17/01/26(木)00:01:30 SS エ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1485356490154.png 17/01/26(木)00:01:30 No.405054944
SS エリみほ 今日で終わりです
1 17/01/26(木)00:02:02 No.405055066
黒煙を噴き上げて沈黙するポルシェティーガーを、まほはティーガーⅡに乗ったまま見上げていた。 まほの耳に散発的に砲撃音が聞こえてくる。疑い無く今まさに、二人が戦っているのだ。 「隊長!」 すぐ隣にパンターが停車し、ハッチから車長である赤星小梅が顔を出す。 「みほさんは!?」 「この向こうだ」 まほがポルシェティーガーに塞がれた通路を指し示すと、赤星は「そんな……!」と悲痛な声を上げた。また一つ、砲撃音が聞こえた。 そんな危機的状況にもまるで焦りの色を見せずぼんやりと青空を見上げるまほに、小梅の表情が険しくなる。 「……隊長……あなたなら分かってましたよね? こうなるって事……」 まほは僅かに目を見開いた。気付かれてしまっていたとは。 確かに分かっていた。大洗の行動が全て陽動であると。何としてでもフラッグ車同士の一対一の状況に持ち込むべく全車が動いていると。 分かっていて、あえてそれに乗ったのだ。まず間違いなく、みほもそうだろう。
2 17/01/26(木)00:02:25 No.405055142
「……手を抜いたわけじゃない。フラッグ車がこちらに身を晒すのならば好都合だし、みほなら勝てると信じての判断だ」 嘘では無かった。隊長として手加減をした覚えも、大洗の事情を知ってあえて負けてやろうとしたわけでもない。だが。 「……だが、まあ、あえて理由を付け加えるなら」 まほは赤星に、困ったような笑みを見せた。 「お姉ちゃんは、妹のわがままを聞いてやるものだからな」 「……もう、何ですか、それ」 赤星もまた、脱力して笑った。 未だ砲撃音は断続的に聞こえてきている。まほの妹と後輩は、今もなお互い引かずに戦っているのだ。
3 17/01/26(木)00:02:40 No.405055191
「……赤星。お前には来年、副隊長を任せようと思っている」 「はあ。副隊長……。……。……ええっ!? 副隊長!?」 物静かな赤星が聞いたこともないような大声を出すものだから、まほも少し面食らった。だが当の赤星の驚きはそれより遥かに勝るようだった。 「うん。事と次第によっては、隊長を任せることもあり得る。こっちはまあ、話半分程度に聞いておいてほしいが」 「た……たいちょ……。……ちょっと待ってください、心の整理が……」 「何故こんなことを今この場で話すかと言うと、この試合の結果如何でみほに隊長を任せられるかが決まるからだ」 「……この試合で……?」 赤星はきょとんとした顔をする。「……一対一でフラッグ車を倒せる技量があるかどうか、ですか?」 「いいや、違う。隊長に選手としての技量が必要ないとは言わないが、本当に大切な要素は他にある。正直に言って、今のみほに隊長が務まるとは思えないだろう?」 「……いや……その……そんなことは……」 赤星は言いづらそうにもごもごと口籠る。
4 17/01/26(木)00:03:14 No.405055305
「……でも、私はこの試合で、みほが何かを見つけてくれることを祈っている。何もかも元通りとはいかなくても、せめて前を向いて歩いていけるようになってくれるんじゃないかと」 「……この試合で、ですか?」 「そうだ。何しろ……戦車道には人生の全てが詰まっているからな」 頭に疑問符を浮かべる赤星を見て、まほは頬を緩める。どうやら自分も、あの奔放なカンテレ引きに毒されてしまっていたらしい。 「それで、だ。赤星には、私がこの三年間で得たひとつの教訓を覚えておいてほしい」 「……隊長の、教訓……」 赤星が姿勢を正す。 「黒森峰は絶対の王者として、常に勝ち続けてきた。それこそが最も大切で重要なことだとして、これまで私も隊長として隊を率いてきた。だが、それは間違いではないが、正しくもない」 まほの脳裏に多くの対戦校、多くの戦車乗り達が浮かぶ。皆、自分が倒してきた者たちだ。勝つということは敗者の努力を、夢を、可能性の全てを奪うことであり、自分は勝者としてそれを糧とし、勝ち続ける責任があると思ってきた。彼らの敗北と隊員たちの努力に報いるためにも、そうしなければ意味が無いと思ってきた。
5 17/01/26(木)00:03:38 No.405055387
だが、本当にそうだろうか? ある者は何度破れても黒森峰に挑み、その度に実力を上げてまほを苦しめた。 ある者は最後の大会で破れ、しかしそれでも穏やかで満ち足りた表情を浮かべた。 そんな彼らを眺めながら、しかし勝者であるまほの心は常に沈んだままだった。ひとつ勝利を重ねる度に、重荷がひとつ増え、呪いが一層深くなるように思えた。 彼らの全てが、本当に無意味だったというのだろうか。 まほの勝利に、本当に意味があったというのだろうか。 「さっきはああ言ったが、みほは多分、負けるよ。今のみほでは、エリカには勝てない。さっき、エリカの目を見て確信したよ」 赤星は驚いてまほを見つめる。 「そんな……!」
6 17/01/26(木)00:03:55 No.405055462
「だが、この敗北は、これまでのどんな勝利よりも価値のある敗北だ」 まほが見た少女の瞳の内には、今のみほが失ってしまったものが篝のように揺らめいていた。それはまほが常に対戦相手の中に見出してきたものだ。 「いいか、赤星。忘れないでくれ。勝利は時に無意味なものであるかもしれない。けれど、敗北とは常に必ず意味のあるものだ。こんな簡単なことに気付くのに、私は三年もかかってしまった」 赤星は静かにそれを聞いていた。まほの言葉をゆっくりと咀嚼しているかのようだった。 「……はい、隊長。覚えておきます。決して忘れません」 「……うん、よし」 まほは満足げに頷いて、砲撃の音に耳を傾けた。決着はもう近いようだった。
7 17/01/26(木)00:05:34 No.405055821
続きは塩で su1725653.txt これでおしまいです 本当に長々とすまない… ありがとうございました
8 17/01/26(木)00:08:37 No.405056510
来てたか! 乙!
9 17/01/26(木)00:15:16 No.405057970
エリみほは光だ…なんて美しい…
10 17/01/26(木)00:15:52 No.405058089
とうとう最終回かぁ 早速読むね!
11 17/01/26(木)00:21:22 No.405059284
尊い…
12 17/01/26(木)00:22:42 No.405059606
やはりキャストオフか… 傷口を 合間を愛で埋めましょう
13 17/01/26(木)00:28:03 No.405060686
読んだよ… ああ…光が…光が拡がっていく…
14 17/01/26(木)00:31:52 No.405061362
夕陽の中で抱きしめ合う二人が見える… 長く伸びる影はもう二つじゃない…一つだ!
15 17/01/26(木)00:37:56 No.405062391
>決して癒えない傷だって、その痛みを忘れることは出来ると思うの 二人の痛みは共に分け合い 二人の喜びも共に分かち合う
16 17/01/26(木)00:41:02 No.405062930
>本当に長々とすまない…ありがとうございました 堂々の長編書ききったな おめでとう…そしてありがとう
17 17/01/26(木)00:44:14 No.405063492
全国戦車道大会を巻き込んだ壮大なエリみほのイチャイチャが こんなに美しいものだったとは
18 17/01/26(木)00:46:09 No.405063819
ありがとう ありがとう ただ本当にそれ以外に言葉が無い
19 17/01/26(木)00:46:30 No.405063876
痴話喧嘩だこれ!
20 17/01/26(木)00:48:38 No.405064201
いい…
21 17/01/26(木)00:49:09 No.405064299
みんなが救われた エリカもみほもお姉ちゃんも 黒森峰と大洗の皆も
22 17/01/26(木)00:49:59 No.405064443
これだけ長いと最終的には誰一人読者が残らないかもしれないと思ってたので読んで貰えて感想まで頂けて本当に嬉しい……本当にありがとう……
23 17/01/26(木)00:53:28 No.405064948
>これだけ長いと最終的には誰一人読者が残らないかもしれないと思ってたので読んで貰えて感想まで頂けて本当に嬉しい……本当にありがとう…… スレ画が立つのが待ち遠しかったよ 最終回なのが名残惜しい位よ 今余韻に浸ってる… こちらこそありがとう「」!
24 17/01/26(木)00:56:20 No.405065396
記憶を取り戻したエリカからほとばしる感情がいい…
25 17/01/26(木)00:59:10 No.405065836
光あれ…光あれ…!
26 17/01/26(木)00:59:35 No.405065899
ずっと一緒の未来