23/09/06(水)17:00:48 「……そ... のスレッド詳細
削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。
23/09/06(水)17:00:48 No.1098663303
「……そんな次第で、余はつい先日やっと、本当の意味で殿の御心を知ったというわけさ。まったく、己が不明を恥じるばかりだ」 プレスターヨアンナが短い話を終えて、小さく頭を下げる。拍手と、様々な思いのこもったため息がそれに答えた。
1 23/09/06(水)17:01:02 No.1098663362
「たしか貴殿は主君が来て間もない頃、外部拠点の開拓任務を買って出てオルカを離れましたね。もしかして、あれも?」アタランテが空のグラスにワインを注ぎ、ヨアンナは会釈をしてそれを受け取る。 「ああ。人間とできるだけ距離を置きたかったのだ……ただ、思えばあれは悪手であった。もう一月か二月、共に過ごしていれば、殿のお心の広さはすぐにわかっただろうにな」 「本当ですよー」マジカルモモがぷうと可愛らしく頬をふくらませた。「ヨアンナさんがずっとそんな風に悩んでたなんて、モモ全然知りませんでした。もうけっこう長い付き合いなのになー」 「ヨアンナ公はなんでも内にかかえ込みすぎなのです」なぜだか水着姿のシャーロットが割り込んでくる。「もっと、すべてをさらけ出せばよいのに。この私のように」 「なかなか、卿のようにはいくまいが……今後はもう少し心がけよう」 「懺悔のため部屋を暗くして……なるほど、そういう手が……」クノイチ・ゼロは何ごとかメモしている。
2 23/09/06(水)17:01:17 No.1098663436
ヨアンナを囲んで盛り上がる伝説サイエンスのバイオロイド達を、クローバーエースは目を輝かせて眺めていた。 「すごいな、テレビや映画で見たヒーローが勢揃いだ」 「貴女もそのヒーローの一人でしたけれどね」 その隣でアルマン枢機卿が、微笑んでグラスを傾けた。 SS級への昇級手術も受け、もうじき外部拠点再建のためふたたびオルカを離れるヨアンナの壮行会と、最近オルカに加わったクローバーエースの歓迎会を兼ねて、伝説組だけの小さなパーティを開こうと提案したのはマジカルモモだった。 「それではもう一度、ヨアンナさんのためにかんぱーい!」 箱舟の会議室をひとつ借りて、白いクロスの敷かれたテーブルに軽食と飲み物、そして誰がどこから調達してきたのか、差し入れの高級そうな酒や菓子が並ぶ。昔テレビで見た芸能人の打ち上げのような光景だと思って、クローバーエースは一人で笑った。ここにいるのはまさしく芸能人ばかりなのだ。自分も含めて。
3 23/09/06(水)17:01:38 No.1098663523
「クローバーエース卿、正式な挨拶がまだであったな。プレスターヨアンナだ」グラスを二つ手に持って、サーコート姿のヨアンナがエースのところへやってきた。 「初めまして! 『エルサレムの黒き盾』観たことあります。会えて嬉しいです」頬を紅潮させて、エースはグラスを受け取る。ヨアンナが苦笑した。 「伝説の同僚からそう言われるのは、みょうな気分だな。もちろん『クローバーエース・ショー』は余も知っている。それに、世界のあちこちでバイオロイドを助けて鉄虫と戦う『不思議な流れ者ヒーロー』の噂もな。オルカに加わってくれてくれて心強い」 「そんな、こちらこそ。オルカの話はあちこちで聞いてました」 「モモのことも知ってます?」ヨアンナの後ろから、モモがひょこりと顔を出した。 「マジカルモモ! 本物はやっぱり可愛いなあ! 新作映画のたびに観に行ってたけど、特に『花の都のミルフィーユに想いをこめて』が最高だったよ。ディスクも買ったんだ、パリの風景がすごく良くて、ちょっぴりロマンチックで」
4 23/09/06(水)17:01:50 No.1098663594
「拙者たちの戦いの映像もご覧になったでござるか?」 「もちろん! 『大戦乱』は私たちの学校じゃ歴史の教材になってた。授業で観たのは第一部だけだったけど、私は第三部が好きだな」 「当然私もご存じですわね?」 「ごめん、『シャーロットロマンス』は小説版しか読んだことないんだ」 「なぜ!?」 ショックで涙目のシャーロットに、アルマンがくすくす笑う。「あれには私が出ているからですよ。さすがに、同じ顔が画面の向こうにいては怪しまれますからね」 「いや、見たかったんだよ? 小説はすごく好きだったし」クローバーエースもあわてて弁解する。「でもリバイバル上映があるたび、なんでかちょうど機械帝国が出てきて……ああそうか、でもあれも番組の都合だったのかあ」 「そうですね。実際、『シャーロットロマンス』はかなり貴女好みだと思いますよ。箱舟のライブラリにありましたから、あとで観てみたらいいでしょう」 「絶対観て下さいね! 絶対ですよ!」
5 23/09/06(水)17:02:19 No.1098663710
「いやー、緊張したなあ」 ひととおりの挨拶を終えたエースはテーブルに戻って、並んだ料理をぱくぱくと平らげる。 「伝説の人たちってさ、なんていうか、いろんなタイプがいるんだね? みんな私みたいのかと思ってた」 「そうですね……あなたはむしろ、新しい番組製作スタイルのテストケースでした。役者、俳優タイプの方が、数としては主流ですね。私もそうですし」 アルマンも小さなサンドイッチを上品にかじりながら、エースの方を横目で見やった。 「……本当によかったのですか? オルカに腰を落ち着けてしまって」 「え、どういう意味?」シュリンプフライを頬張りながら、エースは目を丸くする。 「あなたは旅の途中でしょう。途中で止めていいのですか? 陛下はバイオロイドの自由と主体性を何より尊重して下さいます。旅を続けたいと言えば、きっと許して下さいますよ」 「そりゃ……」エースは言いよどんだ。「……ここは、バイオロイドが幸せに暮らせる場所だって聞いたけど。違うの?」
6 23/09/06(水)17:02:34 No.1098663780
「違いませんとも。私たちにとって今この地上で、陛下のおそば以上に幸せな場所はありません」きっぱり言ってから、アルマンはクローバーエースの顔をまっすぐに見た。 「ですが、それは普通のバイオロイドの話。あなたは自由も、幸せも、すでに手にしているはずです。自覚していますか、それはとても希有なことなのですよ? 特殊な立場と、そのために与えられた人格と性能、そして偶然のタイミングが奇跡のように噛み合って、自由なるヒーロー・クローバーエース、今のあなたは生まれました。そのあなたをここに留めてしまうのが果たしてよいことなのか、私は測りかねています」 エースは口の中のものを飲み込んで、唇をペロリとなめた。「私のこと、すごく気にかけてくれるんだね」 「私はルージュの伝言と記憶を預かった身です。貴女が本当に自由で、幸福であるか、見極める責任がありますので」 真顔で答えるアルマンに、エースは小さく笑う。 「そういうところ、ルージュとそっくりだ」 「基本的な人格プログラムは同一ですから」アルマンが小さく肩をすくめた。その仕草もルージュによく似ていて、エースはまた笑った。
7 23/09/06(水)17:02:47 No.1098663845
「さっきも言ったけど、オルカのことは前から聞いてたし、興味があったんだ。最後の人間が率いる抵抗軍なんて、いかにもヒーローにふさわしい場所じゃないか」 「それだけですか?」ナプキンで口元をふきながら、アルマンがちら、とエースを見上げる。 「……元々、目的地のある旅じゃないし。一人旅も、そろそろ寂しくなってきてたしさ」 「それだけ?」 エースは顔をしかめてアルマンを見た。「……もしかして、わかってて聞いてる?」 「さあ、どうでしょう?」 エースはしばらくためらってから、身をかがめてアルマンの耳元へ口を寄せ、小声で何事か囁いた。アルマンは満足そうに頷く。 「それなら、何も問題はありません。ようこそ、オルカへ」 「そういう意地悪いところも、ルージュそっくりだな!」顔を真っ赤にしたエースに、アルマンはすました顔で言った。 「基本的な人格プログラムは同一ですからね」
8 23/09/06(水)17:03:08 No.1098663935
長くなったので続き fu2542251.txt
9 23/09/06(水)17:20:46 No.1098668416
伝説 いいよね
10 23/09/06(水)17:22:35 No.1098668867
エースちゃんはマジで特殊事例だと思うので書いてみたかった あと伝説は他番組同士の絡みに無限の可能性があると思う まとめ fu2542252.txt
11 23/09/06(水)17:22:56 No.1098668968
むちち?
12 23/09/06(水)17:37:16 No.1098672994
クローバーエースは伝説の再末期のバイオロイドだしバイオロイドの存在認識しながら人間としての意識を持ってたし 確かにこの辺もっと掘り下げたら面白そうだね
13 23/09/06(水)17:37:41 No.1098673121
リアリティショーの中で他社の番組はやらないだろうから エースはドラキュリナとかタチちゃんとかは知らないんだろうな
14 23/09/06(水)17:38:46 No.1098673431
幸せに決まってるだろ!は本当に驚いた 司令官が幸せにしてあげなくてもいい子いるんだ!?って
15 23/09/06(水)17:45:01 No.1098675355
>伝説 >いいよね よくない…
16 23/09/06(水)17:47:29 No.1098676099
伝説は心の真っ直ぐな新人くんでも最終的にあたま伝説になってモモシリーズの巨匠になって ポックル大魔王惨殺される予定だったあれ撮ろうとしてたり本気で怖いよあそこ…
17 23/09/06(水)17:49:21 No.1098676677
でも伝説は作品作りには常に本気だし…