ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
23/09/14(木)16:54:06 No.1101593850
踝を濡らすぬるいさざ波。疎らに上がる色めき立った声に、纏わりつく潮風。砂を焦がす太陽の下で、私の太陽は宝石に焦がれていた。 「お嬢ー！！！ビーチフラッグしよ！！！！」 「申し訳ありませんが、トレーニングの予定がありますので」 「ソルティ～！」 この光景を見るのは何度目だろう。そして、いつものようにフラれた彼女は指を三本立て、I love youのハンドサインを掲げながらトボトボとやってくる。 「お嬢塩すぎぴえん超えてぱおん、パマちんメンケアよろ～」 「今日も良いフラれっぷりだったよ！……やっぱアポとった方がいいんじゃないかな」 「それな！でもでも～ノリでいかんと心臓バクバクヤバたにえんだし！ワンチャンおけまるったらキャパって寝れんっしょ！」 彼女はそう言い漏らす。ちょっとだけ言葉を交わして、袖にされる現状に満足しているみたいだけど、当然その先も望んでいるようだった。
1 23/09/14(木)16:54:23 No.1101593938
その先、そういう仲になったら、どんなことをしてどんな顔をするのだろう。ルビーを追いかける彼女は生き生きと、時折知らない表情をする。 お嬢が、お嬢が、と日に日に存在感を増していく話題を全く疎ましく思わなかったと言えば嘘になる。 今の私たちの姿は、ズッ友として正しいかもしれない。でも、その感情を私に向けてくれたならと想わない日は無かった。 「とりま、あっこでかき氷でも食べよっか」 「りょ！海の家～ひやウィゴー！」 熱い砂に足を取られながら歩調を合わせる。楽しそうに喋る彼女に尻尾を伸ばしてみたりしても気づいてもらえるはずもなく。空振りしているうちに目的地に着いた。 半屋外の開放的な木造の店内、好意的に言えば味のある年季の入った什器、それと独創的なメニュー。 「気まぐれ特上かき氷二つ！」
2 23/09/14(木)16:54:48 No.1101594048
受付に駆け寄ったヘリオスがノータイムで注文する。この気まぐれシリーズは本当に気まぐれで、ほぼ毎日内容が変わり、何なら同時に頼んでも別物になったりする。 迷ったらこれで運試しをするのが夏合宿のベターだった。 外のテーブルに着き、ダべってるうちに運ばれてきて、その盛り付けに二人で爆笑して、写真撮って食べる。そしてまたダべる。いつも通り楽しい私たちの時間―――だった。 彼女のスマホが鳴り、通知を見た彼女が飛びあがる。 「マ！！？？！？！！？！」 見てこれと、LANEの画面を押し付けられる。そこには彼女の想い人からの返信が映っていた。 『卒爾ながら、本日の予定が空きましたのでお知らせいたします。もしご用がおありでしたら、お早めにご連絡いただけると幸いです』 さっきはトレーニングの予定があると言っていたのに。また、一歩前進してしまった。そして、心から応援していたはずなのに、一歩前進"してしまった"と表現した自分が嫌になる。
3 23/09/14(木)16:55:44 No.1101594247
「ヤバ！何しよ！スイカ割りしてぇ、花火でフェスって～、爆アゲやらふぃーなんだが！！パマちんも来る！？」 そんな私を誘ってくれるんだ。ヘリオスは。 「いや、せっかくのチャンスだし！ルビーと二人っきりでカマしちゃいな！ウェーイ！！」 「ズッ友～～ッ！かたじけパーリナイッッ！」 そう言うと、彼女は快哉を叫びつつスマホを高速でフリックして。ルビーがいるのであろう方向へ駆け出し、やがて見えなくなった。 傾き始めた日差しに焼かれる中、空っぽになった二人分の容器と共に、私は、ただ俯くことしかできなかった。
4 23/09/14(木)16:56:27 No.1101594426
じっとりしてきた
5 23/09/14(木)16:56:45 [s] No.1101594491
以上です 多分ハッピーエンドだと思います
6 23/09/14(木)16:58:26 No.1101594879
急に蒸し暑くなってきたな…
7 23/09/14(木)17:06:28 No.1101596763
パーマーの発言と 心中の地の文の寒暖差がありすぎる… どうにかなっちゃうよこんなん……