虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。

  • iOSアプリ 虹ぶら AppStoreで無料配布中
  • 「こり... のスレッド詳細

    削除依頼やバグ報告はメールフォームにお願いします。 個人情報,名誉毀損,侵害等について積極的に削除しますので、メールフォームより該当URLをご連絡いただけると助かります

    23/07/01(土)22:17:20 No.1073717008

    「こりゃ、大成功って言ってもいいんじゃないッスか?」 麦わら帽子を被り直しながらその光景を眺めて一人呟く その横で同じく麦わら帽子を被ったプイ先輩が満足そうに頷く。この人も随分手伝ってくれたしなぁ 「ぷっきゅっきゅ。今日が楽しみだったプーイ」 「そりゃそうッスよね。開墾からずっと一緒にやってたんですし」 「あとはエールちゃん達待ちプイ?」 「そッスね。それと姐御と姉貴ッス」 眼前には、規則正しく並べられた青々とした野菜たち それらはプレハブから少し離れた空き地に植えられたもので、自分たちが必死になって世話してきたものだ ここまで来るのに長かった……いや本当に長く感じた。実際の期間はそこまでではないのかもしれないけど、体感時間としてはかなり長いものだった それだけ丹精込めて育ててきたものが今、結実した。それがこんなに嬉しいものとは

    1 23/07/01(土)22:17:32 No.1073717084

    「お待たせしましたああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」 「遅れてすみません。まだ始まってないですよね?」 ジャージ姿のエールちゃんソングラインちゃんも駆けつけてくる そして、その後ろから………後ろから……… 「おーぅ。準備できてんのか愚妹」 ……農作業用のカゴを背負って、頭にタオル巻いて長靴・軍手装備済みの姉貴の姿が

    2 23/07/01(土)22:17:42 No.1073717144

    「………野菜苦手なのに一番やる気満々プイ」 こうして、トレーニングも休みの今日。夏の日差しもきつくなってきた頃 プレハブの一角では、野菜の収穫大会が開催されることとなった

    3 23/07/01(土)22:17:54 No.1073717227

    ● 「つーわけで、やっていくッスよ。ハサミとか刃物使うんで、怪我しないように。各自ご安全にー」 「それもう恒例の挨拶プイ?」 こっちもフル装備を整えて、いざ収穫と取り掛かろうとして。おっと、忘れていた、と。ちょっと待ったをかける 「基本的には昨日説明したとおりのやり方でいいんスけど………」 ちらっと横目で姉貴の方を見ると……すでにさっき以上の完全装備で準備運動してるし ほんと、お年寄りの手伝いするようになってから変わったな姉貴……今じゃ畑仕事も手伝ってるし、今回身に着けてる装備品のほぼすべてが私物と言うんだから恐れ入る。いつの間に揃えたんだそんなもん お年寄りたちから貰った野菜だけは文句言わずに食うし、こっちとしてはいいことなんだけど 何百回でも言ってやる。その優しさの僅か一かけらでもいいから他に向けろと

    4 23/07/01(土)22:18:15 No.1073717347

    「わからない点があったら、まず姉貴に聞いてくださいッス。多分この中で一番畑仕事慣れてるんで」 「おぉーぅ。んじゃ、始めんぞ」 「トマトから収穫します!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 「あ、じゃあキュウリから収穫しますね」 みんなそれぞれ、思い思いの野菜に向かって行って作業開始 それにしても、だ。自分たちでやっておいてなんだが、何ともまぁ立派に実ってくれたものだ 初めは正直どうなる事かと思ったが……… 「あの荒地がここまでなるもんなんスねぇ」 「土地選びの段階で正直心折れかけてたプイね。凄い顔してたの覚えてるプイ」 「あ、あはは……正直、アレは………」

    5 23/07/01(土)22:18:27 No.1073717435

    そう。自分たちで家庭菜園をやってみよう、となった後まずやったのは土地探し。プレハブのすぐ近くで何処かないか、と探してこの場所を見つけたのだが…… 今まで何一つ整備らしい整備など、強いて言えば時折の草刈りくらいしかしていなかった土地はガチガチで、石ころと草の根が網のように張り巡らされ硬直した酷い有様だった まずはガッチガチに固まった地面を掘り起こして……というところからだったのだけど。正直、重機が欲しくて仕方がなかった まさか、スコップが二本駄目になるとは……舐めていた、としか言えない 「アドバイザーの方々には感謝ですね!!!!!!!!!!!!!!」 「マジでそれッス。あの方々の助言とヘルプが無かったら、まず間違いなく土地起こしの時点で失敗してたッスよ」

    6 23/07/01(土)22:18:37 No.1073717493

    なので餅は餅屋、というわけで 釣りの時に某釣り好きウマ娘に助言を求めたように、今回も詳しい方々に助けを求めることとした まず、某黄金世代のけっぱりウマ娘。最初に予定地を見せた時は絶句していたものの、なんだかんだと世話してくれたおかげで助かった 北海道仕込みのガチ農業経験者は伊達じゃない。本当にすごいスピードで作業が進んだし 続いて、某覇王のチーム。覇王菜園、改め覇王農園なんて言われるレベルにまで個人菜園を拡大し今もなお勢力を広げているあのチームだ 僕たちも最初は荒地からだったさ!!!!と昔取った杵柄と言った感じでどんどん土地を広げていってくれたし、今使っている肥料なども分けてくれた 今回植えた作物の苗も提供してもらってたりする。本当に頭が上がらないな そして……… 「おい、形の悪いもんや小せえもんはこっちのカゴに入れていけ」

    7 23/07/01(土)22:18:48 No.1073717566

    すぐ身近なアドバイザー、姉貴 顔見知りのお年寄りたちの手助けをしたりしてるうちに、いつの間にか農業に精通してしまったという変わり種な経歴だが……現役の農家さん仕込みの知識は確かなもので おかげで他アドバイザーが来れない時でも細やかな指示が受けられたし、なんだかんだ言いつつも真面目にやってくれるもんだからこっちも助かってしまった ……これで本人は本来野菜嫌いなんて言っても、知らない人は信じられないだろう 「ぷっきゅ。綺麗なナスプイ」 「おおー、マジッスね。形もいいし、いろんな料理に使えそうッス」 「トマトとナスは特にお世話したから思い入れ深いプイ。食べる時が楽しみプイ」 そう、プイ先輩もめっちゃ手伝ってくれたのだ 特にトマトとナスについては本人も言う通り最初からよくお世話してて、他にも草むしりや間引きなど、姉貴の指示に従って良く動いてくれた だから今回の収穫の喜びもひとしおだろう。一個一個、丁寧な手つきで慎重に収穫しているのを見るとそれも分かるというものだ

    8 23/07/01(土)22:18:59 No.1073717632

    「おいエール、ヘタが残り過ぎだ。もうちょい根元で切れ。ソングライン、そのくらいのは次の収穫に回すからまだ放置でいいぞ」 「わかりました!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 「あ、はい。そっか、まだ今度収穫すればいいんですからね」 「どうせこっから少量ずつ収穫できるやつが出てくるから、練習終わりにでも収穫していけば間に合うからよ。おい愚妹、カゴ一杯になったから次のよこせや」 ほんとノリノリだなこのちびっこ怪獣ドリジャノドン 今までずっと野菜なんて見るのも嫌だってくらいだったのに、お年寄りたちから貰うようになって一変したんだからもう ………あれ?そもそも、姉貴がお年寄りたちに優しく、というかやたら構うようになったのっていつからだっけ?思い出せないが、そんなに昔のことでもなかったような気も………

    9 23/07/01(土)22:19:12 No.1073717711

    「キャーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!ハチです!!!!!!!!!!!大きいです!!!!!!!!!!!!!!」 「う、うわぁ!!!こっちくるな!!!!」 「あーもう、殺虫剤、殺虫剤………」 そんなこんなでドタバタしながらも、収穫作業は順調に進んでいく 「あ、なんか変な形のキュウリプイ」 「曲がってるってレベルじゃないッスよそれ。αみたいになってるじゃないッスか」 「こっちは二股のナスがあったわ。なんでできんだろうなこういうの」 朝から始めたその作業は、気づけばお昼も間近になって お昼ご飯にしようかという頃に、山盛りの野菜を前に喝采をあげたのだった

    10 23/07/01(土)22:19:37 No.1073717882

    ● 「んー、働いた後のおにぎりは美味しいプイ」 「わかるッス。あえておにぎりにしてみたッスけど、大当たりッスね」 野菜の収穫を一通り終えて、プレハブの脇にアウトドアテーブルを出してお昼ご飯 おにぎりと糠漬け、それに良く冷やした麦茶。農作業の終わりのご飯としては最高なのではないか 「おい愚妹、シャケどれよ」 「その列ッスけど、全部食わんでくださいね」 「たらこ美味しいです!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 「あ、こっちはおかかだ。好きなんです、これ」

    11 23/07/01(土)22:19:49 No.1073717975

    和気藹々と、お昼ご飯は進んでいく みんな勢いよく食べていくもんだから、握り過ぎたかと思った不安が払拭されていく。うんうん、よく食べるのはいいことです 自分も一個とって、ぱくりと。昆布。地味だけど、おにぎりの具材としてはやっぱり欠かせないよね 「ぷきゃー。それにしてもたくさん収穫できたプイ。これどうするプイ?」 プイ先輩が振り向き見つめるのは、収穫した野菜の山 いやはや、畑で見た時以上の量に見える。やはり各方面からの助言と手助けを受けての結果だろう。感謝するしかない つまり、まずは、だ 「アドバイザー各位に、綺麗な野菜から順にもっていくッスよ」 「これ食ったら仕分けすっからな。まだ終わりじゃねーぞ」 「ぷっきゃ。しっかり食べとかないとプイ」

    12 23/07/01(土)22:20:00 No.1073718042

    そう、まずは散々助けてもらった、某けっぱりウマ娘と覇王のチームにお裾分けだ。お礼もそうだが、おかげでこんなにいい野菜ができましたと報告しに行こう 少なくとも人様に渡して恥ずかしい出来ではないはずだ。姉貴も収穫中にうんうんと頷いてたし。………その目利きはどこで養ったんだか 「あと自家用ッスけど、漬物も楽しみッスね。丁度今糠床もいい具合なんで」 「おめー好きだよな糠漬け」 「ピクルスも作りますか!!!!!!!!!!!!!それでしたらお任せください!!!!!!!!!!」 「ナスなら、マーボーナスとかも食べてみたいですね。あとお浸しとか」 野菜だけでも、やれることはたくさんある。この後のことを考えると、本当に楽しみだ だけど、まずはこれをやっておくべきではないだろうか 一度席を立ち、プレハブ小屋の脇に移動して『それ』を見て、手を突っ込む うん、いい具合だ。食べごろじゃないだろうか

    13 23/07/01(土)22:20:12 No.1073718111

    「姉貴ー。そろそろよさそうッスよ」 「おう、そんじゃ出して来い」 「ぷきゃ?何か用意してたプイ?」 プイ先輩が興味本位で覗きこみに来ると………すぐにその真意を理解したようだ。ぷきゃー、なんて言って目を輝かせてる 大きなザルを二人で持ち上げて、席に戻る すると、エールちゃんとソングラインちゃんもそれを見てキラキラと目を輝かせて 「わぁ、さっきの野菜………ですよね。もしかしてそれ………」 「冷やしてたんですか!!!!!!!!!!!!!」 「そうそう。氷水に入れて冷やしておいた初めの方のトマトとキュウリッス。いい感じに冷えてるんで、食べてみましょ」 せっかくだし、生で食べてみよう。ということで、トマトとキュウリを氷水でキンキンに冷やしておいてみた 今日の暑い中で食べるこれは最高だろう。食べる前から保証できるほどだ 塩と味噌、両方用意してみたが、まずは………

    14 23/07/01(土)22:20:25 No.1073718198

    『いただきます!!!!!!!!!!!!!!』 何も付けずに、生でかぶり付く 「………おいしープイ!!!!え、トマトってこんなに甘いプイ!?」 「瑞々しくって、程よい酸味があって……まるでフルーツです……!!」 「キュウリも美味しいです!!!!!!!!!!!!臭みエグみが無くていくらでも食べられます!!!!!!!!!!」 「ほんと、いい味してるッス。ちょっと塩かけて……あ、美味い」 みんな、華が咲いたかのように笑顔を浮かべて感想を述べる。いや、これは確かに大当たりだ トマトの方も食べてみれば、プイ先輩の言う通りめっちゃ甘い。これは……今回の育成方法はマニュアル化して保存しておくべきではないだろうか。いや、天気とか色々左右されるんだろうけど 初回だから結構不安だったのもあるけど、これは大成功と言っていいだろう そう思って、姉貴の方を見ると……トマトを齧って 「………ん。悪くはねえんじゃねえの?」

    15 23/07/01(土)22:20:38 No.1073718304

    ………本来野菜嫌いの姉貴がそう評するということは、そういうことなのだろう これで太鼓判を押された気分だ。問題なく出荷……もとい、他所にお裾分けできるだろう 「それにしてもトマトが美味しいプイ。ソングラインちゃんも言ってたけど、フルーツ食べてる気分プイ」 「それには同意ッス。ほんと、こんな甘いトマトって初めてッスね」 「日あたりを徹底的によくしたのと、水の量を制限したからな」 そう言って、姉貴がトマトを齧りながら語り出す 「トマトは必要最低限の水しかやらねー方が甘くなるんだよ。だから土にシートかけてたろ?」 「あれってそういう意味だったプイ」 「説明しただろーが。ちゃんとメモとっとけ」 「聞いてなかったらしっかり水やっちゃってたかもしれないッスね………」 そんなテクニックまで覚えてるあたり、もうこの姉貴就職先は農家でいいんじゃないだろうかなんて考えてしまう。言わないけど

    16 23/07/01(土)22:20:56 No.1073718409

    「あ、そうそう。持っていきたい場所とかあったら言ってくださいッス。こんだけあるんで、お裾分けは大歓迎ッスよ」 「ソダシちゃんに持っていきますか!!!!!!!!!!!!!!!あとタイムちゃんにも!!!!!!!!!!!」 「そうだな、そうしようか」 「………ん」 すると、姉貴が立ち上がって 「少し貰うぞ。じーちゃんばーちゃん達に味見てもらうわ」 「………ん。了解ッス」 そんな事言ってるけど、結局アレだろう。初めて自分で作った野菜を食べてもらいたいってのもあるんだろう これこそ絶対言わない言えないけど。噛まれるし だからその情の一かけらでもうんたら

    17 23/07/01(土)22:21:07 No.1073718492

    「次は何育てるッスかねぇ」 「次こそニンジン育ててみたいプイ。そろそろ植え付け時期とも聞いたプイ」 「調べたら、オクラとかもよさそうですね」 「サツマイモもやってみたいです!!!!!!!!!!!!!!焼き芋したいですね!!!!!!!!!」 そんな議論を交わしながら……視線は自然と、姉貴の方に 姉貴ははぁ、とため息をついて。トマトを一つ齧って 「わかったよ。じーちゃん達になんかいいもんねーかアドバイス聞いてくるから。あと、その前にまた土を慣らしてからだぞ」

    18 23/07/01(土)22:21:19 No.1073718576

    とりあえずニンジンからにすっか、なんて言いながら視線を逸らして 今日収穫したばっかりだというのに、もう次のことを考えてしまうのは気が早いのだろうか まあ別に構わないだろう。楽しみはいくらあっても構わないのだから とりあえず、次は姉貴も好きなニンジンからかな、と考えて。他所へのおすそ分けの分を仕分けるのも大変そうだとか、もう少し土地増やした方がいいのかなとか 考えることもやらないといけないこともたくさんあるけど、とりあえずは もう一個、トマトに齧りついて 「………ん。うまい」 「うまプーイ」 夏の日差しも本格的になってきた今日 プレハブの一日は土の匂いに包まれて、ちょっと大汗もかいてしまったけど 長い時間をかけて自分たちで育て上げた野菜の新鮮な味わいを堪能して、爽やかな終わり方になったんじゃないだろうか

    19 23/07/01(土)22:21:36 No.1073718685

    以上。野菜収穫したので酒飲んで舎弟した

    20 23/07/01(土)22:24:23 No.1073719803

    追記 姉貴がお年寄りに優しくなった大体の原因を再掲しておきます fu2324858.txt

    21 23/07/01(土)22:26:26 No.1073720608

    姉貴…

    22 23/07/01(土)22:29:29 No.1073721931

    覇王菜園の傘下に入ったのかと思った

    23 23/07/01(土)22:35:17 No.1073724415

    トマトいいよね…

    24 23/07/01(土)22:35:50 No.1073724663

    姉貴の場合農家の手伝いしてても小学生のお手伝いに見え