虹裏img歴史資料館

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17/01/08(日)22:30:20 SS ... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1483882220470.jpg 17/01/08(日)22:30:20 No.401748384

SS 西ダジ あらすじ 季節は冬、大学選抜にてともに戦った高校連合の隊長たちは大洗の生徒会室で新年鍋パーティーを行っていた。 腹もくちくなりオヤツなどつまみながら戦車の話に花を咲かせる一時、しかしオヤツと飲み物が切れてしまう。 チョビは買い出しに行こうと提案するがなにしろ外は寒い。年下であることからみほが買い出し係に名乗り出るが 「みほをこんびににいかせるとかえってこないからだめだ」 とお姉ちゃんに言われしぶしぶと引き下がることに。 ならば僭越ながら自分が、と同じく年下の西さんが買い出し係を引き受け、残りのメンバーからじゃんけんでもう一人の買い出し係を選ぶことに。 熾烈なる三回のじゃんけんの結果、見事買い出し役の任を請け負ったダージリンは西とともにしんと冷えた外へと歩き出すのであった……。

1 17/01/08(日)22:30:41 No.401748511

◆ 潮風が体を包み、体温を奪っては流れていく。もともと寒さに強くもないダージリンはオリーブ色のストールを口元に寄せ、手袋の中の震える手をきゅっと握った。 時は一月、空には今にも雪が降りそうな厚い雲が広がっている。月の光も淡く、更には街明かりの少なさが一層この冷たさに拍車を打っているように感じられた。 ふと、隣を見れば、男物のコートを羽織った西絹代が背筋をぴんと伸ばして歩いているのが目に入る。 手袋、マフラー、ともに無し。鼻の先を子供みたいに赤くして、それでもポケットの中に手をしまうこともなく歩いていた。 寒くはないの? と思わず聞きたくなるが、わざわざ聞くまでもない。寒いに決まっている。 それでも防寒具を身につけない理由は……知波単お得意の精神論か、あるいはうっかり忘れてきただけか。 どちらもあり得そうね、とダージリンはひとりそんな想像をしてほくそ笑んだ。

2 17/01/08(日)22:30:57 No.401748623

思えばあのエキシビジョンマッチで初めて戦ってからというものの、ダージリンにとって西絹代は何かと縁のある相手だった。 理論派と行動派、三年生と二年生、熟練者と未熟者──もとい、発展途上。 あらゆる方向に正反対な二人であるが西自身がダージリンに対し強い憧れを抱いていることもあり、二人はあの夏の日以来幾度となく茶の席や戦車を通じ語らう仲となっていた。 しかしダージリンはといえば、西絹代のことをそれほど表立って気に入っているわけではない。むしろ彼女のいくつかの軽率な行動については苦手意識さえ抱いていた。 それでも付き合いを止められないのは……不意打ちをかける駆逐戦車のように突然現れる、西の真摯に紳士な態度ゆえだろうか。 普段のすっとんきょうな言動と合わさり、ダージリンはこの西絹代という少女を使いこなせず、かといって手放すこともできずにいたのだった。

3 17/01/08(日)22:31:15 No.401748733

「……ダージリン殿、何か?」 自身を観察するダージリンの様子を不思議に思ったのか、西がきょとんとした顔を向けてくる。ダージリンはつとめて素知らぬ顔で言葉を返した。 「いえね西さん。今日は空気が澄んでいるから、星がとても綺麗に見えるでしょうと思ったの」 「なるほど、星ですか! 言われてみれば確かに……あ、あれ?」 ダージリンの言葉に西はぱぁっと顔を輝かせ空を見上げる。しかし、そこに星はない。厚い雲のかかった夜空には、薄ぼんやりとした朧月の光があるばかりである。 西が首をひねると、ダージリンはいよいよくすくすと笑みをこぼした。 「こんな格言を知っている?『想像は知識に勝る。知識は限界があるが、想像力は世界を包みこむ』……」 「はいっ、全く存じ上げません!」 目をきらきらと輝かせ、堂々と答える西。こんなところもダージリンが彼女を苦手な理由のひとつである。 立てた人差し指がへにょりと折れるが、こほん、と咳払いをしてダージリンは答えた。 「目に見えるもの全てが真実とは限らない。想像力を働かせれば、曇り空の上にも星は見えてくるでしょう」

4 17/01/08(日)22:31:39 No.401748868

そう言ってダージリンは眼を細くして空を見上げる。西もそれに倣いもう一度空を見上げると、やがてぽんと手を叩いて感心したように声を上げた。 「……なるほど、雨月というわけですね! では私も!」 ひとりうんうんと感心したように頷くと、彼女はそこにない星を見ようと背伸びをして夜空のあちこちに視線を飛ばす。きっと見えない星を見ようとしているが、うまく思い描けなくて難儀しているのだろう。 ダージリンは一生懸命な西の姿を初めこそ微笑ましく見守っていたが……西がお行儀よく止まって空を見上げてばかりいるので、やがて微笑みを呆れにシフトチェンジし、西のコートを引っ張った。 「……西さん、今は買い物の途中。星は歩きながら探しなさいな」 「ああっ、これは失礼いたしました!」 慌てて歩き出す西の姿にひとつ溜息を吐く。 別に私、あなたを注意したいわけではなかったのだけれど──ダージリンは言葉を飲み込み、心のうちでそっと西への苦手意識を新たにするのだった。

5 17/01/08(日)22:32:01 No.401748982

◆ アリガトウゴザイマシタ、と無機質な音を投げる店員を背に二人は煌々と明かりの灯るコンビニを後にする。 あれからも二人は幾度か噛み合わない会話を繰り返し、ようやくコンビニにて菓子と飲み物をいくつか買って店を出た。 いつもの優雅な微笑みを浮かべる気力もなくじとっとした目のダージリン、西の表情は対照的なほどにこにこと明るい。 ダージリンは当たり前のように大きいほうの袋を持つ西に目をやりながら、つつくように言葉を投げかけた。 「……ただのお買いものに、ずいぶんと楽しそうな表情をなさるのね?」 ダージリンの言葉に西は振り向き、それから照れたように頬を掻く。 「いやあ。自分は隠しごとが下手というか、顔に出てしまう性質でして。ダージリン殿とこうして歩ける事が楽しいから、つい笑ってしまうのです」 臆面もなくそんな事を言う西。ダージリンは寒さのせいか赤みを帯びた頬を隠すように伏せて、少しだけ歩調を速めた。 これもまた、ダージリンが西絹代を苦手とする理由の一つ。ともすれば普段のうっかりや空気を読まない言動よりも、よほど厄介な性質とも言えた。

6 17/01/08(日)22:32:36 No.401749162

西より少し先を歩く彼女は、しかしこの日はやや意地悪な口調でこう返した。 「好いていただけるのは嬉しいですけれど……あまりわたくしばかりに気を取られていると、他の隊長が気を悪くするのではなくて?」 つい、と振り向いて西の表情を窺う。 相手は九十七式中戦車、チャーチルが仕掛ける威力偵察のほどは如何に。 「……ですが、それでも」 チハの砲塔がゆっくりとチャーチルを向く。 「私はダージリン殿と一緒に夜を歩けたこの幸運を、感謝せずにはいられないのですよ」 チハからの鋭い57mm砲が、チャーチルの芯を捉えてぶち当たる。その頑強な装甲を貫くことはなかれども、車内は大いに揺さぶられた。 ダージリンはくらりと来た我が身を両の足で支える。 おやりになるのね、と心の中で呟き、ちょこまかと動く捉えどころのないチハにゆっくりと照準を定めた。

7 17/01/08(日)22:33:00 No.401749295

「実は、わたくしも……貴方のことは、それなりには気に入ってますの」 「なんと……! この西絹代、光栄の極みでございます!!」 今日一番の笑みを浮かべ、西絹代は重い荷物も軽々と持ち上げて直立し敬礼する。 チャーチルの砲撃、チハに当たるも決定打にはならず。この攻め方では駄目だと判断したダージリンは即座に戦略を変更する。 「……ねえ、西さん」 一歩、足を踏み出すダージリン。前髪同士が触れ合いそうな距離で、彼女はコーヒーブラウン色の瞳をじっと見つめた。 「もしわたくしが『ここを抜けだして、二人きりになりたい』と言ったなら──貴方はわたくしに何をしてくださるのかしら?」 彼女のチャーチルが打ち出したのは、持ち味の規律正しい行進間射撃を放り出した超接近戦による必殺の停止射撃。 「らしさ」を欠いた、柄にもない挑戦的な一手。やりすぎたと気づいた時にはもう遅い。この戦いは、戦車を操るようには簡単にいかないようだった。

8 17/01/08(日)22:33:21 No.401749429

彼女は耳まで真っ赤に染めそうになる自分の身体を押しとどめながら、とどめを見舞うばかりに西へやんわりと微笑みかける。 大勢の人に向ける聖グロリアーナ流の微笑ではなく、ダージリンただ一人としての色香を含んだ笑みを。 「は……え、なっ……」 はたして、先に耳まで真っ赤になったのは西の方だった。目をぐるぐると渦巻かせ、涙を浮かべながら無駄に勢い良く直立し、ごまかすように叫ぶ。 「い、いいい今現在自分は作戦行動中でありますっ! 任を放棄するは兵の恥なれば、まま、まことに申し訳ありませんっ!!」 九五式チハ、走行不能。爆煙立ち込める中かろうじて白旗をもぎ取ったのはチャーチルだった。

9 17/01/08(日)22:33:24 No.401749448

きたのか!

10 17/01/08(日)22:33:45 No.401749602

──何をしているのかしら、私。 ダージリンは大慌ての西絹代を少しの満足感とともに眺めながら、同時に自身に呆れのようなものを感じていた。 西絹代の苦手な所、もうひとつ。彼女の前では、ダージリンは時々自分を見失ってしまうのである。 ここまで張り合う必要もなかったでしょうに。自戒のような言葉を胸に言い聞かせながら、しかし不思議と気分は悪くない。きっと目の前の少女がかつてないほどに動揺しているからだろう。 ダージリンは堪え切れないようにくすくすと笑みをこぼすと、西の裸の手を取って言う。 「……冗談よ」 手袋越しに伝わる冷たさを感じながら、ダージリンは再び西に背を向けて歩き出す。手を引かれた西はまだ冷めやらぬ頬の熱を一生懸命払いながら、それでもつながれた手に再び頬を赤くしていた。 「行きましょう西さん。みんな待っているわ」 「はっ、はいでございます!」 ぽーっと熱を帯びた視線でダージリンの金髪を見つめながら、西はダージリンを追いかけて歩き出す。 こちらに背を向けて歩く彼女の顔が、果たしてどんな色をしているか……それを西が知るのは、もう少し後の事だった。

11 17/01/08(日)22:37:14 No.401750728

テキスト! 西ダジはなんというかダージリンから色々仕掛けてってほしい そして西さんは天然の色男ぶりでそれらを踏み越えて行ってほしい su1705106.txt

12 17/01/08(日)22:40:35 No.401751777

攻められる西さん 私はいいと思う

13 17/01/08(日)22:44:10 No.401752970

攻めてたのに不意打ち的に反撃を食らうダー様いいよね… 西さんは西さんで素直に自分の気持ちを言っただけだったりするとなおいい… ありがとう…

14 17/01/08(日)22:50:33 No.401755202

キテル…

15 17/01/08(日)22:58:26 No.401758166

あ 結局赤くなっちゃってるのはバレるのね いや…?赤くであったとしても……それは羞恥だけから来る赤みではなく…? もっと艶めいた……そう!咲き誇る一輪の花の様な輝きにも似た朱の色! 肩を並べてそれを見てしまってはもうお終いだ! 嗚呼!西絹代!最早心奪われ取り戻すこと適わずか!?

16 17/01/08(日)23:00:19 No.401758885

悪戯な先輩に惑わされる西さん可愛い!

17 17/01/08(日)23:04:59 No.401760385

苦手だけど嫌いじゃない相手いいよね…

18 17/01/08(日)23:05:33 No.401760641

戦車に例えるの好き…

19 17/01/08(日)23:07:57 No.401761411

乙女な西さんいいよね… それはそうとチハは九七式です

20 17/01/08(日)23:15:51 No.401764012

ぐるぐる眼の西さん… めっちゃいい…

21 17/01/08(日)23:16:54 [sage] No.401764353

>それはそうとチハは九七式です ごめん…

22 17/01/08(日)23:17:03 No.401764394

今回は参ったと言わせられたがこのチハは手強い その内チャーチルの足回りをすべて破壊した上で側面から体当たりをしかけてくるかもしれない そうなれば撃とうとしてもその砲身はその長さ故にチハを狙い撃つことができない チハもチャーチルの装甲を抜くことはできないが 何度も何度も撃たれて揺さぶられればやがては降参してしまうかもしれない

23 17/01/08(日)23:18:26 No.401764806

やはりチハ車でチャーチルに挑むは無謀…

24 17/01/08(日)23:21:17 No.401765816

いやいっそ膠着状態になったチハから飛び出してキューポラから突撃してもいいな… これは戦車道じゃなくて別の駆け引きなんだから

25 17/01/08(日)23:24:17 No.401766660

>チハもチャーチルの装甲を抜くことはできないが >何度も何度も撃たれて揺さぶられればやがては降参してしまうかもしれない 37mmで貫通出来なくても至近からの着弾の衝撃でエンジン系統を壊せばやがては擱座する 西隊長殿の奮戦を祈る!

26 17/01/08(日)23:25:32 No.401767102

ビルマ戦線みたいな戦いになってきた…

27 17/01/08(日)23:27:30 No.401767708

西隊長の視線はチャーチルだらけで地面の色が見えない! チャーチルが七分で地面が三分!

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