24/01/05(金)00:07:43 竜が村... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1704380863267.jpg 24/01/05(金)00:07:43 No.1142664740
竜が村を襲った日、私はわけも分からず逃げまどい、情けなく泣き叫んだ。 ちっぽけな谷間の村だけれど、私にとっては世界のすべて。それを竜の爪はいとも容易く引き裂き、 壊していく。竜は恐ろしい雄叫びを上げながらどんどん村の中央に迫って、 私が振り向いたときには、鱗の一枚まで見える距離になっていた。 黄色く濁った眼が、私を捉えた気がした。 ここで爪の一振りでもされたら、絶対に死ぬ。まだ成人にもなってないのに。 やりたいことだって…思いつかないけどやってないのに…絶望に身体が竦み、逃げ足は止まった。 その時に、彼は来てくれた。 ============================
1 24/01/05(金)00:08:06 No.1142664852
私たちの村を救ってくれた「英雄」は、なんと年下の男の子だった。赤い髪に赤い服、 大きな斧がトレードマークの、名前はシュタルク様。壊された家を直すために、毎日槌を振るい、 資材を運ぶ姿は、斧を持った戦士の姿と同じくらいカッコよかった。村の再建が終わると、 率先して力仕事を請け負って、空いた時間は子ども達と遊んで過ごしていた。 竜の襲撃を防ぐため、村に滞在してくれるという彼に、村の娘達はあっという間に熱を上げた。 …もちろん、私もその一人だった。 なんとかお近づきになろうと、色々彼の気を引こうと頑張った。 他の皆は多分、憧れ半分だったけれど、私は違った。 本当にシュタルク様の事が好きになってしまったから。 助けてもらった恩だけじゃなかった。村の食堂で美味しそうにご飯を食べる姿を可愛いと 思ったし、ニコニコと笑いながら子ども達と遊んでいるのを見かけると、自分にもあんな風に 笑いかけてもらいたいと、子ども達に嫉妬を抱いたこともあった。 よく見るとちょっと気弱そうな顔も、三白眼も、額の傷も、好きだった。
2 24/01/05(金)00:08:22 No.1142664953
村の男とは違う、どこか陰のある雰囲気に、会うたびにドキドキしていた。 二人きりで話す機会はなかなか無かった。彼はいつも人に囲まれていたから。 少しでも自分のことを覚えてほしくて、何度も差し入れにパンや果物を持っていった。 「あの、差し入れ。これ食べて、頑張って」 「え、俺に…ありがとうな」 大抵はそんな感じで、はにかんだ笑顔を見せてくれた。でも、奮発して大きなりんごをいくつも 買って、カゴごとあげたときは、家族と食べなよ、と返された。あの時はじめて見せてくれた、 なんだか苦しそうな、寂しそうな顔は、何故か私の記憶に強く残った。 贈り物を拒まれたことより、彼にそんな顔をさせてしまったことが、切なくて。 …今思うと、彼はなにか、後ろめたさを感じていたのかもしれない。 でも、あの時の私は、そんなことは分からなかった。
3 24/01/05(金)00:08:42 No.1142665062
夜に家を抜け出して、彼の修行を盗み見したこともある。凄いとかかっこいいというより、 恐ろしかった。彼が斧を振るうと、巨大な岩さえあっけなく砕けてしまう。それを2回、3回と、 事もなげに繰り返していた。彼は誰にでも優しくて、いい人だけど、本当に強い戦士なんだ… 「おい、何見てんだよ」 「あっ…」 いきなり彼が遠い存在になってしまったようで、見咎められた時には怯えの感情が先に来た。 「もう夜だぜ。誰かと来たのか?」 「い、いえ…一人で」 「危ないから帰れよ。送るから」 でも、迷わず修行を止めて、私を送ってくれた彼は、やっぱり優しい人だった。 二人きりで歩いたのは、後にも先にもあの時だけだった。
4 24/01/05(金)00:08:57 No.1142665148
「……ごめんなさい、どうしても見たくて」 「あんまり面白いもんじゃなかったろ」 「シュタルク様って、本当に強い戦士なんだね…」 「戦士ならあれくらい、皆出来るよ」 素っ気ない受け答えは、謙遜ではない。自分はまだまだ修行が足りないと思っているのだ。 なおさら凄いな、と感心した。私には、そんな向上心は全然無い。 「戦ったら、竜を倒せちゃうかも」 「…いや、俺じゃ…俺一人じゃ、ちょっとな」 何気ない私の一言に、彼は眉をひそめたようだった。月明かりが照らす横顔は、不安や恐怖を 必死で隠そうとする少年の顔で、途端に私も不安な気分になる。そんなに竜は強いのだろうか。 なんとか気分を直してほしくて、明るい方向に話を持って行こうとした。
5 24/01/05(金)00:09:18 No.1142665258
「じゃ、じゃあ、もっと修行しなきゃ!」 「…うん」 「それまでこの村にも、居てくれるよね?私、私ね、また差し入れ持って行くから」 「…ありがとう」 どうして、そんな悲しそうな顔をするの。 彼のそんな顔は見たくないのに、私が明るくしゃべろうとすればするほど、彼の気持ちは 沈んでいくようだった。私がいけないのだろう。知らないうちに、彼の心を傷つけてしまって いるのだろうか。自己嫌悪の気持ちと、彼の悲しい顔をまた見てしまった切なさがいっぺんに胸を 襲って、ズキズキと疼いた。家に帰って、両親にどやされているときも上の空で、 母には10歳の頃ぶりにひっぱたかれた。 もっと、彼のことを知りたい…けれど、彼を傷つけるのも、自分が傷つくのも怖かった。
6 24/01/05(金)00:09:35 No.1142665363
そんなモヤモヤを少しでも晴らすため、はしたないことに没頭したこともあった。 その時は、いつも彼のことが頭に浮かんだ。愛してるよ、と甘く囁いて、抱きしめてくれる彼を 想像するのが定番だった。15を過ぎた頃から大きくなってきた乳房を弄りながら、 大事なところを擦ると、だんだんと身体が火照り、高まってくる。シュタルク様の逞しい手指、 細く見えてがっちりとした、戦士の身体。優しい声。彼の愛。 都合のいい想像では、全てが私のものだった。 のぼりつめて、だんだんと昂りが収まると、いつも寂しい気分が襲ってきた。 彼にこの愛を告げたい。 でも、拒まれたらどうしよう。 まだ遅くはない。竜がいるから、彼はここにいてくれるのだから… 村が復興して、忙しくもなり、日常の中で彼への告白は後回しになっていった。 いや、後回しにしてしまっていたのだ。この気持ちが破れてしまうのが、怖かった。 私は、どうしようもない臆病者だった。
7 24/01/05(金)00:09:52 No.1142665468
「シュタルク様が竜を倒したぞ!」 3年が経ったある日、別れはいきなり訪れた。彼をこの村に留めていた理由は、本当にあっけなく、 消えてなくなった。村を訪れた魔法使いと協力したとかなんとか話している人がいたが、 それは私にとってどうでもいいことだった。どうして、と思った。 全くいけないことだけれど、私はなぜ竜が死んでしまったのか、とすら思った。 「シュタルク様、今日には村を発つってさ」 「竜も倒したし、武者修行の旅に出るんだって」 「急だねえ、寂しくなるわ」 「お土産持たせたいな、何かないか?」 村の人達の話し声が、耳を滑る。頭に入らない。いや、入ってるけど、受け入れられない。 お祭り騒ぎの村の中で、私は途方に暮れていた。 どうしよう。シュタルク様が、いなくなる。
8 24/01/05(金)00:10:08 No.1142665569
今更、後悔ばかりが胸に溜まっていく。どうしてもっと彼とお話しなかったのだろう。 どうして自分の気持ちを素直に伝えられなかったのだろう。想像の中では、あんなに 愛の言葉を贈ることができたのに。彼を抱きしめることだって、できたのに。 私は3年間足踏みをしつづけ、ついにその報いが今日だ。 実ったかも分からない愛の種は、蒔かれないまま、萎びてしまった。 村の北門に、沢山の人達が見送りに集まっていた。人だかりでシュタルク様が見えないほどだ。 みんな口々に感謝の言葉と、別れの挨拶を言っている。子ども達の涙声も、その間に聞こえる。 私は何かに引っ張られるように、人をかき分けて進んだ。 「シュタルク様!」 私を見つけると、彼はいつものように微笑んでくれた。 手には餞別のパン籠、逆の手で、別れを惜しんで泣く子どもの頭を撫でていた。
9 24/01/05(金)00:10:34 No.1142665709
「いつも差し入れ、ありがとう。元気で」 「あの…」 言わなきゃ。伝えなきゃ。心臓の音が高鳴って、うるさい。耳がキーンとする。 のぼせたように頭が熱い。 お願いだから、少しだけでいい。勇気を出して… 「……身体に、気を、付けて…」 「おう、ありがとな!」 結局…言えなかった。 お別れの笑顔に、なんとか顔を歪めて笑顔らしきものを作って返すのが精いっぱいだった。 私の、大好きな笑顔。 もしかしたら、永遠に会えないかもしれないのに。こんな月並みな言葉しか言えなかった。
10 24/01/05(金)00:10:56 No.1142665851
なんて、臆病で、情けない…どうにもならない恋だろう。 彼が見えなくなってから、ようやく涙が溢れだし、とめどなく頬を伝って落ちた。 それは、私の遅すぎた恋の終わりを示しているようだった。 ============================ 「…こういう女の子がな、あいつが通り過ぎた村や街には結構いるんだぞ。罪な奴だね全く」 「………………」 「お前さんももうちょっと素直にならないとな、いつか勇気を出した誰かに…うわっ!いてえ!ローキックやめて!ローキックは!」 「ふーん…シュタルクって罪な男なんだ。私も罪な女って言われたことあるよ、お揃いだね」
11 24/01/05(金)00:12:06 No.1142666242
突然力作がお出しされた
12 <a href="mailto:sage">24/01/05(金)00:12:12</a> [sage] No.1142666275
妊娠して子どもを抱いたフェルンを連れてシュタルク様が村に帰ってくるエンドを所望します
13 24/01/05(金)00:13:23 No.1142666683
>妊娠して子どもを抱いたフェルンを連れてシュタルク様が村に帰ってくるエンドを所望します その子供本当にシュタルクの子供…?
14 24/01/05(金)00:13:59 No.1142666891
これもう夢小説だな…
15 24/01/05(金)00:14:37 No.1142667103
アニメスタッフがなんか匂わせるのが悪いよ!
16 24/01/05(金)00:14:48 No.1142667162
>>妊娠して子どもを抱いたフェルンを連れてシュタルク様が村に帰ってくるエンドを所望します >その子供本当にシュタルクの子供…? リーニエの遺児だけど 妊娠してるように見えるのはストレスやけ食いのせい
17 24/01/05(金)00:15:38 No.1142667475
>その子供本当にシュタルクの子供…? この下品なレス 私やめろって言いましたよね
18 24/01/05(金)00:15:46 No.1142667514
シュタルク様あの女の事は忘れろと言いましたよね
19 24/01/05(金)00:16:32 No.1142667767
3年も一緒にいて告白できなかったんですか。 私はシュタルク様に久遠の愛情を贈られダンスのエスコートを受けましたが。
20 24/01/05(金)00:16:34 No.1142667791
絶対そういう想像の余地を残す感じじゃんこの子
21 24/01/05(金)00:16:52 No.1142667902
なんかヤベーの来たな…
22 24/01/05(金)00:17:41 No.1142668199
村の英雄シュタルク様いいよね…
23 24/01/05(金)00:17:53 No.1142668274
>3年も一緒にいて告白できなかったんですか。 >私はシュタルク様に久遠の愛情を贈られダンスのエスコートを受けましたが。 フェルンもなにもやってないんじゃないかな…
24 24/01/05(金)00:18:49 No.1142668614
淡い片想いかと思ったら結構洒落にならないやつだった
25 24/01/05(金)00:19:44 No.1142668974
>>>妊娠して子どもを抱いたフェルンを連れてシュタルク様が村に帰ってくるエンドを所望します >>その子供本当にシュタルクの子供…? >リーニエの遺児だけど >妊娠してるように見えるのはストレスやけ食いのせい 恋愛関係のもつれから手段選ばなくなり無名の大魔族の配下にまで下った自らの過ち顧みてかつて憎んだ魔族とかつて愛した男との子供育てるフェルン概念いいよね…
26 24/01/05(金)00:19:47 No.1142669003
ちょっと種ばら撒いても許される立場
27 24/01/05(金)00:22:21 No.1142669932
3年もいた村を竜倒して即出ていくって結構ドライだよね…
28 24/01/05(金)00:22:47 No.1142670081
>ちょっと種ばら撒いても許される立場 シュタルク様。