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17/01/22(日)22:44:22 ガルパ... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1485092662601.jpg 17/01/22(日)22:44:22 No.404479540

ガルパンSS 「如何にして西住まほは無関心な戦車道に対して意義を感じる様になるか」 前話まで su1721818.txt 前回のシリーズ su1722021.txt

1 17/01/22(日)22:45:17 No.404479786

第三話 【中国人の部屋には誰がいるか】 -1- 西住まほの能力の真価は「予測」と「対応」であるがこれは決して未来予知に該当する事ではない。 "予知"ならば"何が起こるか"を判別できる筈であり、これは言ってみればサイコロを振ってみればどの目が出るか事前に判明しており、そのケースに対しての対応だけを取る訳である。 一方でまほの予測は想定できるパターン毎にそれらの蓋然性と危険性を考慮して、最大公約数的最良の対応策をとっているに過ぎない。

2 17/01/22(日)22:45:42 No.404479905

もっと簡潔に言えば51%以上の確率で有利になる行動を積み重ねるのがまほである。 故に一回一回の行動だけでみれば裏目を引く事は有りえるのだ。 しかし、局所的に不利を引いても、その後からまた有利を取れる様な対策を幾らでも出し続ける事ができるのが彼女であるし、また確率論から当然の事として試行回数が増えていけば結果的にはまほの予測内に収束していくのだ。 ましてや実際にはまほの慧眼によって60%や70%以上の確率で有利が引き出せる最善手を取る事ができる。 しかも一度有利を取ってしまえば、その有利マージンによって相手の行動の選択肢は縮められ、その後の展開は一度傾いた天秤の様に更に一方的になっていくのだ。 相手からすれば自分に不利なギャンブルの連戦連勝を必要とするという理不尽極まる相手であった。 更に悪辣なのはその確率論も決して定石だけから算出した机上だけの"理屈倒れ"ではなく、相手の思考や傾向等といったその場の状況もしっかり考慮した上での事だろう。 こういった事から西住まほは一度でも流れを掴んでしまえばそれが決して覆る事のない選手として有名であった。

3 17/01/22(日)22:46:04 No.404480002

一方で妹の西住まほは真逆に不利の状況を覆す事に定評のある選手であった。 定石外れで裏の裏をかく行動によって見事に相手の虚を突き、どのような策謀を相手が張り巡らせてもまるで考えを読取ったかのように逆手に取るのだ。 この姉妹が互いに補完し有った時、正に黒森峰は無敵であった。 序盤で姉の想定どおり有利を取ってしまえばそれまでであり、もし運悪く裏目を引き続けて不利になっても一時的に副隊長である妹が指揮を引き継いで不利を覆してから姉に指揮権を返上すればやはりそれまでであった。 「まるで深いプールに叩き込まれて上からガラスで蓋をされた様だ。  どの様に藻掻いても溺れるしかないのだから」 結果的にありとあらゆる面でどのような行動をとっても上から叩き潰されてしまい、対戦校の一つの生徒がこう表現したという。

4 17/01/22(日)22:46:20 No.404480082

きたか…

5 17/01/22(日)22:46:23 No.404480097

しかし、西住まほを知る者はよく錯覚してしまうが、決してこれは必勝を約束する物ではない。 その様な事が神ならざる人間に出来る筈もなく、それは彼女も例外ではない。 もちろんその確率は極小である。 前述した様に薄い確率を引き続ければ負ける事はあるが、当然その確率は非常小さい。 だが小さいという事はゼロではないのだ。 まほ自身もいずれはそういった敗北を味わう事になるだろうと想定はしていた。 全戦して全勝とは行く訳にはいかないのだから当然の事である。

6 17/01/22(日)22:46:38 No.404480152

また、「勝敗は兵家の常」と言われるが仮にそうなったとしてもそれは運の問題であって実力の差ではないだろうとも思っていた。 これは単に現状から省みた客観的な事実であって、決して未来の敗北に対する保険ではない。 何より、まほ自身が自分を実力で下す相手を欲していたのだからこれはどちらかと言えば"自嘲"に近い物だろう……。 ともかくも漠然ではあったが何時かは敗北する事もあるだろうとは思っていたのだ。 しかし、それが最悪のタイミングで最悪の内容によって実現するとは彼女自身も予想できなかったのだが……。

7 17/01/22(日)22:47:30 No.404480388

-2- 決勝のプラウダ戦は奇跡が幾層にも積み重なった試合であった。 それもまほにとってはありがたくない奇跡である。 まず単純にプラウダの行動パターンが例年どころか今年度の大会のそれまでと大きく変わっていた。 無論、それだけならまほには通用しない筈であった。 しかし、それによって多少なれどまほによって都合の良いサイコロの目が出る確率が減ったからか、薄い所を引き続けて徐々にではあるが不利になっていった。 これもまた客観的に見てプラウダの実力が彼女に勝ったというよりは運が良かったと言うべきであろう。

8 17/01/22(日)22:47:46 No.404480464

しかし公平的に見てプラウダの擁護をするのならば、彼女たちはまほの特性を見抜いた上で通常通りの戦法でやっては勝ち目はほぼゼロであると判断し、成功する確率は極端に低いがもしそれが成れば膨大なリターンを得る方法を選択したのだ。 前述した例に習えば45%程で有利が取れる行為を捨てて、10%程度でしか有利をとれないが、もしとれれば大きく流れを得れる戦法であった。 言ってみれば破れかぶれの一か八かであり、捨て鉢で賭けに出たとも言えるが、低い確率では有るが彼女たちの取りうる行動の中で最も勝率が高い方法であったし、実際にそれは成功しつつあったのだ。 成功した理由は確かに運であったが、少なくとも運が良ければ勝てる方法を選択したのはプラウダ自身の判断によるものだろう。

9 17/01/22(日)22:48:02 No.404480556

これを後押しした理由の一つに天候の荒れ具合も挙げられるだろう。 当然の事前準備として予報によってこの日の天候が荒れる事は解っていたが、それでも予報以上の規模を生じさせていた。 天候が荒れれば荒れるほど不確定要素として分母が増え、まほの予測パターンの触れ幅は大きくなっていくのだ。 結果的にそれがプラウダの賭けの成功の背を押す事になった。 また悪天候によって地盤が緩くなったのも盤面を狂わせることに一役買い、一輌の戦車が荒れる川に落ちてしまったのだ。

10 17/01/22(日)22:48:23 No.404480655

ここまでなら……ここまでの要素だけならば、それでもまだ手の平の端の端であるものの、まほの想定する範疇であり掌の中の事であった。 だが、まほにはたった一人だけその予想を覆す行動を取る事のできる人物がおり、そしてその人物もまたこの場にいた。 その事実をまほは望んでいながらも、長年目にする事が無い故に失念していた……してしまっていたのだ。

11 17/01/22(日)22:51:37 No.404481629

-3- 「…今何と言った!?」 『ですからっ!副隊長が!飛び込んだんです!  川の中に!味方の戦車を救出する為に!」 それを聞いた時、まほの鋭利な頭脳は何があって何が起こったのか正確な解答を導き出した。 この荒れる天候の中で濁流と化した川の中に自身を省みずに飛び込んだ妹の状況をはっきりと理解できてしまった。 故に、まほは声無き悲鳴を掻き鳴らし、まほの心の中を様々な感情が濁流となって鬩ぎあい、噴出す火山流の様に焼き尽くしていった。

12 17/01/22(日)22:51:52 No.404481698

事が起こった後にその事象が置き得るであろう事を理解する。 幼少の頃からみほによってのみ引き出されるその感覚をまほは昔から歓迎していたし、この一年はそれを復活させる為に尽力していた。 しかしこの時ばかりはそれを呪った。自らを責めた。 何故、その程度の事が思いつかなかった! 何故、考えなかった! みほならば!あの心優しい妹ならば目の前で危機に瀕している友人がいれば己の身を省みないことは当然ではないか!

13 17/01/22(日)22:53:32 No.404482162

『…ああっ!フラッグ車が……!  ……走行不能に…白旗があがりましたっ!」 「そんな事はどうでも良い!!」 同じ戦車に乗っていた人員も通信機の向こうにいる人物も、いやまほですら自分がこの様な声を上げるのを聞くのは始めてであった。 彼女達が黒森峰の隊長が大会決勝の勝敗をどうでも良いと切って捨てるのを聞いて驚く前にまほは素早く指示を出した。

14 17/01/22(日)22:54:46 No.404482449

「急ぎ、大会運営に救助を要請しろ!  現場にいる人員は……可能ならばロープを使うなりして救助しろ!  …二次災害には十分に気をつけろ。決して無理はするな…」 この時、激発する感情の中で辛うじて働いた理性によってまほは「お前達がどうなってもいいからみほだけは絶対に助けろ!」という言葉をかろうじて飲み込んだ。 まほにとって究極的の意味ではみほ以外のモノに一切の価値を感じていないからだが、同時に冷静な部分でそれを言ってしまえばまずい思ったからだ。 そしてこの後に待ち受けることにまほは無力でもあった。 これは無論、まほにみほを助ける手立てが無いという意味でも有ったが、同時にみほがどうなるかという未来に対して全く予測が出来ず、不安な未来が来ないようにただ祈るだけであるという意味でもあった。

15 17/01/22(日)22:55:05 No.404482540

-4- ジジジッと蛍光灯の音だけが響く静かな廊下でまほは一人座っていた。 『集中治療室』 それが今まほの前にある扉に大きく書かれていた文字である。

16 17/01/22(日)22:55:21 No.404482613

(どうか…どうかお願いします。  神様、私はどうなっても構いません。それ以外はいりません。  だから…だからどうかみほを助けてください!)

17 17/01/22(日)22:55:59 No.404482811

その扉の向こうの出来事にまほは一心不乱に祈り続けていた。 常日頃は信心深いとは言えないまほであったが今この時ばかりは人生で最も真摯に神に語りかけた瞬間であっただろう。 あの時、川に飛び込んだみほは無事に中の乗員を救出することに成功したが、肝心の本人は最後の一人まで見捨てずに救助作業に従事した結果、岸にたどり着く前に力尽きて流されてしまった。 運営からの救助隊が駆けつけて下流を捜索し、打ち上げられている彼女を発見し救出したが、その時には脈拍と呼吸が停止していたのだ。 無論、すぐに心肺蘇生処置が行われ、無事にそれは戻ったが依然として意識不明の重体である事には変わらず、またその脈と息も弱弱しいもので全く楽観視出来ない状況であった。 直ちに緊急搬送され、集中治療室に収められたが山場は未だに越えておらず最悪のケースも有り得た。 また仮に命の危険性が過ぎ去っても、呼吸と脈が止まっていた時間が短くは済まなかったので、何らかの障害を負う可能性もあり、最悪の場合は命が戻っても植物人間の危険もある。

18 17/01/22(日)22:56:33 No.404482974

そう医者に説明された時、まほは己の体からまるで全身麻酔でも打たれかの様に力が抜け、床に崩れ落ちてしまい、一緒に付き従っていた斑鳩によって何とか体を支えられた。 尤もその体を支える斑鳩の力の入り具合もとてもではないが頼りにはならなかったのだが。 その後、何時までも居続けようとする斑鳩と一応の為の検査を受けに同じ病院に運ばれた水没した戦車に乗っていたエリカや赤星と浅見を強引に帰した。 一人きりになりたかった事もあるし、まだ整理がついていない今のままではみほを止めなかった斑鳩や水没した戦車に乗っていた彼女達に呪詛を投げかけたり、場合によっては殴りかかってしまう事を恐れたのだ。 まほはずっと集中治療室の前で祈り続けていた。 そして祈りと共にまほは強い後悔もしていた。

19 17/01/22(日)22:56:51 No.404483064

(みほがこうなったのも自分の責では無いだろうか?  自分が昔のみほの様に予測不能で自由で突発的な事を望んだからではないか?)

20 17/01/22(日)22:57:53 No.404483366

そう考えてしまえばもはや思考は止められなかった。 いや、まほが冷静に考えれば考えるほど、自分の責である事が理由付けられていくのだ。

21 17/01/22(日)22:58:08 No.404483434

(なるほど、確かにみほの今回の行動は予測できなかった!  昔……母に一度だけ抗弁した事がある。  反抗など一度もした事のなかった私のただ一度だけの反抗。  無駄だと解っていながらも、みほの才覚を訴えて型に嵌める様な事はしないでくれと頼んだ事が。  それでも母は首を振り、「それがみほの為である」とだけ言った。  この時、私は何と狭量で頑固なのだろうと思った。  ……しかし、思えば母の考えは正しかったのだ!  そしてそれは着々と成果を上げていたのに、私が愚かにもこの一年で台無しにしてしまった!  私が…っ!私が望まなければ!  …ふふふ、何と皮肉な事だろうか。  この一年間で計画し画策し望んでいた事が実現したのだ。  その結果がこれなのだ!)

22 17/01/22(日)22:58:36 No.404483574

後悔。 これもまた人生において常に選択を間違った事のなかったまほが始めて感じる事である。 以前であったら新しい感情を覚える事は歓迎するべき事であっただろう。 しかし、またしても妹に関する事で始めて体験するこの感情はまほにとって苦いという表現ではとても足りない物であった。 まほは決して枯れる事の無い涙を流しながら、嗚咽と共にただひたすら妹の無事を祈り続けた。 その声なき声と祈り暗い病院の廊下の中の闇に吸い込まれていった……。  第三話 前半 了  

23 17/01/22(日)23:01:27 No.404484328

お姉ちゃん壊れちゃう…

24 17/01/22(日)23:01:32 No.404484348

うぉぉぉ…

25 17/01/22(日)23:02:34 No.404484650

流されちゃったか…

26 17/01/22(日)23:03:15 No.404484843

エリカも水没してる…

27 17/01/22(日)23:04:23 No.404485172

小説版か

28 17/01/22(日)23:05:01 No.404485330

ここなら知ってる人多そうなのでお尋ね申すが 昨年の10月くらいまであったテキスト入れると一レスに収まるか教えてくれるまほチョビのやつ 今なくなってしまった?

29 17/01/22(日)23:07:00 No.404485876

>今なくなってしまった? ちょっと前まであった 12月には使った覚えあるから多分1月入った辺りで消えた様な感じがする

30 17/01/22(日)23:08:51 No.404486361

そうか…便利だったから残念

31 17/01/22(日)23:09:14 No.404486445

脈絡もなく突然SSスレで別の作者の作品を聞くって凄いな…

32 17/01/22(日)23:10:05 No.404486679

いや!作品を聞いているわけじゃないよ!? ツールという意味では作品だけど

33 17/01/22(日)23:10:51 No.404486896

どちらにしろ空気読めよとは思う

34 17/01/22(日)23:12:44 No.404487414

>脈絡もなく突然SSスレで別の作者の作品を聞くって凄いな… あれはアドレス名がマホチョビだったやつのことで別の作品とかじゃないよ

35 17/01/22(日)23:18:03 No.404488937

このまほの行動が裏目裏目にでてしまうのがたまらないな

36 17/01/22(日)23:19:50 No.404489497

前作では書かれなかったプラウダ戦がどうなってたか判明したのは嬉しい

37 17/01/22(日)23:23:27 [澤さん] No.404490568

まほさんの望みはちゃんと叶ったんですね!! いやーやっぱり諦めなければ夢は何時か叶うってのは本当だったんですね!

38 17/01/22(日)23:25:29 No.404491130

スケブ澤さん!(バシィ

39 17/01/22(日)23:25:39 No.404491176

浅見ちゃんもずっとエリカ達と同じ戦車に乗ってたんだね…

40 17/01/22(日)23:26:19 No.404491356

>浅見ちゃんもずっとエリカ達と同じ戦車に乗ってたんだね… 斑鳩除いたあのメンバーは全員水没戦車に乗っていました

41 17/01/22(日)23:26:49 No.404491523

現実だと考えるべき条件が多すぎてパレート解みたいなのが複数出てくる中で迅速に行動を決められるのはやっぱり戦車道の経験が長いおかげだよね 西住流というかみほ以外の価値を低く見積もってるけど解を得るまでのデータと問題を評価するための価値観を作ったのは西住家だからこそってところがあるよね 良くも悪くもみほにゾッコンだから見えてないものが多いってのがまほっぽくていい

42 17/01/22(日)23:28:37 No.404491992

あいつ

43 17/01/22(日)23:30:37 No.404492512

後半がすっげー気になる

44 17/01/22(日)23:38:09 No.404494797

>妹の西住まほ これはみほの間違いか?

45 17/01/22(日)23:39:35 No.404495193

>>妹の西住まほ >これはみほの間違いか? あ、まちがえだ!ありがとう!

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