02/03(金)20:51:21 Ⅳ号、三... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1486122681605.jpg 17/02/03(金)20:51:21 No.406745339

Ⅳ号、三突、M3リー。完全に3面包囲されている。 逃げ道はもちろんなくもない。しかしそれは聖グロリアーナの戦車道に反する。 あとは、ただ戦うだけである。 「いきますよ!ルクリリさん!」 「はっ!やったろうじゃないか!隊長殿!」 ここまできたら作戦も何もない。全員でどこまでやれるかだ。 この中で一番怖いのはもちろんみほさんのⅣ号。次いで三突といったところだろう。 「ルクリリさん!三突を抑えてください!私たちはⅣ号を!」 言った傍からM3が気になり始める。今日の澤さんは今までの澤さんではない。でも、迷ってられない。 握りこぶしに汗がたまる。このプレッシャー、とてつもないな。 「はいよ隊長!そっちもご武運を!」 心底楽しそうなルクリリさんの声が帰ってくる。今の私にはそれだけで勇気がもらえた気がした。

1 17/02/03(金)20:51:54 No.406745441

5両が動き出す。 私たちのチャーチルはⅣ号とM3をお互いの射線に入れる位置に位置取ると、超信地旋回でⅣ号へと足を向ける。 M3には背中を見せた形になるが、車線上にⅣ号がいるだけにただでは撃てないはず。 と思った矢先、M3の75mm砲が火を噴くと同時にこちらに急発進してくるのが見える。 何故!?何故躊躇なしに撃てたのか?さらにⅣ号も砲をこちらに向けた。 「左旋回!一旦引きます!」 一旦仕切り直しするしかない。そう思った矢先後方から衝撃が。 M3が、車体ごとぶつかってきたのである。 旋回中バランスを崩したチャーチルはⅣ号に完全に側面を見せる形となった。 「ふふっ、こんなサンドイッチ食べられたものじゃないわ。」 私が自嘲気味に呟くのと同時に砲声が聞こえ、チャーチルにまたも衝撃。あえなく白旗となった。

2 17/02/03(金)20:52:24 No.406745519

その後、3対1となったルクリリさんのマチルダもあえなく撃破され、私たちは敗北を喫することとなった。 何がいけなかった。地理的にも有利であり、相手の策も見破り、序盤の展開からは完全試合もあり得た。 やはり、澤さんだった。彼女がすべてを覆したのである。 「ペコ、ご苦労様。」 「立派な隊長ぶりでしたね。」 車内で放心状態となった私にダージリン様とアッサム様が声をかけてくれる。 ダージリン様はアッサム様が淹れてくれたのであろうミルクティーに口をつけている。 「さあ、オレンジペコ。行ってきなさい。」 ダージリン様が紅茶のセットを渡してくれた。 私はそれを渡す相手ををもう一度思い返すと、頑張って笑顔を作る。 「はい!行ってきます!」 そう。どんな時も優雅に。 ……

3 17/02/03(金)20:52:43 No.406745566

…… 「……勝った?」 まだ状況が呑み込めない。とにかく汗で頬に張り付く髪がうっとおしかった。 「やったよ!梓!」 「すごぉい!」 「あいあいあーい!」 「今日は眼鏡、割れてない!」 M3の車内は歓喜の声で渦巻いていた。 「……やった!隊長!やりました!」 『うん!澤さん!お疲れ様!』 隊長からも嬉しそうな声が帰ってくる。 これが達成感というものか。 自分で言うのもなんだが、今回はとにかく動き回って、走り回って、もう疲れた。 キューポラから顔を出すと、横浜の海風が私の汗まみれの顔を優しくなでた。

4 17/02/03(金)20:53:01 No.406745628

「……梓、外。」 紗季が私の足をつついて教えてくれた。 みれば、擱座したチャーチルからオレンジペコさんが歩いてくる。 チャーチルの車長、オレンジペコさんだったんだな。もしかしたら今日は隊長だったのかもしれない。 とにかく出迎えて西住隊長を呼んでこよう。 私はM3から飛び出すと、汚れたパンツァージャケットを手ではたいて、最後に手を拭った。 「オレンジペコさん。」 オレンジペコさんが軽く会釈する。 「澤さん、今日はありがとうございました。完敗、ですね。」 「やっぱり、今日はオレンジペコさんが隊長を?」 「ええ、でもなかなかうまくいきませんね。」 オレンジペコさんが自嘲気味に笑う。 「そんなことないです!序盤は危なかったですし、最後まで諦めないですごいなって。」 私は精一杯フォローをする。初めての隊長で、ここまで西住隊長を追い詰めたのだ。 「序盤……。そうですね。でもその優位もあなたにひっくり返されました。見事です。」

5 17/02/03(金)20:53:29 No.406745704

「そんな、私たちはただ必死で。……本当はあのお茶会の日から、猛練習したんです。」 オレンジペコさんは一瞬だけハッとした表情を作るもすぐに笑顔になる。 「それは、良かったです。これで私たち、ライバルですね。」 オレンジペコさんが胸に抱えていた箱をこちらに差し出す。見れば紅茶のセットだった。 「これって、え?あの。」 聖グロの風習。西住隊長もダージリンさんから贈られていたから間違いない。 「ええ、今日の健闘と、友情の証に。」 やっと認められたのだ。 私は箱を受け取り脇に抱えると右手を差し出した。 「これからよろしくね、オレンジペコさん。」 オレンジペコさんは私の手を取ると笑顔で、 「ふふふ、ペコでいいですよ。梓さん。」 お互い固く握手を結ぶ。みれば野毛の山に夕日が沈みかけていた。 おしまい。

6 17/02/03(金)20:54:36 No.406745907

su1735978.txt おしまいです。

7 17/02/03(金)20:56:34 No.406746231

澤ペコ!

8 17/02/03(金)21:00:27 No.406746895

テキスト! 長い!

9 17/02/03(金)21:07:55 No.406748415

>何故!?何故躊躇なしに撃てたのか? いっぱいいっぱいでⅣ号見えてないだけだわこれ…

10 17/02/03(金)21:16:28 No.406750146

最後のリー先生の中首狩り蛮族モードなんだ… 役目果たして不意に目に入った意外な大将首にぶっ殺せー!!しちゃったんだ…

11 17/02/03(金)21:21:54 No.406751240

澤ペコの時代どんどんキテルわ……

12 17/02/03(金)21:25:07 No.406751805

…もしや戦車道にはホーム戦ではホーム側が負けることになるジンクスが?

13 17/02/03(金)21:35:11 No.406753763

これは間違いなく重戦車キラーやってた頃のウサギさんですわ… 75mm砲を撃ったのが咄嗟なのか作戦なのかはわからないけどペコを混乱させたから結果オーライではあるよね

14 17/02/03(金)21:39:57 No.406754787

チャーチルのお尻に主砲刺さっちゃってそうだな

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