23/12/31(日)21:18:04 誰もい... のスレッド詳細
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23/12/31(日)21:18:04 No.1141040367
誰もいない時間に、ここまで違和感を感じるとは思っていなかった 「……静か、ですわね」 決して室内が無音なわけではない。隣室の迷惑にならない程度の音量で聞きなれた音楽を流しているし、むしろ心地いい環境のはずだ だけど、自分自身に襲い掛かってくる強烈な違和感。先ほどからぬぐえないそれが、心のどこかを重苦しく圧迫していた 「あの田舎娘が、普段からどれだけ騒がしかったのかがよくわかるというものですわ」 思い起こすのは、ぶえっとしたあの騒がしいルームメイト その姿は今日は……正確には昨日から無い 時は12月31日。世間一般でいうところの、大晦日 彼女……ブエナビスタは、昨日から実家へと帰省しているのだ
1 23/12/31(日)21:18:16 No.1141040515
「………あら?」 手にしたティーカップの中身が、すっかり冷えてしまっていたことに気付く 紅茶を淹れてから一体どれだけぼうっとしてしまっていたのか。自分に軽く呆れてしまう すっかり冷めた紅茶を飲み干して、再びポットの前へ 「私らしくもない」 自嘲の声に反応する者も、今は誰もいない 普段であればあのぶえっとした声で何かしらの声がかかるのに、今はただ音楽が響くのみ 「ウオッカ様のレースビデオでも、見返しますか………」 秘蔵のフォルダを開こうと、タブレットを起動して…… と、操作を開始しようとした時だった
2 23/12/31(日)21:18:28 No.1141040633
「……あら?この通知………」 あまり使わない、一応入れているだけといったアプリからの通知があった ウマコード。比較的普及していて周囲には愛用者も多い音声通話アプリ 私は普段自分から使用することはほとんどないが、なんで入れたのだったか……ああ、そうだ。それこそ件の田舎娘に半ば無理やり勧められて、だったか そして、その通知を開いてみれば 『ディザイアー、まだ起きてるべ?』 なんのことはない。個別ダイレクトメッセージを利用した、その当人からのメッセージだった 「……まだ寝るような時間じゃありませんわよ」 起きてますわ、と。簡素な返信 だけど、何か。心のどこかにあった重みが、少しだけ軽くなった気がした
3 23/12/31(日)21:18:41 No.1141040741
「一体、なんですの」 するとまた、若干時間をおいてメッセージが届く 『ちょっと待つべ』 その瞬間、静かな音楽だけが支配していた静寂は切り裂かれた 「きゃっ!?」 突如鳴り響く、メッセージとは違う連続した通知音 それは音声通話の着信だった。突然の大音量のサウンドに慌ててしまうが、すぐに通話ボタンを押してその音を遮る 「な、なんですの一体!!いきなりびっくりするじゃ………」
4 23/12/31(日)21:18:57 No.1141040896
そこまで言ったところで、言葉が詰まった そこには、少しばかり予想外のものが映っていたから 『あ、ディザイアー。聞こえるべー?』 画面に映し出されたのは……今この場にいない、騒がしい田舎娘の姿 どてら、というのだったか。特徴的な上着を羽織って……これは、こたつの天板の上に携帯か何かを置いて通話しているのか 脇には色鮮やかなミカンが積まれて、手には湯呑 典型的な田舎っ子といった風情のその姿 まさか、ビデオ通話だとは。今まで一度も使ったことがない機能だったが……なるほど 『友達に教えてもらって、ビデオ通話試してみたべ。ちょっと都会的でテンション上がるべー』 テンションが上がっているようには、うん。見えない へにゃっと垂れた耳にだらしなく緩んだ頬。コタツの魔力に屈したウマ娘がそこに一人
5 23/12/31(日)21:19:09 No.1141040991
「……ビデオ通話くらいでいちいち騒いでいるから田舎娘なんですのよ」 『むかーっ!!そんなことないべ!!!』 自分も初めて使用したことは、黙っておこう 「それで、いったい何なんですの。まだ寝る時間ではないといっても、それなりに遅い時間ですのよ?」 『えへへー。ディザイアが寂しがってないかと思って、ちょっと連絡してみたべ。これなら、顔も見えるべ?』 「っ」 突然何を言い出すのだ、この娘は 寂しがっている?誰が?この私が?一体全体どういう思考をしたらそんなことを思い抱くというのか 甘酒か何かで酔っ払っているんじゃないか。そう思って口を開こうとして……… (………あ)
6 23/12/31(日)21:19:39 No.1141041265
なるほど、と。思ってしまった自分がいた (そうか。ずっと感じていた閉塞感。これは) だけど、だからこそ その口を一度固く閉じて、冷静に考えてから言葉を紡いだ 「寂しがっているのは果たしてどちらやら。貴女のほうが我慢できなくなったのではなくて?」 『むむむー。その憎まれ口も久々に聞いた気がするべ』 「奇遇ですわね。貴女の能天気な声も、随分久しぶりな気がしますわね」 こんなに応酬も本当に久しぶりな気がする。実際は、数日だって経っていないのに だけどその能天気な声が、言葉が
7 23/12/31(日)21:19:50 No.1141041366
「それで。結局、特に用はないけど通話してきたということでよろしいですの?」 『まあ、そうなるべ。そっちも暇なら寝る前に少し話するべー』 「いいですわ。ですがその前に、紅茶を淹れなおさせなさい。また冷めてしまいましたわ」 『また?』 「なんでもありません」 どうせ帰ってきたらすぐにまた口喧嘩しつつの騒がしい日々に戻るというのに、どうやら私は……もしかしたら「私たち」は、それすら我慢できなくなっていたらしい 憧れのあの方を追い求めてきた中で突如私の人生に割り込んできた、どこまでも能天気でお人好しな田舎娘 その存在がちょっとばかり、『あたりまえ』になりつつあったらしい その『あたりまえ』が少しばかり取り上げられて、気付かぬうちにナーバスになっていたのだろう
8 23/12/31(日)21:20:01 No.1141041471
『こっちは雪がすごくて大変だべ。帰って早々、明日も間違いなく雪かきだべ………』 「その無駄に余っている元気で貢献してきなさいな。というか、戻りは大丈夫ですの?天候不順で学園に戻れません、なんて洒落になりませんわよ?」 『 一応余裕もって予定組んであるから大丈夫だべ』 「今の間は!?」 誠に遺憾ながら 私は今こうして、彼女の姿を見ることができて………安心してしまっているのだから 「まったく、貴女という人は………」 『あはは、ごめんごめん。ところで、お土産なんだけど……』
9 23/12/31(日)21:20:13 No.1141041573
だから、早く帰ってこいなんて。口が裂けても言ってやらないけど 「そういえば、こちらではウオッカ様が………」 『またその話だべー!?』 寝るまでの間の、少しばかり懐かしいおしゃべりの時間 それはどこか、手にした紅茶よりも温かい気がした
10 23/12/31(日)21:20:28 No.1141041689
以上。年末なので酒飲んでブエディザした
11 23/12/31(日)21:21:03 No.1141041984
いいべ…
12 23/12/31(日)21:23:15 No.1141043131
年末のブエディザだと…
13 23/12/31(日)21:30:02 No.1141046767
狂人元気かな…
14 23/12/31(日)21:38:35 No.1141051306
ブエディザ前提のカフェスペという新ジャンルを目覚めさせてくれたブエディザには感謝しかない
15 23/12/31(日)21:46:46 No.1141055556
>ブエディザ前提のカフェスペという新ジャンルを目覚めさせてくれたブエディザには感謝しかない 何だったんだろうねあの怒涛の熱波…
16 23/12/31(日)21:49:06 No.1141056912
書いたなぁ…ブエディザ前提のカフェスペ前提のグラスペ
17 23/12/31(日)21:50:38 No.1141057866
>書いたなぁ…ブエディザ前提のカフェスペ前提のグラスペ NTRじゃないですか!!
18 23/12/31(日)22:09:44 No.1141069092
部屋に帰ってきたら好きなだけ仲良くできるね…