虹裏img歴史資料館

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24/01/10(水)01:32:28 泥深夜 ... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1704817948027.jpg 24/01/10(水)01:32:28 No.1144542444

泥深夜 https://seesaawiki.jp/kagemiya/

1 24/01/10(水)02:12:08 No.1144549858

「アーリン君さぁ。ちょっと函館まで行ってきてくれない?」 はぁ、とアーリンは生返事を返しながら、煙草をふかす痩身の男を眺めた。 相変わらずこうして生きていることが信じられないような男だ。 例えるなら呪いの嵐だ。膨大な呪いが彼の全身を一分の隙無く覆っている。 これだけの呪詛から集中的に憑かれながら、本人は多少貧血気味な程度でけろりとしているのが一番よく分からない。 クフィル・ジグマール・プロホノゥという呪詛科の君主はそういう類の化け物だった。 「呪詛科は聖杯の出現に乗り気なのかい?初耳なんだけどもね」 「うん、そうだね。告白するとかなり乗り気じゃない。  この手の品についてはそれなりに広博なつもりだが、その視点からしても是非欲しいなんて科白は吐けないな」 さり気なくハクで韻を踏んでいたが、心なしか自慢げなクフィルの視線をアーリンは無視した。 ちょっと残念そうにしている。それもアーリンは無視することにした。 「けれど呪詛科も時計塔の政治の真っ只中にいるものでね。  中立派としては肯定派と否定派、その両方に一枚噛んでおきたい。  呪詛科はその一方のクジを引くことになったわけさ」 「そう……」

2 24/01/10(水)02:12:59 No.1144549986

───凄く面倒くさそう。 第一印象がそれだった。 そういうものからは距離を置いておきたい。ただ個人的にこのクフィルという男には恩もある。 植物科から呪詛科に映った際、身に降りかかった面倒の一部をクフィルが庇ってくれたのだ。 おそらくクフィルはその義理のせいでアーリンが頼みを断りづらいのも承知の上で話を振ってきている。 今から思えば、あの時すんなりと移籍を受け入れたばかりかアーリンの弁護もしてくれたのはこういう時に便利に使うためだったような気さえする。 はぁ、とアーリンは重々しく溜め息を付いた。 「分かったよ、行ってくればいいんだろう。どの程度まで介入すればいいんだい?」 「全然無理なんてしなくていいよ。名義貸しみたいなものだからね。  聞くところによると函館は海の幸も山の幸も豊かだそうじゃないか。舌鼓を打ってくるといい。  ま、うちの管轄の案件が発生すれば別だがそのあたりは君の自己判断に任せるよ」 「自己判断、ねぇ」 ミュージアムの食堂の一角でアーリンはぼんやりと復唱する。 君主にしては軽薄な目の前の男をじろりと睨めつけたが、当人は食わせ物の微笑みを浮かべたままコーヒーを啜るのだった。

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