虹裏img歴史資料館

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24/01/17(水)22:48:13 「実は... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1705499293509.png 24/01/17(水)22:48:13 No.1147334687

「実はアタシ、本物のミノムシって見たこと無いんだ」 ほぼいつも通りの気まぐれな散歩。とある公園へふらっと辿り着いた頃 シービーは何かを思い出したかのようにふとそう呟いた ぴょんぴょんと跳ねる彼女の後ろをついて歩いていた自分へと振り返り、視線を合わせてきた緑色の瞳はとても好奇心に溢れていて まるでネコジャラシを差し出された猫のようだな、と思った 「じゃあ、せっかくだから探してみるかい?」 「もちろん♪」 夏は涼しい日陰を与えてくれる公園の木々も、今は枝から一切の葉を落としてしまっており身軽だ そこから空の方へと視線を移せば、雲が少しばかり流れる他はどこまでも澄んだ寒空が見渡せる だが、目の焦点を合わせるべきはそこではない。もっともっと低く身近な場所 ほんの数m上にある木々の小枝のあたりにこそ、目当てのものは隠れている筈なのだから

1 24/01/17(水)22:49:07 No.1147335069

10分、15分、散策しながら木々を見渡し探していたものの、一向にミノムシがぶら下がっていそうな気配は無かった おかしいなと首を傾げながら、一旦頭を垂れる。宙を仰ぎ続けたせいか、取り出したスマートフォンの画面にピントが合うまでに暫くの時間を要した 「俺が小さい頃は、庭の木にも普通にいたものだけどなぁ…ヘイ、Siri!」 『ピーガガッ。オヨビデショウカ、マスター』 「ミノムシは、どんな木にぶら下がっているのか調べてくれ」 『ショウチシマシタ』 いつでもどこでも、AIに指示を出せば簡単な疑問は即座に調べ上げてくれ、分かりやすく簡潔に説明してくれる まったく便利な時代になったものだ。スマートフォンの中のAIが検索し、答えを出すまでの待ち時間の間に ちょっと離れたところで同じくミノムシを探していたシービーもこちらの隣へとやって来ていた 『ガガガッ。コウヨウジュデサエアレバ、ミノムシハ キノシュルイ ヲ、トクニエラビマセン』 『シカシ…』 「??」 「しかし?どうしたんだい、Siri」

2 24/01/17(水)22:50:13 No.1147335522

シービーと雁首を揃えて画面を覗き込む。特に画面に答えが表示される訳でもないが AIにしては珍しく勿体ぶった言い回しの結末が気になり、聞き逃すまいとした結果だ 『ミノムシハ、テンテキノガイライシュニヨッテ、オオキク カズヲ ヘラシテイマス』 『カツテノ フウブツシモ、イマデハ メズラシイソンザイデス。イカガデシタカ、マスター』 「…」 「…」 結局、高い木の枝には見つからなかったので作戦を変更、今度は低い植え込みを狙って探し始める 日没にはまだ早いものの、冬の弱い日差しが空を薄っすらと赤く染め始めた頃 ようやく隠れていたミノムシを1匹だけ見つけることができた 「へぇ、こんなにちっちゃかったんだ。可愛いじゃない」 木枯らしの吹く中を散々跳ね回ったにも関わらず、気怠げな表情も辛そうな顔も一切見せなかったシービーは ついに見つけた細い糸1本でぶら下がる小枝の集合体のようなミノムシの蓑を、とても楽しそうに息を吹きかけては揺らしていた

3 24/01/17(水)22:50:58 No.1147335847

…手を出さないだけでやはりネコジャラシで遊ぶ猫のようだと改めて思ったが、口には出さないでおく そして、それが成長すると蛾になってしまうという情報も、ようやく辿り着いた宝箱の正体にしてはあまりにも残念すぎると考え、 これもやはり口には出さないでおいた 「―――ああ、今日は本当に楽しかった!」 「シービー、ミノムシって小さくて地味な見た目だけど、あれで満足だったのかい?」 シービーのアパートに帰ってからも、それがまるで遠出をして雄大な景色や珍しい小物を目にした時と同じくらい 満足げであったのが少し不思議になったので、聞いてみた 「それは、もちろん。だって」 「だって?」 「今の私みたいな生き物が、こんなに身近にいたのに初めて気付けたんだもの」 「……そうだな、そうだったな」

4 24/01/17(水)22:51:37 No.1147336116

ハンモックをシーツごと胴体にぐるぐる巻きにし、頭だけを出した状態のミスターシービー いや、今はミノムシービーとでも言うべきか 朝、起こしにやって来た時には既にこの状態で、本人も「ここまで酷い寝相は産まれて初めてさ」と苦笑いしていた 断言しよう、寝相でそんな風にはならないと そしてせっかくなのでとそのままぴょんぴょんと飛び跳ねながらの散歩に出掛け 会話中にその外見がミノムシみたいだという話に発展したのがこれまでの流れであった 「じゃあ、温かい部屋に戻ってきたことだし、そろそろ蓑から出て羽化を始めようか」 「えーっ?もうちょっとくらいこのままでも良くない?」 「駄目です。さあ外すぞ!」 「あーれーっ」 くるくる、くるくると時代劇で悪代官に帯を外される町娘のごとく。胴体に巻かれたハンモックを引っ張り一気に剥ぎ取ってやる すると…

5 24/01/17(水)22:52:28 No.1147336480

どうしたことだろう。そこには、なんと衣類も下着も一切身に着けていない、生まれたままの姿のシービーが立っていた いや、正確には公園での散歩中に親切な木枯らしさんが地面から巻き上げ、ハンモックの内側に 潜らせてくれたのであろう落ち葉が3枚。彼女の大事なところだけを見事に隠してくれていた これが無かったら、万が一職質に遭って身を改められでもしていたら危うかったかもしれない (……ありがとう、木枯らしさん。ありがとう、ミノムシさん。シービーは、立派なミノムシービーになったよ) 俺は部屋の天井越しにはるか高い天の先を仰いぎ、そう心のなかで感謝の気持ちを大自然へと伝えた シービーはというと、それからも幾ばくかの間きょとんと突っ立ったままであった それ以降も、季節が移ろい春を迎えるまでの間、ミスターシービーは低確率でミノムシービーになっている日があったが 授業やレースのある日だけは流石にそのままにできないので着替えさせた

6 <a href="mailto:s">24/01/17(水)22:53:21</a> [s] No.1147336846

ミノムシービーという単語を見かけてビビビビーンと来てしまったのでつい書いた いつもの人ではありません

7 24/01/17(水)22:55:55 No.1147337913

いいものを読ませてもらった

8 24/01/17(水)23:07:28 No.1147342576

シービーの裸体って芸術品みたいな美しさがありそうだよね それはそれとしてエッチな目では見るが…

9 24/01/17(水)23:11:25 No.1147344317

ミノムシの蓑剥いでちよ紙で新しいの作らせるやつ1回ぐらいは試してみたかったな…

10 24/01/17(水)23:44:59 No.1147357364

シービーはギリギリこういうことする

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