虹裏img歴史資料館

1 17/01/25(水)01:22:52 No.404889573

「エリカ、一緒に寝てくれないか」 「……は？」 　その時、エリカの心臓は３秒間静止した。 　フリーズの後一気に顔を赤くして、あたふたし始めたエリカにお構いなく、まほは話をすすめる。 「朝までとはいわない、ほんの少しだけでいい」 「……え、ええと」 「手だけでもかまわない」 「て、手えっ！！？」 「ああ、そうだ」

2 17/01/25(水)01:23:39 No.404889661

　まほが何を言わんとするかを理解するまで、エリカの心臓はｒｐｍが上がりっぱなしだった。 　平たく言えば『自分が眠りにつくまで、そばにいて手を握っていてほしい』 　黒森峰女学園を統べる隊長は、そう言いたかったのだ。 「なぁんだ、びっくりしました、隊長。心臓が止まるかと思いましたよ」 「一体お前は私が何をしてほしいと思ったんだ」 「えっと、その、ほら、あれ」 「はっきり言え」 「……。一から説明しないとダメですか？」

3 17/01/25(水)01:24:03 No.404889718

　数分後、２人の顔色は逆転していた。 　頬を染めるまほの前で、冷や汗を額に浮かべたエリカがひたすら平謝りを繰り返す。 「えりか、おまえがそんなふけつなやつだったとはおもわなかったぞ」 「隊長？　漢字忘れてますよ？」 「コホン、あー、とにかく、頼む」 「はあ、しかしなんでまた急に」 「そういう、気分なんだ」

4 17/01/25(水)01:24:26 No.404889755

　多くを語らぬ隊長の心のうちを慮るのは難しいが、長年そばに仕えてきたエリカにはおぼろげながら掴めてきた。 　まほが、近しい人間の肌のぬくもりを、ほんの少しだけ求めていることを。 　いっそ全身を使ってまほを暖めてしまいたいという邪念、いや思いがもたげるのを必死で振り払ったエリカが、浴衣姿で寝床に入るまほの手を静かに握る。 （あ、隊長の指、冷たい……） 　少しだけ指を動かしてすり合わせ、自分の体温を敬愛する隊長にじわじわと授けていく。 　西住まほ隊長から、黒森峰機甲科と、西住流のすべてを授かり、来年の黒森峰を統べる立場を譲り受けた、せめてものお返しに、と。

5 17/01/25(水)01:24:57 No.404889814

「すまないな、エリカ。変な頼み事をした」 「何も変なことはないですよ。実は……あ、いや」 「ん？」 「なんでもないです」 「言いかけて止めるのは良くないぞ、はっきり言ってくれ」 「……申し訳ありません。実は、同じ頼みを、以前……」 　かつて寮の同室だったみほからも、手を握ってほしい、と。 　そう乞われたことを包み隠さずに話すと、薄暗い部屋の中、まほは天井に向きやり、ほう、と長い溜息をつく。

6 17/01/25(水)01:25:06 No.404889829

手コキかァ

7 17/01/25(水)01:25:17 No.404889845

「そうか、みほも、か……」 「どうしました？」 「……。なんでもない」 「隊長、さっきそれはダメだと、自分で言ったじゃないですか」 「ごめん。私に言わせないでくれ」 　話を打ち切り、目を閉じて眠ろうとするまほの顔をじっと見つめているうちに、自分よりも少し逞しい彼女の指がほのかに暖かくなるのを感じたエリカが、一度だけまほの髪を撫でる。 　西住流を継ぐ２人の姉妹は、何かに飢えていて、どうしても我慢できない時、隣にいる者に、それとなく触れ合いを求める。 　その『何か』を詮ずるのは、酷だ。 　エリカはまほの耳元に唇を近づけて、誰も聞いたことがない優しい声で。 　一言、ささやいた。

8 17/01/25(水)01:25:56 No.404889925

「おやすみなさい、隊長」 「……うん」 　やがて、豆球だけが灯る部屋の中で、かすかな寝息が聞こえ始める。 　握る力を失ったまほの手を優しく包み込みながら、エリカは小さな声で子守唄を歌う。 　すべての緊張と権威、ありとあらゆる力から開放された１８歳の少女が、静かな呼吸を続ける。 「今夜だけは何もかも忘れて、おやすみなさい、まほ。私が守ってあげますよ」 　眠る西住まほの口元が緩んで、かすかに微笑みを浮かべる。 　慈しみに満ちたエリカの瞳から、ふいに一粒、涙がこぼれ落ちた。 （了）

9 17/01/25(水)01:26:52 No.404890056

いい...

10 17/01/25(水)01:27:21 No.404890132

お母さん…

11 17/01/25(水)01:28:27 No.404890259

エリカは私のお母さんになってくれるかもしれない女性なんだ

12 17/01/25(水)01:35:30 No.404891098

エリカママ…

13 17/01/25(水)01:35:30 No.404891103

エリカに母性を見出だす姉妹いいよね

14 17/01/25(水)01:37:21 No.404891493

みぽりんも大洗で友達は沢山できたけどこれを頼んだこと求めたことは無くて 黒森峰に来ていたある日 ただエリカと少し触れ合った それだけで暖かさと優しさを思い出して猛烈な飢えを感じたみぽりんがお願いするんだ… でもその様子を見たお姉ちゃんもやっぱり姉妹だから感情が引き出されて その日は最終的に二人が眠るまで手を握ってて貰うことになったんだけど ベッドのどっちかから二人の手を握るのは難しいから真ん中に入って優しい西住サンドになっちゃうんだ…

15 17/01/25(水)01:40:27 No.404892051

本当はリードされたいお姉ちゃんいいよね…

16 17/01/25(水)01:43:07 No.404892518

お姉ちゃんはエリカは絶対裏切らないだろうなっていう信頼を自然としてる感じ

17 17/01/25(水)01:43:08 No.404892523

誰よりも自分を信じて傍にいてくれるやつに甘えたくなるのは無理もないよね…