17/01/12(木)23:10:51 怪文書... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1484230251230.jpg 17/01/12(木)23:10:51 No.402548554
怪文書ですご注意ください
1 17/01/12(木)23:11:17 [1/10] No.402548643
「ペパロニとカルパッチョは今夜は夕食を抜いて私の部屋に来る様に」 そうドゥーチェに伝えられたのは、風も強く冷え込みの激しい昼だった。 その日の私たちは練習に参加せず、出店担当を任されていた。 そんな私たちに、出店に赴いてまで伝えるのは大事な話があるのだろうか。 夕刻になりかじかむ手を手袋に入れ、私たちは出店の車両を掃除し終えて寮へと戻る。 「いきなり呼び出しなんてなんだろうね。仕事終わってご飯抜きなんて耐えられないよ」 ペパロニさんは頭の後ろで手を組みながら口を尖らせる。 「外食にでも行くんじゃないですか?ご飯どころか皆のおやつすら抜くのを気にしてますから」 「やったー!おごりかな!…でも今日って何かあったっけ?」 「いえ、特に何もないと思いますが…祝日でもないですし」 「そういえば、昨日はドゥーチェが居なかったよね。関係あるのかなぁ」 「はい。買い出しに行くと言ってましたから何か振る舞ってくれるかもしれませんね」 「そっか、じゃあ楽しみだね」 新しい料理の試食だろうか、それとも気まぐれに作ったのだろうか。 そんな事を話しながら私たちは一旦自室へと戻り、着替えを済ませる。
2 17/01/12(木)23:11:38 [2/10] No.402548727
ノックをせずに入ろうとするペパロニさんを制し、私はノックをしてドゥーチェの返事を待つ。 「来たか。入ってくれ」 失礼しますと伝え扉を開けると、部屋から立ち込めた湯気が私たちを迎え入れる。 「今日は冷えるな」 ドゥーチェがそう言いながら手招きをするので、私は後ろ手で扉を閉じる。 「なんスかドゥーチェ、鍋っスか!?」 ペパロニさんはテーブルの上でくつくつと煮える鍋を見て即座に飛びつく。 「そうだ。お前らに食わせてやろうと思ってな」 「言ってくだされば手伝いましたけど…」 「振る舞う側になりたかったんだよ。ほら、座れ」 ガスコンロの火力を弱めつつ、ドゥーチェは取り皿を出してくれる。 「ありがとうございます。ではお言葉に甘えますね」 「ああ、温まって英気を養ってくれ」 「ドゥーチェこっちにも!皿と箸をお願いします!」 「やかましい!おとなしくしてろ!」
3 17/01/12(木)23:12:05 [3/10] No.402548818
鍋の蓋を取ると、湯気とともに出汁醤油の香りが部屋に広がる。 香り付けに使われているのか、主張しすぎない柚子の香りも食欲をそそる。 「よし、煮えてるな。じゃあ取り分けるぞ」 「待ってました!美味しい所をお願いします!」 「具材は…お魚の鍋ですか。この時期はいいですね」 鍋の煮える音。そわそわと動くペパロニさんの布の音。ドゥーチェが取り分けるお玉から鳴るカチャカチャという音。 それだけいろいろな音が混ざっているというのに、何故か「静かだ」と感じてしまう。 「なんかいいですね、こういうの」 「食べる前から満喫してもらえるのなら、私も用意をした甲斐があったな。ほれ、カルパッチョの分だ」 「ありがとうございます」 「ドゥーチェ!私のも早く!」 「お前はおとなしくしないから一番最後だ!」 「そりゃないっスよー!出店やってお腹すいてるんですよー?」 「わかったわかった!いいから座れ!」
4 17/01/12(木)23:12:20 [4/10] No.402548874
「いただきます」 手を合わせ、箸を取ってそれぞれ手を付ける。 私はスープを一口飲み、ほっと息を吐く。 「温まりますね」 「そうか、おかわりもあるからしっかり食べろよ」 「うまいっス!ドゥーチェおかわり!」 「もう少し味わって食べろ!」 「いいじゃないっスか!お腹空いてるんですよ!」 「カルパッチョを見習え!」 やっと一口目を飲み込み終え、次の一口を入れたばかりの私は話を振られ急いで噛もうとする。 「…すまない、ゆっくり食べてくれ。ほら、よそってやるから皿をよこせ」 「やったー!カルパッチョも早く食べないと無くなっちゃうかもしれないよ?」 「ちゃんとそれぞれの量は考えてるから大丈夫だ。無理に急ぐな」 そう言われた私は、急ぐのをやめ口の中に入った野菜をもしゃもしゃと食べ続ける。 飲み込み終えて「わかりました」と伝える頃には、ドゥーチェはペパロニさんの二杯目を渡し終えていた。
5 17/01/12(木)23:12:45 [5/10] No.402548965
「美味しかったー」 ドゥーチェのベッドで寝転がりながら、ペパロニさんはお腹を叩く。 「行儀悪いですよ。ドゥーチェ、洗い物しますね」 「いや、最後まで私がやっておくよ。お前たちは客なんだから寛いでいてくれればいい」 「流石にわるいですよ。そのくらいさせてください」 「そうか、じゃあお前たちに任せて私はテーブルを拭くかな」 「たちって私もっスか!?」 「ごちそうになったんですからそのくらいやりましょう」 「ちぇー、しょうがないなぁ。じゃあ私が鍋持ってくからカルパッチョは皿をお願いね」 「ああ、そうだカルパッチョ。終わったら髪を解いてくれ」 「わかりました。じゃあ終わり次第またこちらに伺いますね」 「あ、たまには私も見てていいっスか?」 「急にどうしたんだ?いつも興味を示さないのに」 「今一人で部屋に戻っても寒いじゃないっスか。だからカルパッチョが終わるのを待とうかなって」 「まあいいが、楽しいものじゃないと思うぞ?ああ、食器は割らない様に気をつけろよ」
6 17/01/12(木)23:13:03 [6/10] No.402549045
洗い物を終え、皿と鍋を拭き上げて洗い場を軽く掃除もする。 最後に電気を消してドゥーチェの部屋へと向かう私たちの足取りは、廊下の冷気から逃げようと早足になっていた。 「戻りました!寒いっス!」 そう勢いよく部屋に入るペパロニさんを追い、私も腰の櫛を確認してから入室する。 「じゃあ、髪をほどきますね」 既に椅子に座るドゥーチェに対し、櫛を出していつもの様に告げる。 ペパロニさんはドゥーチェの布団に潜りながらこちらを見ている。 「ああ、頼んだ…ペパロニは出る時に布団を綺麗にしておくように」 そう言い、背中を向けたドゥーチェの髪を手に取る。 部屋に置かれた霧吹きから水を出し、髪を濡らす。 「今日はごちそうさまでした」 「気にするな。…いや、どういたしましてが正しいか」 「はい。でもどうして急に魚の鍋を?」 「ああ、作り方を聞いて試したくなってな」
7 17/01/12(木)23:13:23 [7/10] No.402549137
「じゃあ、鍋に入れていた魚もわざわざ探しに行かれたんですか?」 「ああそうだ。この辺りだとなかなか売ってないからな」 「あの魚美味しかったっスよ。何使ったんスか?」 「アンコウだ。魚屋に注文しておいたんだよ」 ふふんと自慢げに説明をしてくれるドゥーチェの左テールを伸ばし終え、保湿液を馴染ませていく。 「アンコウですか…そんなの使えるなんて珍しいですね」 「だろう?角谷もたまには有益な情報をくれるな」 「カドタニさんですか。クラスの方ですか?」 「いや、大洗の会長だ。この間出店で向かった先で会ってな。教えてもらったんだ」 私は笑顔のまま右テールをほぐしていく。 何故かペパロニさんは布団を少し深く被っていく。 「そうなんですか。じゃあ大洗の知り合いに伝言でお礼をお願いしておきますね」 「いや、その必要はない。受験前にまた会う予定があるからな」 「そうなんですか。でしたら私たちが喜んでいたとお伝えください」
8 17/01/12(木)23:13:49 [8/10] No.402549242
「わかった。そんなに気に入ってくれたのならもう一度くらい作ってもいいかもな」 「そうですね、でももしその機会をいただけるんでしたらドゥーチェの得意料理を食べたいです」 「そうかぁ、じゃあ今回以上に喜ばせられる物を考えないとな」 「期待しておきます。…はい、終わりました。」 「ありがとう…ペパロニは妙に静かだな」 「そうですね。寝ちゃったんでしょうか?」 もぞもぞと布団が動き、ペパロニさんが顔を出す。 「いや起きてるよ。起きてるけど…ドゥーチェ、凄いっスね」 「何がだ、料理か?」 「いや、よく平気だなって…」 「なんだ、はっきり言わないとわからないぞ」 「カルパッチョっスよ!声も笑顔も怖くて震えちゃいそうでしたよ」 「あー?なんでだ。喜んでくれてただけだろう?」 「はい、そうですね。では私は部屋に戻りますね」 一礼し、自室へと向かう私の後を布団を投げ出したペパロニさんが追ってくる。
9 17/01/12(木)23:14:08 [9/10] No.402549328
「ねぇ、大丈夫?」 ペパロニさんが横に並びながら聞いてくる。 「私は美味しい物をごちそうして頂けて満足してますよ」 「そっか、それならいいんだけどさ」 「それに、私が気にすることじゃないですから」 「やっぱり気にしてるじゃん…」 「気にしてませんって」 ペパロニさんは私を追い抜くと自室の扉を開け、心配そうに口を開く。 「溜め込んで何かにぶつけたりしないでね?」 「しませんよ、大丈夫です」 「たくさん食べたら眠くなってきちゃったし、私はお風呂明日にして今日はもう先に寝るね」 「はい、お疲れさまでした」 いそいそと布団に潜っていくペパロニさんを見届けて、私は卓上の電灯を点け本を開く。 しかし、数行を読み終えると本を閉じる。
10 17/01/12(木)23:14:23 [10/10] No.402549391
何故だろう、胸のあたりがもやもやして内容が頭に入らない。 冷え込みで風邪でも引いたのだろうか? それとも楽しい食事の時間を過ごし、浮かれてしまっているのだろうか? そう思おうとしている私自身に嫌気がさし、長いため息を吐く。 これは、嫉妬だ。 ドゥーチェを他校の人に取られたくない。 自覚して、自分の子供っぽさに呆れてしまう。 自己嫌悪をしてしまい、もう一度ため息を吐く。 ため息と一緒にこのもやもやも出ていってくれればいいのに。 私もお風呂は明日にして、今日はもう休もう。 そう考えた私はすぐに着替え、部屋の電灯を消す。 八つ当たりの様に軽く握った拳で枕を一度叩き、布団へと潜り込む。 せめて夢の中でくらいは、いつまでも皆で楽しく過ごせます様に。 冷え切った布団に入りながらそう願い、私は眠りに落ちていった。
11 17/01/12(木)23:18:08 No.402550209
書き込みをした人によって削除されました
12 17/01/12(木)23:18:24 No.402550274
これ枕殴る音でビクッとしてるなペパロニ…
13 17/01/12(木)23:19:50 No.402550626
いい… 毎度の事だけどいい… 続きがきになるぞ
14 17/01/12(木)23:20:43 No.402550843
カルパッチョはおっとりしてるけどその分静かに燃えて静かに溜め込む子だよね多分
15 17/01/12(木)23:24:05 No.402551621
ゴゴゴゴゴゴゴゴの効果音と共にどす黒いオーラをお出ししてらっしゃる…
16 17/01/12(木)23:25:16 No.402551889
チョビカルいい… 距離をちゃんと保ってるのがまたいい…
17 17/01/12(木)23:25:34 No.402551949
アッチョいい…
18 17/01/12(木)23:30:04 No.402552879
ペパロニはなんというかこう…子供だな…
19 17/01/12(木)23:30:53 No.402553073
カルビいいね…
20 17/01/12(木)23:30:56 No.402553091
タカちゃんは別腹か
21 17/01/12(木)23:31:58 No.402553347
あぁ...いい... こういうアンツィオ大好き
22 17/01/12(木)23:32:30 No.402553474
このシリーズ好き
23 17/01/12(木)23:40:04 No.402555334
始めてみたけど文章が読みづらくて仕方ない