虹裏img歴史資料館

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23/11/26(日)20:46:14 トゥイ... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1700999174857.jpg 23/11/26(日)20:46:14 No.1128611218

トゥインクルシリーズにキタサンブラックと共に挑んでからもうそろそろ4年目を迎えそうなある冬の日の事。 今日は昼頃からキタサンの買い物に付き合う予定だったのだが─── 「『風邪を引いてしまって今日は行けなくなってしまった。本当にごめん。』っと…」 朝起きて妙に身体が重かったため、朝一で病院に駆け込み検査をした所発熱が確認され風邪と診断されてしまった。 診察前に書かされた問診票を見た医者から 『連日の徹夜に携帯食料かインスタント飯で1日2食って…そりゃ免疫力も落ちますよ。あなたトレーナー職の癖に自分の体調も管理できないんですか?』 と呆れられてしまった。本当に耳が痛い。 不幸中の幸いなのはこれがインフル等といった病気ではなかったことと、キタサンの休養期間だったことだろう。 「治ったら埋め合せしないとな…」 本日の予定をキャンセルすることになった事を心の中で詫びながら、布団で再び眠ることにした。

1 23/11/26(日)20:46:53 No.1128611648

───ピンポーン 玄関チャイムの音で目が覚める。 宅配便か何かかと思い、重い身体を起こし玄関を開けると 「あ、トレーナーさん!身体の方は大丈夫ですか?」 焦ったような表情を浮かべたうちの愛バがそこにいた。 「キタサン!?どうしてここに…」 「キタちゃんの訪問看病サービスですっ!看病はどーんっとお任せください!」 どうやらあのメッセージを見て心配して来てくれたらしい。 後ろ手にはパンパンに膨れたスーパーの袋が握られている。 風邪と聞いて色々買ってきてくれたんだろう。 正直その気持ちはとても嬉しく思うのだが…… 「ありがとうキタサン、でも今回はダメだ」 「ダメ、ですか…?どうして…」 「キミに万が一にでも風邪でもうつったら困るから」 風邪をこの子にうつすわけにはいかない。心苦しいがやはりここはお帰り頂くしない。

2 23/11/26(日)20:47:26 No.1128611987

「あっ、それなら心配無用です!トレーナーさんもご存じの通りあたし、身体はとても丈夫なので!」 「それでも引かないわけじゃないだろう?」 「う…で、でもあたし、こんな時だからこそトレーナーさんを支えたいんです!」 まるで縋るような表情でこちらを見つめながら言うキタサン。 「それでもだめ」 「うぅ……」 それにピシャリとNOを突き付ける。 ここまで言うとキタサンは俯き押し黙る。 気落ちするキタサンを見るのは胸が痛いが、流石にうつすリスクを考えたら引くわけにもいかない。 「でも来てくれたのはとても嬉しかった、ありが───」 その時、空気を読まずにぐうぅぅぅっと腹の虫がないた。 朝から何も口に入れていなかったからか、お腹が空いていたみたいだ。

3 23/11/26(日)20:47:50 No.1128612194

その音を聞いた瞬間キタサンが顔を上げた。 「じゃあせめて、お昼ご飯だけでも作らせてください!!あたし、料理も自信あるんです!!」 そういって再び食い下がるキタサン。真剣な表情でこちらを見つめてくる。 ・・・流石に厚意を無下にしすぎるのも悪いか 「わかった、じゃあお願いしてもいいかな?」 「…!!はい!任せてください!!」 ぱぁっと明るい表情になるキタサン 俺は根負けし、キタサンを自室へと招き入れる事にした。 あ…部屋、ちゃんと片づけておけばよかったなぁ

4 23/11/26(日)20:48:20 No.1128612485

「トレーナーさーん、出来ましたよー」 キタサンが作ってくれたのは雑炊だった。 卵とネギのシンプルなもので、仄かに香るしょうがの香りが食欲をそそる。 「ありがとう、それじゃあ早速、いただきます」 「どうぞ…!」 少し緊張したような面持ちのキタサンに見つめられながら、レンゲで掬い口に運ぶ。 「……おいしい」 「……!!」 鶏の出汁がよく効いてる。上手い言い回しは出来ないが体調の悪い自分の事を考えてくれたんだなって分かる優しい味だ。 レンゲを口に運ぶのを止められない。 気が付けば目の前の器は空になっていた。 「あの、おかわりもありますけど、食べます?」 「食べます!」 こうして、結局用意してもらった分を全て平らげた。

5 23/11/26(日)20:48:51 No.1128612819

「ごちそうさまでした」 「お粗末様でした、いい食べっぷりでしたね!」 「凄く美味しくてつい…今日はありがとう、わざわざ来てくれて料理までごちそうになって」 食器を洗っているキタサンにお礼を言う。 キタサンが作ってくれた雑炊のお陰で身体もあったまった。 誰かの手作りのご飯を食べたなんて何年振りだろうか… 「いえ、トレーナーさんに喜んでもらえて私もうれしいです!」 と笑顔のキタサン。 この子の笑顔にも何らかの癒し効果があるんじゃないかと思える位見ていて癒される。 あぁ──にしても──ちょっと食べすぎたかな──すごく─ねむ──

6 23/11/26(日)20:49:38 No.1128613246

「あの、もしトレーナーさんさえよければ晩御飯も…あれ、トレーナーさん?」 食器を洗う手を止めトレーナーさんの方を見ると、机に突っ伏していた。 「トレーナーさん!?」 慌てて近寄ると「すぅ…すぅ…」という寝息が聞こえてきた。 「よかった、眠っただけかぁ…」 ほっと胸をなでおろす。 「もう、こんな所で寝たら悪化しちゃいますよ?」 あたしはトレーナーさんをそっと担ぐと、布団の敷いてある和室に寝かせた。 よっぽど疲れが溜まっていたのか運んでる間も起きる気配はなかった。 一応額を合わせて熱を測ってみる。 ちょっと熱い…かな? 袋の中から解熱シートを取り出すと、そーっとトレーナーさんのおでこに張り付けた。 トレーナーさんの寝顔を見つめる。 目には大きな隈、やっぱりちゃんと寝れてなかったんだろうな…

7 23/11/26(日)20:50:13 No.1128613570

───あたしは知っていた。 ここの所最近ずっと、トレーナーさんが夜遅くまで働いてた事を。 寮の門限があるので流石に直接見てたわけじゃないけど、トレーナーさんのパソコンの中にあるあたし用のトレーニングメニューのファイルのアクセス履歴や更新履歴で分かった。 最近無理をしている事を知ってたからこそ、トレーナーさんからのLANEを見た時は気が気じゃなかった。 もしかしたら一人で苦しんでるかもしれない、何て想像したら居ても立ってもいられず急に押しかけて迷惑じゃないかなとかも考えられずに大慌てでバクシンしてしまった。 実際に顔を合わせて見て、思ったより元気そうで安心したし、寧ろ逆に心配かけちゃったけど… でも、家の中を見てやっぱり不安になった。 冷蔵庫にはエナジードリンクやコーヒーの缶で埋まっており、ゴミ袋にはカップ麺や携帯食料のゴミばかりが入っていた。 睡眠不足と栄養不足 これじゃあいくら何でも体調を崩すに決まっている。

8 23/11/26(日)20:50:57 No.1128613984

睡眠時間はあたしじゃどうにもできないけど、せめて食事位は何とかしてあげられないかな…。 今のあたしには、料理ならトレーナーさんのお役に立てるっていう確信があった。 だって、さっきあたしの料理を食べてた時のトレーナーさんの顔はとても───── そんなことを思いながらトレーナーさんの寝顔を見つめ続け数十分が経った。 トレーナーさんは相変わらず安らかに眠っている。 さてどうしようか。 トレーナーさんとの約束通りお昼ご飯を作ったら帰るつもりだったけど、このまま帰ってしまったらトレーナーさんの家は無施錠の状態になってしまう。 かといって眠ってるトレーナーさんを起こすのはなぁ… 「…よし、この状況じゃ帰れないしやれる事をやっちゃおう」 しょうがないよね?トレーナーさんの言う通り、お昼ご飯作ったら帰るつもりだったけど今は帰れないしね?だったら残ってできる事をやっちゃうしかないよね? 心の中で言い訳をしながら和室の襖をそっと閉め、あまり音を立てないように気を付けながらあたしにできる事を始めた。

9 23/11/26(日)20:51:23 No.1128614192

「ん…ふぁ……んん…?」 気が付けばよく知ってる天井がそこにあった。 体を起こし周囲を見渡す。 どうやら和室で眠っていたようだ。 ここまでに何があったのかを思い出そうとする。 確かキタサンに雑炊を御馳走になって…そこからの記憶がない… 額に触れると何か貼ってあるような…はがしてみると解熱シートみたいだ …もしかしてキタサンが貼ってくれたんだろうか? とりあえず喉の渇きを潤す為、水を飲もうと襖を開けると─── 「あ、起きました?調子はどうですか?」 エプロン姿のキタサンがそこに居た。 「ん…あぁ、昼間よりはいいかな…それよりキタサン?なんでまだココに…?」 「あー、えっとですね…」

10 23/11/26(日)20:52:06 No.1128614613

話を聞くと俺はどうやら雑炊を食べ終わった直後に眠ってしまっていたらしく、それを布団まで運んでくれたのだとか。 そして流石に自分が帰ると家が無施錠になってしまうから…と残ってくれたばかりか、掃除や洗濯までしてくれていたらしい。 辺りを見渡すと適当に放置していたゴミもしっかりと纏められているし、ため込んでた洗濯物まで部屋干しされていた。 「…ありがとう、そしてごめん。結果的にここまで引き留める事になってしまって…」 「いえ、これもキタちゃん訪問看病サービスの内ですので!あ、そうだ!他にしてほしい事とかありますか?何でも言ってください!」 「いや、もう」 「ここまで居たんですから今更変わりませんよ!さぁさぁ遠慮せずに───」 「そうじゃなくて、そろそろ門限が」 「え・・・あっ!?」 時刻は21時30分、寮の門限まで残り30分を指し示していた。

11 23/11/26(日)20:52:33 No.1128614873

玄関口でキタサンを見送る。 「それじゃあそろそろ帰りますね、あ、そうだ!冷蔵庫に晩御飯入れておいたので食べれそうなら食べてください」 晩御飯まで作ってくれていたのか……何から何まで本当にこの子には頭が上がらない。 「何から何まで本当にありがとう、後でまた何かお礼をさせてほしい」 「お礼、ですか?」 「あぁ、今日のお出かけの埋め合せ分も込めて俺にできることがあれば何でも言ってほしい」 そう言うとキタサンは少し考えた後 「何でも、いいんですよね?じゃあ────」

12 23/11/26(日)20:53:28 No.1128615353

「よし、今日はここまでにしよう。クールダウンして着替えておいで」 「はい!今日もありがとうございました!」 あれから1か月後 すっかり体調を回復した俺は、休養明けのキタサンのトレーニングに励んでいた キタちゃん看病サービスのお陰もあってか、翌日にはかなり体調が回復しており、3日目にはほぼ完全回復していた。 幸いキタサンにも風邪はうつっておらず、元気そうで安心した。 トレーニングも順調、これなら今年の大阪杯も問題なく走れそうだ。 今日のトレーニングの成果をパソコンにまとめて入力していると着替え終わったキタサンが入室してきた。 「お疲れ様です、着替え終わりました!」 「お疲れ、早速今日のトレーニング結果なんだけど──」 とキタサンと共に今日トレーニングのデータを見ながら成果と次の課題を話し合う。

13 23/11/26(日)20:54:02 No.1128615639

「───って方針でまた来週から頑張ろう。それじゃあ今日は終わり。気を付けて帰るんだよ」 「はい!お疲れさまでした!…あっ、そうだトレーナーさん!」 トレーナー室から出ようとしたキタサンがこちらに振り向く 「明後日はまたご飯を作りに行きますので、食べたいものとかあったら遠慮なく言ってくださいね!」 「分かった、いつもありがとうね」 「いえいえ!好きでやってる事ですから!それじゃあ失礼します!」 ───あの日、彼女が俺に要求してきた事は『定期的にご飯を作りに行かせてほしい』だった。 曰く、前々から俺の食事習慣には言いたいことがあったのだとか。 流石にちょっと渋ったのだが 「また倒れられたらあたし困るし、今度は泣いちゃいますよ…?」 と言われ、首を縦に振るしかなかった。 それからというもの、1週間に1~2回ほどのペースでキタサンが家に料理を作りに来る事になった。

14 23/11/26(日)20:55:02 No.1128616124

キタサンが作った献立表を元に一緒に買い出しに行き、3日分位の作り置きのおかずと当日分のご飯を作ってもらい、一緒に食べる。 そんな日々を繰り返しているうちに俺の舌も肥えたのか、おかずが無い時にインスタント麺や携帯食料を食べても味気なく感じてしまうようになってしまった。 この現状は正直ちょっとマズイと思っている。いや料理はとても美味いのだが。 ───担当ウマ娘とトレーナーはお互いに正しい距離感を保つべきだと誰かが言った。 そうじゃなければ、別れの時にお互いに笑顔で別れられなくなると。 現に、別れられなくなった結果担当についていく形でトレセンを辞めていったトレーナーも少ないとは言えない。 俺もその意見は正しいと思う。 だからこそこの3年間、キタサンとは正しい距離感を保とうと努力してきた。

15 23/11/26(日)20:55:28 No.1128616369

───なら今のこの距離感はどうだろうか? 担当の子が週に2度、自分の部屋で料理を作りそれを共に味わう日々、これは正しい距離感だと言えるのだろうか? そしてすでに俺の舌や胃袋は彼女の料理に掌握されつつある。 その上───1人で食べている時よりも、キタサンと一緒に食事を取る時間が、とても幸せに感じるようになっている。 この状況は─── 「…次からは、キタサンから料理を教わってみるか」 元を返せば自分の不摂生が原因で今のこの状況になったのだ。 ならせめて、自分で料理を作れるようになってそれでキタサンに安心してもらえるようになってから、改めてこの関係を考え直そう。 先ずは─── 「包丁の使い方から教わらないと…」 まだまだ先は長そうだ。

16 23/11/26(日)20:56:33 No.1128616913

「んー…これだとちょっと野菜が…あーでも、流石に一品増やしたらトレーナーさんじゃ食べきれないよね…うーん…」 「キタちゃん?何してるの?」 「あ、ダイヤちゃん!今トレーナーさんの3日分のご飯の献立を考えてるんだ。なるべく日持ちして、尚且つ栄養バランスも偏らないように、とか色々考えると悩んじゃって」 あたしのお願いを聞き入れてもらってから一か月、週に1~2回のペースでトレーナーさんの所にお邪魔して、料理を作って一緒に食べる日々が続いていた。 直近3日分の献立を考えて、それを見ながら一緒に買い物をする、そして作り置きのおかずとその日の分のご飯を作って一緒に食べる。 今やってるのはその献立作りだ。 やってみると栄養バランスやカロリー等々色々と考えるべき事が多くて、結構難しい。 「…でもキタちゃん、なんだか嬉しそうだね?」 「あはは、やっぱ分かる?」 だって、あたしの料理を食べてる時のトレーナーさん、とってもいい笑顔になってくれるから

17 23/11/26(日)20:56:58 No.1128617111

あの時───あたしが作った雑炊を美味しそうに食べてくれた時の笑顔が忘れられない。 あたしが笑顔にしたい人、支えたい人、喜んでほしい人が あたしの料理を食べて笑顔になって喜んでくれる。 ───また一つ、あたしが出来るトレーナーさんにできる、喜んでもらえる事を見つけられた。 その事がとても嬉しくて、どきどきして、幸せな気分になっていた。

18 23/11/26(日)20:57:34 No.1128617368

「えへへ…あっ」 あの時の事を思いだしているとLANEに通知が入った。 トレーナーさんからだ 『いつもお世話になってます。次は肉じゃがが食べたいです。』 『わかりました!美味しいの作りますから期待しててくださいね!』 早速献立表に肉じゃがと書き加える。 それを見ていたダイヤちゃんがあらあらまぁまぁ何て言いながらニコニコしてるのをとりあえずスルーして。 「よーし、今度も美味しいって言ってもらえるように頑張るぞー!」 明後日また見れるであろうトレーナーさんの笑顔を思い浮かべながら、再び献立表に向き直った。

19 <a href="mailto:s">23/11/26(日)20:59:47</a> [s] No.1128618413

終わりです。 お別れキタちゃん書いた後にキタちゃんに看病されたかったし胃袋掴まれたいなぁってなって書きました。 湿度はないです。

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