23/12/25(月)00:13:09 街を行... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1703430789705.jpg 23/12/25(月)00:13:09 No.1138590285
街を行く人達の赤白の帽子。 華やかな飾り付けをされた街道。 少し歩くだけでケーキを売る人達が何人も見える。 「そっか。今日ってクリスマスイブか」 思わずそう言ってから、事実を理解する。 大人になってから、あまり曜日や日付の感覚がない。 オーキド博士の手伝いやバトルの申し込み。 平日休日を問わずそれらがやってくる。 空いた日には自主鍛錬。 そういったことがレッドの日常。 だから、今日がなんの日か思い浮かばないことも一度や二度ではなかった。
1 23/12/25(月)00:13:22 No.1138590371
「クリスマスイブなら、今日はちょっと奮発していいもの食べようかな」 「なら、ご相伴に預かっていい?」 「うわぁ!」 いきなりの背後からの声。 驚いてそちらを向く。 そこにはコートを着込んだブルーがいた。 「ブルー?」 「メリークリスマス♡」 可愛らしくウインクまでしてくる。
2 23/12/25(月)00:14:44 No.1138590911
「今日1人なのか? 家族やシルバーは?」 「パパとママは出張。 明日には帰ってくるけどね。 シルバーはゴールドたちと誕生日パーティーよ」 言いつつ、ブルーが近づいてくる。 「だから、今日はアタシ1人なの」 手を取り、顔の前に持ち上げられる。 「1人じゃ寂しいし、今日アタシと一緒にいてくれない?」
3 23/12/25(月)00:15:39 No.1138591310
少しはにかみながらのお願い。 男心をくすぐるような仕草に、どきりとする。 付き合いの長い相手で、彼女の行動には慣れているはずなのに。 たまに見せる女性としての面には今でも動揺してしまう。 「う、うん。いいよ」 「ありがと♡」 手が下ろされる。 が、離されない。 指が絡められた。 一本一本、ゆっくりと。
4 23/12/25(月)00:15:53 No.1138591396
「え!?」 「お互い独り身だけど、今日だけはカップルになりましょう。 周りはカップルだらけだし」 言われて、周りを見る。 実際にカップルが多い。 皆、手を繋いでいたり腕を組んでいたりする。 そうでなくても子供を連れている人達もいる。 独身としては、辛いものがある。 自分だってああなっていたのかもしれない。 レッドと同じくらいの年頃の人も恋人がいる。
5 23/12/25(月)00:16:06 No.1138591485
今だけはカップルでいる。 そしてこの場を乗り切る。 それも悪くないのではと思う。 「それじゃ行きましょう。 レッドの家でパーティーとかどう?」 「いいなそれ。 それじゃ適当になんか買って帰るか」 「うん!」 上機嫌になったブルーに手を引かれる。 慌ててそれについていった。
6 23/12/25(月)00:16:23 No.1138591594
そうして食糧、飲み物などを買って。 レッドの家に戻った。 「ふう…」 息をつきながら、ブルーがコートを脱ぐ。 セーターやスカートを着た姿が露わになる。 胸元のラインがくっきりと浮かび上がる格好。 それについ視線を向けてしまう。 「ほら、別にアタシ見てもいいけどそれより今はパーティーの準備しましょう」 「お、おう」 邪な目を向けてしまったことには怒られはしなかった。 だが気づかれていたことを後ろめたく思いつつ彼女に従った。
7 23/12/25(月)00:16:39 No.1138591696
テーブルの上に食物や飲み物を広げ、酒の入った缶を手に取った。 「それじゃ、クリスマスイブを祝って」 「かんぱーい」 開けた缶と缶を打ち合わせる。 そして中身を飲む。 「たまには昼間から飲むお酒もいいわねー」 「だなぁ。もう今日は一日食べて飲んで楽しもうぜ」 チューハイのアルコールが脳に染み渡る。 和風トッピングのピザを頬張る。
8 23/12/25(月)00:17:04 No.1138591853
「これもこんな機会じゃないと食べないよな」 「そうね。ピザなんてカロリー高いのお祝いテンションでもなければ食べたいと思わないもの」 突き出されたピザも食べる。 お返しに自分も食べさせる。 酒を飲んだテンションの変化からか、あまり照れずにそんなこともできた。 「今更だけど、グリーンたちも誘えばよかったかな」 「そっちはジムリーダーのイベントとか家族とパーティーとか言ってなかった?」 「あ、そっか」 指摘されてようやく思い出す。
9 23/12/25(月)00:20:49 No.1138593186
「そんなことも忘れるなんて、飲み過ぎたかなぁ」 「さっき一口飲んだだけでしょ」 からかうように頬を指で突かれた。 そこがこそばゆくて、変な気持ちになる。 「ほら、そんなことどうでもいいから食べましょ。 今はアタシとレッドだけのパーティーよ」 「うん。そうだな」 同意してフライドチキンを食べる。 ブルーも同じようにした。 「鳥肉平気なんだな」 「トラウマ乗り越えたの何年前だと思ってるのよ。 それにその頃から鳥肉は普通に食べれるわ」 苦笑しながら、ブルーに軽くデコピンされた。
10 23/12/25(月)00:21:04 No.1138593271
しばらく食べた後。 食事を進めるスピードが減っていったタイミングでブルーが言い出す。 「そろそろケーキ食べない?」 「そうするか。 このくらいで昼飯は終わりってことで」 腹も膨れ、あまり食事を取りたいとは思わなくなった。 それでもケーキとなると食欲が湧いてくるのはクリスマスイブの空気だからか。
11 23/12/25(月)00:21:21 No.1138593389
「たまにはブッシュドノエルとか買ってみたんだけど、レッドもそれでいい?」 「ああ。それもこんな時じゃないと食べないしな」 普段はあまりケーキを買わない。 買うにしてもショートケーキやチーズケーキくらいだ。 だからこれを機にいつもと違うものを食べる。 それもいいのだろう。 「これ結構大きいから、1人じゃ食べきれなかったのよ。 余ったら持って帰るのもアリかなって思ったけど」
12 23/12/25(月)00:24:40 No.1138594546
切り分けられたケーキを受け取る。 濃厚なチョコとスポンジが口の中に広がる。 たまに食べるチョコケーキより、ボリュームのある食感。 正直明確な差はわからないが、こちらの方がレッドにとっては好みだった。 「美味いなぁ」 「運良く買えてよかったわ。 買ったケーキ屋さんの人気メニューなのよこれ」 見慣れない黒い大きなケーキ。 それも2人だとあっという間に食べきれた。
13 23/12/25(月)00:31:16 No.1138596974
「ふう、ごちそうさま」 「食べるのは一旦これくらいにしておきましょう」 「だなあ。残りは夕飯にしたらいいか」 まだまだ食べきれていないものはある。 食べ切ってしまえばまた買いに行けばいいかとも思う。 と、ブルーがあくびをしだした。 「あ、ごめん」 「いいよ。オレもちょっと眠くなってきたし」 「じゃあ、昼寝しようかな」 ブルーが立ち上がって、こちらの隣に座る。
14 23/12/25(月)00:39:00 No.1138599820
レッドが座っているのはソファだ。 ベッド代わりにしようとしたいのだろう。 「じゃ、オレどくよ」 立ちあがろうとしたら、引き寄せられた。 そのまま、一緒にベッドに横になる。 「別にいいよ。一緒に寝よ?」 「…まぁ、いっか」 一瞬の葛藤の後、了承した。 いつもなら拒絶しただろう。 でも、そうする気力が無かった。 酔いか、満腹感か。 それともクリスマスイブのノリか。
15 23/12/25(月)00:45:24 No.1138602091
悩んでいると、ブルーがすでに眠りについていた。 真昼間からの昼寝。 しかも、女の子に抱きつかれながら。 これも滅多にない経験だ。 抵抗もなく、ただ身を任せる。 彼女の穏やかな寝顔。 それを見て、こちらも心が安らぐ。 そうしてると、レッドもまた瞼が自然と下りていった。
16 23/12/25(月)00:51:41 No.1138604230
「…あれ?」 目を覚ますと、違和感を覚える。 ブルーがいない。 眠る前はいたはずの彼女。 それがいなくなっている。 どこに行ったのか。 そう思っていると、ドアが開いた。 「あ、おはよう」 ブルーが入ってきた。 それも、バスタオル一丁で。
17 23/12/25(月)00:55:50 No.1138605869
「ちょっとスッキリしたかったからシャワー借りたわ。 レッドも入ってきたら?」 そう言いながら、ブルーはバスタオルを外した。 はらり、と床にバスタオルが落ちる。 レッドは何も言えなかった。 ただ、隠すものの無くなったはずの彼女の身体に意識が向いていた。 だが、目にしたのは裸身ではない。 肩口の開いたサンタガールの服装だった。
18 23/12/25(月)01:00:01 No.1138607295
「え…」 「ついでだから着替えてみたの。 せっかくのクリスマスイブだしね」 ずい、と顔を近づけられる。 シャンプーの匂いが鼻をくすぐる。 自分が普段使っているシャンプーのはずなのに。 女の子からそれがすると、どうして平静でいられなくなるのか。 「レッドはもうちょっと露出多い方がよかった?」 意地の悪い笑顔で、聞いてくる。
19 23/12/25(月)01:04:15 No.1138608796
先程のように、バスタオルで隠せる程度の服装だ。 胸元も太ももも大きく見えている。 胸の深い谷間に、視線が吸い込まれる。 これ以上露出が大きくなれば。 レッドは耐えられるだろうか。 「なーんてね。 ほら、レッドもシャワー浴びてきて。 戻ってきたらお腹もすいてる頃だろうから夕飯にしましょう」 「お、おう」
20 23/12/25(月)01:07:36 No.1138609902
促され、部屋から出ていく。 寝起きだからか頭が回らない。 ブルーの指示に抵抗する気もなく、従う。 と、思いついたことがあったので振り返って言う。 「えっと。その格好、似合ってると思う」 「…あ、ありがとう」 先程までの、こちらのペースを支配してたとは思えない若干歯切れの悪い返答。 それを意外に思いつつもレッドは今度こそ部屋を出た。
21 23/12/25(月)01:14:18 No.1138612306
その後、シャワーを浴びて。 夕飯をとった後もちびちびと酒を飲んでいた。 「ふふ」 「どうした?」 隣で笑うブルーに聞く。 いつのまにか正面ではなくそこにいた。 そのこともまあいいかとレッドは思う。 思考が、いつもと違う。 大抵のことは抵抗も反論もする気がない。 ただ、この場の雰囲気に身を任せていた。
22 23/12/25(月)01:16:55 No.1138613158
「アタシ、幸せだなって」 「幸せ?」 「うん」 ブルーがもたれかかる。 肩に、彼女の頭が乗せられる。 「こうやって一日中遊んで。 一緒に付き合ってくれる友達もいて。 明日にはパパとママに会える。 そんなことができるなんて、昔は思ってもいなかったから」 懐かしむように、彼女が目を細める。
23 23/12/25(月)01:20:46 No.1138614483
凄惨な過去。 当たり前の日常を、奪われた苦しみ。 家族も、友達もいない孤独。 それに耐えて、彼女はここまでやってきたのだ。 ブルーの肩に手を回す。 細いその肩に触れ、抱き寄せる。 「いまは、オレがいるから。 ブルーが寂しいなら付き合うし、力になる」 かつてとは違う。 今は、自分が助けに行ける。
24 23/12/25(月)01:23:45 No.1138615316
「オレだけじゃないけど、きっとみんなもそうしてくれるけど。 それでも、オレはブルーを助けたい。 うまく言えないけど、他のみんなよりも、そうしたいって」 思いつきを口にする。 筋の通ることを言っているのか自信はない。 だが、紛れもなく自分の本心。 それだけは確信を持って言える。 「ありがとう、レッド」 「うん」
25 23/12/25(月)01:26:04 No.1138615953
彼女からの礼。 それから、ブルーは何も言わない。 ただ、こちらに身を寄せている。 レッドの言いたいことが伝わったのかはわからない。 でも、今はこれでいい。 ブルーが微笑んでいるから。 その表情を、崩したくなくてレッドもそれ以上何も言わなかった。
26 23/12/25(月)01:31:34 No.1138617460
「…あぁ」 倦怠感に見舞われながらも、目を開ける。 「…もう朝か」 窓から朝日の光が差し込んでくる。 もうクリスマス当日。 いつのまにか寝ていたことに驚くが、あれだけ飲んでいたらそうかと思い直す。 起きようとしたが、できない。 横を見ると、ブルーがいる。 彼女に抱き枕にされている。 柔らかな肢体がレッドの身体にまとわりつく
27 23/12/25(月)01:34:05 No.1138618125
「ブルー、起きてくれ。 もう朝だって」 「ううん…」 寝ぼけながらも、ブルーが目を開ける。 が、すぐにまたしがみついてきた。 「やだ。寒いし起きたくない」 「ええ…」 すぐにまた寝息が聞こえる。 「どうしよう…」 幸せそうな寝顔。 それを見ると、起こすに起こせない。
28 23/12/25(月)01:35:27 No.1138618518
それに、抱きつかれた柔らかな感触。 レッドはそれに抵抗できなかった。 「また一日食っちゃ寝になるのかな…」 期待か嘆きか、レッド本人にもわからなかった。
29 23/12/25(月)01:35:39 No.1138618577
以上です 閲覧ありがとうございました
30 23/12/25(月)01:36:00 No.1138618688
クリスマスにいいものをありがとう…
31 23/12/25(月)01:38:08 No.1138619339
何回かクリスマスで交際中のレブルを書いてみましたので今回は一応交際前にしました それにしては距離感近いですがお互い友達以上恋人未満くらいの好感度の時期ということで