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幼い頃... のスレッド詳細

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23/07/17(月)00:05:21 No.1079439725

幼い頃からの夢。 底辺からの脱出。 図鑑所有者への認定。 誘拐した者との決着。 両親との再会。 みんな叶えた。 自分だけでなく、みんなの力を借りて。 そうして今。 平和な生活を送ることができた。 達成した時の喜びは計り知れなかった。 だが、もう。 あの時ほどの喜びは、手に入らないのだろうか。

1 23/07/17(月)00:05:42 No.1079439844

休日の昼間。 ブルーはショッピングモールを歩いていた。 最近できたというこの施設。 それだけあってどこも綺麗だ。 空調の効いた室内は夏場では天国のよう。 好奇心もあって、ブルーはしばらくこの中を回ることにした。 「さて、どこ行こうかな」 来てみたはいいものの、まずどこに行くか。 それを決めないで来たので、今から悩むことになった。 「こんな行き当たりばったり、レッドみたいね」 馴染みの深い相手の名前を出して苦笑する。

2 23/07/17(月)00:06:48 No.1079440272

当てもなくしばらく歩く。 とりあえずは歩いてみて気に入った店が見つかったらそこに行こう。 そう思って足を動かす。 と、途中に椅子が複数あった。 休憩のためのスペースのようだ。 まだ入ったばかりだし、そこに行くのは早いと思って離れようとする。 だが、そこで目が止まった。 知り合いの姿を見つけたからだ。

3 23/07/17(月)00:07:23 No.1079440499

心変わりして、その人へと近づく。 ただ声をかけるだけではつまらない。 どうせなら、驚かせた方が面白い。 そう思って、気配を殺す。 足音を消して、彼に近づいていく。 そうして、あと少し。 手を伸ばせば触れられそうな距離にまで至った時。 「ん?ブルー?」 こちらの名前を呼びながら、彼が振り向いた。 目と目が合う。 もはや隠れられない。 「あ、あらレッド奇遇ね。 こんなところで会うなんて」

4 23/07/17(月)00:07:57 No.1079440687

笑って誤魔化そうとするが、無理があると自分でも思う。 なので、白状することにした。 「レッドを見かけて、驚かそうとしたんだけど。 よくアタシが近づいてるって気づいたわね」 聞いてみると、レッドがなんでもないことのような口調で言った。 「こんな人の多いところでオレに気配を消して近づいてくるやつってブルーくらいだろうしさ。 殺気もないから敵ではないし」 当たり前のことのように。 あっさりとレッドが言ってくる。

5 23/07/17(月)00:09:26 No.1079441202

「レッドって、結構アタシのこと分かってわね。 そんなにアタシのこと好き?」 「す、好きって…」 こちらの冗談に、レッドが照れ出した。 それを隙と見做して、顔を近づける。 「恋愛感情とかじゃなくても、人間としての話よ。 それなら好きって言いやすいでしょ?」 「それは、うん…」 頬を赤く染めながら、レッドが頷く。 「それで何してたの? 買い物もせずにこんなところで」 またこちらから質問する。 と、レッドが何かを掲げた。 「新聞買ったから、どこかで落ち着いて読もうと思ってさ。 暑いから冷房の効いたところにしたくて」

6 23/07/17(月)00:09:46 No.1079441325

「レッド、新聞なんて読むんだ…」 「オレだってそれくらい読むよ。 毎日じゃないけどさ」 予想外のレッドの話に、驚く。 「レッドって、意外と大人なのね」 「これだけで大人って言われるって、普段どう思われてるんだろ…?」 レッドの額から汗が流れる。 彼の汗をハンカチで拭いてあげた。 「それで大人なレッドにお願いなんだけど、これから一緒にモール回らない? 1人より2人の方が面白そうだし」 「いいぜ。オレも今日はやることないし」

7 23/07/17(月)00:11:30 No.1079441996

思いつきの誘いもあっさりと了承された。 彼の正面に周り、手を差し出す。 「じゃ、暇人同士デートしましょ」 「暇人デートって嫌な響きだなぁ…」 レッドがその手を取り、席を立った。

8 23/07/17(月)00:13:01 No.1079442547

まずは、フードコートを訪れた。 2人とも食事をとってなかったので、腹ごしらえからということになった。 「アタシ、ハンバーガーとか食べるの初めて」 「そうなのか?」 「あんまりカロリー高そうなのは避けてたの。 でもたまにはいいかなって」 チーズバーガーを口にする。 大口を開けて食べるのははしたないが、こういうものにそうしない方が不作法だろうと思って口開けた。

9 23/07/17(月)00:18:43 No.1079444756

「…美味しい」 「そりゃよかった。 あ、フライドチキン食うか?」 「うん。前から鳥肉は好物よ」 「前って言われると追求しにくいなぁ…」 チキンの一つをもらい、食べる。 鳥肉本来の旨みと、皮の硬さや胡椒の塩辛さが舌に心地いい

10 23/07/17(月)00:26:37 No.1079447956

「ありがと。 はい、お礼にあーん」 「え、うん…」 フライドポテトを差し出して、レッドに食べさせる。 「美味しい?」 「うん…」 「アタシみたいなかわいい子に食べさせてもらったから?」 「それもうん…」 正直にレッドが答えた。 「それじゃもう一個、あーん」 また素直にレッドがポテトを食べた。

11 23/07/17(月)00:38:28 No.1079452641

次に寄ったのは、アクセサリー店だった。 たまたまフードコートに近いからそこに行くことにした。 「ねえねえこれ似合う?」 ピアスやイヤリング、ヘアピンなどを手に取って見せる。 「似合うと思うよ。 ブルーは美人だからなんでも合うし」 「そういうなんでもってのは選ぶ側からしたら1番困るんだけどー」 選択肢を減らしたいのに、なんでもいいとなると一向に減らない。

12 23/07/17(月)00:44:55 No.1079455297

「なんでも似合うって言うなら、レッドも選んでみない? そこまで真剣に悩まなくてもいいから直感で」 「え、オレ?」 レッドが戸惑う。 ただの思いつきだが、彼に選んでもらうのも悪くない。 客観的に見てどれが似合うと思われるのかは興味がある。 これで変なものを選ばれてもそれはそれでからかいのネタにはなる。

13 23/07/17(月)00:57:02 No.1079460055

「んー、これかな」 レッドがピアスを手にした。 花を思わせるデザインの青いもの。 「これ?」 「なんか似合いそうな気がしてさ。 もう持ってるかもしれないけど」 「ううん。じゃあこれにするわ」 レッドからピアスを受け取る。 「他はいいのか?」 「ええ。アタシもこれがいいって思ったから」 誰かに選んでもらうのも悪くない。 これが似合う、合っていると勧められる。 そうしてもらえるのもいいかもしれない。 レジにに向かいながら、ブルーはそう思った。

14 23/07/17(月)01:04:41 No.1079462854

「ありがとう、レッド」 ピアスを買い、実際につけてからブルーは礼を言った。 「結構適当っていうか、思いつきで選んだんだけど。 それで喜んでくれるなら何よりだよ」 照れたようにレッドが頭をかく。 開いた方の腕は、ブルーの歩いてる側に近い。 その開いた腕に、ブルーは腕を組んだ。 「え!?」 「お礼よ。これくらいはさせて」 ウインクすると、レッドは黙り込んだ。

15 23/07/17(月)01:09:02 No.1079464387

「そういうこと、あんまり平気でされると…」 「平気じゃないわ。 でもレッドなら別にいいかなって思うだけ」 彼といると、パーソナルスペースが狭くなる。 他の人とは避けたいレベルのボディタッチですら、彼に対しては抵抗が薄れる。 付き合いの長い友人への親愛故か。 それとも自覚のない別の感情故か。 ブルーにも結論はまだ出せなかった。 でも、思うことはあった。

16 23/07/17(月)01:15:49 No.1079466614

「ねえレッド」 「?」 疑問符を浮かべるレッドに言う。 「アタシね、昔からの夢が全部叶って。 あなたたちのおかげでね」 「いや、ブルーが頑張ったからだよ。 だからオレたちも助けようと思えたんだ」 そうかも、と肯定する。 「それで、叶えた時ほどの幸せはもう手に入らないのかもって思ってた。 成し遂げたことが大き過ぎて。 あんな規模のはもう2度とできないって」 やりたいことがもうなくなって。 あの頃の必死さはもうなくなってしまったのか。 そう思ってしまうこともあった。

17 23/07/17(月)01:19:42 No.1079468560

「今は違うのか?」 「うん。あの時ほど大きくなくても。 少しずつでも幸せって手に入るものだって。 なんだかレッドといたらそう思ってきちゃった」 彼の腕を抱きしめる。 「レッドと色々としてたら、楽しかった。 ありがとう、レッド」 「…ああ」 レッドが返事をする。 照れもなく、ただ静かに肯定してくれた。

18 23/07/17(月)01:21:03 No.1079468937

「じゃ、もうちょっと付き合ってね」 「オレでよかったら」 次はどこに行こうか。 どこでもいい。 彼となら、きっと楽しい。 そう思って2人でモールを歩いた。

19 23/07/17(月)01:21:25 No.1079469029

以上です 閲覧ありがとうございました

20 23/07/17(月)01:23:21 No.1079469546

>誰かに選んでもらうのも悪くない。 >これが似合う、合っていると勧められる。 >そうしてもらえるのもいいかもしれない。 >レジにに向かいながら、ブルーはそう思った。 に一個多い? チキンのくだりでダメだった

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