虹裏img歴史資料館

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24/01/29(月)00:13:58 大人。 ... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1706454838311.jpg 24/01/29(月)00:13:58 No.1151475772

大人。 子供とは違う存在。 自分も憧れたことはある。 歳をとって、人に教えるようになって。 少しは大人に近づいたと思う。 でも、思うことはある。 自分は大人になれただろうか。

1 24/01/29(月)00:14:14 No.1151475842

夜の街。 マサラタウンの道を歩く。 「腹減ったなぁ…」 腹から大きい音が鳴る。 トレーニング帰りで空腹になっていた。 熱が入りすぎて帰るのが遅くなってしまった。 今から入れる飲食店も限られている。 どこに行けばいいか。 コンビニの弁当にしようかとも考えた時だった。 「あ…」 目に入った店。 それは居酒屋だった。

2 24/01/29(月)00:15:00 No.1151476099

古びた外観。 年季の入った建物。 子供の頃から存在は知っている。 ただ、その頃は入るには躊躇していた。 自分はまだ子供。 11歳になれば成人扱いになる。 だが、酒は話が別だ。 居酒屋というと酒を飲む店というイメージがある。 そこに入ることは酒の飲める年齢ではない子供には抵抗があった。

3 24/01/29(月)00:15:37 No.1151476326

だが、今の自分は20歳だ。 酒を飲んでも許される年齢。 ならば、この機会に行ってみるのもいいのでは。 そう考えていると、不意に肩を叩かれた。 振り返ると、ブルーがいた。 「こんばんは、レッド」 「ああ、こんばんは」 そこまで大きくないマサラタウンに住んでいる者同士、こうしてたまに意図せず遭うことも少なくない。

4 24/01/29(月)00:16:01 No.1151476464

どうしても、生活区域が限られてしまう。 都会ほどコンビニもスーパー等の店も豊富ではないため、ブルーだけでなく顔を覚えた人も多い。 「で、どうしたの?夜の散歩?」 「いや、今帰ってきたところでさ。 晩飯どうしようって考えてたらここ見つけて」 「ふぅん」 こちらの隣にブルーが移動する。 そして居酒屋を見た。 「アタシもここで食べようかな」 「え、ブルーもまだ晩飯食べてないのか?」

5 24/01/29(月)00:16:45 No.1151476715

「食べたことは食べたけど、軽くだからあんまりお腹満たされたってわけじゃないのよ。 それに夜食もたまには悪くないわ」 と、いきなり手を握られた。 「え、ちょっと」 「初めて行く店だもの。 こうして一緒に行った方が心強いわ」 「だからってさ…」 小さな、柔らかい女性の手。 普段は友達として接しているが、たまに異性としての意識が出てしまう。

6 24/01/29(月)00:17:15 No.1151476871

「それとも、こういう方がいい?」 手を引かれて、腕を組まれた。 柔らかなものが腕に触れて、思わず顔が引き攣る。 「ちょ、ブルー…」 「あ、カップル割引してるって張り紙してるわ。 このまま行ってカップルアピールしちゃいましょ」 強引に腕を引かれて、連れていかれる。 余計に触れているものに押し付けられ、困惑する。

7 24/01/29(月)00:18:30 No.1151477307

「ブルー、当たってるって」 「別にいいわ。レッドにならね」 こちらに振り返って、ウィンクを飛ばしてきた。 わざと当てているのはわかってはいるが、 何を考えてなのか。 からかいの意図があるだろうか、気やすさの表れだろうか。 どこまで彼女の本音か。 計りかねないまま、店内に足を踏み入れた。

8 24/01/29(月)00:19:04 No.1151477496

店の中は、和風となっていた。 雰囲気作りのためか、照明は薄暗い。 「いらっしゃいませ。お2人ですか?」 「ええ。カレシと一緒です」 「わかりました。席に案内しますのでどうぞ」 店員に導かれて、席に向かう。 その最中、ブルーに小声で話しかける。 「マサラでそんなデタラメ言ってもすぐバレるだろ…」 「案外大丈夫かもよ? バレても向こうだってそれを指摘するようなことはしないと思うわ。 こういうの利用する客みんなが本当にカップルじゃないってわかった上でしてるはずよ。 そんなのやってたらキリがないし」 「そうかなぁ…」

9 24/01/29(月)00:19:41 No.1151477694

ルールがあれば、そこの穴をつこうとする者は必ず現れる。 逆にルールを立てる者の対処はそれを全て防ごうとするか、あるいは多少の違反は黙認するかになる。 前者では厳しすぎて、利用客が減るかもしれない。 後者ではある程度の緩さがあるため、これを利用する客も増えるかもしれない。 それにここの目的は単に食事の提供だ。 厳格にカップルかどうかを選別するための店ではない。 真実かどうかは重要ではなく、単に食事をとりにくる客を増やすためのルール。 だからこれでいいのだろう。

10 24/01/29(月)00:20:07 No.1151477840

そうレッドが解釈していると、いつのまにか席についていた。 「あれ?」 「もう。ボーッとしすぎじゃない? トレーニングしすぎて疲れてる?」 「いやぁ。考えごとしてたけど、やりすぎてたかなって」 頭をかきながら、メニューを手にする。 いくつかの料理を目にしながら、どれにしようかなと悩む。 「どれにしようかな」 「これがいいんじゃない? カップル割引適用できるし」

11 24/01/29(月)00:20:37 No.1151478005

ブルーがメニューの1箇所を指差す。 そこにはモツ鍋の写真があった。 美味そう、とレッドも一目見て思う。 一旦これにしようと思えば、もう脳がそのための準備をしてしまう。 「って、ブルーもモツ鍋とか食べるんだな。 洋食とかのオシャレなの好きかと思ったよ」 「そっちも好きだけど、そればっかり食べたいわけじゃないわ。 アタシだって食べたいもの変えたい気分の時もあるもの」

12 24/01/29(月)00:20:55 No.1151478107

ふふ、と笑いながらブルーが身を前に乗り出す。 顔が少し近くなり、うっとつい怯んでしまう。 綺麗な青い瞳。 それに見つめられると照れが生じる。 「じゃ、それにしましょう。 レッドは飲み物何にする?」 「生ビールかなぁ。 こういうので何頼めばいいかわからないからとりあえず」 「定番ねぇ。 じゃ、アタシはレモンサワーにしよっと」

13 24/01/29(月)00:30:36 No.1151481255

備え付けのインターホンを使って、ブルーが注文を伝える。 しばらくすると、飲み物が届いた。 「じゃ、乾杯する?」 「何にだよ…」 「んー、アタシとレッドの今後の幸せを願って?」 「まあそれでいいか」 軽くグラスを当て、喉に飲み物を通す。 ビールの苦味が心地いい。 飲み始めた頃は受け付けない味だったが、今は慣れてしまった。 「なんか、大人の味って気がするよ。 ビールって」 「子供じゃ絶対味わえないものねー」 グラスを傾けつつ、ブルーが同意する。

14 24/01/29(月)00:48:44 No.1151487454

「オレ、モツ鍋って食べるの初めてだよ」 「アタシも。だから食べてみたくなったの」 煮込み終わると、2人で鍋をつつく。 野菜や肉が出汁の染み込んだ味で美味い。 少しの辛味が、具材の旨みを引き立てる。 「美味いなこれ」 「うん。これにしてよかったわ」 2人で食べ、飲む。 ブルーがマサラに来てから、何回か共に食事をしている。

15 24/01/29(月)00:55:06 No.1151489405

今回もそうだ。 ブルーとの食事も悪くない。 むしろ、1人でするより格段に楽しい。 1人で食べたい時だってあるが、そればかりだと寂しい。 だから、一緒に食べてくれる相手がありがたい。 「どうしたの?」 「いや、ブルーがいてくれてよかったなって思ってさ」 苦笑しながら言うと、ブルーが目を丸くした。 彼女のそんな反応も、珍しい気がする。

16 24/01/29(月)01:05:29 No.1151492353

帰り道。 ゴンに乗って、道を行く。 夜中になったため、人通りも少ない。 飲み過ぎてまともに歩けない今は、こうして運んでもらう手段があることに安堵する。 「ちょっとごめん」 ブルーが寄りかかってくる。 本当に辛いのだろうと、肩に手を回して固定する。 「まだまだ酒に飲まれてるって感じね…」 「たはは…」 笑いながら、夜風にあたる。 熱った身体に冷気が心地いい。

17 24/01/29(月)01:11:17 No.1151493760

「なあ、ブルー」 「なに?」 彼女に向き合う。 この日1番、顔が近くにある。 それに思うところはあったが、今はそこは重要ではない。 「オレたちって、大人になれてるかな?」 突然の質問。 だが、ブルーは聞き返そうとしなかった。 「わからない」 そう、単純に返答してきた。

18 24/01/29(月)01:14:56 No.1151494543

「大人って、どういう線引きなのかわからないわ。 歳上の人たちから見たらアタシたちだってまだまだ子供だろうし」 「そうだよな…」 時折思う。 酒を飲めるから。 子供では入りにくい場所に行けたから。 そんな単純なことで、大人の証明はできるのか。 もっと、難しいものなのではないのか。 居酒屋に入ることを迷ったのも、多少はそんな思いがあった。

19 24/01/29(月)01:18:49 No.1151495400

「でもね、レッド」 目を細め、ブルーが微笑む。 「アタシたちが大人って証明はできなくても、子供のままって言い切れるわけでもないわ。 だって、あの頃よりアタシたちは確実に変わっているもの」 あの頃。 自分たちが出会った時期。 今よりも向こう知らずで、落ち着きのない子供。 あれからしたら、確かに自分は変わっている。 目の前の彼女もあの時より優しく、より美しくなっていた。

20 24/01/29(月)01:22:51 No.1151496282

「だから大人だなんて、言ったもの勝ちじゃない? 誰かに違うって言われても、自分がまずそう思わないと何も変わらないから」 優しく微笑んで、語りかけられる。 こちらの心を癒す、温かい笑顔。 不安が浄化され、晴れ渡る気持ちになれる。 「ありがとう、ブルー」 「ううん。役に立ってよかった」

21 24/01/29(月)01:27:20 No.1151497232

はは、と軽い笑いが漏れる。 そんな単純なこと。 でも、大事なこと。 それを教えてもらえた。 ブルーの存在が、ありがたい。 そう思っていると、彼女に抱きつかれた。 「こういうのも、大人だからできることよね」 唇を奪われる。 熱と柔らかさ、微かな酒の味がした。

22 24/01/29(月)01:27:51 No.1151497322

以上です 閲覧ありがとうございました

23 24/01/29(月)01:28:58 No.1151497525

前回はエロに振り切ったんで今回は健全にしました 飲酒はしてるけどまだ健全

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