24/02/12(月)01:39:10 ホグ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1707669550994.jpg 24/02/12(月)01:39:10 No.1156472776
ホグワーツの卒業式から数週間経って、もう大半の卒業生は寮を去っていて。 生活の大半を過ごしたこの部屋も、例に漏れず机とベッドだけになっていた。 「…」 (もう事業を引き継がせてから3年ですか…あれは…楽しかったですね…) 0から始めて、友達と大きくして。その中で、あの人と出会った。 「おーいカフェー!そろそろ行かないかいー?」 静まり返っていた廊下に階下から大声が響く。 「あ…あんまり大きな声は…」 「まあいいじゃないか。今いるのは私たちくらいなんだ」 「そ…そうだけど…」 そんなにぎやかな声に呼ばれて、マンハッタンカフェは自室に背を向けた。 「お待たせしました…シャカールさんは?」 「シャカールくんなら早々に帰ったよ。まったく、薄情だとは思わないかい?」 「いえ…特には」
1 24/02/12(月)01:39:34 No.1156472882
「ふ、二人とも…はやくいかないと…」 「もうそんな時間ですか…そうですね、では行きましょうか」 ガタタン、ガタタンと汽車に揺られながら、段々と小さくなっていく学園を眺める。 「──フェ、カフェ!そういえば君はどうだったんだい?」 「…何がですか?」 「だーかーら、恋人はいたのかい?在学中はそういった噂も何も聞かなかったからねえ」 「そうですね…まあ、言う必要もありませんでしたから」 実際、そういった事を考えなかったといえばウソになる。だが、相手に迷惑がかかるし、そもそもそういった感情はいまいち良くわからなかった。 「君はそうだろうねえ。シュヴァルくんは上手くやっていたようだが」 「僕は部屋を貸してただけだし…口の堅い人だから。ネイチャさんは」 えへへ…と幸せそうにはにかむシュヴァルグランを見て、上手くいっている事は容易に想像できた。
2 24/02/12(月)01:39:51 No.1156472947
「タキオンさんはどうだったんですか?」 「私かい?好き勝手やっていたらいつの間にか振られていたよ!」 「胸張って言えることですか…」 二人からの嫌悪と困惑を笑い飛ばした後、タキオンは再びカフェに視線を移した。 「それより君だよ!あのカレンチャンといい雰囲気だったと聞いたが?」 「あれはいい雰囲気…だったのかなぁ…?」 どちらかというとピリピリしてたような…とぼやくシュヴァルを尻目に、タキオンはずいっと身を乗り出しカフェに顔を寄せる。 「で、どうなんだ?実際のところ。よく遊んでたんだろう?」 「どうもなにも…告白はされましたが断りましたよ」
3 24/02/12(月)01:40:06 No.1156473006
二人ともその答えに驚いたのか、ぽかんと口を開けたまま固まり、対照的にそんなにおかしな事だったのだろうかとカフェは首を傾げるのだった。 その後は俄然元気になった二人に根掘り葉掘り聞かれ、駅に着くころには卒業前よりそれぞれの事に詳しくなった気さえして、まるでこれからも毎日顔を合わせる…そんな錯覚さえさせるようだった。 ───もちろん、そんな事はなく。 駅に着けば、皆新しい生活に向かっていく。新たな一歩を踏み出す前の今日だったからこそ、思い出を存分に語り合えたのかもしれない。 そして、その中でカフェはやり残した事を1つ思い出し、フクロウ便を送るのだった。
4 24/02/12(月)01:40:27 No.1156473110
(ここに来るのは久々ですね…) カフェの目の前には依然と変わらず、広大な庭と立派な屋敷がそびえ立っていた。 門をくぐり、屋敷への道を進んでいると、唐突に目の前の地面に一直線な亀裂が走った。 「何しに来たのかな?」 視線を上げると、そこには人が立っていた。 「話をしに来ました。──お久しぶりです。カレンさん」 「お話?」 一礼するカフェをカレンは笑顔で見つめていた。 「それなら私から先に、いいかな?」 「はい、もちろ──」 「コンフリンゴ!」 瞬間、爆音が響き土煙がもうもうと立ち上り、カフェの立っていた場所には大きなクレーターができていた。
5 24/02/12(月)01:40:46 No.1156473218
「──これが…お話、ですか?」 カフェはプロテゴで自身を守っており、クレーターは目の前で止まっていた。カフェは服に付いた土埃を払いながらカレンへ向き直る。 「うん♪とっても素敵でしょ?」 「そうですね…では、あなたの気が済むまで…付き合いますよ」 「…あはっ、嬉しいな」 数分後、整備された庭は見る影もなくなっていた。 地面には大小様々なクレーターが形成され、焼けた跡が残っている。 「…もう…満足されましたか?」 肩で息をするカレンチャンを、カフェは正面から見据えていた。 「…どうして、カレンを攻撃してこないのかな?」 カレンは自分に攻撃しないことを不思議がった。実際、放った呪文はすべて避けるか防御され、一度も攻撃呪文は使われなかった。
6 24/02/12(月)01:41:22 No.1156473383
「私は話をしに来たので…」 「…カフェちゃんのそういうところ、ほんとカワイくなーい」 そう言うと、カレンは杖を下ろし、カフェもまた同様に杖を下ろした。 「それで、話ってなーに?」 「はい…それでは、単刀直入に」 カフェは一度大きく深呼吸した。 「カレンさんの事が…好き、です」 「えっ」 予想外の事にカレンチャンは目を白黒させた。 「そんな事言いにわざわざ来たの?」 「…はい」 「カフェちゃんは──自分が振った挙句、片目を潰して、しかも手当もしないで、自分が卒業するまでまともに連絡もくれないで?そんな相手にいきなり好きだーって言うの?」 「…申し訳ありませんでした」 カフェは心底申し訳なさそうに、頭を下げた。
7 24/02/12(月)01:42:15 No.1156473625
「カレンね、あの時とーっても悔しくて、今とーっても怒ってるんだよ?」 「…返す言葉もありません」 「カフェちゃんなんて大っ嫌い!」 カレンはカフェに背を向け、屋敷へと歩き出した。 「…今日はお時間をいただき、ありがとうございました」 カフェはただ頭を下げ、離れていく足音を聞いていた。──しばらくそうしていると、不意に足音が止まった。 「…目が痛いなー」 かと思ったら、足音が再び近づいてきた。 「は…?」 「カレン、なんだか目が痛くなってきちゃったなー」 「目はもう治って──」 「あー目が痛くて何も見えないなー誰か助けてくれないかなー」
8 24/02/12(月)01:42:34 No.1156473711
カレンはそう言いながらカフェへ近寄り、ついにはカフェに抱きついた。 「──そこにいるのが誰だかわからないけれど、屋敷まで…お願いできるかな?」 「…はい、もちろん。私で良ければ、ずっとお傍に」 「うん!それじゃあ…これからもよろしくね!」 ───2人分の足音が、大きな屋敷へ進み始めるのだった。