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    23/11/25(土)21:16:36 No.1128201939

    校舎の正面玄関から校門までの道のりを歩いていたら、低く輝く夕日の太陽と黄金の様に照らされた雲が空に浮かんでいるのがよく見えた それが綺麗で、アタシは足を止めてついボーッと眺めてしまう いつもなら、気にせず駆け足で寮に向かっていたであろう レースだ、トレーニングだ、勉強だ!トレセン学園生たるもの、一分一秒無駄に出来ないぞ!──なんて言いながら しかしアタシをそうさせてきた数々のしがらみは、もうどこにもいない 大きなため息で、冷えた大気を静かに揺らす 脚の不調と家庭の事情により、先ほどトレセン学園事務課に学園生登録の抹消届を提出したばかり ……それはそのまま、競走ウマ娘からの引退を意味している アタシはもうスポーツマンなのではなく、どこにでもいる普通の女の子になっていた

    1 23/11/25(土)21:16:54 No.1128202077

    自然とトレセン学園校舎の方へ振り向き ゆっくりと、頭を下げる 「いままで……ありがとうございました」 先ほどトレーナーさんにも伝えたこの言葉 それを、みんなとアタシを繋いでくれたこの場所にも静かに零す 無言でアタシを見守る校舎。すると、ここで巻き起こった数々の、かけがえのない思い出が、なんだか走馬灯のように込み上げてきた 親切にも様々なことを教えてくださった、プレハブの先輩たちのこと 一緒に切磋琢磨し合ったライバル、シュネルやソダシのこと アタシと仲良くしてくれたクラスメイトや、同室のタイムのこと そして、ずっと一緒に居てくれていた……

    2 23/11/25(土)21:17:11 No.1128202168

    あぁダメだ。いけない ソレはまだ零しちゃいけない。まだ耐えろソングライン 目を強く瞑って、唇を強く噛む。なんとかしてソレを引っ込めようとする ……よし、まだ大丈夫だ 頭を上げ、寮に向かって歩き始める

    3 23/11/25(土)21:17:34 No.1128202338

    寮の退去手続きと片付けが済んだら、とりあえずアタシは福島の実家に帰る予定だ 引退の半分は家庭の事情。元々うちはギリギリ学費が払えるどうかの貧乏だったから、入学する前から在籍期限が決まっていたのだった でも、本当はまだ、ここに残りたい アタシの稼ぎでなんとか伸ばして欲しいと、親に説得をかけてみたのだが……脚のことと未来の進路についてを指摘され、徒労に終わってしまった そう、未来の進路……その後のことは、実を言うとまだ何も決めていない 一応アタシは優秀生として学園に認められているので、この先の進路に困る事は無さそうなのだが…… この数年間に一生分の努力を乗せてきた反動で、たった今のアタシは燃え尽きてしまっていた 自分がこれからどうしていきたいかのビジョンが、全く思い浮かばないでいたのだった

    4 23/11/25(土)21:17:54 No.1128202471

    校門を出るとすぐ、二人のウマ娘がアタシを待っていたのに気がつく いつもの飄々とした態度で立っているソダシと、どこか複雑そうな表情を浮かべているメイケイエールだった 「待っててくれてたのか。別にすぐ居なくなるわけじゃないから、今日ぐらい寮に戻っててもよかったのに」 「ふふ……私はそうしてもよかったし」 「……そこは嘘でも否定しろよソダシ」 「なんだし。めんどくさい女だし」 しんみりムードには似つかない、いつもの会話が始まる 空気を読めソダシ!なんて突っ込むことも考えたが、何も変わっていないという風に振る舞う彼女にほんの少し安堵したのもまた事実だった

    5 23/11/25(土)21:18:06 No.1128202546

    ソダシは、エールがいる方をチラリと見る 「でも……エールちゃんの頼み事は断れないから……」 「…………………」 「……そっか」 アタシは黙ったまんまのエールが、ソダシの手を強く繋いでいたことに気がついた ああ……そうなんだな アタシが退学手続きをしている間、メイケイエールは一人でここに待っているのが嫌だったんだな

    6 23/11/25(土)21:18:46 No.1128202846

    「悪いな。二人とも」 「まあ私も、一秒でも長くエールと一緒に居たかったから、別によかったし」 「そうだよな。数ヶ月前に退学済みなのに、寮の退去期限を破ってでも居候し続けているくらいには一緒に居るもんな」 「……こればっかりは、ソングちゃんが私でもそうしてたと思うし」 「………」 ……揶揄ったつもりだったが、それをすぐに否定することができなかった 今なお寂しそうにしている彼女を一人にさせることなど、誰が出来ようか

    7 23/11/25(土)21:19:02 No.1128202951

    「そうかも、しれないな」 「…………」 「……さて、ソングちゃんも来たことだし。私はお役御免ということで、これでお暇させてもらうし」 「えっ。おい」 なぜだか知らないが、ひと足先にここから抜け出そうとするソダシ エールと二人っきりでもよかったのだが、人は多い方が寂しくない 当然アタシは引き止める

    8 23/11/25(土)21:19:14 No.1128203046

    「最後くらい、三人で帰ろうよ」 「でもソングちゃん、歩いてる途中で泣いちゃうでしょ……?」 「は、はぁ!?どうしてそういう話になる!?」 「だって貴方、すごく泣きそうな顔。耐えてるつもりかもだけど、私の目には誤魔化せないし。ちょんと突けばすぐ決壊しそうだし……」 「嘘っ…そんなに顔に出てたか!?」 「気になるなら今の姿、写真におさめて見せてもいいし」 頑張って耐えていたつもりだったが、どうしても顔に出てしまうものなのだな 「……いいよ。お前の端末にアタシの間抜けな写真残したくないし」 「あ。そうだ。泣くなら最後の記念に撮らせてほしいし」 「うーわ。普通そう言うこと言うか?引くぞ」   ソダシの文句を笑い飛ばして、なんとかいつもの感じを取り繕う

    9 23/11/25(土)21:19:39 No.1128203213

    「まあでも、万が一ここで泣きだしても大丈夫そうだ。ひと足先に寮に戻ってくれるんだろ?ソダシには絶対弱みを見せないって決めてるんだ」 「ひどいし。私をイジワルな人みたいに」 「いやいやお前のことだ、絶対擦り続けるだろ……会うたび写真出していじってきそうじゃないか」 「私とてそこまで性悪な女じゃないし」 「泣き顔撮ろうとしてたじゃん」 「さぁ……なんのことかわからないし」 ソダシとのサシでの会話は、あまり他所じゃ見せられない冗談と痛烈なユーモアの飛ばし合いが基本 気を許せる仲でしか出来ないそのコミュニケーションが、いつも心地よくってついつい続けてしまう おかげで出かかっていた涙も引っ込んだのだった 翻ってメイケイエールの方は、横でずっと黙ったまんま いつもならアタシらの話にどんどこ乱入して、会話を面白くしてくれるんだけども それが心なしか、むず痒くってしょうがなかった

    10 23/11/25(土)21:19:53 No.1128203303

    あっ、忘れるところだったし……と言って、エールと手を繋いだままのソダシは、彼女の顔を窺い頼み事をする 「エールちゃん。ソングちゃんが寮に戻る時間をいい感じに稼いできて欲しいし。さっきトラブル発生の連絡が来ちゃったから」 「…………わ、わかりました」 ふむ、トラブルか 少し気がかりに思ってしまったのだが、それを突っ込むのはきっと野暮なのだろうな

    11 23/11/25(土)21:20:12 No.1128203450

    ……ソダシ引退お疲れ会では、アタシも料理の腕を大いに振るったしなぁ トラブルは心配だが、彼女もきっとアタシのために、寮で何かしらの用意をしてくれているのだろう アタシも、良い悪友に恵まれてしまったものだ 互いに尖った言葉を交わしながらも、その裏にいつもあったのは、変わらない信頼関係だった 「……ありがとう、ソダシ」 「その言葉は全部終わるまでとっておくし。じゃ、二人とも。また後で」 「あぁ……また後でな」 「……うん。また後で、ソダシちゃん」 エールと繋いでいた手をゆっくり解き、ソダシは寮の方角へと歩き始めた

    12 23/11/25(土)21:20:24 No.1128203542

    「…………あ。もう一個忘れてたし」 「まだなにかあるのかソダシ」 「時に、ソングちゃん。貴女が好きなロコモコ料理って、ハンバーグ───みたいなものに、目玉焼き───みたいなものが乗っていたら、たとえどんな色してても喜んで食べてくれるし?」 「はぁっ!!!!?!?!?!?」 "どんな色してても"って…… おいおい、向こうで一体何が起こってんだ!? 「どういう意味だソダシ!!ゲテモノを喜んで食う奴なんてこの世のどこにも居ないぞ!!!」 「……シュネルちゃんとタイムちゃんの女子力皆無コンビに作らせたのが間違いだったし。マズイし急いで行かなきゃだし」 「なんで料理得意なオルフェ先輩に頼まなかった!!!!」 「プレハブ組には別のものを作ってもらってたんだしっ!!!!」

    13 23/11/25(土)21:20:41 No.1128203652

    ダッ、と。現役時代を思い出させる走りで、道の向こう側まであっという間に駆け抜けてった 今から寮に戻るのが不安だぞ…… ロコモコってそんなに難しい料理じゃなかったよな!?どうやったらロコモコでない色になるんだっ!!洗剤でも混ぜたのか!? ってかシュネル、お前はアタシと同じお疲れ様って言われる側だろう!?なんでパーティの準備に参加しているんだっ! 「……ゲテモノ料理出されたら、アタシは福島に即逃げ帰るからな」 「………」 二人だけになった世界。意味もなく寡黙のメイケイエールに冗談を放つ そのしばらく後、ようやくエールはアタシに口を開いた

    14 23/11/25(土)21:20:54 No.1128203756

    「ソングちゃん……」 「ん?なんだ?」 「手……繋いでもいいですか?」 「……いまさら、許可なんて要らないだろ」 今までなら、勝手にアタシの手を繋いでいたくせにさ しょうがないから、こちらから手を掴んでやる 「……」 「……」 先ほどまでソダシと繋いでいたからか、その柔らかな手はじっとり汗ばんでいて、とても暖かかった エールの顔を伺うと、しかめっ面とも泣きっ面ともつかないような表情を浮かべている ……なんだか、ちょっと気まずいな あまり喋りたくない気分なのだろうと思い、アタシも黙って向こうから話しかけてくる時を待つ

    15 23/11/25(土)21:21:06 No.1128203845

    「……」 「……」 「……時間を稼ぐようにって、言われちゃいましたね」 「ほんと……ソダシのやつ、何考えてるんだか」 「じゃあ、ソングちゃん。ゆっくり歩きましょうか」 「そうだな」 悲しそうな笑顔で、初めて微笑みかけたメイケイエール。無理しているようだ 手を繋ぎながら、一歩に時間をかけて前に進んでいく ずっとみんなとここに居たいと思う気持ちは、きっとエールだっておんなじだった

    16 23/11/25(土)21:21:34 No.1128204056

    「今日まで、本当に長かったな……」 「うん……」 「でも今振り返ってみるとさ。ほとんどがその……学校やレースのことばかりだったよな」 「そう、だね……」 「それももちろん、すごく楽しかった」 「うん……」 「けど、まだ全然。足りないよな……」 「…………」 辛くて楽しくて濃密な学園生活は、もう間も無く終わりを告げる けれども、アタシたちのそれぞれの人生は、この後だって続いていく むしろ、現役時代よりも、引退してからの人生の方が遥かに 何倍も長く、続くんだ

    17 23/11/25(土)21:21:49 No.1128204160

    「……でも、福島に帰っちゃうんですよね」 「…………そうだ」 出来ることなら、アタシだってここに残りたい トレセン学園に残って、メイケイエールの練習に最後まで付き合いたい しかし、どれだけレースで勝ちを重ねようが、所詮アタシも扶養の身 親の言うことには、どうしたって逆らえない シラユキ家次期当主としての権力があるからって無茶が出来るソダシが、アタシにはものすごく羨ましいと思った ぽつり、一言だけ零すメイケイエール 「………………嫌だ、なぁ」 「………………アタシだって、嫌だ」

    18 23/11/25(土)21:22:01 No.1128204239

    一層悲しそうな表情になったメイケイエールに、びっくりするほど強く握り返される まるでアタシを、ここに繋ぎ止めるかのように 「悲しい顔をするなメイケイエール。今生の別れじゃないんだしさ」 「…………」 「ここからだと電車で数時間かかるが、また会える。当然、お前の高松宮記念は見にいくしなっ!」 「………………」 「……寂しく、させてしまうな」 「……………………」 夕焼け空はだんだん、夜の魔の手が迫っているようだった エールの口元はキュッとキツく閉じている 繋いだ手は痛いほどに握られている。だがアタシはそれを止めさせることはしたくなかった なぜならエールの気持ちを、最後まで受け止めたかったから

    19 23/11/25(土)21:22:22 No.1128204388

    「……………っ!」 「えっ」 ───刹那 何を思ったのか、エールと繋いだ手を振り解かれてしまう そして間を待たず、彼女はがむしゃらに、前方に向かって走り出たのだった メイケイエールめ、ついに乱心したのか!? 面食らってフリーズした後すぐアタシは追いかけようとする。しかしエールは距離にしておよそ40m先で急停止した 「おいどうし……」 「私っっっっ!!!!!!!!!!!!!!!メイケイエールッッッッ!!!!!!!!!!」

    20 23/11/25(土)21:22:33 No.1128204462

    ……遠くからでも、感嘆符混じりに聞こえるその言葉 エールは暗い夕焼け空に向かって、さっきまで静かだった分を取り返すかのような音量で叫び始める いやこれはもはや、叫ぶってもんじゃない。轟くってぐらいには大きい どうした急にと思ったが、続くエールのその言葉に、またもや面食らってしまったのだった 「私は!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ソングラインちゃんに出会えて!!!!!!!!!!!!!!!!!!本っっっ当おおおおおおによかったっっっ!!!!!!!!!!!!!」 「なっ……………」

    21 23/11/25(土)21:22:44 No.1128204553

    「ずっとずっと!!!!!!!!!今日までの毎日!!!!!!!!!すごくすごくすごおおおおおっっく!!!!!!!!楽しかった!!!!!!!!!!!!!!!!」 「嬉しい日も悲しい日も一緒に笑って、泣いてくれた!!!!!!!!!!!!!私のわがままにもっ!!!!!!!!!いっっっっぱい付き合ってもらった!!!!!!!!!!!!!」 「私の知らない事をいっっっっっぱい教えてくれた!!!!!!!!!すぐ暴走しちゃう私のことをっっっ!!!!!!!!!ずっと陰で支えてくれた!!!!!!!!!」 「だから……!!!!!!!!!!!!!!!だからだからだから!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 感情の暴走、大爆発 続けざまに飛び出した、アタシへの感謝の言

    22 23/11/25(土)21:22:56 No.1128204635

    努力家で、いつも何事にも一生懸命で でもちょっと、不器用で だけど本当は人一倍優しいその女の子 彼女はこちらの方を振り返って 満面の笑みでアタシに告白した 「大好きっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

    23 23/11/25(土)21:23:37 No.1128204916

    ……おのれ。 おのれ、おのれ、おのれメイケイエール…… よくも、アタシの顔が真っ赤になるような言葉をふっかけたな!?!? ふつふつと湧き出て昂っていくその感情。自然に足はエールの方へ駆け出していた 「……やかましい……やかましい、やかましいぞっ!!!!!!!!いつだってお前は、ほんっとーーーーにっ!!!!!!やかましいなぁっ!!!!メイケイエーーーールッッッ!!!!!!!!!!!」

    24 23/11/25(土)21:23:50 No.1128205028

    アタシも一歩一歩前へ前へ 告白してくれた笑顔の彼女に向かって駆け出していく お前が歩んだ道に追いつくように そしてアタシは、エールの目の前に辿り着き こんなセリフを、彼女に負けない笑顔で贈ってやった それはまるで、声援に応えるように 「アタシも、メイケイエールが大好きだぞ」 宿敵にして、親友の メイケイエールに仕返しだっ!

    25 23/11/25(土)21:24:28 No.1128205324

    フッ……と頭の中で、アタシの感情を堰き止めていた何かが消える音がした あぁ。そうだ アタシはもう、限界だったんだ 長い間表に出さないようにしていたそれが、ついに噴き出してしまう わずかに残っていた自分の意地っ張りの部分が、だらしない顔をエール見られたくまいとして 急いでアタシは彼女を抱き締める。それはもう、強く強く抱きしめる 「ごふっ!!!!!!!」 「…………ごめん、エール」 二人で、本心むき出しの言葉を交わし合ってしまったのなら…… 胸の内に溢れるこの感情を、止めることなんてできなくて

    26 23/11/25(土)21:24:53 No.1128205515

    「もうアタシ……ダメみたいだぁ……」 ついに涙が、堰を切って流れ始めたのだった 「アタッ……アタシさぁ……アタシさぁ……」 「うん……」 「上手くやれたよなぁ……ちゃんとっ……みんなに……レースでカッコいいところ見せられたよなぁ……」 「うん……うん……!!!ずっとカッコよかった……カッコよかったよ……!!!!」 「みんなに追いつくために毎日必死だったけど……報われたってことで良いんだよなぁっ……!!!!」 「うん……!!!私は……どんな悔しい想いをしても、決してへこたれずっ!!!!真っ正面でど根性に突っ走るようなっ……そんな貴女がずっと大好きだった!!!!!」

    27 23/11/25(土)21:25:22 No.1128205710

    止め処なく頬に滴る滂沱の涙は、今までの日々を全て清算するかのよう 今のアタシの顔面が泣いた赤ん坊のようにくしゃくしゃになっていることは、鏡を見なくてもわかっている エールも負けじと強く抱きついて、だけどもアタシの背中を優しくさすった 「アタシもっ……!!アタシも……エールとの毎日がすごく楽しかった……!!」 「いつもいつもお前のペースに振り回されてばっかの毎日がっ……なんだかんだ楽しかった……!!!!」 「自分がどんなに辛かろうが……必死にみんなの声援に応えようとするっ……!!!!そんな健気で一生懸命に走るお前が大好きだっ……!!!!!!!だからこそ、そんなエールをずっと支えてやりたいって思ってた!!!!!!」 「だからっ………本当は終わらせたくないっ……もっとお前と、みんなと走ってたいっ…!!みんなと青春を続けていたいっ……!!!!」 涙に乗せられ、胸の中に秘めていた言葉さえ次から次へと零れていく 普段なら絶対に隠していたであろう弱音すら、二人っきりの世界の中に浸されていく

    28 23/11/25(土)21:25:38 No.1128205822

    「アタシも……エールと離れたくないよぉぉぉ……!」 「嫌だ……私も嫌だよ……!!!!!お別れなんて嫌だ……ずぅぅぅぅぅぅ……っと一緒にいたいよ……ソングちゃああああああん……!!!!!!!!!!!!!」

    29 23/11/25(土)21:25:48 No.1128205893

    あぁ……こんなだらしない姿 他の、誰一人にだって見せられない 鼻をすすりながら、エールに伝えたい言葉をなんとかして紡ぐ 「……なぁメイケイエール……ひっぐ。アタシが福島に帰る前に……競走ウマ娘ソングラインとしての最後のお願い、聞いてくれるか……?」 「ぐすっ……なんでも……言って……ソングライン……ちゃん……」 「きっとお前は最後まで、万全を期してレースを走るだろう……アタシは努力家のエールをこれっぽっちも疑ってない」 「うん……」 「それで、それでさぁ……全部。レースが全部、終わったらさぁ……」

    30 23/11/25(土)21:26:05 No.1128206013

    「お前とまた、今までみたいにさ……沢山、いろんなところに遊びに行きたいんだ……」

    31 23/11/25(土)21:26:31 No.1128206185

    「アタシ……福島に帰った後、自分がどうしていきたいのかとか、全く想像ついてなくてさ……」 「うん……」 「だから、それが見つかるまでの間……どうにかして母さんを説得して、一人で生きていけるよう自立してっ……それで、エールの住む街の近くまで戻るから……!!」 「うん……!」 「そうしたらさっ……今までレースの特訓で時間がなかった分、もっと沢山お出かけできるだろう……??それでアタシが人生賭けてやりたいことも……きっと見つかるかもしれない……」 「うん……!!!!!!」 「だからエールには、アタシがお前の元に戻る日まで……待ってて欲しいんだ……」

    32 23/11/25(土)21:26:50 No.1128206328

    「……いつまでも、アタシの横で、ずっと笑顔でいてくれるか……?」 「何言ってるんですかっ……!!!そんなの当然……何があっても、ずっと、ずっと、ずぅーーっと……」

    33 23/11/25(土)21:27:03 No.1128206424

    「……一緒だよっ ソングラインちゃん……だからそれまでっ……私はいつまでも待つ……!!!!!!待つからね……!!!!!!!」 「うぅ……っ!!!!!約束だぞっ……!!!絶対絶対っ!!!!約束だからなっ……!!!!!!!!!破ったら承知しないからなっ!!メイケイエールッ!!!!」 そうして、アタシたち二人は 後に寮で待っていたみんなから心配されるほど、顔じゅう真っ赤になるまで 通学路の上で長い間、わんわんと泣き腫らしたのだった……

    34 23/11/25(土)21:27:13 No.1128206502

    別れみたいな話になりましたがこの話とは関係なく今後とも機会があればメイソン怪文書を書き続けます

    35 23/11/25(土)21:40:21 No.1128212088

    いいものを見た

    36 23/11/25(土)21:42:27 No.1128212964

    遂に残ってるのはエールちゃんだけかぁ…競走馬のサイクルは本当に早いです

    37 23/11/25(土)21:45:04 No.1128214021

    二人とも時期的に仕方ないとはいえ俺は…寂しい エールちゃん元気でいてね

    38 23/11/25(土)21:51:31 No.1128216752

    俺が本格的に競馬見始めた花のジュベナイル組ももうエールちゃんだけか…

    39 23/11/25(土)22:01:20 No.1128220809

    ソングライン引退を今知った おぉぉ…なんということだ…

    40 23/11/25(土)22:01:22 No.1128220832

    ソングちゃんソダシちゃんの友情…腐れ縁?いいよね…

    41 23/11/25(土)22:13:31 No.1128225704

    良いものを見た

    42 23/11/25(土)22:20:44 No.1128228585

    最高のメイソンだ…

    43 23/11/25(土)22:20:56 No.1128228659

    ソングライン引退でもう同期もだいぶ減った エールちゃんも来年3月の高松宮記念がリミット感あるなぁ

    44 23/11/25(土)22:23:43 No.1128229746

    これからももっとメイソン書いてほしいね… できれば一緒になった後のも描いてくれると嬉しい…

    45 23/11/25(土)22:26:59 No.1128230948

    メイソンいいよねだけで描いた拙い絵ですが便乗します

    46 23/11/25(土)22:27:25 No.1128231139

    むっ!ありがたい…

    47 23/11/25(土)22:28:54 No.1128231673

    寝る前に泣かせてくれるじゃねえか…