虹裏img歴史資料館

1 17/01/15(日)23:32:48 No.403200874

東京の夜の街は光に溢れ、暗がりがほとんどない。 人が多い繁華街という事もあるだろう。 黒いコートを着ている女性も大勢いる。 オレンジ色の髪の女性を探すが、私の視界に入ってこない。 「どこかの店内か地下に入られたら判んないよ！」 乾いた口で呼吸をしながら、交差点の信号が青に変わるのを何度も待った。 気持ちばかりが急いて、銀座に行けば見つけられるかと思っていたが、 事はそう単純でなく、私を自分自身を本当の迷子にさせた。 「確かにLUMINEって書いてある。ここは有楽町だ…銀座までもうすぐ…どうしよう…」 街は広すぎる。 全く知らない私にとっては迷路も同然。 この街で私は異邦人だ。

2 17/01/15(日)23:33:06 No.403200949

寒い風が熱をもった筋肉を冷やし始めている。 まず自販機を探して、それから計画を練り直そう。 周囲を見渡しても自販機が目に入らないので、 LUMINEの吹き抜けの入口で周囲を見回した瞬間、 下りエスカレーターで降りてくるペコさんを見つけた。 「いた！見つけた！あれ？降りてこない！？消えた…私があそこまで昇れば良いのか！」 左側の大きなお店に入り、エスカレーターで昇る。 駆け上がろうとしたが、他の人がいたのでそのまま乗った。 遅いエスカレーターではないのだが、目当ての階まで恐ろしい程長く感じた。 女性用のお洋服売り場の階で、たくさんテナントが入っている。 全部見回したがペコさんが見当たらない。

3 17/01/15(日)23:33:22 No.403201053

トイレも探した。居なかった。 さっきペコさんが見えた場所に行き、下を見下ろす。 えっ！？何であんなところに！？ 電話だ！！電話で引きとめるんだ！！ 携帯を鳴らし、ペコさんが気付いてくれた。でも出てくれない。 「なんで！？どうして！？ペコさん！出て下さい！今、ペコさんが見える場所に居ます！お願いします！！」 留守電に変わったので、半泣きになりながら吹き込んだ。 ペコさんが立ち止まり、電話を耳にあてたので、エスカレーターの右側を静かに駆け下りた。 ガラスのドアを開けて、さっきペコさんが居た場所を見たがまた姿が見えない。 「そんな…どうしよう…」 嫌われたのかな…？きっと怒らせちゃったんだ…一人の時間を邪魔したから… 携帯を出してもう一度電話をかける。

4 17/01/15(日)23:34:32 No.403201385

数回呼び出しコールが鳴り、また留守電に変わった。 「ペコさん…ごめんなさい…お一人の時間を邪魔するつもりなんてなかったんです…ただプレゼントを渡したくて…ごめんなさい…」 泣く前にお詫びと何故追いかけて来たのかだけは伝えたかった。 通話終了のボタンを押して、携帯をペコさんから貰ったコートのポケットに入れた。 「本当に…困った後輩だわ。…って思ってもそんな事できないじゃない」 後ろでペコさんの声がする。 振り返ると、ライトグレーの瞳に涙をいっぱい貯めて、私を見つめるペコさんが居た。 「ペコさん！酷いですよ！何で電話に出てくれないんですか！？ゴホッゴホッ」 乾ききった水分の無い口で大声を出したから咽込んだ。 手持ちの小さいショッピングバッグから小さいボルヴィックのペットボトルを出して、飲むように言ってくれた。

5 17/01/15(日)23:35:10 No.403201588

「お水ありがとうございます！丸の内からここまでくる間まったく水分補給なく走り続けましたから！でも普段から鍛えてるんで私は大丈夫なんですよ？ああそれより何で電話に出てくれなかったんですか！？？私嫌われちゃったかと思ってそれは心配で哀しくて今にも泣きそうですよ！それよりプレゼントを受け取ってください！！多分気に入ってもらえると思います！！春になったら雪のチャームじゃなくて私のプレゼントしたチャーム着けて下さいね！！ヘックション！」 水を全部飲み干してしまった。 薄い水色のショッピングバッグをペコさんに差し出すが、寒さと緊張で手が震えていた。 「もう！嬉しくてカウントできないじゃない！！それに高かったでしょう？ありがとう！でも、もうこんな背伸びはダメよ、ね？」 グローブを外し、私の手を擦ってくれてからショッピングバッグを受け取ってくれた。 時計を見ると20時近くになっていたので、ペコさんがタクシーで八重洲口まで送ってくれた。

6 17/01/15(日)23:36:06 No.403201887

「本当にごめんね。でも今日の私が本当の私だから。忘れないで。お願い」 車内でペコさんは瞳を涙で揺らしながら、一言一言はっきり言った。 私には意味が良く解らなかったが、昼間愉しそうに笑っていたペコさんがそう言うならきっと本当の事なんだろうと思った。 コインロッカーから荷物を出して、私がバスに乗るまで列に一緒に並んでくれた。 行列に並んでいる間にペコさんはプレゼントを開けて「素敵ね。本当にありがとう！」そう言って目尻を拭っていた。 私が何度も寒いからもう大丈夫だからと言っても「まだ一緒に居たいから」と乗車が始まるまで私の右手を左手で包み、 自分のコートのポケットに入れてくれた。 「みほさんと梓さんにもよろしくね。写真アップロードしたらメールしますから。また、ね？」 「はい。ローズヒップさんにもよろしく伝えて下さい。ぺこさん寒いですからもう大丈夫ですよ！」 私がそう応えても、微笑みながら首を「うん、うん」と振っている。

7 17/01/15(日)23:36:33 No.403202034

行列に並んだのが少し遅い時間だったので、席は通路側になってしまった。 先に乗って窓際に座っていた隣のお姉さんが何も言わず変わってくれたので、 どうしたんだろう？と思って外を見るとペコさんがまだバスの外に居た。 窓を開けて、本当に大丈夫だと伝えても嬉しそうに微笑んでいる。 「窓を閉めなさい。他の方が凍えてしまうわ」 私が窓を閉めて「ありがとうございます」唇だけで伝えると、 マフラーを外して、胸元からチャームを見せてくれた。 そこには私の贈ったハートのチャームが着けられていた。 ペコさんは何度もありがとうと言っている様だったが、バスが発車する直前「忘れないで」と読める口の動きをした。 私はバス内から振り返り、だんだん小さくなり、もう見えないだろうペコさんの姿をひたすら探そうとした。

8 17/01/15(日)23:36:57 No.403202174

高速に乗り、私がウトウトし始めた頃、 ペコさんからメールが入った。 電車内だろうか？プレゼントしたチャームを着けている写真。 多分自撮りだろう。心なしか瞼が腫れている様に見える。 『本当にありがとう。一生大事にするからね！そして今日過ごした時間は一生忘れないよ』 お世辞かもしれないが、そんな風に言ってもらえて嬉しかった。 返信を書く前に私の意識は眠りの中に落ちていた。 ○●○●○●○●

9 17/01/15(日)23:39:08 No.403203005

よろしければ読んでみてください *少し長いので続きはtxtで… su1714051.txt 　 こころドロップ&こころタイム・トラベル su1714042.txt su1714043.txt 好子メタフィクション su1714044.txt 本日最終回です 読んで頂いて本当に有難うございます

10 17/01/15(日)23:40:40 No.403203500

第４話来たな

11 17/01/15(日)23:44:53 No.403204963

あーあれか このペコちゃん口の端が二ィっと上がっちゃうようになるペコちゃんか

12 17/01/15(日)23:44:59 No.403205005

続き待ってた「」将！ これから読むね それから前の華さんと好子ちゃんハッピーエンドのツケ払いだよ！前回のこころちゃん同様の駄コラで申し訳ないけど su1714081.jpg 好子ちゃん

13 17/01/15(日)23:51:31 [sage] No.403207229

>第４話来たな 少し遅くなっちゃった…ごめん！よろしくお願いします！ >このペコちゃん口の端が二ィっと上がっちゃうようになるペコちゃんか それを意識して書いたお話なんだ…もし良かったらそのお話su1714085.txt >続き待ってた「」将！ >これから読むね >それから前の華さんと好子ちゃんハッピーエンドのツケ払いだよ！前回のこころちゃん同様の駄コラで申し訳ないけど >su1714081.jpg >好子ちゃん よろしくお願いします！また凄く可愛いのありがとう！書き続ける位しかお礼できないよ…何かリクエストあるなら言ってね？頑張るから！

14 17/01/15(日)23:54:06 No.403208202

みぽりんと澤ちゃんイチャイチャしてるな ツチヤの言う一日中やるやり取りを聞いていたい

15 17/01/15(日)23:57:38 No.403209221

>ただ、いつまでこうして愉しい時間が過ごせるかを考えると悪寒が走った。 これふっと我にかえったときにあるよね あと何ヶ月とか数えちゃう

16 17/01/16(月)00:01:50 No.403210300

ヒラコー顔じゃないペコッとした顔を覚えておいて欲しかったんだな… 良いお話でした しかし次回予告にあさりちゃん話が…あの子もイラスト見て ｢鉄アレイが武器か…｣と言われてた頃からだいぶ経ったな…

17 17/01/16(月)00:13:02 No.403213278

>また凄く可愛いのありがとう！書き続ける位しかお礼できないよ… 俺は読めることがうれしいんだ… 今回の好子ちゃんもマルコのアンツィオモブ子と丸山のキメラだから… ただ髪の色だけは何となく華さんをイメージして青味を濃くしてみた >何かリクエストあるなら言ってね？頑張るから！ 予告にあった『この世界線のみほ澤、澤ちゃん視線』 これこれ！

18 17/01/16(月)00:13:09 [sage] No.403213313

>みぽりんと澤ちゃんイチャイチャしてるな >ツチヤの言う一日中やるやり取りを聞いていたい 二人にしかわからない事を延々やりとりするみぽりんと澤ちゃん…ご飯くらいじゃ割りに合わなかったんだよ… >これふっと我にかえったときにあるよね >あと何ヶ月とか数えちゃう 今回ペコちゃんがトリガー埋めてくれたからこころちゃんは余計考えるようになるね 大人でもあるからね…大人の事情に翻弄された澤ちゃんの世代まではいつも考えてると思う…ありがとう！ >ヒラコー顔じゃないペコッとした顔を覚えておいて欲しかったんだな… >良いお話でした >しかし次回予告にあさりちゃん話が…あの子もイラスト見て >｢鉄アレイが武器か…｣と言われてた頃からだいぶ経ったな… 薄く笑い顔だけ反転したペコちゃん…ありがとう！ あさりちゃん主人公扱いで長いお話なかった気がして…間口広げておけば誰か書いてくれると良いな… 鉄アレイは凶器だから…みんな生まれてようやく一年近くかな…？

19 17/01/16(月)00:14:05 No.403213587

煎茶(せん)・玉露(たま)・麦茶(むぎ)のポンコツ日本茶トリオにも出番を！！

20 17/01/16(月)00:16:31 No.403214202

>二人にしかわからない事を延々やりとりするみぽりんと澤ちゃん…ご飯くらいじゃ割りに合わなかったんだよ… いい…いいねえ…みほ澤 カレンダーでもコンビだったしキテる

21 17/01/16(月)00:22:57 No.403215655

前回のマキシシングル版の『君はその瞳で嘘をつく』 今日の最終回読んだ後に改めて読み直すと 顔合わせのシーンが凄く想像できるしタイトルの意味も… 人は前に進まなきゃいけないんだなァ…

22 17/01/16(月)00:24:25 No.403215997

あさりちゃんにやっと日の目がっ！

23 17/01/16(月)00:26:20 No.403216453

甘いけどほろ苦く 優しいけど厳しい そんな世界…いい

24 17/01/16(月)00:28:09 [sage] No.403216868

>俺は読めることがうれしいんだ… >今回の好子ちゃんもマルコのアンツィオモブ子と丸山のキメラだから… >ただ髪の色だけは何となく華さんをイメージして青味を濃くしてみた いつも本当にありがとう…何てお礼を言っていいか… 好子ちゃんの髪の青はこれくらいを想像して書いてたよ！困った笑顔がイメージ通りでびっくりした！ >予告にあった『この世界線のみほ澤、澤ちゃん視線』 >これこれ！ 了解！少し書き始めてるからもう少し待っててね！ >煎茶(せん)・玉露(たま)・麦茶(むぎ)のポンコツ日本茶トリオにも出番を！！ 了解！入れる要素を考えてみるよ！三人目はやっぱり麦ちゃんなんだ… >いい…いいねえ…みほ澤 >カレンダーでもコンビだったしキテる この世界線だと自然とそうなってる気がして…甘さ増しで書きたいな

25 17/01/16(月)00:28:29 [sage] No.403216942

>今日の最終回読んだ後に改めて読み直すと >顔合わせのシーンが凄く想像できるしタイトルの意味も… >人は前に進まなきゃいけないんだなァ… 自分たちが望む望まないにかかわらずペコちゃん達は渦にのまれちゃうからね みぽりん達も経験済みだから理解できるんじゃないかなと… このコ達は自分で道つくって乗り越えられるコ達だから大丈夫 >あさりちゃんにやっと日の目がっ！ おでこちゃんでそばかすのコが結構好きだったんだって気付いた！ >甘いけどほろ苦く >優しいけど厳しい >そんな世界…いい ビター＆スイートが売りのお店だから！ありがとう！また書くから！